なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「結局、問題自体はないからそれでいい、ってことになったわけだけど……」
「さっきまでの様子が嘘みたいに、すっごいがらがらになったわね」
いやまぁ、実際には施設内の人数は減っておらず、単純に施設そのものが大きくなっただけなのだが。
……オルタがちょっとだけ触れていたが、恐らくこの『地震による拡張』も結構な回数繰り返されているんだろうな、と少々頭の痛い私である。
名物になってるレベルで繰り返してるってことだもんなー、これなー。
思わず頭が痛くなってくるが、とはいえ既に繰り返されていることゆえに禁止もし辛い感じである。
「よくわからないのだけれど、さっき彼女が言ってたみたいにそうなる前に教えたり禁止したりは出来なかったの?」
「時間がなかったってのはさっきも言ったけど、それだけじゃない理由も一応なくはないんですよね……」
「……ふぅん?」
そんな風に唸る私に、不思議そうに首を傾げながら尋ねてくるのはパチュリー。
そっちの事情に詳しくないことに加えて、そもそも未知の存在である【星の欠片】の話に興味津々……みたいな感じだろうか?
まぁ別に隠し立てすることじゃないというか、寧ろ存在を知らずに対峙して酷い目に合うよりはマシ、って感じで説明することにしたのだけれど。
「……余計な先入観を廃するため?」
「ええまぁ、大雑把に言うとそんな感じでして……」
その理由というのはそう難しい話でもなく、単に私が
……何度か語っているが、その辺の前提知識をパチュリー達は知らないので改めて説明すると。
「【星の欠片】っていうのは、新しい世界の種みたいなものなのよね。それが育てば今の世界を覆して新しい法則の支配する世界を生み出す、みたいな」
「既に厄ネタの匂いが凄いわね」
「うん、実際厄ネタだからね」
特に純正の【星の欠片】だと厄ネタ以外の何者でもないというか。
……まぁ、純正の【星の欠片】と呼べる人物なんて、『星女神』様と『月の君』様を筆頭にキリア・ささらさん・ウイルスさんと、それから私くらいのものなのだが。
「……?そこの人とかは違うの?」
「オルタもアクアも【星融体】っていう別物だからね。純正とは呼べないんだよねー」
あれだ、【星融体】は【星の欠片】関係のモノではあるが、それそのものとするには色々変わりすぎているというか。
これは、『逆憑依』と【星の欠片】が相性が悪い……もとい、良すぎるからということがとても大きい。
以前も何処かで語ったことがある気がするが、なによりも小さな世界を目指す【星の欠片】というのは、『逆憑依』の持つ再現度という概念に過剰適合してしまうのである。
「普通の相手なら
「……???」
この間のゲンガー君の時の説明を思い出して欲しいのだが、再現度というのは比率であると同時に、その総量が重視されるものでもある。
単純な『逆憑依』ならともかく、【複合憑依】や【継ぎ接ぎ】になると加算された再現度は最終的に総量として出力の定義が行われることになる。
結果、単に一人のキャラクターを再現するより、複数のキャラが混じっている方が簡単に総戦力を上昇させることができてしまうわけだ。
また、再現度そのものはあくまで比率であるため、そもそもの実力が高い存在は計算後の戦力値が高くなりやすい、みたいな話もあったと思う。
こっちの例はあさひさんとかになるわけだが……ともかく、強い存在を選ぶと能力値的には簡単に高くなる、というのもまた間違いではない。
「これは普通の世界──実力が高い方が凄い、みたいな概念の世界なら必然そうなるものなんだけど。それを【星の欠片】に当てはめてしまうと、色々おかしなことになっちゃうわけよ」
「具体的にはどうなるの?」
「比率も実力もなにもかもおかしなことになる」
「ええ……」
それに比べて、【星の欠片】の場合はというと。
再現度が互いの力量を見比べたモノであるとするなら、どんな数値を出そうとも百パーセント以外にならないのである。
何故なら、【星の欠片】はとかく小さなモノであるがゆえ。
わかりやすく言うと……例えば普通のキャラクターが百の力量があれば百パーセント完全に再現できた・一人前になったと言えるのだとすれば、【星の欠片】の場合はそもそも一しか技量が無かろうが一人前・どころか何人分再現できてるのかを計算しなきゃいけなくなるレベルの話になっている感じ、というか。
普通に意味の無い話だが、相手が【星の欠片】相手だと初期値が百パーセント以上の数値として語るしかない、みたいな?
もはや再現度っていうより本人そのもの、みたいな感じとも。
……そう、本人そのもの。
実のところ【星の欠片】相手に再現度を持ち出すと、本人の再現ではなく
いやまぁ、そもそも『逆憑依』は本人が憑依してくる、という形なわけだが……。
「そうねぇ……あえて誤解を恐れずに言うなら、
「……本人を呼んでくるんじゃなくて、本人になるってことかしら?」
「言葉で説明し辛いけど、まぁそんな感じ」
あれだ、憑依であるという原則からして壊れる、というか。
……怖いことを言うと、例えばささらさんがもし【星の欠片】じゃなくて『逆憑依』だった場合。
そこには本来核となるべき中身があるはず、ということになるのだけれど、【星の欠片】が憑依してきた時点でその核は
本来中身とささらさんはイコールにならないのだが、それが【星の欠片】だとイコールにしかならない、というか。
言い方を変えるなら乗っ取り、ということになるのだろうか?
そのため、『逆憑依』の原則──中身となる核を傷付けない、という原則に引っ掛かるため本来【星の欠片】はこの世界に現れないはずなのである。
「まぁ、なんの因果か私がこうしてキーアになったことで、その辺の制限はなんか変なことになっちゃったみたいだけど」
「変なことにって……」
「実際変なことになってるのよ。……まぁ、私の場合はそもそもキーアという存在自体が
ただ、それが原因でこの世界の法則に変なヒビを入れちゃった可能性も否定できないため、両手を上げて万歳とはいかないわけなのだけれど。
要するに、【星融体】が成立した遠因として私の存在がある、ということになるか。
裏を返すと
「………」
「あーその、別に私の存在を否定したいとかなんとか、そういうことを言いたい訳じゃないから睨むの止めて貰えるかしら、マシュ?」
「……せんぱいがそう言うのでしたら……」
(今すっごい「私不満です」って顔してたわねマシュちゃん……)
……うん、別に私が悪いから私が消えないと、とか言い出すつもりはないからそう怖い顔しないで欲しいかなって……。
とまぁ、いきなり御機嫌斜めになったマシュのご機嫌取りをしつつ、改めて気を取り直して説明を続けると。
本来、【星の欠片】という存在はこの世界に定着するどころか姿を見せることすらあり得なかった。
実態は違うけど、あくまでこの世界だけに視点を合わせるのならば、【星の欠片】というのは私の提唱した
それがこうして大挙?して押し寄せるようになったのは、偏に私が【星の欠片】として成立したが為。
より正確に言えば、私が【星の欠片】として安定してしまったことが最大の理由、ということになるわけだ。
それもそのはず、なにも対処せず放置していれば私はそのまま消えていたはずなのである。
こっちにやってきたキリアにしたって、私が成立する前に消えていたのなら世界との繋がりを失っていたはず。
言い換えると干渉の手段を失って世界の外に弾かれていただろう、ってことになるわけだけど……。
「それを『星女神』様が安定させちゃったもんだからさぁ大変。言ってしまえばそれまでの私の世界からの扱いって、一種のウイルスみたいなもので排除すべき相手だったんだけど……」
「ああなるほど。端的に言うと帰化した、ってことね」*1
「まぁ、そんな感じ」
そう、私が許されたことで、結果として他の【星の欠片】がこの世界に現れるための権利が発生してしまったのである。
……これを言うとユゥイはどうなるの、って話になるのだが、【星の欠片】相手に時間の概念は意味ないよ、というか。
まぁともかく、『星女神』様やキリアを除いた【星の欠片】達は、原則私が許されたからこっちに来れるようになった存在である、というのは間違いない。
では、それが何故私がアクア達に説明するのに向いてない、なんて話になるのかと言うと……。
「特例まみれだから私の感覚で話すと誤解とか勘違いを量産するんだよね……」
「ああ……」
私の感覚そのままに他の【星の欠片】が行動すると、場合によっては世界・もとい抑止力とかから直々に怒られる可能性が高いから、ということになるのであった。
……私は怒られなくても、同じ事を他の人がしたら怒られることがある、みたいな感じというか。
その辺を踏まえて、『星女神』様に説明義務を投げてたんだけどね……。
「その世界のことは可能な限りそこの人がやるべき、って話になってね。だからその辺の違いをちゃんと理解するために、彼女からの講習とか受ける必要があったんだけど」
「あったんだけど?」
「……こっちの用事と向こうの都合が合わなくてずるずる延期してた」
「oh……」
……うん、まぁ、誰が悪いのかと言われると私と『星女神』様両方ってことになるんだけど。
でもほら、一応聖女なのに自重してなかったアクアにも責任の一端はなくはない、というか。
え?姉名乗るもの相手なんだからその辺考慮してなかったお前が悪い?それは……そうねぇ……。