なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「ええ……?」
目の前の光景に、思わず言葉を無くす私。
ちょっと別の用事をこなしていた私が、慌てふためくマシュに連れられた先で目にしたのは、何故かオグリキャップに肩車をして貰っているアルトリア……という、不可思議以外の何物でもない謎の物体であった。
……久しぶりに宇宙猫顔を晒してしまったが、いい加減に気を取り直し、意を決して二人に声を掛ける。
「えっと、なにがどうしてこうなったのか、説明して貰える?」
「はい、喜んで!いいですよね、オグリキャップさん?」
「ああ、宜しく頼む」
……いや、繋がりが見えてこねぇ。
これでアルトリアが青い方だったのなら、健啖家繋がりで仲良くなったと言えるのだろうけど。
生憎リリィの方には『ごはんはたくさんたべるタイプ』*2みたいな描写はなかったように思う。
……そこら辺は単なる描写不足だろう?
貴様言っていいことと悪いことがあるぞ!?青も黒も派生があるのに、一人だけ未だに派生がないんだぞ?!
性格的に近いキャスターの方のアルトリアは、厳密に言えば別物だし!
別物繋がりで思い出したけど、どうにもこのアルトリアには、キャストリアの要素はないみたいである。
核になっているのが
……なんか、キャストリアには塩対応っぽかったからなぁ、原作のマーリン。
……話が盛大にずれまくっているので、軌道修正。
なりきり郷において、ウマ娘というのはかなり希少というか貴重というか、とにかく発見され辛いものなのである。
アプリが始まったのがごく最近であるとか、はたまた二次創作においてやっていいこと悪いことの線引きがしっかりしてるからとか、色々理由は付けられるのだが……。*3
どうにも一番の問題は、ウマソウル*4と呼ばれる彼女達の元となった名馬達の魂が、ある意味では既に憑依しているようなものだから、ということらしい。
要するに、そもそもの逆憑依の成立過程において、ウマ娘は最初から【継ぎ接ぎ】に近い状態になっている、ということである。……似たような例に疑似サーヴァントが存在する。
デミ・サーヴァントのマシュも、ある意味では近い存在になるのだが……そもそも彼女に力を与えている存在であるギャラハッドが、原作ではほとんど自己主張をしないことも手伝って、彼女に関しては特に問題になっていない……という面があるとかないとか。
また、シャナとアラストールのような同居型は、結果として相棒役の方が居ない、という状況に落ち着くことが多いらしい。
で、話は戻してウマ娘について。
彼女達はその成り立ち上、ウマソウルとは切っても切り離せない関係にある。
そのため、逆憑依を起こす場合は『ウマ娘』と『元の馬』、両方を一度に憑依させるという形になるのではないか?
……というのが、琥珀さんから伝え聞いたウマ娘が少ない理由なのである。
……いやその、私にツッコミを入れられても困る。
ウマ娘とウマソウルは切っても切れない関係、とは言うものの。
元の馬の記憶やら功績やらが、どこまでウマ娘に関わっているものか……というのは。
元は気性の荒い馬だったのに、ウマ娘の方はそうでもない……みたいなことがある辺り、言うほど切っても切れない関係なのか、と疑問に思わないでもないし。
そもそもマシュに力を貸したギャラハッドが許される例だと言うのなら、同じように基本的に主張をしてこないウマソウルだって、問題なしと許されるんじゃないのか……ってことになりそうだし。
まぁ、ギャラハッド云々に関しては『作中で明確に
……逆憑依の解明について、恐らくは一番進んだ位置にいる琥珀さんが言っていることなのだから、門外漢……ってのも変だけど、研究者でもない私達にはそれが真実か否か、肯定も否定もし辛いのは確かだと思う。
原因が一つではなく、
ともあれ、ウマ娘そのものがなりきり郷において貴重と言うのは、本当の話。
その数少ない一人──というか現状彼女しか居ない──が、今ここにいて、
……なんで真顔なんだろ、この子。
「これか?……見た目で選んだから、クール系だと思ってたんだ。……実際は、わりと表情豊かだったんだがな」
(……にわかだこれー!?)
もうちょっと表情筋豊かなキャラだったような?
という思いから漏れた私の言葉は、オグリ本人の言葉によって肯定される。
……いやちょっと待ちぃな、なりきり郷唯一のウマ娘がにわかやったとか、世の人々に怒られてまうやろこれ!?
「なんだか懐かしい感じのする喋り方だな。……いやまぁ、こうしてここに立つことで、私も幾分矯正されているみたいでな。多少は見れるモノになっているんじゃないか、と自負しているんだ」
「……ええんか、ホンマにこれでええんか……?」
あー、あー?
……ウマ娘とウマソウルのW憑依だから、多少は再現度が上がってる、みたいな?
よくわからないが、ここにいる彼女はちゃんとオグリとしての自覚がある彼女、というのは間違いないのだろう。
ただね?気になることが一つあってだね?
……なんか髪、ちょっと白くない?本来のオグリキャップより、ちょっと白みが強くない?*5
「はい!私、初めて部下ができて、とっても嬉しくって!ですから、
「オーケイオーケイ、話し合おうかアルトリア」
……おいこらマーリンんんんんっ!!?
「えーっとつまり……なんだ?トレーナーを探してたオグリキャップと、部下というか腹心というか、まぁともかくマーリンの空いた穴を埋める要因を探してたアルトリアが、たまたま出会って意気投合して?」
「初めて自分の力で手に入れた繋がりに、ちょっと舞い上がった結果、自身の
考えなしに"ギフト"なんて危なっかしいものを、他人に与えてしまったアルトリアは、現在反省のため正座をさせられている。
……反省のためのはず、なのだけれど。
……日本以外の文化圏の人には、正座ってキツいはずなんだけどなぁ?*7
ともあれ、現在正座中のアルトリアは、こちらの言葉にうんうんと首肯を繰り返している。
……アルトリアの集合体、という言葉を甘く見ていたこっちにも非があるので、あんまり強く言えないところもなくもない。
「その、彼女は悪くないんだ。危ないものだとは思ってなかったというか、彼女に『贈り物』を貰ってからなんだかとても体が軽いというか……」
「……キーアちゃん、鑑定」
「私が鑑定持っているって前提で言うのやめない?……まぁできるけど」
しどろもどろになっているオグリから、聞き捨てならない言葉が聞こえたため、ゆかりんがこちらに鑑定スキルを使うことを指示してくる。
……極々当たり前に私に話が振られたけど、該当スキルを持ってなかったら、一体どうする気だったんですかね?
いやまぁ、できなきゃここにいないのでできるけども。
できるんじゃない、というゆかりんの言葉を聞き流しながら、視界をごにょごにょしながらオグリを見る。
……んー、基本的には普通のオグリ、といった感じ……いや、待て?
「……お腹痛い……」
「せんぱい!?どどどどどうしましょう!?」
「落ち着きなさいなマシュちゃん、キーアちゃんの胃が痛むのなんていつものことでしょう?」
「言い方ぁっ!?」
見えてきたステータスを見ながら、お腹を押さえる私。
……普通に思えたそれは、たった一つのスキルによって覆された。それゆえに胃が痛んできたのだけれど……おいこらゆかりん、
怒りが収まらないところがなくもないけど、ゆかりんにそのイライラをぶつけても仕方ないので、それらをグッと呑み込んで、問題のスキルについて説明をする。
「『
「わーまんまなネーミング。効果は?」
「……か」
「なんで小声なのよ……?」
「認めたくないんだよ現実をぉっ!!効果は『スキル発動時に自身のステータスを倍化』!!」
「……
「スキル発動時に自身の全ステータスを倍化する、だよっ!!ついでに言うなら『このスキルを持っている時、バ場適正に
「……??????」
スキル内容を、半ば叫ぶように伝える私。
私がこの説明文を見た時の、どうしようもない恐怖を思い知りやがれ!!*9
なお、自身に付与されたモノについて、ちゃんと認識できていた訳ではないオグリは、私の説明を聞いて「そうか、このよく分からない感覚は、空を走りたいという感覚だったんだな」などと天然気味な台詞を口にしていた。
……軽いなちくしょう!!