なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
まさかの紅魔郷withハルケギニア、だったりするのだろうか?
そんな疑念を抱きつつ、周囲を観察する私達である。
……一応、周囲は薄暗く、空に真っ赤な大きな月が輝いてはいるけれども。
同時に、紅霧異変におけるもう一つの大きな特徴──紅い霧に関しては、見渡す限りその姿を見ることはできない。
「それはそれで、じゃあこの薄暗さはなんなんだ……って話にも繋がるんだけど」
「確か本来なら霧で日光が遮られて薄暗い、って感じなんだっけ?」
「ついでに言うと、その霧は妖気を帯びてるから普通の人が浴びると体調を崩すっておまけ付きよ」
「……魔法使いが貴族として台頭してるこっちだと、意外と被害は少なさそうだよね」
ほら、東方だと魔法使いってある意味妖怪の仲間みたいなものだし……。
的なことを呟きつつ、クローゼットの前から退ける私達である。
ぞろぞろと中から出てきた面々は、半信半疑で軒?を潜った先がこうして別の部屋に繋がっていたことに驚いていたが……すぐさま外の様子に気が付き、なにごとかとこちらに視線を向けてくるのであった。
まぁそんな視線を向けられても、私らにもわからんとしか言えんのですけどね、実際。
「……そもそもの話だな、本来郷内部の解説だけでも大概だというのに、そこからさらに『こちらの世界と密接に繋がっている、余所の世界』とやらにまでこうして足を運ぶことになった、という時点で大抵の人間にはキャパオーバーだということを理解しているのか?」
「やだなぁ、アンデルセン氏ならこれくらい鼻歌みたいなもんでしょ?」
「俺をなんだと思っているんだ貴様は……」
「まぁまぁ。……とりあえず、ここが目的地であることは間違いない、という認識でよろしいのですよね?」
ぐちぐちと文句をいうアンデルセン氏を宥めながら、ジェイドさんが確認の意を込めてこちらに話し掛けてくる。
それにはいと答えるのは簡単だが……同時にそれを求めているわけじゃないのだろう、ということも感じられたためふむ、と暫し考え込む私である。
……うん、どう考えてもこの状況はおかしいからね。
時刻的には真っ昼間なのに薄暗く、そも単に薄暗いのではなくほんのり赤く染まってもいるこの状況。
窓から空を見れば明らかに異常な赤い大きな月が一つ輝いており、本来二つあるはずのそれが一つしかない……という点でも違和感をもたらしてくる。
なにより奇異なのは、ここまで異常な状況にも関わらず人の騒ぐ声が聞こえない、ということだろうか?
「……そういえば、そうですね?」
「この間ダンブルドア氏と話したんだけど、その時今の
そう、なりきり郷のある世界とハルケギニアの間に時期のずれはほとんどない。
正確には幾らかずれているのだが……それでも一月程度。
季節が大きく変わるようなずれではないため、こちらも現在春のはずなのである。
大体一月のずれということは、すなわちこちらの暦は
つまり、学院が休みで生徒達がいない……なんて事態にはなっていないはずなのである。
にもかかわらず、この異様な状況において人々の声が全く聞こえないというのは異常だと思ったのだけれど……ここで一つ、脳裏に閃くものがあった。
……なりきり郷内において、時間の経過というものはあまり頓着されていない。
はるかさんみたいに普通の人であるならともかく、『逆憑依』である面々は基本時の流れからは切り離されているからだ。
いやまぁ、正確には時の流れによる影響をまったく受けない、ってわけじゃないんだけど……こう、サイヤ人的な
そんなわけなので、時間の経過もどことなく『イベントの開催周期の確認』的なノリの方が強いわけなんだけど……ここ、ハルケギニアの場合は話が別。
そこにいる住人達は異世界の住人、というような趣の方が強く、ゆえに魔法なんて不思議な技能を使えるのだとしても、『逆憑依』みたいに年老いないなんてことがない。
これが意味することはただ一つ。
こっちの世界はサザエさん時空的な空気ではなく、しっかりと時間が経過しているということ。
ゆえに、ルイズ達は真っ当に勉学を納められているのであれば、彼女達は現在三年生になっているはずなのだ。
「……そういえば、あの子達って原作開始時点だと二年生なんだったかしら?」
「年齢はバラバラだけどね。物語の始まりであるサイトの召喚──
「なるほど、使い魔召喚の儀……って、ん?」
……そう、現在の時期は四月から五月の間。
そして、こちらの世界では時は繰り返さず前に進むもの。
すなわちサザエさん時空ではない以上、ルイズ達の学年は上がっており──同時に、
となれば、色々なことが予想できるようになる。
「例えば、実は今現在その二年生達が使い魔召喚の真っ最中で、丁度タイミングよく
「……うちのかりちゅま()でも呼んじゃったのかしら」
「八雲さんが遠い目に!?」
……はい、この赤い月が誰かに召喚されたレミリアおぜうさま()による恣意的行為、なんて可能性は大いに考えられますね。*1
あとはあれだ、往年の『ルイズに召喚されたシリーズ』的なノリで呼んじゃいけないもの呼んだ子がいたとか。*2
具体的にはエミュレイターとかうさぎのぬいぐるみ()とか。*3
……ともかく、だ。
この
騒ぎ声がしてこないのも、二年生以外は教室に、問題を起こした二年生も学院から離れた位置にいるので喧騒が届いてこない……と考えるのが筋だろう。
「まぁ、大穴の大穴で実はここハルケギニアじゃなくて、誰かの展開した月匣の中って可能性もあるけど」
「はるかさんに見えてる時点でその考察は無理がない?」
「ですよねー。……まぁ別に侵魔じゃなくても、誰かが作り上げた世界の中にいつの間にか取り込まれていた、って可能性もなくはないんだけどね」
などと、怖がらせるようなことを述べてみる私である。
……いやまぁ、こうして落ち着いていることからわかるように、誰かの陣地の中とかではないってことは始めっからわかってるんだけどね?
あくまでも通常のハルケギニアというテスクチャの上から赤い月が展開されてるだけ、というか。
そんなわけで、とりあえず現場に向かわなければダメだろう……ってな感じに使い魔召喚が行われているはずの草原に向かった私達は。
「……あれ?先生が何故ここに?もしかして召喚された?」
「業腹だがその通りだ」
ビジューちゃんに拉致られたのかと思っていたブラックジャック先生が、とある生徒に召喚されていたことを知ったり。
「……やっぱりレミリアだったけど」
「召喚したのがパチュリー(の見た目の生徒)だったとは……」
「……ふっ、縁がここまで強く作用するとは思ってなかったわ()」
「縁……?」
ふんぞり返っているレミリア(『逆憑依』)が、困惑しているパチュリー(現地人・『逆憑依』ではない)と一緒にいる姿を見付けたりしたわけなんだけども。
……うん、それよりもヤバいものが鎮座していたため、そこら辺をツッコんでる場合じゃなくなったというか。
いやだって、ねぇ?
「いやー、まさかジブン達が召喚に巻き込まれた結果、色々な不吉な月が混ざって展開されることになるとは思っても見なかったッスよー(滝汗)」
「言うとる場合か貴様ー!?」
お空の赤い月に顔が生えて、さらにその顔がどこぞの真祖のものになっている……という、意味不明な状況に悲鳴をあげることになったのだから。
……混ぜりゃいいってもんじゃねぇぞ!?*4