なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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よしんば上手く行かなくても?

(作戦としては単純明快、私とデルセンの方はさっきと同じく分身を出した上で行動、キリアとシルファの方はお互いに監視しながら私たちとは別の方を確認に行く……)

(さっきの区分けをこの面々で再度行う、ということか)

 

 

 はてさて、ここからはどう動くかの話。

 最初私たちはキーア・紫組とその他組として二手に別れたわけだが、その区分をキーア・アンデルセン組とキリア・シルファ組で再度組み直す形になる。

 

 これだけだと単にさっきの焼き直しなので、(キーア)側はさらに私が分身を増やして索敵範囲を広げる、という対応を取るわけだ。

 これにより、より私たち側に対して干渉しようという気が削がれる形になり──、

 

 

(必然的に、キリア側の方が手薄に見えてくるってわけ)

(……実際、先ほどの区分けでは手薄でもなかったはずの俺達側が消されたわけだからな。実際は互いを見張るだけでは足りていないと考えるのが普通か)

 

 

 もう一つの組、キリア達の側が相対的に手薄に見えてくる、と。

 ……まぁ実のところ、今しがたデルセンが述べたように人数的には四人もいた彼ら側が真っ先に拐われている辺り、単に互いを見ているだけでは足りないのだろうが。

 無論、今ほど注意して互いを確認していたわけではないにしても、だ。

 

 

(四人もいれば基本的に死角は大分減るものだからね。なんなら先生も混じってたわけだから、後方についても確認は怠ってなかったはずだし)

(ついでに言えば、先ほどの俺達──分身を交えての探索も、実際には()()()()()()可能性があるな)

 

 

 人が増えれば増えるだけ死角は減る。

 ゆえに、二人よりも四人の方が確認できない範囲は減るわけだ。

 にも関わらず、デルセン側は結果的に壊滅状態となった。

 

 ……ということは、だ。

 恐らく相手方は、ほんの少し目線を離した隙ですら行動できる類い、ということになる。

 それを踏まえると、さっきの私たちも実のところ、警戒レベルが足りていなかった可能性もあるわけで。

 

 あれだ、単に一人が複数に増えたので、警戒して触りに来なかっただけで、あの状況でも一人一人消していくことはできたのかも……みたいな?

 まぁ、それはそれで消えた私から相手の場所を探知することができるため、別にそれでも構わないのだが。

 特に今回は常に私とデルセンを視界に納めた状態の分身を一人用意する予定だし。

 

 ……私たち側はそれでいいとして、キリア側の話。

 こっちは互いが互いを確認しながら──先の四人より警戒を厳にしてから行動する、という方針だが……それでも、相手の能力がこちらの想定通り・もしくは以上ならどっちかから拐ってもう片方も拐う、みたいなやり方を決行できる可能性は高い。

 そしてそれは、恐らく私とデルセン側に同じ事をやるより遥かに労力をかけずに行えることだと思われるので──狙うのならあちら側、ということになるわけだ。

 

 無論、こっちを狙うのならそれはそれでいい。

 どっちにしろ真っ先に拐われるのは私の分身、その時点で相手の負けは決まったようなもの。

 

 そこまで脳内で話し終えたところ、現実の方ではキリア達の自己紹介が終わったタイミングであった。

 

 

「それにしても……ハルケギニア出身者とはな。さっきは会わなかったが、どこかに出掛けていたのか?」

「ええ。私はビジュー様の従者ですので、彼女に同行し王都で彼女の護衛を行っていたのですよ」

 

 

 ……それにしても、まさかこうして久しぶりにシルファの姿を引っ張り出すことになるとは思わなかった。

 シルファ・リスティといえば、二回目以降のハルケギニア渡航の際、ビジューちゃんとの姿被りを避けるために導入された私の変身(?)先の一つ。

 

 私の身長を伸ばしてちょっと凛々しくすると大体正解、みたいな見た目の彼女は、しかしてそれゆえに母の方(キリア)に変な影響を及ぼす*1ため、微妙に封印されていた姿だ。

 ……まぁ、凛々しさ成分を抜いてもうちょっと私に近付けたパターン……大人モードの私、みたいな感じで別途活用はされていたわけだけど。

 

 今回は以前のまま──昔の私と同じ桃色(ピンクブロンド)の髪と凛々しい表情のシルファなので、少なくとも銀髪になった私と同一人物である、という感想は早々浮かんでこない感じになっている。

 寧ろ、キリアの見た目が以前の私の方(に、聖女っぽさを付け加えたもの)なので、そっちの方が姉妹に見えそうな感じというか?

 

 ……一応、顔の造形はみんな同じなんだけどね。

 ただこう、銀髪になってからの私は以前の私と顔付きが違って見えるらしく、並べられると別人としか思えないらしいのだが。

 普段なら愚痴るところだか、今回は他人のふりをする上で有効活用できるため、ありがたく利用させて頂く所存である。

 

 

「ではキーアさん、私たちはこっちを確認させて頂きますね」

「なにかあればすぐに伝えると約束しよう」

「ええ、こっちも異常があったらすぐに伝えるわね」

「頼んだぞ」

 

 

 挨拶も終えたので急げや急げとばかりに仲間分けをして、そのまま探索を始める私たち。

 向こうが曲がり角の向こうに消えたのを確認したのち、すかさず分身を三人作り、うち一人を私たちの監視用・残り二人を向こうと同じく探索用にバディを組ませ、私たちとは別方向へと向かわせる。

 

 これで一先ず準備は整ったわけだが……はたして鬼が出るか蛇が出るか。*2

 というか、勝手に飛び出して行って結局見つかってないおぜうさまやパチュリーのこともあるからなぁ。

 

 

「……ん?あいつらも拐われたんじゃあないのか?」

「どうだろうねぇ?あの二人意外と早いから、早々に上の方に登っちゃってるような気も……」

「……それはそれで不味いな」

 

 

 好奇心の塊、暴走列車みたいな存在。

 ……それが今のあの二人なわけだが、もし仮にその溢れ出る好奇心のままに塔内を駆け回り、まかり間違って塔の最上階にでもたどり着いてしまっていたら……。

 

 うん、戯言遣い君が悪いわけじゃないけど、色々台無しの可能性大である。

 というか、現状姿も目的も不明な誘拐犯に比べれば、目前の危険としての彼の方が警戒度遥かに高いというか?

 

 そんなわけなので、途中で見付かる・ないし誘拐犯に拐われていることが確信できるような状況でもない限り、地味ーに頭の痛い状態が続くことになるわけなのでありましたとさ。

 

 

「……見付かると思うか、途中で?」

「……正直微妙かなー?」

 

 

 なお、予測ではあるものの明確に迫りつつある脅威でもある、とついでに付け加えておきます。

 ……おぜうさま、変なところで勘がいいからなー。

 

 

 

 

 

 

 はてさて、二階層目の探索を始めてから早数分。

 とはいえ塔の内部は広く、その隅々まで相手を探すとなるとどうしても時間は掛かってしまう。

 ……いやまぁ、探している当人達が早々に上に登ってしまっていると予測しているのなら、さっさと探索を切り上げて昇ればいいんじゃないって話でもあるんだけども。

 

 

「おぜうさまはそうなんだけど、パチュリー側がどうも読めないんだよねぇ」

「あのアグレッシブさは元の本人にはないものだからな」

 

 

 そうなると、健康優良児となったパチュリー側の行動が読めないというか。

 

 ……原作の彼女は喘息持ちで、二つ名に『動かない大図書館』なんてものを持つ程度に出不精の存在。

 ゆえに、今みたいに元気に動き回れる・動き回る気のある彼女の行動予測というものが難しいのである。

 そもそもの話、見た目が同じなだけで正確にはあのパチュリーは『東方projectのパチュリー』ではないわけだし。

 

 

「いやでも、ハルケギニアの人達ってその成り立ちにどうも『逆憑依』ないし【兆し】が関わっている気配が強いから、みんなまとめて【顕象】の類いって可能性もなくはないわけだけど……」

「その場合、参考元としての相手となるわけか。……行動する時の判断の基準を探る上では参考にならんこともない、といったところか」

 

 

 ただ、ハルケギニアそのものが【顕象】のようなもの、という予測もある。

 となれば、そこに住まう人達もなにかしらの()がある、と考えるのも間違っていない可能性が高いわけで。

 ……パチュリー以外にも、向こうにはアリシアさんとかアカリちゃんとかも居たわけだし。

 無論、そういうのがなさそうな普通の人々もいる辺り、なんでもかんでも【顕象】ってわけじゃあないのだろうけど……あそこが不思議な世界であることは間違いないだろう。

 

 ……とまぁ、あれこれ話しながら探索を続けている私たちだけれど、別に探索に身が入っていない、というわけではない。

 寧ろ逆、こうして余裕そうに見せ掛けることで、誘拐犯の神経を逆撫でする目的である、といえばわかりやすいだろうか?

 

 うん、ここまで言われればわかると思うけど、誘拐犯なんにもしてこないんだよね、こっちにも向こうにも。

 向こうなんかあからさまに隙だらけなのに、どちらからも報告が──見られているとかそういった異変の欠片も報告が上がってきていないのだ。

 

 向こうもこっちと同じように和気藹々と探索し続けているはずだから、大分呑気そうに見えることは間違いないはずなのにも関わらず、だ。

 ……うーむ。対応をミスったかなー、なんて今更ながらに後悔?する私だったのだけれど。

 

 

『あー、テステス。聞こえてるかなー、もしもーし』

「……ん?これは塔内放送……?」

『こちら戯言遣いでーす。虚無の人、聞こえてますかー?』

「……うげぇ!?」

 

 

 そんな折、周囲のスピーカーから聞こえてきたのは一人の少年の声。

 ……まさかとは思ったけど、そのまさか。声の主は戯言遣いその人であり、かつ呼び掛けているのはピンポイントで私という『なにそれ罰ゲーム?』みたいな展開。

 

 その時点でもキャパオーバーなのにも関わらず、彼はとんでもない爆弾発言を落としてくれやがったのでした。

 

 

『愉快な探索者と誘拐犯を捕まえてまーす。至急引き取りに来るか捨てるか選んでくださーい』

「は?」

 

 

 戯言だけど、と取って付けたように加えられた彼の口癖に、今度こそ私たちは宇宙猫になるのであった──。

 

 

*1
彼女の義理の娘に空気感などが似ていため、深刻なマザーシンドローム(?)を引き起こすとか。なお凛々しさ成分が変な反応を起こしている面が強いので、それを抜いたり今みたいに銀髪モードのキーアが大きくなるなどしても反応はしない模様

*2
傀儡師が演目の際、周囲の視線を引くために使ったとされる口上から。中身の見えないからくり箱から出てくるのは一体なんだろうか、と相手を期待させる言葉で、そこから「これから先何が起きるか予測することはできない」というような意味合いを持つ言葉として民衆にも使われるようになった。鬼も蛇も基本的には悪い意味の言葉なので、「いいことが起きるか悪いことが起きるかわからない」という意味合いにするために蛇を仏に差し替えたモノも存在する(鬼が出るか仏が出るか)

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