なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
はてさて、うだこだ言いつつも暇潰しに奔走した私たち。
その甲斐あってか、待ち時間も残り一時間というところにまで進行していたのであった。
「まぁ、その間に眠気にやられた人も多かったんだけどね!」
「……気のせいでしょうか、なんだか最近似たような場面を見たような覚えが……」
はっはっはっ、プールでのことは忘れろ、いいね?
……冗談はともかく、何人かが船を漕いでいる*1ことは確かな話。
無論、丸一日待たされたんだからしょうがない話ではあるんだけど……目の前で起きてる三人娘を見てると、本当にしょうがないのか?……という気分になるのも仕方ない話というか?
「特にあれだ、
「にゃはは……徹夜は得意なの」
「なんかしれっと闇深なこと言ってない?」
いやまぁ、『逆憑依』なんだし見た目通りの年齢で考える必要性はまったくないけども。
とはいえやっぱり、見た目的にあれな感じがするのは否めまい。特になのはちゃんってハードワーカー気質だし。
そんなわけで、呑気に眠りこけている面々に目覚ましチョップをしかけていく私なのでありました。
主に銀ちゃんとか銀ちゃんとか。
「いてっ、母ちゃんもうちょっと寝かせといてくれよぉ~」
「誰が母ちゃんじゃい誰が。ほらデルセンも、見た目子供って言っても中身は完全に大人なんだからさっさと起きるっ」
「んん゛っ?!締め切り三秒前と見た!?」
いやどこが宝具級ダメージやねん。*2
いやまぁ宝具って言ってもピンキリやけども。
ってなわけで、眠気まなこな面々にしゃっきりするように促しつつ、改めて残り時間のカウントを見る私である。
……ほぼ一日待たされた中で、他の客の様子を確認していたのだけれど。
概ね客からの反応は良さそうだ、というのが現状の『ブレイジング・デュエル』への評価ということになるだろうか。
興奮した様子で友達らしき相手と語り合いながら帰路につく者が多かった、とも。
その中に『逆憑依』の姿も多く見られたのは──やはり、最初の方の説明で語られた
「私は『tri-qualia』を触っていませんので、あまり偉そうなことは言えませんが……
「うんそうだね、『逆憑依』は常にアバターを纏っている扱いになるから、自由にキャラをメイキングできるようなゲームの場合現在の見た目に固定される、というか」
その上で、自身の原作に『異なる姿の自分』の描写があれば、その範囲内で姿を変更することはできる……みたいな?
ソシャゲのガチャによくある『水着○○』とか『浴衣○○』みたいな別キャラ、およびスキンなどの性能に変化のない姿のバリエーションなんかも変更先として選べる辺りは、配慮が行き届いているとも言えるのかも?*3
「あとはあれだ、原作内でゲームとかやっててその時の姿は違った、みたいな描写がある時も変更先が増えるみたいよ?」
「あー俺とかそのタイプだな。テイルズオブられたりモンキーハンターしたりしてたから」*4
「俺達の場合はフェスの礼装なども該当するな」
「意外と服の変更先は多いですよね……」
マシュの言葉に一同確かに、と頷く。
服の変更が認められないキャラもたまーに存在するので、そういう意味では恵まれてるのかもしれない。*5
……それはともかく。
ゲームに求められるものの一つとして『自分ができないことを』というモノがある。
体験型ゲームなどを筆頭に、自身の現在とはかけ離れた状況を楽しもうとするそれは、原則としてゲーム内のプレイヤーは
……それだと誤解を招きそうなので、より正確には
まぁともかく、例えばプレイヤーが低身長だからといってゲーム内のキャラも低身長である必要はなく、またその反対に高身長である必要もない。
また、あえて同じ体型のキャラを使っても問題はない。
ここで重要なのは、あくまで自由選択の結果同じになった・異なるものになったという扱いであるということ。
そういう意味では、『逆憑依』がゲームをプレイすると勝手に見た目が自分と同じになる、というのはその自由選択の権利を阻害している、ということになるわけである。
「今まではその辺をどうにかするのは不可能に思えた、もしくは不可能だと思われていたわけだけど……琥珀があれこれやってその方法を見つけたってわけ。……まぁ、問題もなくはないんだけど」
「おっと唐突に不穏な話題をぶっ込んで来たね凛ちゃん???」
なんで残り一時間にもなって新たな火種を投げ込んで来たのかな君?
いやまぁ、見ようによってはまだ一時間近く余裕がある、という風に解釈することも可能ではあるけど。
そんなこちらの疑問に対し、凛ちゃんはゴメンと謝りつつも『でももっと早いうちに知ってたら琥珀に話を聞きに行ってたかもでしょ?』と述べたのだった。
それは たしかに。
「……ええと、話を聞きに行くのがよくないのですか?」
「そりゃあね。……忘れてるかもしれないけど、アイツプログラムは本来専門外よ?被ってるモノの関係上、ある程度はできるみたいだけど」
「な、なるほど……」
なお、琥珀さんに話を聞きに行かない方がいい理由は『連れを起こさないでやってくれ、死ぬほど疲れている』である()
……琥珀さんがマッドサイエンティスト的になんでもできるから忘れそうになるけど、そもそもあの人の本職って単なる研究職だから、そりゃまぁ専門外のゲームのプログラミングなんてしてたら過労死寸前にもなるわな……みたいな?
まぁ多分だけど、彼女の現在の研究テーマ──ひみつ道具の開発の中で、こういう話に転用できそうな技術が出来上がったから試そうと思った、みたいな話なんだろうなーとも思うのだけれど。
「転用できそう、ですか?」
「そ。大枠としては『tri-qualia』の解析とリバースエンジニアリングなんだろうけど、大方『絵本入り込みぐつ』*6とかが作れそうになったから、それを活かせるモノを探してたとかじゃない?」
なんだかんだ言って、『tri-qualia』が色々と怪しいのは事実。
なので、それを研究してあれこれしようという方向に向かうのは健全な流れではある。
……あるんだけど、同時に話はそれだけで終わらないだろうなー、とも。
「と、言いますと?」
「勝手にアバターが変わるってのにはもう一つ効果があって、それが
「……ああ、いつぞやかに報告書で見たな。新作発表会での話だったか?」
「そうそう、それそれ」
話題に出すのは、『tri-qualia』の新作発表会において『逆憑依』になった面々について。
……個人的にはその中でも波乱万丈な目にあっているオルタ辺りが気になりはするが、その辺は今回の話には関係ないので割愛。
ここで重視すべきなのは、アバターが勝手に変わるという要素そのものに『tri-qualia』の秘密が隠されている可能性が高い、という部分である。
「もうちょっとわかりやすく言うと、『tri-qualia』を参考にして作ったのにそこを外すことに成功した、って部分ね。プログラムで制御できるものなんだとすると、それに関わる部分の記述を丸々抜けばなんとかなる、ってことになるわけじゃない?」
「まぁ……そうね。問題がある部分を切り離せるのはプログラムの利点だわ」
「それ、本当に外して良かったのかな、みたいな?」
「……外したところに代わりのものを突っ込んで動かしてるけど、それが本当に代わりになってるかわからない、みたいな話?」
「それもあるけど、変に暴走したりしない?……みたいな部分もあるかな」
ただでさえ、ひみつ道具を穴埋めに使ってるっぽいし、と告げれば、確かに琥珀さんに問い詰めに行きたくなるな……みたいな顔をし始めた面々なのであった。
……いやまぁ、今聞きに行く暇がないってだけで、話が終わったら真っ先に問い詰めに行くけどね???