なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「と、言うわけでバグの人が手伝ってくれるよー」
「おー、ってことは気を付けることも減るってことか?」
「それはノーですね。この世界はバグ世界でこの人はバグの【星の欠片】だけど、正確にはこの両者は無関係。彼女は新しく発生したバグ世界に引き寄せられただけで、実際にバグを生み出したのは(結果的に)私だし」
「……つまり?」
「バグのフィックス*1できる人がいない、ってこと」
「クソァ!!」
いやまぁ、バグが起きた時に影響を可能な限り少なくできるのは彼女、ってのも間違いじゃないんだけどね?
とはいえ根本的な部分をどうにかしようとすると、結局私がみんな外に出たあと『星解』で分解する……みたいな方法しかないのは事実。
なので、注意事項そのものは変わらず遵守して欲しいという話になるのであった。……銀ちゃんがそのフルスペックを発揮できるのはまだ先、ってことですね。
「それはともかく、そういえばTASさんは?」
「やることやり終えたから帰ったよ?召喚獣扱いだから長居は無用だし」
「今回は名前に違うことない早業だったな……」
多分行程三話分くらい吹っ飛ばしたからね(メメタァ)!
流石はTASさん、仕事人である。……まぁ今回でわかったと思うけど、こっちの世界で彼女がまともに動くとこんな感じになるので、可能な限り頼るのは最終手段にしておきたいところだけどね!
「まぁ、過程が吹っ飛ぶって特徴ゆえに、本来心配しないといけない周囲への影響を無視していいのは明確な利点なんだけどね」
「まさかの名実共にキング・クリムゾン!?」*2
とはいえ、私とかが変に干渉するとよくないことが起きていた、というのも事実。
そういう意味で、関わったことの影響自体を無視してしまえるTASさんが、この場においては一番向いていたこともまた事実。
なので、感謝の言葉を投げつつ二度と彼女のお世話になりませんように、と祈りを捧げる私なのでありましたとさ。
……え?そういうことをするのが既にフラグ?うるせー。
「……んで?これは一体なにをやってんだ?」
「探索は今やれることがなくなったから、資源調達の方に注力し始めたって感じだね」
「なるほどなるほど?……んで?お前さんがこっちに同行している理由は?」
「そんなの面白そ……こほん。ウイルスコアの回収の際、毎回ある程度貯まるごとに拠点に戻るってのは手間でしょ?だから出張交換所でその場交換仕様ってわけ」
「今面白そうって言った!?今面白そうって言ったよこの人!?」
「坂田さん、うるさいです」
「アッハイ」
はてさて、件のプールに繋がる道に関してはバグの人に探すのはお任せするとして。
手持ち無沙汰になった私たちは、銀ちゃん達の素材調達の旅に同行することになったのだけれど。
……うん、特訓の成果は如実に出ている、という感じだろうか?
こうしてうだうだと駄弁を貪りつつも、その腕の動きは淀みない。
出てきたモンスターを千切っては投げ千切っては投げ……みたいなレベルで、サクサクと倒していく銀ちゃんの姿がそこにはあった。
マシュと同レベルで動けている、と言えばそのスペックの上昇幅もなんとなく理解できるだろうか?
「せんぱい、その例えですと以前までの坂田さんの力量を同時に明記しないとわかりにくいのでは?」
「なるほど一理ある。んじゃまぁ、以前までの銀ちゃんがマダオなら、今の銀ちゃんはちゃんと坂田銀時を名乗っても問題ないレベルになっている、ってのでどうかな?」
「銀時ですけどー!!?今までもこれからも俺は坂田銀時であってマダオなんて不名誉な存在じゃありませんけどぉー!!?」
「坂田さん、うるさいです」
「アッハイ……」
なお、そんな銀ちゃんを見て、何故か不機嫌そうなマシュである。
あれかな、なりきり郷トップとしての面子とかプライドとかの問題かな?
「……ノーコメントで。どうでもいいけど、こんなにばかすか倒していいの?」
「おやつれないねぇゆかりん。……ここにいるモンスター達は実際のところ『逆憑依』でも【顕象】【鏡像】のどちらでもない、いわば単なるバグの具現化だからね。ほっとくと集まって巨大バグモンスターとかになりかねないし、見掛けたらタコ殴るぐらいで丁度いいんだよ」
ついでに言えば、倒すと言っても存在の変換に近くなるようみんなには補助をばら蒔いてるので、倒したと言っても精々ポケモンのひんしみたいなもんだし。
……とまで説明すれば、ゆかりんは納得したようなしてないような、微妙な顔で一つ頷いたのだった。
「にしても……意外に大所帯だからってフォーマンセルに分けたのは良かったのか?」
「なにが?」
「なにがって……いや、さっき言ってた出張交換所云々の話もあって、お前さん一班に一人の割合で増えてたじゃねぇか。その辺なんか不調とかねぇのか?」
「はあ、不調?……いや、ないけど?」
「ホントに~?」
「いやなにその絡み方うざっ」
うざくねぇし心配してやっただけだしぃ~、と嘯く銀ちゃんに不審なモノを見る目を向けつつ、改めて今の台詞を反芻する私。
口調はあれだが、確かに心配はしていたらしい。
とは言うものの、別に心配されるようなことはなにもしてないのだが……と考えたところで一つ、彼がそこまでする理由にたどり着いた私である。
「……一応言っておくけど、銀ちゃんに対しての方が厳しいというかスパルタというか、そんな感じよあの子」
「それはそれで納得行かねぇんだが!?」
なるほど、どうやらキンクリされた話の中で、以前(と言ってもほんの数時間前)にTASさんと約束してた『手合わせ』が行われていた……ということに、彼女のスパルタ指導を受けていた銀ちゃんとしては心配の気持ちが抑えきれなかった、ということになるらしい。
いやまぁうん、彼女の指導を受けたのならそういう感想が出てくること自体はおかしくない。
……おかしくないんだけど、同時に彼女のことを理解しきれてないんだなぁ、とちょっと可哀想になってくる私である。
「はぁ、可哀想?」
「説明したか忘れたから、一応改めて言っておくけど……彼女、私とマトモにぶつかっちゃいけない類いの存在だからね?」
「……はい?」
「ネオグランゾンとディス・アストラナガンみたいなものというか。……迂闊にぶつかり合うと宇宙を飲み込む衝撃を発しかねないのよ。そういう意味では、周囲への影響を生じないキンクリ空間でやろう、ってなった辺り配慮が行き届いているというか」
「はい???」
まず、通常空間において私とTASさんが殴りあう、というのはご法度もご法度、禁則事項の一つである。
それが何故かと言えば、彼女の性質と私の性質が悪い方向に噛み合ってしまうため。
……無限だろうがなんだろうが真正面から削り飛ばしに掛かるTASさんと、実のところ倒される方がメインである【星の欠片】──その中でもトップクラスに分類される私との対決というのは、瞬間的に無限に無限を無限回掛け算するような負担を宇宙に生じさせるもの。
その結果なにが起きるのかというと、超新星爆発に匹敵する衝撃波が周囲を襲うのである。
……まぁうん、誰も生き残れないよねというか?
そりゃまぁ、彼女との手合わせに「早まった」なんて感想を抱くのも宜なるかな、というか。
幸いだったのは、流石のTASさんもそこまで傍若無人というわけではなく、周囲に影響を与えないキンクリ空間でそれをやろうと言い出してくれたことだろうか。
……まぁ、代わりに彼女を召喚獣として呼び出したこと自体への埋め合わせは、また別で考えなくてはいけなくなったのだけれども。
……まぁともかく、影響の残らない環境での手合わせ、というのは最終的に当事者の記憶の中にのみその残滓を残すもの。
結果、肉体的にはなんにも疲れていない、ということになるのであった。
「だから、別に何人に増えようが別に疲れを加速させる、みたいなことはないってわけ」
「な、なるほど……いや待った可哀想って結局なんだよ?」
「あ、そっち?それはもっと簡単よ。あれだけスパルタに鍛え上げてきたのに、
「……はい?」
で、それとは別に『可哀想』と言ったことについてだけれど。
その辺はもっと単純、あれだけTASさんに散々しごかれたのに、彼女の考えを理解しきれてないんだなぁ……といった哀れみの言葉である。
なんで哀れむのかって?
修行って結局のところ、師の全てを受け継いでこそでしょう?
それってつまり、師の考え方も受け継ぐってこと。……言い換えれば師の考えを読めるようになってこそ、ということになるだろうか?
で、ここまで語れば自ずと問題点も見えてくる。
私とTASさんがマトモにぶつかり合うはずがない、というのは
それが読めてないということは、すなわち銀ちゃんはまだまだ修行が足りない、ということになり……。
「再び銀ちゃんを鍛えるためだけに、TASさんがこっちに来る可能性があるってわけ」
「 」
「……あ、白くなった」
必然、彼自身に掛かる負担が増える可能性がある、ということ。
そこまで告げれば流石に理解できたのか、真っ白く燃え尽きてしまった銀ちゃんなのでありました。
……ところで、こうして会話してる最中ずっとマシュが頬を膨らませてたんだけどなんでだろうね?