なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
はてさて、無情にもさっきの場所に戻ってきてしまった私たち。
こうなれば善は急げ、ここでしないといけないことを探すためにと周囲を検分し始めたわけなんだけど……。
「……なんか、さっきとこの人微妙に違くない?」
「あ?なに言ってんだよさっきと同じだから俺達困って……なんか、確かに違うな。何処が違うのかって聞かれると困るけど」
「でしょー?」
周囲を見て回る他の面々に対し、さっきから手を振ってる男性の方に近付いていたおぜうさまが、どうにも様子がおかしいと声をあげたのである。
それを聞いた銀ちゃんは、んなわきゃないだろうと否定の言葉を紡ごうとしたのだけれど……近付いて件の男性を確認した途端、言葉にできない違和感を覚えた様子を見せたのだった。
これには周囲のみんなもなんだなんだ、とばかりに近寄ってくる始末。
「……ホントだ。こう、なにがおかしいのかって聞かれると困るけど、なにかが違うって感じがすっごいするわね……」
「だろー!?ほら見ろ私変なこと言ってないもんねー!」
「俺としてはお前のそのキャラはおかしくねーのか、って感じなんだがな……」
「レミィがおかしいのなんて今に始まったことじゃないわよ。それより彼よ彼、そもそも私たちがこうして目の前であれこれ言ってるのに、全く反応を示さない時点でおかしくはないかしら?」
「……もしかすると、この方は生者ではなくあくまでもこのプールの付属物、ということなのかもしれませんね」
「付属物ぅ?」
結果、その違和感は周囲に共有されることになったのであった。
具体的に何処がおかしいと明言するのは難しいが、しかしておかしくない・違わないと断言するには無理がある程度の
ついで、パチュリーの言う通り微細な違和感だけでなく、そもそも男性の挙動自体もおかしい、という部分も共有されることに。
なにせ件の男性、さっきからずっと手を振り続けている。
一応視線はこちらに向いているものの、逆に言うとそれ以外の変化が全くない。
簡単に言えば、こちらの行動に対しての反応が一切ないのである。決められた行動をなぞっているだけに見える、とでも言えばいいのか。
そこまで考えて、もしかしてと脳裏に過るモノがあった。
些細な違和感を見付け出し、それに対処することを求められる作品が最近流行っていたな、と。
「……え、まさかの8番出口?」*1
「それに近いものだろうねぇ。……ここより前のとこに戻ったりしない辺り、ここがあっちで言うところの0番出口として設定されている、って感じかな」
些細な違和感を捉え対応し、設定されたゴールを目指して進むという形式のゲーム。
最近流行っていたそのゲームを思い出させるような状況に、思わず唸ってしまう私である。
なんでかって?ここでいう『ゴール』とやらがどう定められているかがまったくわかんないからだよ!
「……あーそっか。ゲームなら出口を探せばいいけど、別に私たち出口を探して歩いてたわけじゃないもんね」
「
「うへー……」
そう、私たちは別に出口を探して歩いていたわけではない。
目的地であるプールを探して歩いていただけであり、ゲームと同じ状況と解釈するのは難しいわけだ。
……となると、だ。
このループを引き起こしているのは細かな異変で間違いなくとも、定められたゴールがそっちとは別物になっている、という可能性が非常に高いのである。
わかりやすくいうと、そちらで言うところの8番出口が私たちの場合件のプールになっている可能性がある、というか?
ゲームの方は違和感を探して対応を重ね、8番出口にたどり着くためにそこまでの道を歩き続けるのが基本だが。
こっちは目的のプールにたどり着くため、そこまでに寄り道することになるだろうプール達、その全ての違和感を察知して対応を重ねることを求められている……みたいな?
「なにがあれって、それまでそんな節一つもなかったのに、突然その条件が付与されたってことだよね……」
「ここで気付いてなかったら次のプールに行く度に繰り返してたかも、ってことね……」
ミスったら最初から、がこの手の話の共通項である。
……ということは、だ。ここで気付かずにいたら延々と同じプールを繰り返す羽目になっていたかもしれないし、次に行く度に最初に戻されて頭を掻きむしる羽目になっていたかも?……ということになるわけだ。
いやまぁ、その場合も流石に二度目くらいで気付くとは思うけど、それでも理由を勘違いしたままだったらいいことにはならなかっただろうな、とも確信できるわけでして。
……いやホント、なんでこんな唐突にループ機構に巻き込まれてるかな私たち?
「わからんが、とりあえずギャグっぽいプールが出てきても油断はすんな、ってのはこっからのお約束ってことは間違いねぇな」
「それは確かに。……んじゃまぁ、そのついでに語っておくべきことがあるから言っておくんだけど」
「ん?」
「……これ、間違いを見つけた時どうするのが正解なんだろうね?」
「あ゛っ」
まぁ、気を付けるべきことがいつの間にか増えてた、って部分に気付けたのは僥倖だろう。
そう思ってないとやってられない、なんて言葉を裏に隠しつつ、もう一つ気になっていた部分にメスをいれていく。
……そう、これが仮に違和感を見付けることを目的にしたモノである場合、見付けたそれにどう対処すればいいのかがわからない、という部分。
元ネタだろうゲームなら来た道を引き返せばいいのだろうが、私たちの場合話はそう単純でもない。
何故かと言えば、このプール達がある種の固有結界内にあるものに近いのが、その原因であった。
分かりやすく言うと、右とか左とか前とか後ろとか、決まった一方向が進んでいる・もしくは戻っていると定義できないということになるか。
「連絡路なら前には進む、後ろには戻るってなるんだろうけど……目的地であるプールが何処にあるのかもまだわかってない今の状態だと、進んでいるつもりで戻ってたり、はたまた戻ってるつもりで進んでる……なんてパターンも起こりうるというか」
「あー、今の段階で俺達がループしてんのも、進むのをミスったのか戻るのをミスったのかわからねぇってことか?」
「そういうことー」
そう、どちらかが戻る・どちらかが進むと固定化されていないため、その時々によってどの方角が正解かというのは変わってしまう。
ループ形式の迷路を攻略しようとしている、というのが近いだろうか?
前行って後ろ行って前行って……みたいな、現実的に考えるとおかしいルートが正解として定められているようなもの、みたいな感じというか。*2
四方のどちらへも行けるからこその問題・難題の類いと言うべきか。
これでもし、正解以外は最初の場所に戻る、みたいなルールじゃなかった日には、それこそ永遠に迷い続ける可能性もなくはあるまい。
……面倒なのは、このタイプの迷路は俯瞰形式で見ても対して意味がない、という点。
正解を見付けない限り終わらないので、普通の迷路なら有効な手段も悪手になりかねない危険性がある、というか。
「うーん、とりあえず今おかしいのはずっと手を振ってる彼、なんだろうけど……どっち行けばいいんだろうね?」
「二手に別れて確認するのがこういう話の定石だけど……」
「別れたあと合流できる保証がないねぇ」
「そこよねぇ……」
一番いいのは恐らく、誰か一人を特定の方向に向かわせその後どうなるかを確認するというやり方。
だがしかし、これはこれで問題がある。
別れたあと合流できればいいが、もし仮に別れた場合クリアまで合流不可みたいなルールだった時、その時点で実質的なリタイアになるという点。
なんなら、合流不可なのでそもそもそれが正解なのかも確かめられない、なんてことになりかねない。
まさにやっただけ損、そんなことするくらいならちゃんと一緒に行動すべき……みたいなパターンというか?
まぁ、これに関しては今のところ懸念であり、実際にそうなるかは不明だが……いきなりループに巻き込まれた以上、できれば下手なことはしない方がいい、というのも間違いではあるまい。
「……んー、私が分身して確認するのが確実なんだけど……」
「なんだけど?」
「……なんか知らんけど、ズルしたって怒られそうな気がする」
「ええ……?」
ならばそういうのを数の暴力で解消できる私が働くべき、という気もするのだけれど……。
なんだか、それをしたらダメよ、と怒られそうな気がするんだよなぁ。
あれだ、私は今回裏方前提、って最初の話が続いているというか?
つまり、この状況を解決するのは銀ちゃん達の力でなければならない、と。
そう結論付けたところ、銀ちゃんから返ってきたのは、
「すっごいイヤそうな顔っ!?」
ワンピースとかでたまに見掛ける、滅茶苦茶イヤそうな顔なのでありました。
……まぁうん、私もそっち側だったら同じ顔してるとは思うけどね?