なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「あ、キーアさんなの」
「へ?どこよなのは……ってあ本当にいる。おーい」
「この声は……なのはちゃんに凛ちゃん?」
なんか、場所に相応しくない(学年的な意味で)声が聞こえたような?
そんな風に訝しげに思いつつ、人の波を掻き分けて進んでいけば、筐体の前に立つ三人の少女──いや一人は女性って感じだけど、ともかくなのはちゃんに凛ちゃん、それから翼さんの姿を見つけることとなったのであった。
「ええと、知り合い?」
「まぁ、知り合いと言えば知り合いだね。ええと、こっちはデスモモイでそっちは高町なのはと遠坂凛、それから風鳴翼だよ」
「宜しくなの(デス?)」
「宜しくね(デス?)」
「宜しく頼む(珍しい名字だな……)」
勿論モモイにとっては初対面なので、軽く互いの説明をしておいたんだけど……うん、名前についてた『デス』に反応してる顔だなこれは?
なんなら翼さんに至ってはなんか変な勘違いしているやつだなこれ?
「む、何故わかった!?」
「翼さん顔に出過ぎなんですよ……」
「なん……だと……」
「言葉が分かりにくい分態度で分かりやすくなってるんだからいいことなんじゃないの?」
「そうなの。翼さんの言葉は難解すぎて時々本人ですらまともに扱いきれてないの」
「な、なんだか妙に当たりが強くないかしら……?」
なお、その結果として翼さんが弄られることになったが、その辺は私の管轄外である。
……ともかく、こちらとしては当初の目的を果たす方が先、というわけで、その目的──筐体の前に立っている三人にそれがなんなのか、ということを尋ねてみることにしたのだった。
「これか?突然だがキーアは『
「あーっとそれって確か、AR技術を使って自身にホログラム的なモノを投影、その状態でやるサバゲーみたいなものを題材にした漫画よね?『次にくるマンガ大賞』にもノミネートされまくってるやつ」*1
「あ、ああそれで間違いないぞ(なんで微妙に説明口調……?)」
そうして返ってきたのは、ある意味私達に馴染み深いとも言えるのかもしれない作品──『AR/MS!!』についての言及だった。
この作品はなりきり系サバゲーとでも言うべきものを題材とした作品であり、『逆憑依』とも親和性があるため読んでいる人が多い、というものである。
なんならなりきり郷内ならベストセラー間違いなしというか。……え?外?出版社が分かりにくいから書店とかだと探しにくいんじゃないかな()*2
まぁともかく、ここで話題に出せば誰もが知ってるよー、となりそうな作品の話をする辺り、この筐体もそれに関連したものなのかなー、と予測しながら声をかけ直したのだけれど。
「当たらずも遠からず、と言ったところだな。発想の参考元になっている、というべきか」
「発想の参考元?」
「そうだ。基本的に人間というのは大なり小なり変身願望を持つもの。であるならば、それを満たせる作品があれば群がるのも無理はないと思わないか?」
「ふむ……」
まぁ確かに、その辺は納得できるというか、私達は納得せざるを得ないというか。
根本的には『逆憑依』はなりきりから派生するもの、一部の例外を除けば
となれば、そんな人達が集う場所で求められるもの、なんてものは限られているのかもしれない。
「この時点でなんとなく予想はできたけど、でもそれって大丈夫なの?」
「大丈夫とは?」
「【継ぎ接ぎ】みたいな問題は発生しないのか、って話」
「その辺りに関しては、
「ふむん?」
そうなると自ずと目の前の筐体がなんなのか、という答えも出てくる。
……出てきた上で、気になる部分が新しく湧いてくるのも事実。
その辺を尋ねてみたところ、翼さんに変わって声を上げたのが隣のなのはちゃんであった。
……最初から疑ってたけど、この三人この筐体に深く関わってるやつだなこれ?
そんな納得を覚えつつ、改めてなのはちゃんの話を聞くと。
「確かに、現実世界で──特にこの場所であの漫画みたいなことをすると良くない、というのは確かなの。滅多に起こることじゃないとはいえ、それは裏を返せば
「……なんでもいいけどキャラ変わってない?大丈夫?」
「おっと、なの。……にゃはは……あっちも魔法少女だったりすることがあるから、気を抜くと宜しくないの」*3
やはり、現実であの漫画みたいなことを──リアルになりきりごっこみたいなことをすると、それが冗談で済まなくなる可能性については既に論じられていた様子。
となると、話としては一つに収束する他あるまい。
「そうなの。『tri-qualia』ほど導入が大変じゃなくてそもそもできることも限られた
「あー、なのはINNOCENT……」
「違うの。あっちは『ブレイブデュエル』なの。こっちは『ブレイジング・デュエル』なの」
「な、なるほど?」*4
そのこだわりはよくわからんけど……とりあえず、ゲーム空間に入って対戦する系統のゲーム、というもので理解としては間違いないらしい。
少し話題に出た『tri-qualia』がネットゲームであるなら、こっちはあくまで対戦に的を絞ったVRというべきか。
「実際、メインシステムはそっちを流用してるらしいわよ?と言っても、あくまで琥珀のやつが解析した結果、そこからリバースエンジニアリング*5したものってことになるみたいだけど」
「なるほどリバースエンジニアリング……今なんて?」
「あー……一応許可は取ってるみたいよ?」
詳しく聞けば、システム的には『tri-qualia』の親戚のようなもの、但しそのまま使うと
わかりやすいところで言えば、『逆憑依』が使っても感覚の二重化──アバター(現実)とアバター(ゲーム)の同期が発生しないのだそうな。
例えば、私達がゲームをやると漏れなくその中のキャラクターの姿が今の私達になるのだが、この『ブレイジング・デュエル』の場合はそれがなく、本当の意味で好きなアバターで暴れられると。
「ええと、じゃあもしかして……?」
「そうだね、モモイの思ってる通りだと思うよ。……他のゲームだとできないけど、このゲームならできる。
「おおー!」
……【継ぎ接ぎ】の発生起因を潰してあり、尚且つアバターが自分の姿に左右されないとなれば、必然今の姿以外で遊ぶことができる、ということになるわけで。
別に今の姿に不満があるわけではないだろうが、たまには息抜きしたい……違う視点を見てみたい、なんて思う『逆憑依』層がこぞって参加している、というのは間違いないらしい。
「それだけじゃなく、単純に対戦ゲームを遊びに来た人もいるわね。リアルで暴力を振るうのは大問題だけど、ゲームの中ならその辺ある程度融通も効くし、ね?」
「そっちは普通の人需要かな?……なんにせよ、人が集まってる理由はわかったよ」
それと、多分今回のトラブル発生起因はここだろうな、とも。
そんな私の言葉に「へ?」という顔をする他の面々に、私は思わず「可哀想に……あれこれやったのに全部無駄になるのね……」みたいな気持ちを抱くことになったのであったとさ。