なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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枝と聞いてなにを思い浮かべるか

「……子供部屋にあるもの、としてはそうおかしくはないが」

「明らかに、さっきまでなかったはずのものなんだよねぇ」

 

 

 見付けたのはなんの変哲もない木の枝。

 ……そう、木の枝そのものにおかしなところはない。おかしいところがあるとすれば、それはその枝が()()()()()()()の方だろう。

 

 なお、木の枝がここにあるということそれそのものは、意外とおかしくはない。

 Nのへやのモチーフが子供部屋である以上──子供がいつの間にか持っている『なんかいい感じの枝』なんてものは、なんの変哲もないおもちゃの一つでしかないのだから。*1

 

 なのでやはり、ここで着目すべきなのはこの枝が()()()()()()ということの方になるだろう。

 そう考えながら、私は現れた枝を無造作に掴み、眺めて見る。

 

 

「……ふむ、材質に特に変な点はないね。普通の木の枝だ」

「そうか、他になにかないか?」

「んー……単純に見てわかる範囲ではなんとも。それこそ武器として振り回すと見た目的に()()()だろうなぁ、って確信できるくらいというか」

「……そこまでか?」

 

 

 ざっと確認したところ、枝の材質はトネリコ。

 世界樹の分類であるセイヨウトネリコとは近縁種となるが、とはいえあくまで近縁種。

 日本ではセイヨウトネリコをわざわざ『セイヨウ』と付けずに呼ぶことが多いため混同されやすいものの、実質的には別物なのでそこまでご利益がある、というわけでもない。

 どっちかというと名前繋がりでわざと混同する、いわゆるごっこ遊びで効果を発揮する類いとでも言うべきだろうか?

 

 それとは別に、振り回した際にカッコ良さを強調するようなフォルムをしている、という点が特徴として挙げられるだろうか?

 あれだ、全体的な印象が武器っぽい……具体的に言うなら刀っぽいフォルムをしていると言うべきか。

 乾燥させて形を整えれば、そのまま木刀にできそうなくらいといえばわかりやすいかな?

 

 なお、その辺はアンデルセン氏にはいまいち理解できなかったようで、こちらに疑問を呈して来ることになったわけなのですが……。

 

 

「……ドヤッ!」

「お、おお。確かに今のはカッコいいかもしれん……しれんが、どっちかというとお前の動きそのものがカッコいいというだけのような気も……」

「……細かいこと気にしないように!」

 

 

 どうせなので、刀・剣系武器専用の『神断流』の技を即興で演舞にしてみたところ、彼から同意を引き出すことに成功したのであった。

 ……え?結局微妙に納得してない?細かいことはいいんだよ!()

 

 まぁともかく。

 これだけ振り回してみても特に変化が見られない辺り、本当にただの枝であることは間違いなさそうだ。

 

 

「……なんだ、闇雲に振り回していたわけではなかったのか」

「いや、貴方私のことなんだと思ってるんです?」

「独断専行の激しい問題児、迂闊に全能者であるので行動が迂闊などこぞの誰かを思い出すような大馬鹿者」

「おおっと喧嘩を売られてるのか盛大にノロケられてるのか判断に困る発言が飛んできたぞー」

 

 

 と、そこで私が意味もなく枝を振り回しているわけではなかった、と述べたことに意外そうな表情を向けてくるアンデルセン氏……いやもうデルセンでええわデルセンで。

 ともかく、小馬鹿にしてんのか生暖かい眼差しなのか、いまいち理解し辛い表情を向けてくるデルセンである。

 ……いや、真面目に判断し辛いモノを向けられても困るんだが?

 

 そう告げたところ、彼は『そうか。すまんな、忘れろ』と返し、表情を元に戻したのであった。

 ……いや、本気でどうしたらよかったの今の流れ?

 

 気を取り直して、手に持った枝を見る私。

 一通り確認は終えたわけだし、このまま適当な場所に放置……もとい廃棄してもいいんだけど──、

 

 

「……ん、なんだか持ってった方がいい気がするし、ここで装備していきましょう」

「何故にクラウド風……」

 

 

 カッコいいからですがなにか?*2

 ともあれ、私の背中にしっかりと装備された枝。

 背中に手を回せば再び眼前に構えることも容易、すなわち今の私は剣士ということだな!(?)

 敵が居れば一刀の元に切り伏せてしんぜよう、ふははは!

 

 

「……どういうテンションなんだ、それは」

 

 

 困惑するデルセンをお供に、他の面々を探す旅をスタートさせる私なのでありましたとさ。

 

 

 

 

 

 

「さて、意気揚々と外に出てきた私ですけど……このまま探知するのは愚の骨頂!」

「ああ、確かに。互いから目を離した隙に片方が消えた、などということになってはお笑い草ではすまんからな」

 

 

 はてさて、入ってきた扉を逆に潜ってNのへやから外に出た私たち。

 さっきまではるかさんが居たはずの場所は、中から見た時と変わらず誰も居ない。

 なんなら痕跡すら残っていないため、本当に彼女がここに居たのかすら微妙にあやふやである。

 ……あれだ、親しい人の幻覚を見せたり聞かせたりして獲物を誘う類いの危険性物の可能性すら出てくるレベル、というか?

 

 

「ナキカバネのように、ということか?」*3

「コトドリくらいの危険性かも?……まぁその辺はあくまで予想でしかないから、深掘りするのは止めておくとして……とりあえず、ここでやるべきことは一つ。──再びの分身!」

「軽々に増えるな、お前は……」

 

 

 半ば呆れているようなデルセンの声はスルーしつつ、再び分身する私。

 今回は都合四人に分裂し、消えてしまった人の分も周囲の探索に精を出すつもりというわけである。

 無論、あくまでも動かすのは分身達、本体である私は引き続きデルセンと一緒に行動である。

 

 

「なにかあったら分身を破棄すれば、その時の経験が私に還元される……イコール下手人の把握もしやすくなるってわけ」

「本当に多重影分身と同じ効果なのか……」

「便利だよね、NARUTOの忍術」

 

 

 まぁ、便利すぎて最後の方はインフレしまくってたわけだが。

 その辺はともかく、四人の分身をツーマンセルにしてから左右に放つ私。

 残ったら本体は真ん中を攻める……という体なわけだ。

 

 ってなわけで、微妙な顔をしているデルセンを連れてレッツラゴー。

 分身達とは可能な限り探索範囲が被らないように留意しつつ、一階をくまなく探索していくのだけれど……。

 

 

「……ふむ、特になにも見当たらなかったと?」

「そうよ本体()、なんならこっちに攻撃してくるやつも、なにかしらの視線を向けてくるやつすらもいなかったわ」

「むぅ、いきなり分身したせいで相手を警戒させたか……?」

「こちらが警戒するつもりが、相手に警戒を誘因させるとは……実に本末転倒、というやつだな!」

「ええい、うるさいわよデルセン」

 

 

 二階に繋がる階段の前に再び集まった分身達からもたらされたのは、特にこの階に怪しいものはなかった、という拍子抜けするような報告であった。

 なんなら誰かに監視されているような様子すらなかった辺り、ゆかりん達を拐った相手どころかデルセンをシュー()した相手にすら警戒されている、ということになりそうだというか?

 

 それもこれも、私がいきなり分身して総計五人になったのが失敗だった、ということになりそうなのが頭の痛いところ。

 なんでかって?さっきも言ったけど、デルセンと二人きりだと片方が片方から目線を離したタイミングで片方が消え、そのことに動揺している隙にもう片方も消される……という、ホラーにありがちな連鎖が普通に発生しかねないから。

 

 なので、少なくとも二人は分身を用意し、互いを確認しながら部屋を検分できるようにする必要があるのだけれど……。

 この分だと、迂闊な分身は相手の警戒を促し、結果としてなんの手がかりも掴めないまま最上階に到着。

 そこにいるはずの戯言遣いに『なにやってるの君』と鼻で嗤われる羽目に……!

 

 ……脳内の戯言遣いが『ねぇ、大嘘憑きの方とキャラ混同してない?』とか文句を垂れていたけど華麗にスルー。*4

 ともかくこのままでは非常に宜しくない、ということは間違いないため、なにか対策はないかと頭を悩ませる私である。

 

 

「……あ、なるほど。()()()()()()()()()()()

「いきなりなにを言っているんだお前は?」

 

 

 まぁ、早々に好い手段を思い付いたわけなのですが。これでかんぺき~。*5

 

 

 

*1
特に小学生男子によくあること。稀に何歳になってもやってることがある()主にチャンバラごっこなどなにかしらの『武器』を必要とする行動の際、その武器の代わりとして装備()されるのが手頃な枝、もとい『なんかいい感じの枝』であり、その『いい感じ』は個人によって差があるものの、基本的には共通して『カッコ良さ』を見いだせるモノであることが多い

*2
戦闘終了時のクラウド・ストライフのポーズから。大剣をくるりと回した後、背中に装備する一連の流れ

*3
『メイドインアビス』に登場する生き物の一つ。危険度は星3(深刻)。見た目は鳥のような原生生物であり、大きさは翼を広げた際に十メートル近くにもなるかなり大型の種類。特徴は獲物の声を真似る、という点。相手と同じ言語──特に『助けて』に相当する声を発し、それにつられてやって来た得物を捕獲、発達した舌によって内臓を啜り取る。他種に対しては危険な生き物である一方、同種に対して(特に自身の雛に対して)は愛情深く接する面も持ち合わせる。現実にもコトドリという物真似の得意な鳥がおり、こちらは特にそういった意図もなく真似をした声で人を惑わせることがあり、迂闊にコトドリの生息圏で声をあげるべきではない、という教訓になっていたりする。他、モンスターハンターには他のモンスターの声を真似て呼び寄せ外敵と戦わせる、クルペッコという鳥竜種が存在していたりするように、鳥と物真似の関連性はとても深いものとなっている

*4
西尾維新氏の作品『めだかボックス』に登場するキャラクター、球磨川禊の能力『大嘘憑き(オールフィクション)』のこと。キャラ造形は戯言遣いと割りと似ているタイプ

*5
『ブルーアーカイブ』のキャラクター、早瀬ユウカの勝利ボイス『計算通り、完璧~♪』から

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