なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「ここがあの女のハウスね!」
「誰を想定した台詞なんだそれは……」
「え?えーと……実はここに霊夢とか隠れてたりしない?」
「いや居ないが?」
「霊夢なのに???」
「貴方霊夢のことなんだと思ってるの?ことと次第によっては殴るわよ?」
「殴ってから言うことじゃなくない!?」
そもそも、霊夢といえば寧ろ周囲に影響与えない存在の極みみたいなもんじゃんか。*1
前にも言ったが隔離塔は居るだけでヤバイ人の隔離場所、霊夢は寧ろここの人を管理する側の方が向いとるわい。
……ってなわけで、ゆかりんからの
「……ん?もしかして戯言遣いの無為式も避けられたりする?」
「仮にそうだとしても、彼が霊夢を受け入れてくれるかは別でしょうに……」
「それもそっか」
そこでふと、戯言遣いの『周囲を狂わせる』性質からも霊夢ってば自由になれるんじゃ、と一瞬思い浮かんだけれど……。
そもそも霊夢本人がここにはいないし、仮に居たとしても『空を飛ぶ程度の能力』がどこまで再現されるかもわからないとなれば、戯言遣いも話し相手として認めるかどうかわからないな……という話に落ち着いたのでした。
……いやまぁ、そこをツッコむのならそもそも戯言遣いの『無為式』がどこまで再現されてるのか、って部分に触れるべきな気もするんだけども。
「本人が望んでないし、そもそも彼に対して働く再現度がそこ重視な予感がバリバリするんで触りにくいんだよねぇ」
「安全に触れるなら『星女神』様くらいじゃないとダメだけど……『星女神』様自体彼の考えを尊重する、って感じで干渉は避けてるからねぇ」
……とまぁ、戯言遣いに関しての話はこれくらいにするとして。
改めて、隔離塔内に入った私達。
塔というものの、その実態は巨大な病院という方が近い。
なにせ
まぁ、アークナイツ組みたいに症状が共通な人達は大部屋に一纏め、みたいなこともあったみたいだけど。
「とはいっても、そのアークナイツ組もそう数が多いわけではないんだがな」
「生憎ここにいた人はスカジくらいしか知らないんだけど、他に誰がいたの?」
「そうだな……スケッチブックを持った少女や刀を二つ持った少女、それから白いウサギのような少女などが目立つメンバーだったか」
「……今猛烈に、もうちょっと詳しく確認しとくべきだったって後悔が襲ってきたんだけど」*2
「ふむ?」
……ま、まぁ、健康になってなりきり郷内にいるなら、そのうち会うこともあるでしょう!多分!
なんか微妙に見逃すべきじゃないものを見逃しているような予感が背筋を震わせてくるけども、現状いきなりとって返して確認に行くのも無理があるしね!
そもそも相手の所在がわからないし!
と、ともかく。
そんな感じで大人数を収容していた場所であるため、その内部はとても広い。
具体的には八階くらいの高さと十分な面積を併せ持つんだけど……その施設内は現在、とても閑散としている。
それも当たり前の話、ここにいた収容者達はブラックジャック先生以下数名の尽力により、その身に宿した危険性のほとんどを除去することに成功。
そのまま、他の住民達と同じ様に上の階で暮らせるようになったため、この塔を意気揚々と出ていったのだから。
なので、現在ここに残っているのは最後の調整が必要な人や、ここを自身の城と定め残ることを決めた戯言遣いくらいのもの。
そのため、人に遭遇することはほとんどない。
「そもそも私達がここに来たのだって単に先生の付き添いなんだから、余計なことして迷惑かけないようにねおぜうさま」
「はいはい、物珍しいからって歩き回るんじゃないってことでしょ?それくらいわかわーなにあれなにあれー!?」
「おいこらぁ!?」
長居したい場所でもないし、早々に先生の目的を達成したあとは外に出よう……という意味合いも込めて、キョロキョロしてるおぜうさまに忠告したんだけど。
結果はご覧の通り、人が注意したそばから関係ない所へ突撃していく始末。己は鳥頭or
こんなんじゃぁパチュリーにも呆れられるぞぅ、と思いながら視線を後ろに向けると。
「……いねぇ!?」
「彼女に関してはいつの間にか消えていたぞ……私も今さっき気付いた」
「そんな馬鹿な!?」
ああいやあれか、微妙に視線を合わせずにいたから寧ろ気付くに気付けなかったのかこれ!?
よもやおぜうさまより先にいなくなっていたパチュリーに思わず唖然としつつ、どうやらこれから隔離塔内を探し回る羽目になりそうだ、と頭を抱えた私なのでありました……いや、どうしてこうなった?
「そうやって頭を抱えてるうちにおぜうさままで見失った件」
「なんで見てなかったの、って言いたげな顔をしてるみたいだから答えてあげるわね。人影が見えたのよ、私達以外の」
「はぁー?他の人影ぇ?」
「そ。誰もいないはずの塔内に他の人間の影がある、ってのは注目するのが普通でしょ?」
はてさて、なんやかんやでおぜうさままで見失ってしまったことを咎めるように、ゆかりんにジト目を向けていた私だったのですが……。
それを受けて彼女から飛んできた言葉に、今度は目を丸くすることとなったのでした。
現状この塔内にいるのは大きく分けて二パターン。
自身の部屋から欠片も動く気のない戯言遣いと、特定の部屋で最後の検診を待ち続けている居残りメンバー達の二パターン。
そのどちらも、動く気がないのと動く理由がないために下の方でちょろちょろしているはずがない、ということになっている。
「勿論、忘れ物を取りに来たー、なんて人がいる可能性もゼロじゃないけど……」
「それはそれで確認の必要性が出る、と。確かに、黙って入ればこうしてこちらに不審を抱かれることがわかっているにも関わらず、敢えてそれを敢行するということはなにか疚しいことがあるのやもしれんな」
「まぁ、
今しがたゆかりんが述べた通り、たまたま忘れ物をしたので取りに戻っただけ、という可能性もあるだろう。
そして勿論、アンデルセン氏の言うようになにか疚しいことがあって、こそこそと塔に侵入したという可能性も決してゼロではない。
……まぁ、私が匂わせたように疚しいは疚しいでも、逢い引きとかそういう方面の疚しさの可能性もあるわけだが。
隔離塔はその名の通り隔離された場所。……一種の閉鎖環境であり、となればそういうところ特有の関係が発展する可能性もなくはない……。
「まぁ、そういうのって外に出たら容易に連絡が付かないような状況だからこそ成り立つもの、って言われたら私も困るんだけど。敢えて理由を見繕うなら『折角そういうことできる環境に居たんだから、ちょっとやっとかなーい?』みたいなすっごい雑な動機の可能性もあるよ、ってくらいかなー」
「……雑ではあるが絶対にない、とも言い切れないのが我々の悲しいところだな」
本当にね。……なりきりはシチュエーションに飢えているのだ、みたいな?
まぁその辺は実際に当人を捕まえればわかることだろう。
確率的には少ないが、どこからかのスパイとかハルケギニアから迷い込んだ誰かとか、ってパターンもなくはないわけだし。
「ってなわけで、一階から順番にしらみ潰しに探していこう、って話になったんだけど……」
「ええと、どういう状況なのかしら、これって?」
戯言遣いは最上階、最後に検診が必要な面々はその一つ下の階……。
という感じに、気を付けるべき階層は上の方に固まっていることを理由に、一階から順に迷子二人と侵入者を探すため二手に別れた私達。
まぁ、索敵範囲の広い私とゆかりんは半ば二・三人分働いているため、見た目上の人数差はこっちの方が少ない、って感じなんだけども。
ともかく、そんな感じで別れて調べていたところ、突然響いて来たのは絹を裂くような悲鳴と情けのない叫び声。
前者ははるかさん、後者はアンデルセン氏かジェイドさんのどっちか、って感じだったのだけれど。
その声を聞いて彼らの元に駆け付けた私達は、部屋の外で腰を抜かして中のなにかを指差すはるかさんを見付けたのだった。
……ジェイドさん達の姿が見えないけど、中にいるのだろうか?
そう思いながら、はるかさんの横を抜けて中を覗き込んだ私達。そこにあったのは、
「「……え、Nのへや……?!」」
不気味な音楽の鳴り響く、あまりにも不気味な子供部屋のような空間なのであった。*4