なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
はてさて、このゲーム世界を成立させている一番の要石、ひみつ道具になにも問題ないのかを探るのが今からの目的である……というような話をしたわけだけど。
そのために必要なのは、このゲーム内で
「ええと、概念的に近い場所って?」
「そうだね……物理的に近い場所って言われても、現状フルダイブしてるわけだからこれ以上近付けないわけじゃない?まぁそもそも、近付けないからこそこうして筐体内に入ったわけだけれども」
まず前提として、筐体内に入っているという状態よりも目的のひみつ道具に近い場所はない。
相手がメインシステム相当の場所にあるはずなのだからそれは当たり前の話なのだが、ここでの問題はそこではない。
問題なのは、物理的にこれ以上近付くのは不可能だ、という点。
どこまで足掻いても、物理的なアプローチでは事態の解決は見込めない、という事実の方である。
「ここでいう近付けない、ってのは二つの意味でだね。まず一つ目は、迂闊に近付けないって意味での接近不可状態」
「と、言うと?」
「ひみつ道具によって今の状態が保たれている、ってことは
「あっ」
一つ目の理由となるのが、迂闊に近いてしまうのがダメ、というもの。
……と言っても、これは文字通りの意味ではない。
より正確には『ひみつ道具に対してなにかをするつもりで』近付くのがダメ、とするのが正しいだろう。
見方によってはひみつ道具に意志があるとでも言っているように聞こえるかもしれないが……ここに関しては後述。
ともかく、下手に近付くとなにが起きるかわからない、という部分を念頭におく必要性があるのは間違いないだろう。
「まぁ、物理的に近付けないって時点で、ここに関してはそこまで気にする必要もないんだけどね」
「あっさり発言を翻すのはどうかと思いますがねぇ」
いやいや、翻してはないよ?
そもそも接近できない理由はもう一つあるわけだし。
……ってなわけで、一つ目の理由に引き続いて二つ目の理由に触れると。
「こっちはもっと単純、そもそも近付きようがないんだよ」
「はい?」
「組み込んだ時はどうだったのかは知らないけど……現状、目的となるひみつ道具は物理的な形を持ってない。わかりやすく言うと、データ化しゲーム内のどこかに格納されてる感じになるんじゃないかな?」
「はい!?」
ある意味では、一つ目に抵触しないで済んでいる理由というか?
……これ以上近付かれる心配が一つもないのだから、そりゃまぁ一つ目の理由なんてついで程度でしかないだろう、とも。
じゃあなんでそんな結論に至ったのかだけど……これもまた単純明快、外から筐体を解析した際に、内部構造におかしなところが一つも見付からなかったからである。
「内部構造に、なの?」
「そうそう。ひみつ道具を使って成り立たせている、って触れ込みである以上なにかしら特別なモノ・特異なモノが内部構造に紛れているはずでしょ?ところがどっこい、解析してみたところそれらしいものはなに一つなかったのよ」
「えー?!」
なんなら、不自然になにかがなくなったような隙間とかも無かった、というか。
少なくとも、見た目上おかしな部分は一切ない、そこらに置いてあるアーケード筐体とほぼなにも変わらない機械が置いてあった、というわけである。
「とはいえ、それもそれでおかしいのよね。だって他のゲーム機と変わらないんなら、フルダイブ形式のゲームになるわけないじゃない?」
「え゛っ、もしかしてそれって……」
「うむ。このヘッドセット単なるヘッドセットだし、座ってる椅子も単なるゲーミングチェア。……VRゲームとしては成立しそうだけど、フルダイブゲームとして成立する要素は欠片も見受けられないわね」
「うわーっ!!?」
「凛ちゃんが倒れたっ、なの!?」
「いやまぁ気持ちはわかる。……それが遠坂凛であることには少々疑問を挟まないでもないが」
「ちょっとぉ!?それどういう意味!?」
普通の凛ちゃんなら機械音痴だからね、この話で倒れるほどダメージを受けるわけがないからね、仕方ないね()*1
倒れた相手についてはともかく、倒れる理由に関しては誰もが納得できることだろう。
……なんにせよ、である。
このゲーム筐体そのものに、フルダイブを成り立たせる装置がない──より正確に言えば、あったはずなのにどこかに消えている、となると。
そりゃ勿論、それを成立させるものがゲームの内部に紛れ込んでいる、となるのはある種当たり前の思考ということになるわけで。
「それって結局『tri-qualia』となにが違うの?……ってツッコまれても仕方がなくない?……みたいな」
「それ、絶対琥珀に聞かせないでよね、確実に泡吐いて倒れるわよアイツ」
「良かれと思ってやったのに、完全に裏目に出ている形だからな……」
「心中お察ししますって感じなの……」
うん、謎の原理でフルダイブを成立させている『tri-qualia』と、表面上なにも変わらないというか……寧ろひみつ道具なんて危険物が間に噛んでる仕様上、こっちのが危険かも知れなかったりだとか。
……まぁとにかく、製作者である琥珀さんにはとてもじゃないが聞かせられないような事実が飛び出してきたことは事実。
可能であれば、彼女がその問題に気付く前に事態を収拾しておこう……となるのは寧ろ優しさ、ということになるわけである。
……いやまぁ、ここまで言っておいてなんだけど、今のところ問題起きてはないんだから放置でもよくない?……って気もするんだけどね?
「また盛大なちゃぶ台返しですねぇ」
「まぁねぇ。同時にこれを放置するのは核爆弾をそこらに野晒しにしてるのに近い、って見解もあるんだけどねぇ」
「手のひらを返さざるをえませんねぇ」
ただ、現状がいわゆるヒヤリハット*3そのものであることは事実。
となれば、必然放置することはできず、早急な解決を望まねばならない……なんて話に繋がってしまうわけだ。
「とはいえ、当の危険物が何処にあるか外からじゃあわからないし、仮に外からわかったとしても分解して問題の物を取り外す……みたいなことをしようとしたら確実にひみつ道具が反応するでしょ?」
「だから、ゲームを普通に遊んでいると思わせながら近付いていく必要がある、と?」
「まぁ、大雑把に言うとね」
まぁ、それはそれで大変な作業になるだろうな、とも付け加える私なのだが。
思わず肩を竦めてしまうのも無理はないと思うんだ……。