なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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バグを恣意的利用だ!

 はてさて、食糧確保のために敵を倒す必要があるとして、もう一つの必要要項の話に移ろうかと思う。

 ……銀ちゃん?あれはスルーでいいと思うよ()

 

 

「まぁとにかく、このバグ世界がどういう感じの場所なのかとか、ゴールらしきものはあるのかとか……そういうところを確認する必要があるってわけ」

「なるほど?」

「とは言っても、その辺みんなに確認させるのは忍びないというか、場合によっては酷いことになる可能性大だから任せられない……みたいなところの方が強いんだけどね」

「……んん?」

 

 

 最初に述べた通り、この場で必要なことは二つ。

 食糧の確保と、それから周囲の探索がそれなんだけど……食糧確保の方はともかく、探索の方はみんなには任せられない、というのが私個人としての答えである。

 何故かと言えば……正直、バグ動画を見て貰えればすぐわかるというか。

 

 

「ああ、なるほど。確かにそれは任せられませんね」

「ちょっと、勝手に納得しないで欲しいんだけど?」

「では、分かりやすくご説明しましょう。──オルタさんは仮に()()()()した場合現状復帰できますか?」

「──なんて?」

「いえまぁ、ここにいる面々の中ではまだ対処に芽のある方だと思いますけど……裏を返せばオルタさんやアクアさん以外は無理、ということになりますよね?」

「な、なるほど……?」

 

 

 そんな私の言葉を聞いて、なにを言いたいのかを一番に理解した桃香さんが得心したように小さく頷く。

 そして、怪訝そうにこっちを見ていたオルタへと、掻い摘まんで答えを示して見せたのだった。

 

 ……そう、何度も言っているように、現在私たちがいるのはバグった世界。

 それが意味するのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということなのである。

 

 さっき向こうでもTASさんが『雷に当たってはいけない』とか言っていたが、そんな感じで突拍子もないイベントにぶち当たる可能性はゼロではない。

 いや、そうして兆候が見えるだけまだマシな方だという見方もできる。

 酷い場合には、人には見えない裏側──変数が特定の値になったら確定でバグる、みたいなことも往々にして起きることなのだ。

 そうなったが最後、普通の人は永遠にその場で固まり、進むも戻るも出来ずジエンド、である。

 

 

「まぁ、フリーズは分かりやすく最悪のパターンだけど……バグロックマンみたいにスタート地点が穴の上だからなにも出来ずに落ちていくしかないとか。座標がバグって※かべのなかにいる※状態になるとか、他にも想定されるヤバいパターンは幾らでもあるよね」

「ひぇっ……」

 

 

 本来、そういう侵攻不能なバグというのは、世界もとい開発者が修正してくれているため、一般人が遭遇することは早々ない。

 ……そう、修正してくれているから見ないのであって、そもそもバグまみれのこの世界においては寧ろ遭遇しない方が珍しい類い、ということになるのである。

 

 そのため、仮にバグに遭遇した際、そこから逃げる手段を持たない人達は迂闊に動かない方がいい、みたいな話になってくるのだった。

 

 

「……ん?ちょっと待ちなさい、だったら敵を倒すのもよくないんじゃないの?ほら、なんとかオブジェクトがどうたらこうたらとか」

ディレイオブジェクトグリッチね」*1

「そうそうそれそれ。……それだっけ?」

「あってるよー。敵を倒した場合も変数は回る、ってことでしょ?」

 

 

 と、そこまで語ったところでおぜうさまから待ったが掛かる。

 内容は、これまでの話を総括すると敵を倒すのもよくないんじゃないか、というもの。

 確かに、ゲームみたいなバグが世界の法則として漂うのがこの場所。

 となれば、実際にゲームで使われるバグがこっちでも起こりうるのでは?……と心配するのはおかしくない。だって、ねぇ?

 

 

「俗に『ケツワープ』と呼ばれるバグは、実際には仕様の隙を突いたもの。幅跳び直後の着地の処理が『マイナスの速度を足して減速する』であること、及びプラス方向の速度制限はあっても()()()()()()()()()()()()()()()()ことから、壁に向かって背中から着地すると実際の速度はゼロ以下なのに内部ではマイナスの速度が加算され続けることになる。結果、こんな感じで吹っ飛んで行く」<ヤヤヤヤフー!

マンマミーア!?*2

「あそこに思いっきりバグ使用してる人がいるからね、仕方ないね」

「……あいつどういう原理で動いてんのよ……?」

 

 

 TASという原理ですがなにか?

 

 ……まぁともかく。目の前に実例が転がっている以上、実際に自分達もやらかしてしまうのでは?……と危機感を持つのは普通のこと。

 なので、レミリアの疑問そのものはまったく間違っていないのだが……。

 

 

「そこでウイルスコアなのです」

「……ええと、それはどういう?」

「まぁ簡単にいうと、これ()()()()()()()()()()なのよ」

!?

 

 

 簡単に言うと、敵を倒すことが問題になるのは主に二つ。

 直前まで存在していたオブジェクト()が消えることによる変数の変化、および倒した敵が落とすアイテムによって増えるオブジェクトの二点である。

 

 この二つはどちらも『敵の消失』をトリガーにしているわけだが、裏を返すと()()()()()()()()()()()()()現象でもあるわけだ。

 

 

「そこでウイルスコアってわけ。実のところ、ウイルスコア状態では内部変数なにも変わってないのよ」

「見た目は完全に変化してるのに?」

「変化してるのに。……まぁぶっちゃけると、【星の欠片】由来の変化なのよね、これ」

「なんと?」

 

 

 あれだ、この間遭遇したウイルスさんからラーニングしたもの、みたいな感じというか。

 バグ利用の一つにチェックサム回避というものがあるが、感覚としてはそれに似ているかも?*3

 見た目上は滅茶苦茶変化しているが、この世界において使われる検出方式の上ではなにも変化してないとして処理される……みたいな?

 

 

「なので、君たちが敵を倒してもどこの変数も回らないから安心して頂戴。そのあとで食糧に変換する際も私が変数を変えてるからその辺の問題はないしね」

「うーん、つくづくおかしいわね【星の欠片】……」

 

 

 まぁ、こういうチートが一人くらいは居ないとクリアできない難易度のものを突っ込んでくる現実さんサイドが悪いってことで……。

 

 そんなわけで、私とゆかりん・それからXちゃん以外の面々は食糧調達。

 それからその三人は周囲の探索、という形で話は纏まったのでしたとさ。

 

 

「……あれ!?なんで私こっち側!?」

「なんでって……バグっても逃げられる人の側じゃん、ゆかりんって」

「なるほどもしかして私も宇宙刑事としての役割を求められている感じですねやだなー!!」

 

 

 なお、この三人な理由は先述の通り、である()

 

 

*1
初代ロックマンにて使われるテクニック・バグを使用した技の一つ。『delay(遅延)』と言う単語が付いていることからわかる通り、処理落ちを起こすことで特定の挙動を引き起こすオブジェクト(対象/目標)を発生させるというもの。この場合ステージクリアフラグやアイテム習得フラグに紐付いたオブジェクトを引っ張ってくる、という形になる。さらにここから発展したものに『ディレイFF任意オブジェクト生成』というものがあるが、こっちは処理落ちではなくロックマンの仕様を悪用()したものである

*2
ケツワープ、もとい『後ろ幅跳び(Backwards Long Jump)』と呼ばれるマリオ64におけるテクニック。マリオが幅跳びを行う際、初速を加速したのち着地のタイミングで減速処理を行うのだが、その時の処理が速度をゼロにするのではなく、マリオの向いている向きとは逆の方向に速度を加算する、という形式であったことから発生したもの。式的にはマイナスの速度を加算するという形なのだが、この際元の速度がゼロないしマイナスだと処理が正常に終了しなくなる。分かりやすくいうと、あくまで直線上における速度処理を行っているため、例えば左に向いているのなら右方向に速度を加算する、という形で減速していることになる。この際左に動いているのならそれによって速度が相殺されるのだが、仮に止まっている・ないし()()()()()()()と、右に速度を加えているのだから()()()()()()という挙動になる。本来その場合でも着地してしまえば問題はないのだが、後ろ(この場合は右側)に壁があると()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということになり、結果速度が加算され続けることになる。それが壁の制限を抜けてしまうような速度になると、結果として壁を抜けて吹っ飛んでいく、という形でマリオの行動に現れる……という仕組み。背中を壁に擦り付けるように後ろ幅跳びを繰り返す様はまさに変態()

*3
文字通り、チェックサムと呼ばれるものを回避すること・その方法。チェックサムというのは簡単に言うと『データが壊れていたり間違っていたりしないか』を確認する為の識別信号のようなもの。データを二進数にしてその総和を求め、特定の定数で割りその余りを検査用データとして付随させる、みたいな感じで使われる。簡単に使えてかつ誤検出も少ないと言うことで広く使われているが、裏を返すと構造が簡単(チェックサム用の数値さえ合っていればいい)なので、誤魔化そうとおもえば誤魔化せてしまう類いでもある。TAS・RTAではバグによって無茶苦茶に書き換えたセーブデータのチェックサム用の数値を書き換えることで、本来読み込めないものを無理矢理読み込ませる……というような形で使われる

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