なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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お前は今まで偽ってきた経歴を覚えているのか?

「なるほど、まさかこうして再び別個に呼ばれる機会があるとは思っていませんでしたね……」

「私としても驚きだよ、色んな意味でね」

「……こいつらは?」

「キリアちゃんとシルファさんです。宜しくね?」

「説明が説明になってないわけだが???」

 

 

 はい、そんなわけで私が思い付いた策というのは、私……もとい()()()()()()()()()()()()()()?というもの。

 別人だと認知して貰えれば相手の警戒も多少は収まるのでは、という作戦である。

 とはいえ、詳しく説明すると私と別人ではないとバレてしまうため、こんな感じに名前だけデルセンに説明する私なのでした。

 

 ……とはいえそれだと納得しないだろうから、念話で子細を話しておく私である。

 

 

(まず、向こうの警戒の理由は『同じ顔・同じ姿の人間がいきなり増えたから』っていうのはオーケー?)

(……まぁ、目の前で唐突に増えたのだから警戒するのが筋、というのはわからんでもないが)

(そうそう。だから今さっきも、二人を連れてくる際は()()()()()()()()()()()()って体裁だったでしょ?)

 

 

 まず、この二人に関してだが、さっきみたいにこの塔内で分身したわけではない。

 塔の外に繋いだゲートをどこでもドアに偽装し、塔の外で分身した二人をそれを使って中に連れてきた、という形となっている。

 

 なんでそんな手間の掛かることをしたのかというと、相手側の警戒心を和らげるため。

 さっきの分身戦法がうまく行かなかったのは、彼らの前で私が分身したからだろう。

 分身である以上、視界とか感覚とかを共有している可能性を嫌った、ともいえるかもしれない。

 

 

(……分身を他の面々と同じ様に拐った結果、自身の存在を察知されることを嫌がったということか?)

(そこまで真面目に考えてるかは不明だけど……ともかく、分身を拐うことのリスクを考えて自重したってのは確かだろうね)

 

 

 あくまでも野生の勘とかかもしれないが……ともかく、相手方が分身達になにかを仕掛けることを嫌がった、ということは間違いあるまい。

 ……つまり、私が分身した存在である、ということがバレてしまうと、例え見た目が違ってもさっきと同じ様になにもしてこない、というパターンに落ち着く可能性が高いわけだ。

 

 

(なので、二人を呼ぶにしても一旦外で増えてから、って手順が必要ってわけ。……一応、塔の外にも相手の視界が及んでいるか、みたいな確認の意味もなくはないけど)

(これでなにも起きないのであれば、相手は塔の外も確認しながらことを起こしているということになるわけか)

(そういうことー)

 

 

 まぁ、私の予想としては多分外のことまでは見ていない、という感じになるのだが。

 

 ……それはともかく。目の前で分身するのがよくないので、外から連れてきた新しい人員である、と見せ掛ける必要があったということは、今の説明でなんとなく理解できたことだろう。

 となれば、次の疑問は『じゃあ、わざわざ分身でなくとも他の人間を連れてきても同じなのでは?』という部分になるはず。

 

 

(それに関しても答えは用意してあるわけでね?)

(ほう、その理由は?)

(()()()()()()()()()()()()ってこと)

(……ふむ?)

 

 

 その疑問の答えとなるのが、ゆかりんが拐われたという事実そのもの。

 ……言い換えると、相手がどうやって彼女を拐ったのか、という部分に問題があるということになるか。

 

 

(ハルケギニアでのあれこれがまだ尾を引いてる……っていうと悪い意味になりそうだけど、とにかく『過剰黎明』によるパワーアップの影響はまだ残ってたはず、ってのが今回の問題点でね?)

(……なるほど。強化された状態の八雲のを()()()()()()()()()()()のは難しいどころの話ではない、ということか)

 

 

 普段の彼女ならともかく、あの時の彼女はハルケギニアで強化されたことの影響がまだ残っていた状態だった。

 ……わかりやすくいうと、八雲紫にまったく声をあげさせずに連れ去ることが可能か、みたいな話になるというか?

 

 流石に本来の彼女には及ばないものの、あの時のゆかりんは結構な力量の持ち主になっていたはず。

 つまり、単純な攻撃に対してなら反撃を、強力な攻撃であってもなにもできずに無言で沈む、なんてことはあり得ないはずだったのだ。

 

 にも関わらず、彼女はこっちになにも知らせる間もなく連れ拐われてしまった。

 ……ということは、だ。下手すると【星の欠片】案件である可能性も出て来てしまうのだ。

 

 

(まぁ、それは最悪のパターンだけど……そうでなくとも、八雲紫を出し抜けるような相手が誘拐犯である、という可能性は消えないわけでね?)

(なるほど。そんな相手に俺如きがなにかしようというのは無謀でしかないな!なんなら『概念的に一人になると連れ拐われる』みたいなモノが相手であった場合、俺が消えた時点でお前も詰みと言うわけだ)

(そういうことですねー)

 

 

 分身による複数視界も、全て一人のものであると扱われるのであればその時点で詰みだろう。

 別に死にはしないだろうが、相手が目的としていること如何によってはよくないことになるのは容易に想像できる。

 

 そういうわけで、間違ってもデルセンを拐われるわけにはいかない。

 彼は対抗手段がほぼないため、今回想定される相手だと文字通り単なるサンドバッグにしかならないのである。

 ゆえに、分身に索敵を任せるというさっきの手法は、相手の干渉を許さないという点では最適解だったりするわけなのだ。

 

 ……なのだが、それだと相手が尻尾を出さなくなってしまい、既に拐われてしまった面々を助ける、という面ではあまり宜しくない結果を引き寄せてしまう……と。

 流石に『星解』でもすれば相手の位置の特定くらいはできるかも知れないけど、どこにいるのかの目安もなく使うとなるとこの塔丸々を範囲に含めるしかなくなるわけで。

 

 

(そうなると自動的に戯言遣いも対象に含めてしまうので、結果的に作戦が瓦解する可能性大なんですよねー)

(こういう時パッシブ型の技能は面倒だな……)

 

 

 その場合、戯言遣いを範囲に含めたことによる悪影響を無視できなくなってしまう、と。

 ……無為式によるファンブル判定、別に【星の欠片】相手でも発動しないわけじゃないのが面倒というか。

 その状態でごり押しできるのなんて()()()()()()()()()()人くらいのものというか……ともかく、万全を期すなら可能な限り彼には触れないのが吉、というのは間違いあるまい。

 

 

(となると、相手の位置を把握するには実際に拐われるしかない、っていう若干本末転倒感漂う答えにたどり着いてしまうってわけ)

(拐われたあとどうなるのかもわからんのに、そのリスクを許容しないと話が始まらん……というのは、確かに頭の痛くなる話だな)

 

 

 というわけで、この状況をどうにかするためには()()()()()()()()()()()()()()、という矛盾した答えにたどり着いてしまうというわけである。

 拐われたあとなにかできるのならいいのだが、ゆかりんが戻ってこない辺り拐われたあとは概念的に凍結状態にでもされている、と見るのが正解だろう。

 確かに『逆憑依』は死に辛く、ほぼ不死身のような存在だが──だったら封印方面に舵を切ればいい、というのはすぐさま思い付く対処法だろうし。

 

 同時に、拐われたからといって命の危険があるわけではないだろう、ということも明らかになるわけだ。

 なりきり郷全体に敷かれた『非殺傷』の(ルール)は住人でなくとも有効、かつそれを破るような真似をした場合その攻撃そのものが成立しないなどのペナルティが発生するもの。

 

 それによるキャンセルも起きてない以上、相手の行動はあくまでも拐うことそのものを主目的としたもの、ということになるわけである。

 ……え?それだけだと理由として弱くないかって?

 じゃあ追加の情報として千階から他の場所、および他の場所から千階への転移は行えない、という事実も付け加えておこう。

 

 これは、千階が隔離塔──元は宝物庫としての性質も持ち合わせていたことからの話になるわけだが、原則この階層への転移、およびこの階層からの転移は不発するようになっている。

 ……なっているのだが、実はその理屈はこの階と他の階の間に転移を阻害する壁が存在し、それに阻まれるので転移できない……という理屈になっている。

 

 なので、先ほど私がやったみたいにこの階層からこの階層に転移する分には問題ないのである。

 

 

(それとこの話にどういう関係が?)

(相手がみんなを拐った先も、座標の上ではこの階層の中ってことになるのよ)

(……なるほど?)

 

 

 そして、今回の誘拐犯にこの話を適用すると。

 相手がみんなを拐って隠している場所というのも、それがこちらから認識できないだけで扱いとしては『千階にあるどこかの部屋』ということになっているのである。

 なので、その隠し場所もなりきり郷内部扱いされるため、そこの制限を受けることになる……と。

 

 これ、実は千階にたまに繋がるハルケギニアにも言えることで、少なくとも扉が繋がっている間は向こうも千階にあるモノ、という扱いになっているのだ。

 なので、向こうからこちらに来る場合もこっちから向こうに行く場合も、そのどちらも扉が閉まるまでは『非殺傷』の制限を受けることになってしまったりするのだそうで。

 ……そのことで一種の怪談が生まれることになったりしているらしいが、それに関しては今は関係ないので置いておく。

 

 ともかく、扉が開いている間は『非殺傷の制約を受ける』ということは、だ。

 例えば相手の隠し場所がハルケギニア側にあるのだとしても、こっちから人を拐う際に扉が開いてしまうため、結果として『非殺傷』の制約は有効となる。

 そして『非殺傷』の制約が有効になっている場合、その行為が殺意を持ったものであるならば例外なくキャンセル判定が発生することになる……。

 

 

(……なるほど。結局のところここから誰かを拐うのなら、それが無害なものもしくは命に関わらないものでない限り、そもそも成功しないというわけか)

(そういうことですね。なんで、拐われることそのものには危険性はない、ってことになるわけです)

 

 

 ゆえに、キャンセルの痕跡が見えない以上は命の危険はないと断言してしまえるわけだ。

 そしてそれゆえに──、

 

 

(キリアかシルファのどっちかをわざと拐わせる、っていう作戦が可能になるってわけ)

 

 

 ──私じゃないと偽装した二人の活用法も生まれる、というわけなのであった。

 

 

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