なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「え、ど、どういうこと!?」
「どうもこうもないよ、どういう風に事態が推移していくのかはともかく、ほぼ確実にこの筐体が問題を起こすことは間違いないってこと」
などと言いながら、隣のモモイに視線を向ける私である。
……うん、デスはともかくモモイってばゲーム部なわけですよ。
そしてお誂え向きに今現在、目の前には新作のゲームが転がっているわけで。
モモイに関連してなにか起こる、と予測している以上はそりゃもう、ねぇ?
だったらモモイにゲームをやらせなければいいのでは、となりそうだがそれも難しいだろう。
「もう出会っちゃったからね!これが出会う前ならまだなんとかなったかもだけど、こうして見付かったからにはどうしようもないね!」
「なるほど……キャラクター的に見てもやらない理由がなく、大局的に見てもやるように流れが収束するということか……」
そう、才羽モモイとしては新作ゲームがあるなら触れなければならず、仮にその辺我慢するというか回避するにしても、周囲の環境が彼女を筐体に誘う、なんてことになる可能性がとても高いのである。
例えば──そう、やらないと決めてここから離れようとしたら、たまたま走ってきた他の逆にぶつかられてよろけた先が筐体の中、みたいなパターンだとか。
「大分露骨な展開だぁ!?」
「まぁ、世の中得てしてそういうもんだからね。俗にいう抑止とかに近い動きというか」
なので、そういった大きな流れを回避するのは不可能に……ってマシュ、なんか言いたそうな顔してるね?
え?そういう流れならせんぱいカットできるのではだって?
「む、なにか方法があるのか?」
「無いわけじゃあないけど……基本的におすすめはしないかなー」
「そうなのですか?」
「そうなんです」
他の面々からの言葉に、小さく頷く私である。
恐らく、マシュは『星解』を使えばいい、というようなことを言いたいのだろう。
確かに、『星解』はその時の因果を解すもの。
そうなるべき、というような強制力の強い展開には滅法強いように思える。
「まぁ、あくまでも思えるだけなんだけども。マシュは何度か聞いてると思うけど、『星解』はあくまでも因果を解すだけのもの。言い換えると、なにかしらの対処を挟まないと結局因果は元の通りに繋がるだけなんだよ」
ただまぁ、これまで何度か説明した通り……『星解』そのものに因果を
あくまで一時的に因果を
原
無論、因と果が離れた時点で不成立になるような物事の場合はその限りではないが、そういう物事はそこまで多くないというか。
「超能力の発動、とかがその例だとわかりやすいね。能力行使の結果そのものが発動という原因に起因してるから、その繋がりを飛ばすとなにも起きなかったことになるわけで」
「ということは、魔法とかも止められるの?」
「いや、そっちは微妙。技術として誰でも納められる感じのモノになると、それが起きる理由が明確になってるから。なんで、遅延にはなっても発動そのものを無効にする、って方向だとちょっと使い辛いかも?」
まぁ、実際に魔法が発動するまでの時間を引き伸ばす形になるので、そういう意味では対処の時間が稼げる≒魔法を止められる、という風に解釈することもできるかもしれないが。
それに対して超能力というのは、基本的にその原理が解明できないものを指す。
何故それが起きるのか、それが原因とどう関係しているのかが他者に理解し辛いとも言えるだろうか?
そしてそれは世界というキャンパスにとっても同じで、タイミングが連続しているのならともかくそれがずれてしまうと、両者が関係していることを把握しきれなくなってしまう。
結果、有耶無耶になって無かったことになってしまう、と。
「それに対して、運命みたいな流れというのは、それ単体を止めたところで周囲の流れから本来の流れを推測する、みたいなこともできるし、そもそも原因と結果にそれぞれの繋がりとでも言うべきものがしっかりと記されている。……もしくは、それが繋がりだと理解できる形になっている、みたいな感じになるのかな?」
まぁともかく、単純な運命が単なる切断で阻害することは難しい、というのは確かな話。
……いやまぁ、『星解』は切断じゃないけども、ともかく『星解』単体で本来起きることを邪魔する、というのは難しいことは確かである。
え?じゃあなにか他のものと組み合わせればいいじゃないか、って?
「それも中々難しいんだよね。なんでかっていうと、今回他に繋げられる因果がないんだよ」
「他の因果……?」
「そ、他の因果」
首を捻るマシュに、そう言って頷き返す私である。
……『星解』による未来の回避方法として、直接的にそれを操作する以外にも一つ、直後の成立を阻害するやり方がある。
因果を解してなににも繋がってない状態にするのが『星解』なのだから、その隙に他の因果と結んでおけばいい、というある種脳筋なやり方がそれである。
「こっちはある意味超能力による現象を引き起こそうとしている、って感じになるね。それぞれに因果が繋がる要素は見いだせないけど、現実にその原因によって結果が引き起こされているって点で」
例えば、雨を降らせる超能力があるとする。
本来それは願うと雨が降る……みたいなものであり、ゆえに互いの因果が結び付かない。
願えば雨が降る、というのはどう見ても成立しないものだからだ。
ゆえに、例えばそれらを引き剥がすと……もとい時間差を発生させると、それらの繋がりは完全に断ち切れる。互いが関係しているという証拠がなくなり、結果として雨は降らなくなる。
「だけど、互いの事象そのものを否定したわけではない。祈るなとも言ってないし、雨が降らないとも名言はしてない。単に互いの繋がりが解けた結果、それらが関係してると言えなくなってしまったというだけの話。だから、仮にそれらが起こる必然性があるのであれば、離したとしてもやがてその二つは一つの線で結ばれる……」
「そうなる前に、他のモノに繋ぐ……と?」
「そういうこと。例えば祈って雨が降るじゃなくて、祈ると槍が降る、みたいにしてもいいね」
もしくは、寝ると雨が降るでもいい。
ともかく、フラグが消費されないまま残っている、という状況が悪いのだからなにかしら適当な結果に結び付けてしまう、というのはこういう話では最適解の一つであることは疑いようもないだろう。
……なのだが、生憎とこの場にはその『フラグの消化先』がないのである。
いや、正確には無害な組み合わせがない、というべきか。
「無害な組み合わせ、ですか?」
「そう。『星解』はそのタイミングのあらゆる因果を一度ゼロに──なににも繋がってない状態にリセットするものだけれど、そのまま放置しておくと基本的には元々の原因と結果が結び付く。これはオーケー?」
「は、はい。大丈夫です」
「その上で、『星解』による干渉で自然と立ち消えになるパターンもあると。……とはいえこの『立ち消えになる』結果っていうのは、原因の方と比べるとちょっと特殊なのよ」
「特殊?」
「そ。結果として表面化しないから、最終的に地雷みたいなことになるのよ」
「じ、地雷?」
もしくは、起こってもおかしくない物事として保存される、とでもいうべきか。
根本的に、世の中の物事というのは起きないものは絶対に起きないものとして定義されている。
……いるのだが、その感覚が人の思うそれとずれているのだ。
わかりやすく言うと、『水がないのに沸騰はしないだろう』みたいなレベルの話というか。
「それがあることを前提とした物事は、それ以降全て発生のしようがない、というべきかな?」
「なるほど……沸騰とは少なくとも水のような液体に発生する現象。言い換えると液体が無いのであれば温度が幾ら高くても沸騰という現象を観測することはできない、と」
「そういうこと。そこからさっきの話に繋げると、例え超能力相手だろうが結果自体は用意されているってことになるわけ」
例えば、超能力で遠く離れた液体を沸騰させる、となる場合。
それぞれの繋がりを断つことで液体の沸騰という結果は起きなくなるが、だからといってそこに
対象として選んだものに起こる結果はキャンセルされるが、対象そのものが消えるわけではないという考え方でもいい。
これが先程の話とどう繋がるのかといえば、つまり宙ぶらりんになった原因の消費先として使える・無害な結果を引き起こす先として──対象として選べる、ということになる。
「例えば電気が発生する、という原因が残ってるとして、液体にそれを結び付けると『その液体に電気を通す』って形になるでしょ?元々誰かに電撃を浴びせるはずだったのが、その対象が液体相手になった……みたいな考え方でもいいかも」
「なるほど……原因だけ残ってしまうと他の結果を引き寄せてしまうかもしれない。それゆえ、なにかしらの消費先を用意する必要性があると」
「そういうこと。それと、『星解』は結果や原因を消すものじゃないから、必然的にそれらを安全に処理するための別の流れが必要になる、ってのも重要な部分だね」
まぁ、宙ぶらりんになった原因が特になにも引き起こさないのなら、そのまま放っておくという手もあるが……。
ともかく、だ。
因果をどうにかしようとする際、原因と結果の消費先を考えなければならない、というのは間違いない話。
その上で、『星解』しただけで原因が立ち消える──残った結果が無害な消費先として取り残されるような状態でもない限り、それぞれの因果は元の因果に繋ぎ直すしかない、というのも確かな話。
「それらの話を前提にすると、だ。今回の話、例え『星解』で一瞬因果を解したとしても、そもそも想定されるのが卦体なトラブルである上に無害な組み合わせもないから、まさしくやっただけ損にしかならんのだわ」
「あー……」
わかりやすく言うと『余裕がない』となるか。
……捻出もできる状態じゃないというか、仮に他のと組み替えても他人がしんどい目に遭うだけというか。
そんなわけなので、真面目に真正面から問題に付き合うしかない、という話になるのでした。
……いや、もっと前の段階ならなんとかなったかもなんだけどねー()