なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「えー、結局色々回って色々やろう、って形になりました」
「なるほどねぇ。……ところでそちらの方は?」
「デスモモイでーす」
「大きくなってるー?!」
はい、一通り見て回ったあと、報告のためゆかりんルームに戻ってきた私たち。
そこでゆかりんに大きくなったデスモモイを紹介したんだけど……ええ、才羽さんの方じゃないですデスモモイのままです、と答えたところ、見事なまでの宇宙猫顔を披露してくれたのだった。……気持ちはわかる。
「いや、というかどういう原理で人型にしたの貴方……?」
「『過剰黎明』とか【偽界包括】とかあの辺りの応用」
「オーケー、よくわかんないってことがわかったわ」
いやそれはわかんないんじゃなくて思考を放棄してるだけで(ry。
……これ以上小難しいことを考えたくない、と遠回しに告げるゆかりんに小さくため息を吐きつつ、改めて話を戻す私である。
「えーとまぁとりあえず、人型になったからあれこれ手伝って貰えるようになったし、このまま準備に連れ回すってことでいいかな?」
「……まぁ、別に【複合憑依】とか【継ぎ接ぎ】とかになったんでもないのなら新しい手続きもいらないし、そのまま連れ回していいわよ?」
「【継ぎ接ぎ】ではないんですね、今のモモイさん……」
「?」
「まぁ、あくまで本人の要素を強めた形でしかないから……」
あれだ、許容量をオーバーしてるわけではない、みたいな?
例えば【継ぎ接ぎ】、これは元々あるものに対してなにか別のものを付け加える、という処理を行うモノである。
そしてこの『付け加える』という行為、実のところそれそのものに追加されたモノを保持する機能は備わっていない。
わかりやすく言うと、頭の上に雪玉を乗っけているようなものなのだ。
「固定されていないので、そのままだと滑り落ちる……ということですか?」
「まぁ、端的に言うとね?とはいえ滑り落ちてしまう場合は【継ぎ接ぎ】ではないから、明確に言うと【継ぎ接ぎ】の前段階というべきなのかもだけど」
以前【継ぎ接ぎ】の成立条件について述べた時、なにかしらの引っ掛かりが必要だと述べたと思うのだが、まさにそれである。
一口に【継ぎ接ぎ】と言っても、引っ掛からずに滑り落ちて行く場合もある。そしてその場合は結果として【継ぎ接ぎ】が解除──もとい、成立しないので変化が発生しない、と。
「表面張力が効いてる水の上に更に水を溢すようなもの、とも言えるかも。ある程度は乗せられるけど、ある一定量以上は溢れ落ちるでしょ?」
「コップの縁より下にある水が本来の百パーセント、ということですね」
まぁ、表面張力の場合は『繋ぎ止める力』が存在しているので、厳密には今回の説明には向いてないのだけれど。
……ともあれ、単に乗っけているだけの状態なら滑り落ちるのも仕方のない話。
それをなんらかの理由で以てして『繋ぎ止める』ことができる場合、そこで初めて【継ぎ接ぎ】になるわけである。
で、このことを前提に置くと、【継ぎ接ぎ】というのは大なり小なり
「よく言ってる『再現度の総量が多い』ってやつね。比率じゃなくて総量、構成に使われてるエネルギーの規模が大きい、ってやつ」
「本来枠の中に収まるはずのものが、枠からはみ出てもなおそこに留まっている……そういうおかしさを【継ぎ接ぎ】とかは抱えてる、って話よね」
本来百のところ、【継ぎ接ぎ】の場合は百十とか二十とかになっている……というわけだ。
それは裏を返すと、【継ぎ接ぎ】のような存在達は
「さらに発展させると、総量が百を越えないならそれは特殊な『逆憑依』ではない、ってことになるわけ。デスモモイの場合、その中のモモイとデスモモイの比率を変えただけだから、あくまで単なる『逆憑依』でしかないってわけ」
「……まぁ、その辺の比率を変えられるのなんて、多分貴方達くらいのモノでしょうけど」
ゆえに、ミーム系のキャラの場合ミーム成分を薄め本来のキャラの成分を高めてやると、今のデスモモイみたいに様々な変化が現れることになるわけだ。
……まぁこれ、実は偶然の結果だったりするんだけども。
「んんー?私の聞き間違いかしら、なにか聞き捨てならない台詞が聞こえた気がしたんだけど?」
「聞き間違い違いますーあってますー。……最初に『想定と違った』って言ったでしょ私」
「言って……ましたね、確かに」
詳しくは前話参照……というメタい台詞は置いておくとして。
ついさっき、私はデスモモイを今の姿に変化させた際、『普通の才羽モモイになるように』やった、というような旨の言葉を呟いていた。
結果としてはご覧の通り、彼女は依然変わらずデスモモイのままなわけだが……。
「さっき『過剰黎明』とか【偽界包括】とかの応用、って言ったでしょ?大雑把に言うと、本来の『才羽モモイ』のデータを上書きしようとしてたってわけ」
「なんと?」
まぁ、上書きだと今の状況が説明できなくなるので、より正確に言えば『才羽モモイ』の情報を一人分、まるまる今のデスモモイに【継ぎ接ぎ】しようとしていた、ってことになるんだけども。
「おぃィ?なにいきなり無茶苦茶してるわけ?」
「いきなりブロント語で説教するのはよくないと私思うワケ。……いや、変なことになるつもりもするつもりも無かったのよ?本人の情報だから拒絶反応とかでないし」
応用した技術の中に【偽界包括】があることからわかるように、持ってきた情報──データは(並行世界の)彼女のもの。
特に問題なく、すんなりと馴染むはずのモノであり、想定通りなら彼女の中のデスモモイ成分を追い出すようにして収まるはずだったのだ。
「まぁ、結果としてはご覧の通り、単に互いの比率が変わっただけなんだけどね!」
「え、ええと……【継ぎ接ぎ】ではない、と?」
「さっきのコップの例えを持ち出すなら、超過分は全部溢れてったわ!」
「ええ……?」
あれだ、たまにいる【継ぎ接ぎ】が発生しないタイプの子に当たった、みたいな感じというか。
……まぁともかくである、今現在のデスモモイはモモイ成分が強めのデスモモイ。
それゆえ普通に喋れるし、とにかく他人をサツガイ()しようともしない、ちょっと言動が過激なだけのモモイみたいなもんである。……本来のモモイは他人を殺そうとしないとかすごくまっとうなツッコミはよしてくれ。
とにかくだ、そんなわけなので特段特別な要素もなく、このまま作業に同道させることに問題はまっったくない、というのは間違いあるまい。
「ん、んー……本当になにもないのかと言われるとちょっと首を傾げちゃうけど、でも確かに【継ぎ接ぎ】とかではないっぽいのよねぇ……」
「せんぱいには効いてなかった、洗脳らしき効果については不明ですが……」
「私そんなの出してないよー!?」
「……とのことですので、現状は考慮のしようもない、と言ったところでしょうか?」
微妙に居心地悪そうなデスモモイに苦笑しつつ、改めてゆかりんに問い直す私たち。
結果、まぁ問題ないでしょうという彼女のお墨付きを貰い、改めて街に繰り出すこととなったのであった。
「一時はどうなることかと思いましたが……無事作業が再開できそうでよかったですね、せんぱい」
「そうだねぇ。幾つか店とかはピックアップしたけど、さっきまでの段階だと実際にみんなが楽しめるかは微妙なところだったからねー」
「そうなんだ?」
「そうなんだって言ってる君が問題だったんだよなぁ……」
「えー?」
デスモモイドラムモードでボウリングができるんならやってみろ、というか。
……外で遊ぶとなると、やれることと言うのは限られてくる。
特に遊技場的なものとなれば、歓迎会に適しているという意味合いからしてピックアップされる遊びも限定されるというか。
具体的には○ウンド○ンにあるような施設が対象になるわけだが、その内ボウリングなどの体を動かす競技は、さっきまでのデスモモイだと楽しむのは難しい話だったと思われる。
言語に関しては謎に通訳?されてたけど、動き方は普通に見た目そのまま──パンジャンドラムを思い出す移動方そのものだったからね……。
「さ、流石に爆発しながら進むような話ではなかったと思うんだけど!?」
「包丁をザクザク地面に刺しながら進むのは似たようなモノだと思うんだ……っていうか切れ味いいのか悪いのかよくわかんなかったしあの包丁」
切れ味がいいなら地面に刺さるのではなくそのまま沈んで行きそうだし、かといって切れ味が悪いならそもそも地面に刺さらないだろう、というか?
……移動に問題ない、精々スパイク程度の保持力だったということなのだろうが、なんとも釈然としない。
まぁともかくである、現在の彼女はしっかりと両手両足が揃った状態、となればできる遊びの幅も広がっているというもの。
これで大手を振って、普通の遊びを勘定に入れられるというわけだ。
「む、むぅ……無茶苦茶言われてるけど間違ってはないから怒るに怒れない……」
「ああでも、一つあったね問題点」
「ふぇ?」
「そうやってすぐに怒るための理由を探すところ。
「……ねぇマシュちゃん、これは流石に普通に怒っていいところだよね?」
「え、ええと……ノーコメントでお願いしましゅ……」
「えこひいきだー!!こうなったらみんなぶち○がすよー!!」
「うわでた」
にょきっ、とデスモモイの両手から飛び出した包丁を見て思わずそう呟く私である。
……しばらく追っかけ回されたのは言うまでもない。