なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
『いえその べつにあらそいにきたわけでもないので』
「ああうん……そういえばそうですね……」
呼ばれて来たはいいけれど、別になにかを望まれたわけでもない……というのが彼の主張である。
……まぁうん、状況的に呼び出し判定が出るのはわかるし、同時にウイルスに思考があるのか?……と言われると微妙になるのも事実。
そりゃまぁ、人間的な視点でモノを見ると『俺達をモルモットみたいに扱いやがって』とか考えてそうな気もするけど。
目の前の彼──ウイルスの親玉みたいな存在でようやく思考のようなモノが見える辺り、その辺気にしているわけもないというか、気にするだけの素地がないというか……。
というわけで、彼自身呼び出しの条件が整ったから来ただけで、特に目的とかはないということになるのであったとさ。
『──ああ そういえば あなたにあうのがもくてき といえばもくてきですね』
「へへへ有名人だな参っちゃうなー(白目)」
(言葉とは裏腹に全然嬉しくなさそうね……)
一応、久方ぶりに
……お目当てにされるのは仕方ないことだが、実際にそれを目的にやって来たとか言われると結構ダメージ受けるねこれ()
とはいえ、その辺りは今さら気にしてもどうにもならない話でもあるわけで。
ゆえに、ざっくり流してこれからの話に移行する私達である。
「ええと、ということはもうお帰りになるおつもりで?」
『どうせなら あのかたにも おめどおししておきたい』
「ですよねー()」
まぁ、早速私の心労がプラス1されたわけなのですが()
……うん、まぁそうなるよね。
この方、【星の欠片】としてはさほど
生き物かどうか判断に困るような存在ということは、すなわちその大きさが分子・原子よりも大きいということ。
正確には概念の話なので、実際にはそれらより小さい扱いをされるとはいえ、【星の欠片】的に見て特別
それでも、彼が司るものがウイルス──生き物の起源ともされる存在であるがゆえに、小ささとは別方面で……言い換えれば
ゆえに、『星女神』様とは別方面で彼の行動を止めるのは憚られる、という話になるのであった。
……いやまぁ、本人はその辺気にしなくてもいいよ、とか言い出しそうなんだけどね?
無論普段ならその辺の主張もまずこちらの耳に届かないだろう、ということは置いといて……の話だが。
そういうわけなので、これから私達がやるべきことは一つ。
早急に彼を『星女神』様にお目通り頂くこと、ということになるのだけれど……。
「なにか問題でも?彼が居ればサンプルに関しては気にしなくてもいいんでしょう?」
「いや……それ彼がずっとこっちに居てくれること前提でしょ?お目通り頂いたらそのまま帰っていただくって話なんだが?」
「……あっ」
それはそれで、問題が出るのも確かな話。
本来私達が行っていたサンプルの収集、それはこの世界特有のウイルス達を集め、それに対する対応策を作るためのモノであった。
それが長引いていたのは、この世界に広がる全ての病原菌を確認していたがため。
ゆえに、あらゆる病原菌の王である目の前の彼が居れば、それらの作業は全て無視しても良いものとなる……。
うん、確かに間違いではない。
ないのだが、それはあくまでも
普段あまり『星女神』様がお姿を見せないのは、彼女レベルの存在が無闇矢鱈に世界に顕現していると、周囲によくない影響をもたらすがため。
言い換えれば
……なるんだけど、それはそれで問題が一つ。
この場合の『隠れる』というのは、因果的な意味でも隠れないとダメなのだ。
「言い換えると、『星女神』様がお隠れになっている場合、彼女を起因として現世界に影響をもたらしているような存在があった時、それらの効果も一時的に無効化されるってこと」
「なるほど……仮に彼からサンプルを貰っても、彼が居なくなると意味がなくなるってことね?」
「間接的に作り出した薬とかならともかく、サンプルそのものは彼が居なくなったら死滅するか、はたまた彼によって抑えられていた性質が再び活性化して酷いことになるか……の二択だね」
生憎?なことに、現状この世界に残っている『星女神』様の影響を受けたもの、というのは『星解』によってその因果関係が一度リセットされている。
そのため、彼女が隠れていても問題なく機能しているのだが……ウイルスである彼の場合は話が違う。
起因と結果の因果関係を切り離す場合、起因である存在が『星解』を使わないと意味がないのだ。
そのため、私が外から『星解』をしても彼とウイルス達の因果関係は切り離されない。
いやまぁ、正確には頑張ればやれなくもないのだけれど……その場合切り離された因果が『星解』を使った存在に結び直されてしまうのである。
「…………???」
「正確なことを言うと、『星解』は因果を断ち切るんじゃなくて
「……あー、本人がやると因果を手放すって処理になるけど、そうじゃない場合やった人間に絡み付く……って認識であってる?」
「うん、まぁ大体そんな感じ」
結果、そうして得られたサンプルであるウイルス達は、【虚無】の使い手である私に紐付けられる……と。
……そうなったらどうなるかって?『虚渦』で押し留めるだけで酷いことになったんだから、そりゃどうなるかなんて予想付くよね?(白目)
「……ああうん、そりゃダメだわ……」
「まぁ一応、その辺りも『星女神』様がやるんなら問題はないよ?
「……人間に対してスパルタでもあるのが『星女神』だから、別の試練とか投げられかねないってこと?」
「
「うへぇ」
基本的にあまり頼らないように、というのが『星女神』様の基本スタイル。
今回の場合は
結果、ウイルスさんを彼女にお目通しするのであれば、その前にやれることやっておかないと今までの苦労が全て水の泡、ということになるのだ。
「なんで、正確なことを言うと私達がこれからやるべきことは一つ。一般的な【星の欠片】が人間に対して抱く庇護の感情を、ウイルス達に抱いている彼にお願いしつつ、予測されうるウイルス達の被害を的確にノミネートし、それらに対して有効なワクチンなり治療薬なりを早急に開発すること」
「それらはウイルスから作られたモノだけど、関係性が間接的だから彼が居なくなっても残る……ってことよね?」
「そういうことになるねー」
なので、私達がやらなきゃいけないことはただ一つ。
迅速に必要とされるだろう治療薬やらワクチンやらを開発すること。
……本来ならサンプルを取っておいて、あとからゆっくり開発する余裕もあっただろうそれを、可能な限り早く作り上げなければならないというわけである。
なにそれ地獄かな?()
一応、こっちの世界は向こうと時間の流れが違うので、そこら辺を気にする必要はあまりないけれど……。
対処の必要なウイルスがどれだけいるのかわからないため、それらに対処するための薬達を作るのにどれだけ時間が掛かるのかもわかりゃあしない。
一応、
その後はその後で、微妙に責めるような(本人にその気があるのかは不明)空気をこちらに向けてくる彼の見守る中、無数のワクチンや治療薬を比較的迅速に作り続けなければいけないわけで。
その心労・肉体的疲労たるや、幾ばくのものとなるやら。
正直私が担当医だったら即投げてると思います()
「そういうわけなのですよ琥珀さん。長く苦しい戦いだろうけど、全力でバックアップしていくから頑張ってね!」
「……?……?!」
「未だかつてないほどに困惑していますねぇ」
「締め切り三秒前、と言われてもこれより動揺はせんぞというほどの困惑っぷりだな」
「いやー!!?これ束さんも巻き込まれるやつじゃんやだー!!?」
「あっはっはっ。なにを言います束さん、皆巻き込まれるんだよ」
「……えっ?」
……そうして、先ほどまでの会話で判明したことを全て琥珀さん達に伝え終えたところ、返ってきたのは現実を理解したくない、とでも言いたげな彼女の態度なのであった。
気持ちはわかるけど、それここにいる皆も味わうことになる絶望なので頑張って耐えてくださいね、としか言えない私である。()
『みなさま よろしくおねがいします』
……まぁほら、見てわかる通り一番問題な『彼の説得』については終わってるからさ!
なのでみんな、元気だして逝こうぜ!()