なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「よーし、ウイルスコアの数はこれでかんぺき~」
「
はてさて、三匹を指揮しつつみんながオーバーキルしないように調整を続けた結果、ようやく目標数のウイルスコアを集めきった私達。
結構な時間が掛かったが、これでようやく次の段階に進むことができると言えるだろう。
「にしても……バグだウイルスだって言うんだったらよぉ、いっそのことハセヲのやつがいれば速かったんじゃねーの?」
「あ、それ一番ダメなパターン」
「は?なんで?」
そんな中、手元のウイルスコアを転がしながら、ふと思い付いたとばかりに銀ちゃんが一つ疑問をこぼしたわけなのだが……ふむ。
どうせなので、ひっそりと起こらないように調整してた一つの崩壊の未来でも語ってみるとしよう、と少々張り切る私なのであった。
「……ゑ?崩壊の未来?なんで?」
「なんでって……冷静に考えてご覧なさいよ。ここは何処?」
「何処って……なりきり郷の中にできた新しいテーマパーク的な?」
「着眼点がずれてるわよ。そもそも今手元に転がしてるものはなんなのよ、ってことよ」
「……ウイルスコア……ってあ゛っ、そういやこれハセヲのとこのアイテムっ」
「正確には、それを模したものでそれそのものってわけじゃないけど……」
わけじゃないけど、なりきり郷において──『逆憑依』において、類似するものはその近似値が一定量を越えるとその要素が【継ぎ接ぎ】されかねない、というのは今までの様々な経験が語る通り。
となれば、だ。
この場に仮にハセヲ君がいた場合、このウイルスコアはそれを模したものではなく、
とはいえそれはそれ自体が崩壊をもたらすものではない。
結局のところどちらのパターンにおいても、ウイルスコアと言うのはあくまでアイテムの一つでしかないのだから。
「だから、ここで重要なのはそこに掛かる意味、持ち合わせる属性の方。……ハセヲ君のとこのウイルスコアってことは、必然
「……あー、初代ならバグモンスターだけど、確かハセヲ君のところだと……」
「憑神覚醒──憑神スケィスの力を使ったデータドレインによる敵撃破時の報酬、でしたね」*2
そう、ここで問題なのはそれが入手できる状況。
環境的には初代に近く、されどハセヲ君の場合は入手状況が限られる……。
このずれがもたらすものは、想定以上に大きい。
「とある存在?」
「……彼らが冒険をする舞台である『The World』。その世界はデジタルの世界であるがゆえに、実際のそれと同じ様なプログラムが使われていることがある」
「プログラム……?」
「ある種のワクチンプログラム・カウンタープログラムってやつだね。デジタルの世界に歪な力が生まれた時、それと同等の力を持って相手を排除する存在……」
「あ、クビア!?」
「正解でーす」
初代では、カイトの持つ黄昏の腕輪に。
g.u.では、ハセヲ達碑文PCという存在そのものに。
それぞれ歪を見出だし、それらを排除するために生まれた
それこそがクビア、相手と同等の力を持ってそれを殲滅せんとする、ある種の
今の状況でハセヲ君を自体の解決に投入した場合、それが発生する可能性はとても高いのだ。
「なるほど……確かにさっきのクジラさんはこの世界をデータの海のように泳いでいました。バグがあるからデジタルの世界だと誤認されている、という方が正解なのでしょうが……あり得ないと一笑に付すことはできませんね」
「ああそれと、実は君らの存在もよろしくなかったりするよ」
「……はい?」
「クビアって派生作品とかで人間形態になったことあるんだけど、その時の声が君らと同じでさ」
「……まさかとは思うけど、さっきのコイツとの戦闘で
その話を聞いて、アクアが神妙そうな顔で呟いたのを聞いた私は、実のところ一番危なかったのは彼女達との対戦の時だった、と明かす。
……だってねぇ?あの作品においてもアクア達の声優さんは重要な役割だったからねぇ?
「まずアクアの方が『デジタルな属性の中で生まれた母』ってことでアウラと同一視される可能性大だし*3、そうなったらその反存在──オルタである君はまず間違いなくクビア扱いされてたよね*4」
「……ほんっっとうにアイツいなくてよかったわ!!冗談でもなくマジで!!」
心の底からそう叫ぶオルタに、思わず苦笑を返す私達なのであった。
「そういえばせんぱい?」
「んー?なにマシュ?」
はてさて、ハセヲ君居ない方がいいよ論(どこかで誰かのくしゃみが聞こえた気がした)を話し終え、改めて決戦の地へと赴くための準備を始めた私に、近寄ってきたマシュが声を掛けてくる。
振り返った私は、思いの外深刻そうな表情をしている彼女の様子に目を丸くしたわけなのだが……。
「もしかして、なのですが。先ほどの話で出した例えは……」
「あー、比較の獣ってやつ?」
次いで彼女が発した言葉に、その深刻さの理由を見出だしたのだった。
……確かに、彼女の出身を思えばその言葉は特別な意味を持つものと言えなくもない。
──比較の獣。
彼女の登場作である『fate』シリーズ、その中に登場するある獣に与えられるこの称号は、すなわちキャスパリーグ──アーサー王伝説に登場するとある獣を意味するものでもある。
曰く、人類の競争によって生まれる嫉妬や憎悪を吸収して成長し、必ず相手よりも強くなるとされる存在……。
「まぁ、クビアに当てはめるには少々強引、ってのも確かなんだけどね。基本的に対消滅を狙って歪みと
「……ああなるほど。平時の勇者のようなことが起きない、というわけですね?」*5
最初から相討ち前提で設計されているため、どこぞの獣みたいに残って新たな脅威になるなんてことを心配する必要がない、というのがワクチンプログラムとしてのクビアの有用性である。
……あるのだが、必ず相手と対消滅できるようにと設計されているため、場合によっては酷いことになるのは大問題なわけだが。
「ハセヲさん達碑文PCの能力が高まりすぎた結果、それら全てと対消滅するために生まれたクビアは全世界のネットワークを過負荷でダウンさせてしまうような規模でしたからね……」
「その辺、あくまでデジタルの世界だから規模を気にしなくていいって状況の有効利用だよねー」
現実世界で必ず相手と相討ちになるように、なんてシステムを実現させようとしたら、必要なリソースが馬鹿にならないだろう。
そう考えてみると、極論コピー&ペーストでプログラム持ってくればなんとかなりそうなデジタルの世界においては、カウンターというのは(見る分には)楽なんだなぁ、と思わないでもない。
「で、ここまで語ったところで悪いんだけど……比較の獣云々、実のところまったくあり得ない話ってわけでもないんだよね」
「……はい?」
で、その流れで一応の補足。
クビアと比較の獣は厳密には違う、とは言ったが──それが関連付けられないか、と言えばノーである。
「型月のキャラが関わるんなら型月キャラのデータは常に参照される可能性がある、ってのはさっきも言った通り。とはいえそれだけでは足りないのも事実だから──」
「じ、事実だから?」
「もうちょっと近い人が来ればいい。ぶっちゃけるとハセヲ君と一緒にイッスン君も来てたら、って感じだね」
「……あっ」
そう、イッスン君の元となったのは、
……あとはまぁ、ご想像の通り。
今ここにいない面々が何故いないのか、というのを分かりやすく示す例としてはこれ以上なくわかりやすい二人の存在に、マシュは思わず閉口していたのだった。……まぁ、仕方ないね()