なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「げん、げんげん」*1
「んー、それは最終手段かなぁ……ただでさえ『逆憑依』との性質的に嫌がられて弾き出された形になってるのに、それを戻したらどうなるかわからんというか」
はてさて、拐われた人達の捜索が困難である、という事実を突き付けられたわけだけど。
そうして唸る私を心配してか、ゲンガー君がこちらに話し掛けてくる。……くるのだが、その内容には微妙に頷けなかった。
確かに、彼が目の前の黒いのと一つに戻れば、連鎖して拐われた人達がいる場所についても即座に判明することだろう。
だがしかし、それが最善かと言われると首を傾げざるを得まい。
まず第一に、彼らが別れたのはこの世界に顕現する際、彼らの持つ悪性部分が(端的に言えば)嫌がられたから。
……見た目こそゲンガーだけど、その実彼はゲンガーだけではなく色んなゴーストタイプポケモンの複合体のようなものとしてここにいる、らしい。
わかりやすく言えば
「基礎になっているのはゲンガーだけど、他にもブルンゲルみたく水中にいられる能力とか、フワンテみたいにふわふわと浮いていられる軽さとか……そんな感じで、色んなゴーストタイプの『良いところ』を複合して持ってるのが彼、ってことになるわけなんだよね」
「げん?げーんげん」*2
「ほうほう、なるほどなるほど。我が従者は中々に優秀なんだな!」
「そうね。正直レミィより……おほん。端的に言うと良い従者ね、本当に」
「……ん?今ディスられなかったか私?」
「気のせいじゃないかしら」
「そうか?」
……コントやってる主従はほっとくとして。
ともかく、ゲンガー君が中々に特殊な存在であることは間違いあるまい。
そしてそれゆえに、そんな彼が良い方と悪い方なんて大雑把な別れ方をしていることが、どれほど面倒臭いのかという話。
「要するにブルンゲルみたいに水底に獲物を引き摺り込んだり、はたまたフワンテみたいに相手をあの世に連れていったり……みたいなことができるしやりかねないのがこっちの黒いの、ってわけ」
「ひぇっ」
「ひぇってレミィ、貴方……」
「いや仕方がなくないか!?普通に怖いぞコイツ!?」
なにもかもを内包している以上、それを分けたのなら基本的には五分と五分。
ゴーストポケモンの持つ良い点をゲンガー君が受け持つのなら、黒いのの方は悪い点を受け持っているという風に受けとるのが普通だろう。
……その割にはあんまり凶悪なことをしてきたイメージはないが、その辺は相手が『逆憑依』だったのが理由、となるのだろうか?
まぁ、そこを言うとはるかさんどうするんだよ、ってことになるんだが()
「……そういえば、さっきお前はあの女に関しては気を配っている、だのなんだの言っていたな?」
「いやまぁ、今も気を配ってはいるのよ?単に私が繋げないスタンドアローンになってるってだけで」
「……うん?」
少し前に触れた通り、このなりきり郷において
そのため、今回も彼女に関してはあれこれ保護を掛けていたのだけれど……その保護というのは彼女が決して危険に遭遇しない、というような意味合いのモノではない。
一言で説明するのなら、お守りを持たせているようなものということになるだろうか?
「お守り、だと?」
「そう、お守り。……危険に絶対遭遇しないように、ってのはつまるところ
「……まぁ、そうだな。子供は大人の思いも付かないような突拍子もないことをする。ゆえに目を離してはいけない……というやつだ」
「でもそれって、本人の人権とか半ば無視してるよね?」
「む」
徹頭徹尾・一切合切・大小問わずあらゆる災難から人を守ろうとすると、基本的には本人の行動を制限するしかない。
子供にハーネス*3を付けて行動を制限する、というやり方に批難が集まることもあったが。
あれは子供の持つ経験が少ないことにより、やってはいけないことの判断ができないから……という、至極真っ当な理由から生み出された利用法でしかない。
例え周囲の危険を廃したとして、本人が自ら危険に向かっていくのであれば対処のしようがない……というわけだ。
そういう状況を極力減らすうえで、本人の自由行動を制限するというのは確かに理に叶っている。
……叶っているが、同時に『子供にリードを付けるなんて』という批難の声があがったことからもわかる通り、それは当人の人権を侵害するモノだという風に見なすこともできるわけで。
要するに、だ。
危険に遭遇するのもある意味本人の意思であると考えると、それを制限するのはおかしい……なんて話になりかねないわけで。
とはいえそれをむざむざ許すのもなぁ……みたいな感じで苦肉の策として生み出されたのが、
「お守り、ということか?」
「そういうことー。そもそも危険や困難ってその人の成長の機会でもあるわけで、無闇矢鱈に消しても良いことないって話になるでしょ?」
「なるほど……ゆえに
失敗を伴わない場合、やってはいけないことというのは意外と身に付き辛いものだ。
痛い目を見ないとわからない、とでもいうべきか。
……いやまぁ、わざわざ痛い思いをしなくてもわかる人はわかるとは思うのだが、同時に口頭で注意された人と実際に痛い目を見た人、どっちが同じ物事に対して警戒するかと言われればそりゃ後者でしょ……みたいな?
そうでなくとも、危険を前にして回避や忌避ばかり選んでいては得られない経験、というのもある。
それらを総合すると、一番いいのは
「色んな運動における『技』なんて、基本的に危険を回避するならまず試すのすらアウトだったりするでしょ?……そういうわけで、お守りは
言い換えると、必要最低限の効果しかないということになるか。
なので、当人が何処にいるのか・何をしているのかを確認できるような効果は真っ先にオミットされているわけである。
……うん、お守りから辿ってはるかさんの位置を確認する、とかはできないわけですね()
まぁ、もし仮に
「とはいえそれだけなんで、今の状況を好転させる効果はないってわけだね」
「……そういえばゲンガーが元に戻るべきではない、という理由の話だったか」
ええまぁ、大分脱線したのは確かですね……。
ってなわけで話を戻すと、戻らない方が良い理由の一つ目は『黒いのが悪性である』ため。
ゲンガー君に悪影響があることは確定であり、かつそれだけに止まらず彼の存在の進退にすら関わる可能性もあるとなれば、迂闊に進められるモノではないことは誰にでもわかる話だろう。
その流れで二つ目の理由だが、こっちはもう少し単純で、実際に一つになったとしても目的地がわからない可能性がある……ということになる。
「げん、げんげん?」*4
「一つになるまでならともかく、目的地を探すとなると
「げ」*5
「なんなら、横の
「……ん?すっとこどっこいって誰だ?」
「アンタだよっ!」
……うん、単に
正確には戯言遣いの居る状況下でなにかを考えると思考が乱される、みたいな感じだけど。
どっちにしろ、元に戻るだけならともかくそれ以外のことが引っ掛かることに変わりはない。
……寧ろ戻るだけなら引っ掛からない分
そしてさらに、その状況を加速させるのが隣のおぜうさま。
……うん、珍しい可能性が引き寄せられるってのは、こういう状況においては基本ネガティブにしか働かないわけでしてね?
そのため、この二人が揃っている環境で余計なことを考えるべきじゃない、って話になるのでありました。
「そして三つ目──」
「まだあるのか……」
「一応これで終わりだけどね。んで三つ目だけど……今までの話を覆すようであれだけど、
「げ?」*6
そして最後の三つ目の理由だけど。
……これに関してはもっと単純、ゲンガー君の案は