なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「リリィなら、リリィなら癒し系で終わってくれると思ってたのに……!!」
「す、すみません……」
まさかの空を走るウマ娘と化したオグリキャップに、思わず胃の痛みから踞る私と、その隣でしゅんとしているアルトリア。
……原理が全くわからんけど、滅茶苦茶楽しそうに空を駆けるオグリを見ていると、もうなにもかもぶん投げて『たーのしー!』とだけ言ってたくなるけども。*1
そんな思考放棄が許されるなら、私は胃を痛めていないのである。
というか、そもそもの話として。
「……これって部下でいいの?」
「まぁ、トレーナーとウマ娘……という関係性は、上司と部下とも言えなくはないわね?」
「あー、いいんだ……?」
そう、なのだろうか?
ゆかりんから返ってきた台詞に、思わず首を捻る私。
……個人的なイメージなのだが、上司と部下という関係性は、もうちょっとカチッとした雰囲気がするというか、気安さとは無縁の場所にあるというか。
そんな風に思っていたので、トレーナーとウマ娘の関係性としては、なんだかしっくりこないのである。
指示を出すのだから上司、と言うのならポケモントレーナーだってそうなるし、アイドルとプロデューサーにだって当てはまるはず。
……いや、アイドルとP*2に関しては、別に間違ってはないだろうけども。
なんというかこう……
うん、雑に言ってしまうと
アニメや漫画の中の、煌びやかなイメージのまま世界が回ってるような気分になって、どこか地に足がついてないような気分になる……みたいな?
そのわりには毎回胃を痛めてるだろうって?
理想と現実の落差が激しければ激しいほど、落下した衝撃は跳ね上がるんやで……()*3
ともあれ、そもそもに王女様なアルトリアが、世間一般的な感覚からずれている可能性は、無きにしもあらず。
……原作の彼女も、湖の騎士に関しては友誼を結んでいたと思っていたが、相手からはどちらかと言えば敬愛を受けていた……みたいなすれ違いがあったりしたわけだし。*4
なーのーでー。
「友達からお願いする、というのはどうだろうか?」
「友、ですか?……あの、実はオグリキャップさんもルイズのように、無茶苦茶をするようなタイプのお方なのですか?」
「……あれー?」
無難にお友達から始めさせよう、と思って声を掛けたのだけれど。……ルイズー?ここには居ないルイズー?責任の大半はマーリンにあると思ってたけど、実はお前さんにも問題があったのかルイズー?
……てへぺろしながら「ごめーんね☆」って言ってるルイズが脳裏に浮かんだのだが、お前さんどこに向かってるんです?……勝手なイメージを押し付けるな?
それはともかく。
アルトリアもといアンリエッタ王女の友達観が、周囲の人間によってだいぶ歪められてる……というのは、今のやり取りでほぼ確定したわけで。
……うん、うん。これはつまりあれじゃな?
「わかった!今日は遊びに行こう!みんなで!」
「なんですって!?ちぇーんっ、今日の予定全部キャンセル!」
「既に午後の予定に関しては、動かせるものは後日に・無理なものは午前中に終わっております」
「はやーい!流石うちのちぇん!」
……このちぇん、有能過ぎやしない?
え?そろそろ仕事を投げる時期だと思ってた?……やだこの従者瀟洒すぎる……。
ともあれ、世間知らずの王女様に全うな友達付き合いというものを教えること、それが今現在私達が為すべき仕事なのだ!
……前回郷の内部を案内したのでは足りなかったのか、だって?
そりゃまぁ、私がダメカテゴリーに入ってないって思う方がおかしいと言うか……。自分で言ってて悲しくなるけども。
「で、遊ぶのはいいけど。どこに行くの?」
「うむ、友達と行くのだから、場所なんて決まってるでしょ!」
「え、どこに……」
「なりきり郷○ィズ○ーランド……」
「ないから!!そんな危なっかしい場所なんてないから!!」
「えー、じゃあたこぶえランド?」*6
「やめなさいよ著作権的にスレスレの場所を攻めるのはっ!!」
むぅ、友達と一緒に行くところと言えば、基本的には遊園地だと思うのだけれど。
ゆかりん的には、私が上げた場所はお気に召さないらしい。……当たり前だろうって?ハハッ!
まぁ冗談はさておき、なりきり郷の一画に遊園地的なものがある、というのはホントの話。
ファンタジー世界出身のアンリエッタ王女が気に入るかは、五分五分と言ったところ……かな?
「そーいうわけで、行くわよヘンダーランド!」*7
「あるのっ!?」
「あるよっ!」
「ほっほーい、呼ばれたから来たよー、キーアおねいさーん」
「あっ、これ冗談じゃないやつだっ!?」
こちらの台詞に、何故か驚愕するゆかりん。
……貴方、仮にもここの責任者でしょうに。言っとくけどここ『甘城ブリリアントパーク』とかもあるわよ?できたの最近みたいだけど。*8
ともあれ、案内者として最適な人物であるしんちゃんも呼んだし、いざやヘンダーランド、である!
「ほうほう、アンリエッタちゃんとオグリちゃんね。よろしくねぇ~ん」
「ああ、よろしくな、しんちゃん」
「私のことはアルトリアで構いませんよ?」
「お?じゃあアルちゃんね。……ないアル?」
「それあるのかないのかどっちなんだ、って詰め寄られるやつ」
「おー、ケンちゃんの台詞」
目的地に向かう最中、しんちゃんとは初対面の二人が、彼に自己紹介を行っている。
しんちゃんが
……なんというか、不思議な集まりである。
まぁしんちゃんが関わってる時点で、大体不思議なことになっているようなものなので、言うほど驚くようなことでもないような気がしてくるのだけれど。
……それとしんちゃん。私の言葉に対しての反応、微妙に聞き捨てならないんだけどあとで詳しい話を聞かせてね?
そんな感じに、和気藹々と目的地に向かって歩く私達。
数分後、ようやく目的地が見えてきた。そして風に乗って聞こえてくる、目的地のテーマソング。
「私はあまり詳しくないのだが、ここはどういうテーマパークなんだ?」
「ほーい、これパンフレットー」
「ふむ?なになに……」
変だ変だと歌う声を聞きながら、オグリがしんちゃんからパンフレットを手渡されているのを見る。
……元々は、しんちゃんの映画としては四作目に当たる『ヘンダーランドの大冒険』の舞台となる場所。
それが、ヘンダーランド……正式名称『群馬ヘンダーランド』である。……君
作中での謳い文句は『北関東一の規模を誇る総合アミューズメントパーク』であり、ランドのすぐ近くに鉄道駅まで存在しているのだとか。
その実態は『悪い魔法使いに侵略されてしまった国』であり、国土ごと地球に転移してきているという、わりとぶっ飛んだ設定を持つ場所でもある。
その遊園地の一画で、しんちゃんはとある人形にであうのだが……、まぁその辺りは映画を見て貰えれば、なんて。
ともあれ、その国……もといテーマパークの名前を受け継ぐここは、原作とは違って普通の遊園地である。
「あら、お客様がいらっしゃったわよ」
「じゃあおもてなしをしないとね」
「おひさー。トランプする?」
「もう二度としないわよっ!」
「ババ抜きはこりごりだわ」
「ば、
「誰もそんなこと言ってないでしょうに……」
「子供の前でみっともないわよ」
……とまぁ、こんな風に原作での黒幕、マカオとジョマが普通に経営陣に居る、ってところを除けばねっ!!
なんともまぁ珍しいことに、この二人はちゃんと・普通の・たまたま二人揃ったなりきり組である。
大体ちゃんとしたメンバーが揃うことの少ないなりきり郷において、その数少ない『ちゃんと揃った組』が彼女達……というのは、なんか微妙な気分にならないでもない。
まぁ原作とは違って、別に悪さをするつもりはないようだけども。
「そりゃそうでしょ。貴方が居るのに世界征服とか」
「身の程知らずもいいところじゃない」
「マーちゃんとジョーちゃん、ここだと魔法使えないもんね」
「……癪だけど、その子の言う通りなのよね」
「原作の私達、微妙に抜けてるわよね」
交互に喋りながら、しんちゃんの言葉に頷いてため息を吐く二人。
……魔法の国出身の二人だが、どうにも『ヘンダーランド』内に居ると、魔法の使用に制限が入るのだそうで。
原作だとそこから外に出れば、彼女達自身の魔法も使えるらしいのだが、生憎となりきり郷においては
つまり、なにが言いたいのかというと。
外に出るのに魔法が使えない上に、仮にそういう侵略目的で外に出ようとするならば、真っ先に
蟷螂の斧どころか、爪楊枝でラージャンを倒せと言わんばかりの戦力差に、端からそんな気は失せてしまった、ということなのだそうだ。
「仮にも劇場版の悪役なのだし」
「
「まぁ、なりきりだしねぇ。……代わりにヘンダーランドの経営陣として頑張るってのが、現状できることだよね」
「ままならないわねぇ」
「まぁ、悪いことするよりはマシ、かしら」
まぁ、そもそも世界征服とか
なお、そんな二人を前にしたアルトリアとオグリは、暫く呆然とした顔をしていたのでした。