なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
はてさて、琥珀さんに対しての愚痴はこの程度にしておくとして。
「そうこうしてるうちに残り時間が三十分を切った件について」
「あ、本当なの。今遊んでる人が出てきたら交代なの」
「団体様でのご利用が大体そのくらいの時間だからな」
「そうなんだ?」
「一試合はそこまで長いわけでもないが、ある程度まとまって……となるとどうしてもな」
あれこれと話していたら、いつの間にか残り時間が三十分を切っていたわけで。
……どうにもさっき入っていった面々が私たちの一つ前に当たる利用者、ということになるるしい。
つまり、彼らが出てきた後が私達の番と言うことになるわけだ。
なのでいい加減駄弁るのは切り上げよう……かと思ったのだが、よくよく考えたら三十分もなにもせずに待つ、とか微妙にもほどがあるので話自体は続くのであった。
……丸一日待たされたから感覚おかしくなってるなこれ?
「それはともかく。……いやまぁともかくって感じに軽く流すような話でもないけどともかく。改めて、『ブレイジング・デュエル』について詳しく聞きたいんだけど」
「……そういえば、そこまで詳しい話は聞かれてなかったわね。なんで?」
「残り待ち時間が長いうちに聞いてもだれるだろうなー、というか」
「あー」
とりあえず、いい加減『ブレイジング・デュエル』についての詳しい話を聞くことにするのであった。
途中で聞かなかった理由は今しがた述べた通り、待ち時間が長いうちに聞いても最初はよくても確実に中弛みするから、という感じ。
どうせやらなきゃいけないのだから、可能なら楽しく遊びたい……的なやつである。
そんなわけで、先に『ブレイジング・デュエル』について私たちが知っていることを挙げると。
「まず、『tri-qualia』の派生作品……ってわけじゃないけど、そのエンジンを再現して作ったゲーム、ってことになるんだよね?」
「そうなの。体感型のゲームなの」
第一に『tri-qualia』──元々VRではないはずなのに、VR器機さえ用意すれば容易にVRゲームとして遊べる、とかいう意☆味☆不☆明な挙動をしているゲームのエンジンを(勝手に解析して)使っている、という点。
そこから察するに、このゲームもまたVRタイプの──それもフルダイブ形式のゲームであることが窺える。
「それだったら『tri-qualia』の方がいいんじゃないか、ってなりそうだけど……フルダイブVR器機なんて庶民の手が出るような価格じゃないものね、まだ」
「オープン価格*1で一千万くらいのお値段でしたからね……」
そうなると問題となってくるのが筐体の価格。
今でこそVRデバイス──歩行型のそれはなんだかんだと安くなってはいるが、それでも何十万という値段であり中々手が出せる金額とは言えないだろう。
さらに言うと、『tri-qualia』を本気で遊ぶためにフルダイブ形式のマシンを買おうとなった場合、その販売元であるウエスト博士のとこの機械の価格はなんと一千万前後。
とてもじゃないが、ゲームのためだけに出せる金額とは思えないことだろう。
これは裏を返すと、ゲームセンターにおける同様の筐体の需要が高まる、ということにも繋がってくる。
ゲーセンでのゲームプレイなんてものは、基本的に一回百円程度。
ゲームによってはもう少し高い価格設定になっていることもあるが、基本的に筐体そのものを購入するより遥かに安い、という部分は変わらない。
──つまり、フルダイブ器機のお試し体験的な需要も得ている、と解釈することができるのである。
そりゃまぁ、丸一日近く待たされるのも宜なるかな、というか。
「ただまぁ、完全に同じものだと向こうのパイを奪う形になるから、ジャンルを変えることで対応してるってことになるんだよね?」
「そうなの。ゲームエンジンは確かにリバースエンジニアリングの結果だけど、それで作ったのはロールプレイングじゃなくてアクション、もっと言えば対戦格闘の類いなの」
とはいえ、それだけだとウェスト博士のとこから訴えられかねない、というのも事実。
……いやまぁ、リバースエンジニアリングの時点で普通に訴えられかねないのだが、恐らくは根幹システム部分をひみつ道具に置き換えているのでそこまでの話にはなってないんじゃないかなー、というか。
その辺はともかく、まったく同じジャンルでかつフルダイブ器機まで使い始めるのは流石に見咎められる可能性大だろう。
ってなわけで、『tri-qualia』とは違うジャンルにしよう・かつ内容的にそこまで面倒じゃないモノにしよう……という流れがあった(かもしれない)結果、『ブレイジング・デュエル』はその名前の通り
……一応、元ネタはなのはちゃんの所の『ブレイブデュエル』なのだろうが、多人数戦闘という話なのでどっちかと言うとスマブラ*2とかの方が近いのかもしれない。
「まぁ、ピカチュウみたいな低身長キャラも許されるってなると、そりゃまぁスマブラ形式が一番よねっていうか?」
「単なる格闘ゲームだと当たり判定が小さいって普通に許されない類いの特徴になるからね……」
まぁ、性能が低ければ許されることもあるんだけど。ネコアルクとか。*3
……とはいえ、好きな姿で遊べるゲームとして成立させようとすると、普通の対戦ゲームは中々に難しいというのは間違いない。
どこまで自由にできるのか、っていう部分も問題ではあるが、なにより問題なのは技の性能の方だろう。
一言に技と言っても、そこに必要な要素は多岐に渡る。
例えば技のダメージ、その技の出しやすさ、ゲージを必要とするのなら何ゲージの技なのか、技の起こりはどれくらいの速さなのか、仮に当たった後の硬直は、反対に外れた時の硬直は……などなど。
一つの技に対してすら大量の設定項目があるのだ、それを何個もとなるとどれだけの時間が掛かることか。
技だけではない、それぞれのキャラクターの身体スペックだって問題点の一つだ。
さっきから言っている身長の高さだとか、キャラクターの重さや速度、パンチ力やキック力などの基礎攻撃力にあたる部分、打たれ強さやジャンプ力などのその他のスペックに関わる部分……。
その辺を個別に調整するとなると、正直作業量が膨大すぎてパンクすること間違いなしである。
これがロールプレイングならば、レベルの低いうちはステータスも低いという形で逃げられるし、あくまでアバターであるとしておけば見た目と能力が噛み合ってなくてもそこまで大きな問題にはなるまい。
「でも、『ブレイジング・デュエル』の場合はそうも行かないの。基本コンセプトは『なりたいキャラで好き勝手』だから、あまりにも見た目と戦力が掛け離れてるのはクレームになりかねないの」
「だからこそのスマブラ形式──直接的に倒せないようにすることで、見た目通りのスペックでないことに説得力を持たせる、ってわけか」
スマブラのキャラクター達は本人ではなく、その見た目のフィギュアであるという裏設定がある。
そのため、例えばセフィロスがスーパーノヴァを打っても地球が粉々になったりしない、という部分の説得力を担保しているわけだ。……え?そもそもそれは単なる演出?まぁ、そうね。*4
まぁともかく、である。
この『ブレイジング・デュエル』においても、スマブラ方式が採用されているのは間違いあるまい。
調整の面でもゲーム性の面でもそちらの方が都合がよいのだから、その辺りを疑う必要はないだろう。
「つまり、『逆憑依』による自動アバター補正がない以上、今から私たちもキャラメイキングを始める必要があるってことだ」
「……はっ!い、言われてみればそうですね!?」
そんなわけなので、簡単なキャラメイクを先にやっておこう、という話になったのでしたとさ。