なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「ふっふっふっ舐めた真似してくれちゃってぇ~闖入者だったらまだ許すけど、もし仮に侵入者だったら生まれてきたことを後悔させてあげるんだから~」
「怖いことを言うな、お前は……」
はてさて、他の面々が消えてしまった結果、なんの因果かアンデルセン氏をお供にすることになった私である。
こんな状況をお作り遊ばされたお相手様に関しましては、死ぬほど後悔させてやる予定でございますのでしかと受けとるように。
……とまぁ、そんな感じで昂っておる次第でありまする。
というのは置いといて、改めて周囲の確認。
基本的にはNのへやを再現したものであることは間違いないだろうが、それでも薄暗かったこともあって確認しきれてない部分もあるだろう……と考えてのことである。
「そういうわけでー、
「多方面に喧嘩を売るのは止めろ、明らかに『
あれこれ言ったのち、適当に呪文を唱えて指先に光を灯す。
正直呪文に意味はなくて適当ぶっこいてるだけなのだが……アンデルセン氏からは釘を刺されてしまった。
今のところネギま系統のキャラも、ハリポタ系統のキャラもろくに居ないのに心配性だなぁ……と思う次第というか。*2
ともあれ、呪文の効果によって周囲が明るく照らされたことは事実。ゆえに改めて室内を確認してみると……。
「まさかのラジカセ」
「なるほど、さっきからずっと流れていたこの不気味な音楽は、こいつが吐き出していたというわけだ」
まず最初に見付けたのが、単調すぎるオルゴールの音が不安を誘うNのへやのBGMである『ポケモンの子、N』を部屋に響かせ続けていたモノの正体。
それは一つのラジカセだったのだが……この時点で、この部屋そのものに悪意はないことが判明してしまい、ちょっと拍子抜けしてしまった私である。
「……ん?悪意がない、と言ったな?」
「ええまぁ……アンデルセン氏も少し考えればたどり着く答えだと思いますよ?」
「ほう?……ああなるほど、確かにそうなるか」
そんな私の様子に、アンデルセン氏は少々怪訝そうな顔をしていたが……こちらの言葉で状況を再度確認したあと、得心したように一つ頷いていた。
さて、そうして彼が納得したところで、私が何故この部屋に悪意がないと断言したのかを説明すると。
単純に、このラジカセの存在によってこの部屋が
「この音の出所が不明であるとか、はたまたオルゴールが置いてあるとかであればまだわからんが。少なくとも、こうしてラジカセという文明の利器から発せられているモノである以上、これは
「そうですね。実際にここで誰かがNのような扱いを受けていたのではなく、寧ろN自身がここに居たのでどうせだからとあの部屋を再現してみた……くらいの方が真相には近そう、みたいな感じですね」
そう、なにかしらの超常的な力で再現された部屋ではなく、あくまでも人力で──人の手で再現されたモノであると確信したからこそ、そこに悪意はないと断定したのである。
それこそ、たまたまこの隔離塔内にN本人が居て、かつ幽閉されているようなものという状況から自身の部屋を再現してみた、と言われた方がしっくりくるような状況というか。
……身も蓋もないことをいうと、単なるごっこ遊びの場を怖がっていた、という話になるわけだ。
この辺り、
ともかく、部屋そのものに悪意がなかったとすると、だ。
「……ふむ。相手はあくまでこの部屋を利用しただけ、犯人がポケモン関連かどうかはわからない……ということになるか」
「そのまま裏をかいてポケモン関連、という可能性もありますが……少なくとも、犯人とこの部屋の制作者はイコールではないでしょうね」
ゆかりんやはるかさん達を拐ったのは、この部屋を作った人物とは別口ということになる。
もっといえば、なんだか有効に使えそうだから利用しただけであって、別に犯人がポケモン関連ではない──別口の存在であってもおかしくはない、ということになってくる。
そうなると、犯人像を予想するのは難航する可能性が高い。
現場があてにならないのであれば、相手の行動から予測するしかないわけで……と、そこまで考えてふと気付くことが一つ。
「……そういえば、他の人達は?ブラックジャック先生とジェイドさんはどうしたんです?」
そう、彼がゴールに叩き込まれる直前まで一緒にいたはずの二人、先生とジェイドさんの所在だ。
いや、というよりも正確なことを言えば──、
「……俺の方がおかしい、ということか?現に他の二人が居ない以上、八雲のと同じ目にあったのだと推測するのが正しいだろうが……」
「そうなると、なんで貴方だけゴールに突っ込まれる、なんて雑なことになっていたのか?……ってことになるわけですね」
そう、寧ろなんでアンデルセン氏だけ消えずに残っていたのか?
少し目を離した隙に、気絶していたはるかさんも後ろにいたはずのゆかりんも、纏めて消えていたのだ。
ならば、それよりも遥かに消すのが容易()そうな相手であるアンデルセン氏なんて、消さない理由が見えてこないレベルというか?
「なにせ貧弱キャスターだからな!さっさと休ませてくれ!」
「はいはい、休みに関しては御上司さんと話し合ってくださいねー」
「締め切り前の編集者の如き塩っぷりだな?!」
唐突に休みを希望する彼の反応はスルーするとして。
改めて現状から考えてみると、想定される答えはそう多くはない。
そのうちの一つとして、私が今考えているのは──、
「アンデルセン氏の件と他の面々の件は
「……まぁ、それが一番妥当だろうな。強力な力を持つ相手を対処している、と言うには遥香嬢やブラックジャックがノイズになるし、かといってそっちを優先しているにしては俺が放置なのも理解できん。……となれば、俺をああしたヤツに先を越されたヤツがいる、みたいに考えるのが自然というわけだ」
そう、アンデルセン氏をゴールに叩き込んだ相手と、他の面々を拐った相手。
この二つは同一人物ではなく、それぞれ別の個人であるという予想だ。
何故かと言えば、今しがた彼が語った理由もあるが……やり口の違い、というものもある。
先ほどの彼の話を思い出すと、何者かに背後から抱き上げられた挙げ句、そのまま頭からゴールポストに突っ込まれたとのこと。
……そう、
「まぁ、実際に相手が物理的な存在かどうかは不明ですが……少なくとも、こちらに気付かれずに他の面々を何処かに拐った相手の方は、物理的な手段を使って事を起こしたとは言えそうにないですね」
「密室とまでは言わんが、忽然と姿を消すことになったのは間違いないわけだからな……」
対して他のみんなを消した相手の方。
こちらはこっちに感知させずに──拐った相手の叫び声さえろくに聞かせずに、みんなを消すことに成功している。
必然的にさっきの情けない男性の声がアンデルセン氏のモノになる……という点に目を瞑ってこの部分に着目すると。
すなわち、相手は拐う相手の声をシャットアウトできるような能力があるか、はたまた叫ぶ暇もなく拐う技量・ないしそのための能力を持ち合わせるということになるわけで。
結果、想定される能力として周囲のモノをすり抜ける能力、ないしワープ系の能力を持っているということになるわけだ。
それらがないと現状を引き起こすことができない、という意味で。
「……ふむ、となると今現在一番可能性があるのは」
「ハルケギニアにとんぼ返り、ですかねぇ」
そこまで考えて、真っ先に候補に上がるのはハルケギニアに関連したものである、という可能性。
あちらへのゲートをどうにかして開けるのなら、相手を拐うのはとても簡単だろう。
問題があるとすれば、向こうへのゲートなんてそうポンポン開けるモノじゃない、ということだが……と、そこまで考えたところで視界に入る一つの物体。
それは、地面に転がった、Nのへやに似つかわしくない──
「……枯れ木?」
一本の、小さな枯れた木の枝なのであった。