なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
それぞれがどんなキャラを使うのか?
……みたいなのは実際に筐体に入ってからのお楽しみ、ということで各々タブレット型の端末を持って別れ、キャラメイクをする形になったわけだけど。
ふむ、いざ好きなキャラを使っていいよと言われると、意外と思い付かないものである。
「そもそもこの姿自体、わりと理想みたいなものだしねぇ……」
思わずむぅ、とため息一つ。
……あれだ、方向性的にはミラちゃんと似たようなもの、というか。*1
自身の本来の性別は男性だが、仮に女性であったならばどんな姿が理想か?……という想定の結果として出力されたのが今の──キーアとしての姿だというか。
言い換えると、正直そこまで他の姿云々に興味がない、ということになってしまうというか……。
「求められれば演じるけど、別にそれも相手にやってって言われたからやってるようなもんだしなぁ……」
ついでに言えば、多少の変身願望ならキリアとかシルファとかの姿で解消できるし?
……かといってこのままの姿を使う、というのは違うだろうとも思う。
いやまぁ、あからさまになにか起きるのがわかっている以上、対処のためにキーアのままでいる、というのは間違った選択ではないだろう。
ただそうなると、こうして各々姿を自由にメイキングする……って名目で別れた際の、マシュの期待に満ちた目を裏切ることになるというか。
もしくは「なるほどせんぱいにとってその姿以外に重視するものはないと……」などと、だいぶ面倒臭い勘違いをされる可能性が高いというか。
え?さっきの話を聞く限り勘違いではなくないか、ですって?
よく思い返して頂戴、私が言ったのは『女性としての理想の姿』、ここでのマシュの勘違いは『男女を問わず理想の姿』なのよ。……意味違うでしょ?*2
「冷静に考えて元の──男の時の姿なんてこの場で使うわけないでしょうに……」
思わず呻く私である。異世界転生もどきかな?(元の姿で暴れまわる自分を想像しながら)
……なにが一番面倒臭いって、仮に元の姿を使わず他の男性の姿にしたとしても、今度は『こ、これがせんぱいの好みの男性のタイプ……!』みたいなことを言われかねないという点。
私は至ってノーマルだけど、マシュの中の人はそうでもないという点である。ややこしいね?
そんなわけなので、仮にやるなら他の女性キャラクター、ということになるのだが。
……うーん、キーア以外で理想・もといやりたい姿と言っても……って、ん?
「……あー、なくはない、かも?」
ふと脳裏に過った一人のキャラクター。
まぁキャラクターと言っても、これもまたキーアと同じく私の考えたオリキャラの類いになるのだけれど……
……ただ、これはこれで別種の問題があるというか、下手すると別の問題を引き寄せる……私自身が問題の中心になりかねない、なんて問題があるというか?
とはいえ現状優先したい姿があるわけでもなく、問題にならなければ寧ろ
というか、他の『逆憑依』ならともかく『星の欠片』混じりの私に、選べる選択肢なんてそもそもそう多くはないわけで……。
「……うんまぁ、多分大丈夫でしょう、うん」
色々考慮した結果これしかないな、と判断した私は早速キャラメイクに取り掛かって行ったのであった───。
「もうすぐ時間なの。みんな準備はできてる?」
「大丈夫ー」
そうしておおよそ三十分後。
別れていた面々は再び筐体前に集合し、いよいよ『ブレイジング・デュエル』に挑む時がやってきた。
私たちの前に遊んでいたプレイヤー達は退出の準備を初めており、彼らが出てきたら入れ換わりに私たちが筐体内に乗り込むことになるわけなのだけれど……。
「前以て説明した通り、この筐体はフルダイブマシンだ。中には数人分の椅子が用意されているから、そこに座ったら目の前に降りてくるアタッチメントに、手元のタブレット端末をセットして欲しい」
「それが確認され次第、上からヘッドセットが降りてくるから、それを被ってリンクスタート、ってね。……本当にリンクスタートするわけじゃないわよ?」*3
「流石にデスゲームが始まるなんて誰も思ってないから大丈夫だよ。……多分」
「怖くなるようなこと言わないでくれる!?」
いやほら、トラブルが起きるのは想定の範囲内というか?
寧ろなにも起こらない方が怖いでしょうというか。
……まぁそんなわけなので、誰もなにも起こらないとは信じてない、ということになるわけで。
だったらデスゲーム展開にならない、とも断言できないじゃん?
みたいな予想から、誰も冗談だと笑わない事態に陥っているというか。
……そんな感じに凛ちゃんをからかっていると、間もなく出てくる前のプレイヤー達。
その反応は今まで確認した他のプレイヤー達と変わらず、興奮と充足を感じさせるもので……『ブレイジング・デュエル』そのものは歓迎されているのだ、とこちらに理解を促すには十分な反応だと言えた。
「よっぽどド派手に遊べるんだろうねぇ」
「その辺は敢えて明言しないでおくわ。精々楽しんでらっしゃい、ってね」
調子を取り戻した様子の凛ちゃんの台詞に苦笑を返しつつ、遂に出てきた前の客を見送って筐体内に突撃。
バスの内部──座席が向かい合う形で設置されているような見た目のそれに乗り込んだ私たちは、先ほど説明されたように席に着いた後に降りてきたアタッチメントにタブレットをセット。
メイキングしたキャラクターが読み込まれたことを確認すると同時、降りてきたヘッドセットを被って背もたれに体重を預ける。
そうすれば瞬く間に視界は切り替わり──私たちは空から落ちていることを自覚するのであった。
「……フォートナイト!?」*4
「対戦系のゲームと聞いていましたが、そっち方向だとは思ってませんでしたね……」
え、まさかとは思うけどフォートナイト形式でスマブラやるの?マジで?
っていうかフルダイブ形式で空から放り出されるの普通に怖くないこれ?
「あぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱ」
「ほらー!!誰かわかんないけど発狂してるじゃんかもー!!」
「そういう貴方も誰かわかりませんけどね」
そう思ったのも束の間、近くから聞こえてくる声に視線を向ければ、明らかに白目を剥いている誰かの姿が。
……多分だけどモモイなんじゃあないかなー、というその少年を引き寄せつつ、高速で流れていく景色を見やる私。
うん、ノリがフォートナイトならパラシュートなり飛行装置なりなんなり用意してあるんだろうけど、その辺の説明まったく無しに空中に放り出されたら混乱する人の方が大半でしょというか?
「あ、言い忘れてたけど『ブレイブデュエル』も元ネタに入ってるから、魔法で空が飛べるわよ。具体的には念じればいけるわ」
「そういうの早めに言って?!」
そう愚痴った途端に外?から響いてくる凛ちゃんの声。
……フルダイブ形式のゲームだからか、基本的な操作は念じればなんとかなるらしい。
要するに咄嗟の判断で動けばなんとかなる、ってことをわかりやすく体感させるために敢えてなにも言わなかった、ってことなんだろうけどちょっと意地が悪いというか。
もしかして、さっきちょっと弄ってたことに対しての報復だったりするのかなこれ?
「そんなことは……ないわよ?」
「絶対嘘だこれ!?」
反応がわかりやすすぎやしませんか?
……なんてツッコミを投げつつ、抱えていたモモイらしき相手に落ち着くように指示。
慣れればなんてことはないって感じなのか、すぐに順応して空を飛び始めた彼女……彼?の様子に苦笑しつつ、改めて現状の確認である。
「フォートナイトっぽいってことは、これバトルロイヤルなの?」*5
「そうね。って言っても貴方達の中で争うわけじゃなくて、相手のチームと争う形だけど」
「なんと?」
筐体は一つしか無いように見えたけど、実は離れたところに別の筐体があったと?
……ふむふむ、別の階にもある?わりと筐体のスペースが広いから、二つ並べて置くだけの余裕がなかった?……なるほど。
「つまり私たちはチームだから、連携とかするためにもちゃんと各々どんな感じになっているのか確認する必要がある、と?」
「まぁ、そういうことになるわねー」
なるほど、地表に着いたらまずは作戦会議と。
凛ちゃんからの言葉にこれからするべきことを確認した私は、一先ずは無事に着地することを優先しようと下を見たのであった。
……いや、やっぱり普通に怖くないこの絵面?