なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……ん?いやちょっと待った、そんなに便利ならなんで最初からやらなかったんだ?」
「お、いいところに目を付けたね。結論から言うと、これデメリットがすごいんだよ」
「デメリット?」
はてさて、本人に聞けないなら本人に聞けばいい、とかいうお前なに言ってんの?……みたいな解決策をまともにやれちゃうのが【偽界包括】だよ、って話を前回していたわけだけど。
そうなると、必然的に思い浮かんでくる疑問があると思う。
その辺は銀ちゃん達も同じだったようで、その疑問──なんで最初から使わなかったのか、という言葉を投げ掛けて来たんだけど……うん、つまるところデメリットが大きすぎるのがその理由なんだよね。
「さっきからずっと『使いたくないけど』とか言い連ねてきたけど、本当に最後の最後・追い込まれて追い込まれた先でもないと可能なら使いたくないのがこの方法なんだよね」
「ああ、そういやずっとそんな感じのこと言ってたな……で、結局なんでそんなに嫌だったんだよ?」
「答えはこのCP君を見てればわかるよ」
「あん?」
ってなわけで、説明するより実際に見た方が早いだろう、ってことでさっきから黙ってるCP君の方を向くようにみんなに指示する私。
そうして周囲の視線を集めることとなったCP君は、少し恥ずかしそうに身を捩ったあと。
「そんなに見詰められると照れるなぁ。ところで、ボクはなんで呼ばれたんだろうか?あれかな、我らが親愛なる神・キーアについての話でもすればいいのかな?」
「…………」
「こっちみんな」
至極当然、とばかりに問題のワードを吐き出したのであった。
それを聞いた面々が、ギギギと鈍い音が聞こえて来そうな感じにこっちに首を向けてくるんだけど……うん、ある意味予想通りの反応ありがとう、あっち向け。
「……確かに彼らは並行世界における本人達みたいなものだけれど。それより前に注目しておくべき要素が一つある。それが、」
「【偽界包括】は人の中の世界。だからそこから出てきた人達は、もれなく『その【星の欠片】出身である』という属性が付く……と?」
「そういうことでーす」
桃香さんの言葉に苦笑いしつつ頷く私である。
……そう、【星の欠片】は一つの世界でもあるため、並行世界として普通にカウントされてしまうのである。
結果、【偽界包括】で出てきた存在はその【偽界包括】の持ち主──この場合は『キーア』という世界から現れた存在、ということになってしまうのである。
もう少しわかりやすくいうと『創造神・キーア』になってる世界からやって来た人、って扱いになってるというか。
そのため、自動的に創造神扱いの私に対して滅茶苦茶敬意を……いや、それだと誤解を生むのでちゃんと表現すると。
「ぶっちゃけ狂信者のノリになるのよ。『創造神・キーア様のために馳せ参じました』とか平気で言っちゃう感じというか」
「はっはっはっやだなぁ。我らの神が嫌がるようなことなんてするわけないじゃないですかやだー」
「……あんなこと言ってるけど?」
「口ではどうとでも言えるわ……っ!!」
……うん、世界のために身を投げ出せるレベルでガンギマリの人しか居ない、というべきだろう。
それだけならまだしも、表面上はちゃんと取り繕えるので質が悪いというか。
まぁそもそもの話?【偽界包括】が
「と、言いますと?」
「根本的には相殺の術式なのよ、【偽界包括】って。自分同士の戦いなら痛み分け以外ないでしょ、みたいな感じの」
本来【偽界包括】は鏡の中の世界を意味するものである。
左右が違うだけで、それ以外はまったく同じ世界が広がるのが鏡の中……。
それを【星の欠片】として体現するとこうなる、というか。
鏡を一枚隔てることで『鏡の』中にしかない、『鏡の』影響を受けざるをえない世界を作る……とでも言えばいいのだろうか?
ともかく、元の世界に対して反対になるように──言い換えると相殺するような性質を持って現れるそれらは、詰まるところ元となる存在を確実に押し止めるモノとなるわけだ。
「左右が逆、ってのがポイントね。強いものが弱くなるとか、はたまたその逆とかじゃなくて、あくまで方向性が違うだけ。力量とかはまったく同じだから、結果として互いの行動を邪魔しあい打ち消しあう、と」
「なるほど。で、それが今回の話とどう関係があるんだ?」
「大雑把に言うと、【偽界包括】で出てくる存在って言うのは、目の前に相対した相手を確実に足止めする相手ってこと。
余計余分な労力を使わず、かっちり相手と同質のモノを持ち出して止めるためのもの、とも言えるだろうか?
特に止めるってのがポイントで、これは相手を打ち倒すことを目的としていない──【星の欠片】の原則に引っ掛からない、ってことになるのでわりと使い勝手がよい……って、その辺は今回は関係ないか。
「ともかく、相手を足止めするのにとても有効ってのがポイントなんだけど……それを前提に置くと、まずクリアしてなきゃいけないことがあるわけ。なんだと思う?」
「え?えーと……」
「……ああなるほど、複製した相手が
「Xちゃん正解~」
そう、相手を足止めするのに必要なのは、なによりも複製した相手が相手とちゃんとかち合ってくれるかどうか。
本人とほぼ同一であるのならば、作り出した人間に従うよりも同じ相手と意気投合してしまう、という可能性の方が高いはずなのだ。
「無論、同族嫌悪で敵対する、ってパターンもあるけど……大抵の場合、自分同士なら争うより協調する、って方があり得るパターンでしょ?闇雲に相手を複製したところで、それがほぼ同一であるならば同一であるだけこっちの指示に従ってくれる可能性は低くなるってわけ」
あれだ、特撮になるけど『MOVIE大戦フルスロットル』における仮面ライダーバロンみたいなものというか。*1
創造主だから無条件に従って貰えるわけでもない……となると、複製をぶつけて相討ちさせる……というのは案外成功率が低いもの、ということになってしまうわけだ。
「その辺の解消のため……ってわけじゃないんだけど、【偽界包括】は一つ付随する効果がある。それが、」
「その【星の欠片】出身の、って扱いになるってやつか?……いやでもさっきの例を元にするんならそれでも普通に反抗されねぇか?」
「それがそうならないのが【偽界包括】のヤバイところでねー。……ぶっちゃけると、『創造神』って考え方が間違いなんだわ」
「はい?」
先ほど、創造主であっても被造物の協力を得られるとは限らない、と述べた。
であるならば、それが【星の欠片】であっても変わらないだろう、と疑問を抱くのもおかしくはない。
ゆえに、ここで考えるべきなのは【星の欠片】の性質。
彼らはあらゆるものに含まれ、あらゆるものを構成する素材でもある。ということは、だ。
「【星の欠片】出身の場合、出てきた存在には一つの属性がくっつくことになる。──みんなその【星の欠片】の子供みたいなもの、っていう属性がね」
「……うわぁ」
……ある意味キリアが母親面してる理由というか。
根本的に、【星の欠片】はあらゆるモノの父なり母なりになりうるもの。
こと【偽界包括】においてはその面が強く出るため、結果としてこれによって呼び出された存在は全てその【星の欠片】の子供のようなモノになるのである。
それも単なる子供ではなく、その人がそうなる過程において、常に見守ってくれていた相手という扱いになるというか……。
「ええと……?」
「とある宗教においては『主が見守っています』なんて言われることがあるけど、【偽界包括】によって映し出された世界の中では実際にその【星の欠片】が見守ってくれてるし、住んでる人達もそれを実感・体感できちゃうってこと。全自動狂信者育成マシーンみたいなもん、って考え方で間違いないよ」
「うわぁ」
……実際に存在するかわからない相手でさえ、宗教という形であるならば信仰を集めうるのだ。
となれば、実際に神に等しい相手がずっと傍に居て、自分のすることを全部見守ってくれているとなったら、はたしてどれほどの盲信・狂信を生むだろうか?
……【偽界包括】の中というのは、まさにそんな感じの世界。
確かに並行世界ではあるものの、同時に人によっては『絶対こいつを同一存在だと認めるもんか!』って烈火の如く怒り出しそうな存在が跋扈するのが、なによりも問題であり利点……ということになるのであった。*2