なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「にしても……オープンしたばっかりにしては、随分と客が多いねぇ」
「そりゃまぁ、外は生憎の大雨だもの。それに加えて新しくできたばかりの施設ともなれば、物珍しさも手伝って誰でも突撃したくなるもんじゃないの?」
「うーん、暴論のような正論のような」
はてさて、室内プール(とは名ばかりのほぼ海)にやってきたのなら、やることは一つでしょう……。
ってな感じに、ちょいとばかし泳ごうかと思っていた私たちなのだけれど、これが中々。
周囲を見れば一目瞭然なのだが、実は周囲が結構な人波でごった返しているのである。
浸かるのはともかく、泳ぎを競うとかになるとなると他の人にぶつかりそうなライン……というか。
っていうか、外が雨で暇だからって人が居すぎじゃないかなこれ?
そりゃまぁ、今しがたオルタが言ったようにオープンしたての施設ならば物珍しさに人が増えるってのもわからんでもないけど、それを考慮してもなお多すぎるっていうか。
正直このレベルのすし詰め状態、教科書とかでもないと見たことないんだけど?
「あー、昭和とか一つのプールに溢れるほど人が集まってる、とかあったらしいものね。最近はそこまででもない気がするけど」
「暑すぎるから極力外に出たくない、ってのが強いだろうねぇ……」
なんだっけ、去年と変わらず今年もこの時期から真夏日連発してるんだっけ?
そりゃまぁ、例え水の中にいてもそんな気温だったら涼しさもなにもないというか?
それを踏まえてこの室内プールに目を向けると。
室内なので外ほど暑くはなく、またアクアの能力由来の海水なのでその冷たさは中々のもの。
何人浸かろうが温くなることもないレベルとなれば、まぁ確かに涼を取るには丁度いい……ってことになるのかも?
まぁ、基本的になりきり郷の気温は例年の気温に合わせるので、そこまで涼を取ることに躍起になる必要はないんだけども。
……そう考えると、やっぱり単に物珍しさゆえに集まった人達、ってことになるんだろうか?
「おっと、千客万来ということですね!でしたらアクア、少々はりきります!」
「はい?いったいなにを……うぉぉ!?」
そんな感じでちょっと疑問に思っていたところ、どこからかやってきたアクアが周囲を見渡したのち、一つ気合いを入れだした。
いきなりなにを言ってるんだ、と困惑していた私たちだが……次の瞬間、そんな悠長なことは言ってられなくなった。
なんでかって?周囲が唐突に揺れ始めたからだよ!
すわ大地震かと思わず慌てる私たちだが、オルタだけは微妙な顔でアクアの方を見ていた。
その様子はまさに呆れ果てたと言わんばかりのものであり、このタイミングで彼女がそんなことをするということは、すなわちこれは自然現象ではなく……、
「んー……ててーい!」
「ぬぉわー!?」
「物珍しさだけでこんなに人が増えるのか、って話だけど。……これを見りゃそりゃそうなるでしょ、って気分にもなるわよ」
半ばやけくそ感溢れるオルタの言葉を聞く余裕もなく、吹っ飛ばされた私たちはどうにか地面に着地。
人心地付いたところで周囲を見渡せば、なるほど今さっきオルタが言っていたことがどういうことなのか、というのが言葉ではなく心で理解することができた。
……端的に言うと、広がっていたのだ。
プールだけじゃなく、施設そのものの広さが。
「……なにやってるのアクアちゃん!?」
「おっと、御安心ください八雲さん。別に周辺区域を圧迫するような無理無謀はしていませんので!」
「そ、そう?それならよかった……なわけないんだけど!?」
「おや、まだなにか疑問が?そうですねぇ、場所を広げるに当たってのリソースはどうしたのか、とかでしょうか?それでしたら答えは簡単です!頼れる妹のパワーを借り受けたのです!」
「はい?」
「誰が妹だ誰が。……あーうん、先に言っておくけど私のせいじゃないわよ、いやまぁ私のせいなんだけどそうじゃなくて」
「……はい???」
突然の暴挙にゆかりんが大混乱していたが、対するアクアはニコニコ顔。
なにか問題でも?と首を傾げている彼女の様子に、思わず頭を抱えるゆかりんである。……大変そうだね?(他人事)
なんて風に余裕ぶっこいてたのが悪かったのか、段々と雲行きが怪しくなってきたことを察する私である。
なんでかって?今しがたオルタの
一旦状況を整理しよう。
今さっき起きたことは、突然周囲が揺れたかと思ったら施設が大きくなっていた、だ。
なにを言っているかわからないかもしれないが、一先ず呑み込んで欲しい。
そしてそれを前提に置いた上で、彼女達の能力等について思い出してみよう。
そう、アクアはカイオーガ混じりの存在。
ゆえに地震を起こすというのは本人の領分の外、でも彼女は地震を(明らかに)起こしていた。
……ここで思い出すべきなのが、このアクアとオルタは
となれば、必然オルタの側には
「……ええとつまり、繋がりを介してオルタちゃん側のグラードンの権能を行使した、ってこと……?」
「単にそれだけだと『陸地を作る』、すなわち普通に周囲を圧迫する結果に落ち着くわけだから、正確にはそれだけじゃないけどね」
「…………」<ソローリ
「キーアちゃん???」
「ひぃ!?堪忍して!っていうか私のせいじゃねぇ!!」
とはいえ、単にグラードンの力を使ったところで、今回のようなことにはならないだろう。
陸地を増やす力であるそれは、特に考えもなしに振るえばまず間違いなく
……わかりやすく言うと周辺区域にあるものを、外へと押し出してしまうわけだ。
そうなればはた迷惑どころの話ではない、ともすれば他の建物が損壊する被害すら発生しかねない。
この場合問題なのは、グラードンの能力に本来解釈の自由はない、という点。
陸地が増える以上の意味はなく、ゆえに力を使えば間違いなく周囲を圧迫する、という部分。
……なにが言いたいのかと言うと、空間拡張された世界の中で使うと本来バグるのである。
拡張された空間というのは、本来地面とは接していない。
その中で独自の陸地を形成していることになるため、場所を広げようとすると専用の術式が必要になるのである。
が、しかし。
グラードンのそれは、外の世界の陸地を増やすもの。
外で使うこと前提の技能であるため、拡張空間内で使うと認識がバグり、結果拡張空間そのものに悪影響を起こしかねないのである。
あれだ、コンピューターに例えると拡張空間は疑似メモリの確保数、グラードンが増やすのは大本のメモリの方……みたいな?
この例えだと悪影響部分については意味不明になるが、それぞれの分野がまったく別物であることは理解しやすくなると思う。
「悪影響についてわかりやすくってなると……いきなり電源も落とさずにメモリの拡張始めた、みたいな感じになるのかな?」
「それもそれでわかりにくいような気もしますが……つまるところ、能力によって発生する命令が拡張空間の規格に合っていない、ということですよね?」
「あーうん、そんな感じ」
……あれだね、この辺は言葉で説明するの難しいね。
まぁともかく、拡張空間内でグラードンの能力なんて使ったら酷いことになる、ってのは間違いない。
にも関わらず、今しがたアクアが使ったそれは、確かに施設を大きくはしたものの、それ以上の影響を周囲に与えることはなかった。
……これはつまり、単純にグラードンの能力を使ったのではなく、そこから喚起される──もとい、
「ええはい、お察しの通り【星の欠片】としての能力応用ですねぇ!なんならこのたくさんある海水も多分それですねぇ!!」
「だと思ったぁ!!ちょっとキーアちゃんそっち方面の指導はどうなってるのよまったくもー!!」
「あーあー聞こえないなぁ!!そんな暇なかったから聞こえないなぁ!!」
「……よくわからないのだけれど、なんで
「ええと、話せば長くなるのですが……」
はい、軽々に【星の欠片】を運用してますねこの人。
使い方間違えれば暴走するような──そもそも【終末剣劇・潰滅願望】なんていう、世界の滅びを誘引するようなものを自分の私利私欲(?)のために使ってるとか、ともすればびっくりしすぎて偉い人が倒れるようなあれなんだわ。
……いやまぁ、『星女神』様は多分笑って許してくれるけど、だからって周囲の人がびっくりするのは変わらないというか。
なんなら今現在、ゆかりんが一番びっくりしてるだろうからね。
水着ジャンヌ由来の謎海洋動物だけが問題かと思ってたら、そもそもカイオーガだけじゃなくてオルタの方に成り行きで付け加わったグラードンの要素まで使われてて、なおかつそれを問題ないようにするのにさらに問題まみれな【星の欠片】まで使ってる、って言うんだから。……問題の過剰積載かな?()
なので、そのことをすばやく察知した私は、この場からそろーっと立ち去ろうとしていたわけである。
残念ながらこうして捕まってしまったわけだけど!
でもほら、これを私が悪いって言う風に持っていくのはなんというかこの世の全てが私のせい、って論拠に持っていくような暴挙であってね?
なんならその辺の倫理観の話をするにしても、色々他の用事があって暇がなくてつまり私は悪くねぇ!!(最終的結論)
「んなわけあるかー!!」
「ぎゃー!!?」
なおその後、しっかりゆかりんからの雷が落ちてきましたとさ。どっとはれ。