なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
外から探せないのなら内側から、それも相手に気付かれないように……というのが前回のまとめ。
ここで疑問になりそうなのは、相手に気付かれる云々の話をするのなら、そもそもこうして普通に話していていいのか?……みたいなところだろう。
「とはいえそっちは気にする必要ないんだけどね」
「それはまたどうして?」
「相手側がまったく危険性を感じてないってのが一番の理由なんだけど……それに加えて別にひみつ道具に意志が芽生えた、とかそんな話ではないからかな?」
「あれー?」
うむ、確かに先ほどまでの説明だとなにやら相手となるひみつ道具に意識が芽生え、自身を消去・ないし除去するためにやってくる相手から逃げているように見えるかもしれないが。
実際のところは──仮定の話になるが、それこそ
「ええと……単なる偶然である、と?」
「はっ!馬鹿も休み休み言うんだな!それが事実なら対処する意味も薄いではないか!」
「そうですねぇ。偶然に掻き回される展開ほど面倒なモノもありませんから」
まず、マシュを筆頭とした懐疑的な組。
偶然こうなった、なんて結論が許されるならそれこそなんでもありになるじゃないか、予測して対処する……みたいなこともできなくなるじゃないか、という主張である。
「でも、必然と考えるのもそれはそれで問題なの。それだと琥珀さんが(色んな意味で)死んじゃうの」
「あー……うん。アイツマッドサイエンティストめいてるけど、根本的な部分では常識人だもんね……」
「確か、今回の問題点は滅亡案件に繋がる可能性がある、だったか?……偶然そうなったのでもなければ
「「うわぁ……」」
「え?……あいや、あくまで一般論的にそう解釈するのが自然というだけで、私が彼女を責めているとかそういうことではないのよ?!」
続いて反応を見せたのが、運営組(?)のなのはちゃん達。
仮にこれが偶然起きたことでないのならば、その責は全て琥珀さんが負うことになるだろう。
……それが必然であるならば必然的に、彼女が世界を滅ぼそうとしたということになる。
そりゃまぁ、意外と生真面目な彼女のことだからぶっ倒れて介錯を求め始めるかもしれない。
彼女が気付かない内に事態を解決しなければならない、というのはその辺を回避する意味もあったりするわけだ。
「んー、とりあえずキーアは偶然だって思ってるんだよね?それってなんで?」
「そうね、自信が無いようには思えなかったから、なにかそれを確信させるようなものがあったのよね?」
「まさか当てずっぽうとは言わんだろうな?」
そんで最後、こちらに疑問を投げ掛けてくる組。
ひみつ道具が意識して動いているわけではなく、あくまで様々な偶然が重なった結果今の事態に繋がったのだ、というのが今の私の主張だが、そう考えるに至った決め手のようなモノがあるのでは、という疑問である。
……その疑問に答える前に、今この場で反応を示さなかった残りの組についても一応様子を見ていくと。
「…………(余計なことを言いそうな気がしたので黙っている)」
「…………?(隣のささらが黙っているので付き合っているが、何故黙っているのかについてはわかってない)」
「ぐにょーん」
「きゅー」
「わはー」(よくわかってない三匹)
「げんげーん」*1
……うん、基本黙秘かよくわかってないか、だねこれ。
まぁ事情がわかってそうな二人が黙秘してくれている、というのはありがたい。
なにせこれから私、みんなに
「んー、まずこのゲーム機に使われているひみつ道具だと目星を付けていたのってなんだったっけ?」
「はい?……ええと確か、『絵本入り込みぐつ』でしたか?」
「うむ。ゲーム内を一種の物語と捉えれば、そこに入り込むための靴は確かにフルダイブマシンの代わりができるわけだ。──この時点でなにか気付かない?」
「はい?」
「……ああなるほど、確かにそれならば
「おっと、どういうことか説明して貰っても?」
私が話題に出したのは、この『ブレイジング・デュエル』を成り立たせているであろうひみつ道具、その目星について。
フルダイブというある種の人類の夢を成立させる上で、それをサポートできるような道具とは一体どんなものになるのか?……という問い掛けである。
そしてその問いについては大体今から一・二時間ほど前に答えとなるであろうモノが話題に上がっていた。そう、『絵本入り込みぐつ』である。
この道具は、その名前の通り絵本の中に入るための道具。
そして入った絵本の中では好き勝手に動ける、というものでもある。
あくまで自身の入った絵本だけを対象としたものであり、その絵本に書かれた物語そのものを改変するわけではないため、著作権的な意味で安全面を考慮した道具であると言えなくもないかもしれない。*2
……まぁその辺はともかく、だ。
絵本の中に入り込み、そこに描かれた物語に自由に干渉する手段を得るというこの道具は、その利便性から様々な派生品が存在するのだ。
例えばテレビ入り込み靴だとか、絵の中入り込みぐつだとか。
つまり、だ。
絵本入り込みぐつというのは、そもそも作り替えの利く──よく言えば
「まぁ、だからこそこうしてフルダイブマシンの基幹部に流用しよう、なんて発想に至ったんだろうけど」
「それが、何故今回のあれこれが偶然であることの証左となるのです?」
「簡単な話だよ。
「……はい?」
これほどに便利で派生も作りやすい、とても優良なひみつ道具である絵本入り込みぐつであるが。
実のところ、そうして優良であるからこそ問題の火種としても多用される運命にある、みたいなところがあるわけで。
例えばドラえもん映画の一つである『ドラビアンナイト』。
これは絵本の中に取り残されてしまったしずかちゃんを助けるため、アラビアンナイトの時代にタイムスリップするというよくよく考えるとおかしな筋書きの映画である。
え?どこがおかしいのかって?
絵本の中に取り残されたしずかちゃんを助けに、
他、派生品である歴史の本入り込み靴に至っては、のび太が放り投げて逆さまに本にセットされた結果、歴史本の偉人達が現実に出てくる……なんて意味不明な事態に陥ったりもした。
「ま、まさか……」
「そのまさか。『絵本入り込みぐつ』から派生して作られたのだろうこのゲーム用の靴、『ゲーム入り込みぐつ』もまた変な副作用が懸念されたわけだ。前例から考えると、それこそ『逆憑依』を引き起こすような、ね」
プログラムの複雑さは別として、起きることとしては単純なこのひみつ道具は、その単純さゆえに結果がひっくり返る恐れがあるわけだ。
今回の場合、効果がひっくり返った場合に危惧されるのは、それこそ『tri-qualia』と同じく単なる一般人に対しての『逆憑依』の発生、ということになる。
となると、だ。
端から危惧されている箇所がわかっている以上、そこに対して様々な対策を施すのは必然。
特に自分がトラブルを──世界滅亡級のそれを起こすことを可能な限り避けたい琥珀さんとしては、そこはとても拘るところのはず。
「なので、ゲームの中から人が出てくるとか、一般プレイヤーが『逆憑依』化するとかについては滅茶苦茶対策を講じてるはず。……それでもトラブルは起きるもの、寧ろ起きない方がおかしいと彼女も理解してたはず」
「想定されるトラブルの内の一つが起きた……というのであれば、それは最早偶然と呼ぶ他あるまい?あくまで複数ある選択肢の内の一つだったわけなのだからな」
「あーうん。そこを必然と呼ぶのは流石に可哀想よね……」
もしくは、未来が見えるわけでもないのだから択を絞れただけマシ、というか。
ともかく、想定していた内の一つが実際にトラブルとして発生し、それこそが今の状況──
……うん、これに関しては想定できてるだけすごいというか?
「物語の中と外がどうこう、ってのはわかるけど、そのための入り口がどっかに行く可能性なんて、想定できてるだけすごいとしか言えないよね……」
「それは……そうですね……」
納得した、とばかりに頷く一同。
その背後でささらさんが『本当にこれでいいんです?』みたいな顔をしていたが、そんな顔してるとヤバイぞと念話で注意することで強制的に黙らせる私なのであった。
……いや、実際にこの話に関わってるであろうひみつ道具については明かせないというか、明かしてもどうにもならないから仕方ないんだよね!
あーやだやだ、まーた隠し事云々で詰められるのはこりごりですよー、と内心ため息を吐く私なのでありましたとさ。