なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「よぉし、これから細かい乱数確認に移行する!銀ちゃん準備はいいか!」
「よくねーけどいいって言うしかねーだろこんなん」
「ヨシッ!」
「それよくないやつでは?」
事件は現場で起きてるんだ!だったら現場にいるならオールオッケーだろ!(?)
ってなわけで、最終調整のお時間です。
具体的には細かい乱数を銀ちゃんが見て、そこから私が必要な行動を取っていくという次第である。
……え?なんで銀ちゃん本人が乱数を調整しないのかって?
「できねーよ!?流石に今回みたくほぼシステムみたいなもんの乱数なんて調整できねーよ!?」
「……とまぁ、そんなわけでして。流石のRTAさんもとい銀ちゃんでも、フレーム単位とかそんな甘い話ですらないものは調整なんてできないってさ」
「そんな……じゃあなんのためにあんな苦しい戦いを勝ち抜いたのよ貴方」
「勝ち抜きたくて勝ち抜いたわけじゃねーんだよなぁ!!?」
同じ未来系の能力持ちであるTASさんの薫陶を受けた銀ちゃんのそんな弱音に、思わず白けたような視線を向けるおぜうさまである。
まぁ、それを向けられた方の銀ちゃんは普通にキレてたわけなのだが()
……ともかく。
言ってしまえば基盤を弄れ、みたいな領域の話だったため銀ちゃんにその手段がないので弄れない、というのが今回の真相である。
なので、しょうがないから
「……なぁ」
「なにー?」
「……この体勢である必要ってあるのか?」
「なによー、まな板じゃぁ嬉しくないってか?このこのー」
「そうじゃなくて周囲の目が怖ぇんだよ!!?下手するとこのまま俺の死亡が確定しそうなんですが!?」
「あははは大丈夫大丈夫、仕方のないことだからみんな納得してるよこの状況には。まぁ勿論?銀ちゃんが
「だったらからかってくるんじゃねー!!」
「にゃはははー」
はい、周囲の目線が痛いわけですが、一番痛い思いをしてるのは多分銀ちゃんってね?
……今現在なにをしているのかというと、胡座を掻いた銀ちゃんの後ろから抱き付くようにして私が密着している、という次第である。
あれだ、丁度私の胸元に銀ちゃんの後頭部がある状態、みたいな?
あすなろ抱き*1を男女逆にした形……って言えばわかる人にはわかるかなー?
これ昔『女子がされたら恥ずかしいけど嬉しい抱き締め方』として話題になったらしいねーまぁやってるの反対だけど。
……はい、なんでこうなってるのか真面目に解説致しますと。
普通に視界を同期するのがまっったく良くなかったから、というのが一番の理由になりますね。
「と、言うと?」
「普通に視界を同期する場合、それって私が見てるものを銀ちゃんも見れるようになる、って形になるのよね。それだと今の銀ちゃん
「なるほど……?」
まず、普通に視界を同期する場合。
これは私と銀ちゃんの視界を重ねる、という処理になるのだが……これが問題になるのは【俯視】の話題の時に何度か触れた通り。
そもそも私自身の視界も【俯視】なので、結果的に銀ちゃんに『私の魂の見方』を
……まぁ、仮に【俯視】でなくとも【星の欠片】じゃない存在がそうである存在と視界を共有するのは問題しかないため、どっちにしろその系統のやり方は端からアウトだろう。
となると、私が勝手に銀ちゃんの視界を借りるしかないのだが……それはそれで問題があった。
「近い未来にどうなるかはわからないけど……今の銀ちゃんってRTAさんみたいなものなのよね」
「まぁ、TASさんにずっと稽古を付けて貰ってたんだし、その辺に疑問はないけど……それがなんの問題が?」
「大有りだよ大有り。
「……んん?」
そう、その問題というのが、今の銀ちゃんの視界は特殊なモノになっている、という点。
詳しく説明するとややこしいことになるので、雑に結果だけ述べさせて貰うと……今の銀ちゃんの視界をなんの対処も無しに借りた場合、私の目は『星女神』様になるだろう。
「…………????」
「正確には『星女神』様のそれと同じになる、だけどね。……まぁ要するに、今の銀ちゃんの視界はかなり特殊な状態だから、人によっては強化パーツみたいなことになるってこと。望むと望まざるとね」
強化パーツだとわかりにくいのならば、ポケモンの進化の石系列だと思えばわかりやすいか。*2
迂闊に触れると不可逆の変化をもたらしてしまうため、そうならないように対処をしておく必要がある……というか?
……逆に言うと、あのTASさんわりととんでもない存在だってことになるのだが……まぁ、その辺は今さらである。
「ともかく、普通に私が視界を間借りする、って形だと大問題なわけ。だから、仮に視界を同期するなら細かい調整をしながらじゃないとダメ、ってことになるわけよ。おわかり?」
「……わかりましたが、今私は冷静さを欠こうとしています」
「ひぃーっ!!?盾の先が!?盾の先が鼻の先を掠めた!?」
「まぁまぁマシュさん。今回銀時君は悪くないんですから、そういうのは止めてあげましょう?──ええ、今は悪くないんですから、ね?」
(やだ、目がまったく笑ってないわぁ)
で、その辺を上手いことやるために必要だったのが、このあすなろ抱きだったわけなんだけど。
……うん、それで納得できるなら警察はいらないというか?
そんなわけで、据わった目で盾をブンブン素振りしてるマシュと、絶対零度の目線で銀ちゃんを眺めてる桃香さんとXちゃんをどうしたものかなー、と冷や汗を流す私なのでした()
……銀ちゃん大変ね、と他人事の感想はともかく。
確かに、細かい視界の調整だけならこうして銀ちゃんに私が抱き付く必要はない。ないのだが……。
「それだと乱数調整は無視する、って形になっちゃうから。視界の調整しつつ乱数も調整するってなると、こうして胸元から逃げられないように銀ちゃんをホールドしないとダメなのよ」
「……羨ましい……っ!」
(変われるんなら変わりたい、って言ったら俺の顔面が凹むんだろうなぁ)
(『せんぱいに抱き締められてるのになにが不満なんでしゅか!』って言われそう?)
(そうそう……って、念話で頭ん中覗くなし)
(いや覗くためにこうして近づいてるんだけど?)
(……そういやそうか)
こう、調整を半ばオートメーションするにはこの体勢以外無い、というか?
……いやまぁ正確にはあるにはあるんだけど、その場合膝枕とかの『相手がリラックスできる状態』を維持する必要が出てくるんで、余計のこと問題になりそうというか……。
とまぁそんなわけで、何故か衆人環視の中で抱き合う私と銀ちゃん、みたいな珍妙な状態が引き起こされることになったのでしたとさ。
……これは余談なんだけど、ここに至るまでに道中のプールで銀ちゃんが
はてさて、実は九死に一生を得ていたことに気付いていない銀ちゃんをそのまま抱き締めつつ、改めて乱数調整のために視界を共有。
ついでに周囲の煩わしい視線()については脳内からシャットアウトだシャットアウト。
(ふーむ……少し走りすぎてるのがあるからこれを遅延して、それからあっちは遅れてるから逆に速めるように動かして……)
(あっちはいいのか?)
(よくない……けど、銀ちゃんは指摘しないように。念話もプラスしてるからこうして指摘できるけど、本来はできないしやっちゃいけないんだから)
(へいへい。同一視の問題ってやつだろ、そんくらいわかってますよーっと)
……本当にわかってんのかねこの駄侍は。
ダサは止めろよダサは、と憤慨する銀ちゃんを適当にあしらいつつ、一度数値を俯瞰して見てみることに。
ランダム性しか見えてこない数字の羅列達は、しかしてそれが一種の躍りであるかのように夢中で動いている。
わかりやすく言うと『数字が瞬く間に変動しまくっている』となるわけだが、この数字自体本当に見えているわけではなく、今しがた銀ちゃんが見ているもの・見えているものだと言うのだから笑えない。
はたして
思考が飛んで行きそうになるのを繋ぎ止めつつ、おかしな動きをしている数値がないかをチェック&チェック。
時刻は目的のタイミング間近、ゆえに問題らしき問題は
ついに、私たちは今回の黒幕との対面を迎えようとしていたのだった──。