なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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表裏一体の鏡のような

「……ん、纏まった。んじゃあ説明再開するけど、聞く準備できてる?」

「む、少し待て今切るべきカードを決めている最中でな」

「こいつ無駄に強いんだけど、本当に俺を元にしてんのかこいつ……」

「いやなにやってんの君ら?」

 

 

 視界の端に居たから丁度気付かなかったけど、なに君らトランプしてんのよ、仲良しか?

 いやまぁ、正確には『貴様には負けん』的な敵愾心ゆえの行動の一貫、ってことになるらしいけど。

 ……あれだ、これもまたゲーティアだったら起きてなかったこと、というか。

 

 

「言葉を用いずとも打倒は可能だが、あらゆる面から打倒してこそ我らの優位は証明される。端的に言うならなんの分野であれ、我らに負けはないということだ」

「うわ面倒臭ぇ、滅茶苦茶負けず嫌いじゃねぇかこいつ」

「それ銀ちゃんが言えた義理です?」

「…………」

「自覚があるようだな、いいことだ」

「オメーはどこ目線なんだよっ!?」

 

 

 シュガーティアさんは見た目こそ強面だが、意外と話のできるタイプ、ということだ。

 最終的に銀ちゃんから独立できれば(今は)いいので、そこまで強く憎しみとかを抱いているわけでもなさそうだし。

 

 

「これがしっかりゲーティアとして成長してたら、それこそ今ここで人理砲飛んできててもおかしくないからねー」

「まぁ、その場合はもっと上手く隠れているがな。こうして貴様達に踏み込まれたのも、元はといえば本来の第二宝具・【戴冠の時きたれり、其は全てを始めるもの(アルス・パウリナ)】が機能していないがためであるのだから」

「……まさかとは思うけど、この狭い部屋お前の宝具なの?」

「そうだが?」

「道理でたどり着けないわけだわ……」

 

 

 なお、道中のあれこれがうまく行って、ゲーティアとして明確に存在できるようになっていた場合、今より遥かに攻略が難しくなっていたことは言うまでもない。

 こうして彼らの居城──第二宝具【戴冠の時きたれり、其は全てを始めるもの(アルス・パウリナ)】に()()()()()()()()劣化宝具、【至福の時きたれり、其は頬を落とすもの(アップル・パイ)】ですら、私たちはバグの利用によってしか到達できなかったわけなのだし。

 

 ……いやまぁ、当たり前と言えば当たり前なんだけどね?

 劣化とはいえこれは一種の固有結界に類するもの。『己の中』という隔絶された世界を現実に()()ものであるのだから、そりゃアクセス手段なんてあるわけないのだから。

 

 

「……それはいいんだけど、なにその名前」

「え?今私が彼を解析して見た宝具の名前だけど?」

「辛うじてアとかルとかパとかしか掠ってねぇけど!?」

「仕方があるまい、我らは菓子そのもの・および其れらへの貴様の執着より生まれし存在。ゆえに使えるものは基本菓子ばかりなのだ」

「えええええ……????」

 

 

 肩を竦めるシュガーティアさんである()

 ……いい加減話を戻して、なぜシュガーティアさんに勝てるのが銀ちゃんだけなのか、という部分に触れると。

 

 

「まず、存在の位相の問題だね。現状のシュガーティアさんはゲーティアになろうとしてなりそこなった存在。言い換えると存在としてあやふやってことになるわけ」

「貴様達と同じと言うことだな。些か業腹ではあるが」

「一々口悪いなこいつ……」

 

 

 まず、成立の仕方が仕方であるがゆえ、とにかく直接的な干渉し辛い・され辛いという部分が大きい。

 本来ならゲーティアの【鏡像】のような存在として彼はこの世界に顕現することを目論んでおり、もし仮にそれが成就していた場合、そもそも今回みたいなことにはなっていない可能性が大であった。

 

 あれだ、BBちゃんのことを語る時にたまーに話題に出す『リソースさえあれば過去と未来は案外自由にできてしまう』、みたいなやつ。

 ゲーティアとして成立するのは銀ちゃんがミスった()の話だが、その結果として生まれたゲーティアは()()()()()()()()()()()()()()()()、みたいな?

 

 

「なにそのチートみたいなの……」

「存在としてそういうものだから仕方ない、というか?見方を変えると、今こうして会話できてること自体がシュガーティアさんとゲーティアとの力量の差を如実に現してるとも言えるのかもだけど」

「我らが真に完成していたのであれば、今この地表は既に焼き尽くされていただろうからな」

「マジに人理案件やんけ……」

 

 

 最初からそう言うとるやないかい。

 ……とはいえまぁ、仮にゲーティアとして成立していたとしても、勝ちの目自体はあったのだが。

 

 

「え、そうなの?」

「そりゃまぁ、珍しい出現の仕方をしているけど、基本的な部分は彼もまた【兆し】の類いですもの。……原作再現には弱い、って言われればなんとなく答えは見えてくるでしょ?まぁその場合、本当に銀ちゃんは消える羽目になってたんだけども」

「ゑ?」

 

 

 その勝ちの目というのが、【兆し】としての性質。

 原作で起きたことをなぞりやすい・ないしは原作通りの結果を引き寄せやすいというそれは、それゆえに大抵の【兆し】達にとってのウィークポイントとなりうるものである。

 ある意味では負け癖とかに近いのかも知れないが……ともかく、『そうなりやすい』という事象(ほころび)が一つあるだけで、ゲーティアみたいな完全を謳う存在は遥かに倒しやすくなるわけだ。

 

 無論、それだけで倒せるほど甘い存在というわけでもなく──恐らく、仮にゲーティアを打倒するとなればその存在のきっかけとなった──()と同じ位置にいることになる銀ちゃんの消失、それからマシュの犠牲と、それを回避するために必要な()()()が失われる、という形に落ち着くはずである。

 

 

「なるほど……再現性は相手だけに言えることではなく、私達の方にも適用できてしまうということですね……」

「今の我らに貴君へと思うことはなにもないが、恐らく真に成立していたのなら執着もまた後から追い付いてくるのだろう。【兆し】というものの因果は驚くほどに強いようだな」

「……こういうのも当事者トークって言うのか?」

「私に聞かないで頂戴……」

 

 

 神妙な顔で本来起きていたであろう事象に思いを馳せるマシュとシュガーティアさん。

 それから、そんな二人の姿を見て隣のゆかりんに小声で尋ね始める銀ちゃんと、わかんないわよと眉を落とすゆかりんである。

 ……因みにだが、この話になってから桃香さんがずーっと笑顔で固まってるのですが、あれかなやっぱりビーストⅠiになりうるという要素が迂闊に口を開くのを躊躇わせるとかそういうやつかな?

 

 閑話休題。

 いい加減話を戻すと、ゲーティア状態でも打倒の道はあるわけだが、その場合銀ちゃんは消失する──言い換えると『打倒のチャンスを作る』役割に留まるわけなのだが。

 これがことシュガーティアさん相手の場合、チャンスではなく彼自身が打倒できる・もとい()()()()()()()()()()相手になるのだ。

 

 

「で、それがなんでかっていうと、あやふやな存在だからこそその存在はどこまでも銀ちゃんに紐付いてしまうから。わかりやすく言うと、その実ここにいるシュガーティアさんは()()()()()()()()()()()()ってわけ」

「はい?!」

 

 

 根本的なところを言うと、今のシュガーティアさんは()()()()()()()()()()みたいな扱いになっている、というか?

 現状の銀ちゃん自体も本来の銀ちゃんが確率論的に分裂した存在だが、その延長線上にシュガーティアさんも居るというべきか。

 

 

「それがどういうことになるのかというと。例えば他の人がシュガーティアさんを殴った場合、それはもれなく銀ちゃんを殴った扱いになるってわけ」

「はいぃ!!?」

 

 

 それによってわかりやすく生じる問題が、他の人の介入が不可能になる、という点。

 こうして他人にも観測できてしまうので勘違いしてしまうが、概念的には今のシュガーティアさんは銀ちゃんのイマジナリーフレンド*1みたいなものなのである。

 

 そのため、シュガーティアさんに対して干渉しようとすると、もれなく銀ちゃんに対しての干渉に変換されてしまうのだ。

 なので、例えば今ここで私が徐に光帯を回して人理焼却ビームを放った場合、確かにシュガーティアさんも消えるが真っ先に消えるのは銀ちゃん。

 ……どっちかと言うと、銀ちゃんが消えたのでその付随物であるシュガーティアさんも消えた、みたいな扱いになってしまうのである。

 

 

「因みに予想は付くかも知れないけど、この繋がりが変化しない限りシュガーティアさんがやったことはそのまま銀ちゃんがやったこと、って風に世界からは扱われるからね」

「フフフ怖いか、我らは怖い。我らの所業が貴様の功績になるというのもそうだが、なによりなにをしてもお前から逃れられないというその事実そのものが怖い」

「酷い言われようなんだが!?ってか俺も被害者だよなこれぇ!?」

 

 

 なお、仮にこのままなにもせずシュガーティアさんを放置した場合、もれなく彼がやったことが全て銀ちゃんのせいになる……と告げたところ、大層絶望したような表情を彼らは見せたのでした。

 ……銀ちゃんはともかくシュガーティアさん、お前もか。

 

 

*1
『空想上の仲間』『想像の中の友だち』と言った意味合いの言葉。一人遊びの際に想定される実態のない誰か、とも。その人の脳内にしかいない存在

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