なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
地味に怖いなこのゲーム、と思いつつ体の調子を確かめ続ける私である。
いやあれこれ言ったけど、やっぱ海里様ボディヤベーのだわ、流石は『月の君』様って感じなのだわ。
「具体的には?」
「一番のポイントは、私よりも背が高いこと!」
「また微妙な……」
「なにを言う、背が高い上で私ができること全部できそう・もといできるってのは大概凄いことなんだぞぅ?」
背が低いことは時に利点にもなるけど、やっぱり背が高い方がお得なことも多いのだ。
特に、『神断流』は直接戦闘を主とする流派。
となれば、相手とぶつかる際に単純なフィジカルで押されかねない小さな体よりも、寧ろ押し返せる大きな体の方が無理を通しやすくなるのは道理なのである。
……まぁ、そもそもフィジカル云々の話をするなら女性より男性の方がええやろ、って感じになるし『神断流』そのものに体格差を覆すための技術も幾つかあるから、そこまで深刻な問題ってわけでもないんだけども。
「ただまぁ、その辺の技術も普通に『神断流』の技だから、言い換えると体が小さい分技を一つ余計に使わないといけなくなる、ってことになるわけで。……余計な負担を増やさないようにするためにも、体が大きい方がいいやって感想になるのはそれほど変なことじゃないと思わない?」
「あーうん、言われてみれば確かに……?」
そんな感じでやり取りしつつ、やって来たチャレンジャー達をボコる()私達です?る。
……いやまぁ、ボコりボコられが当たり前のゲームだからこそここまで好き勝手してるだけで、本来ならもう少し手加減とかするんですけどね?
などと、誰に向けたのやら不明な言い訳を投げつつ、それでも対戦において蹂躙を止めない私達なのであった。
──無論、この行動にも理由はある。
先ほど私が感知・解析によって周囲を探った際、辛うじて相手となる
その時一緒に判明した事実が、なんとも頭を悩ませるものだったのだ。
その内容というのが、端的に言うと『組み手百人抜きしろ』だったのである。
……いや、実際に組み手で百人ぶん投げろとか書かれてたわけじゃなく、諸々の情報を総合すると大体そういう意味になるってわけでしてね?
まぁあれだ、ひみつ道具が組み込まれる際に琥珀さんから願われたものが『このゲームの成功』だったため、分かりやすく成功したと判断するためにデイリー・アクティブ・ユーザー*1……いわゆるDAEを気にするような指示になった、みたいな感じというか。
で、アクション系のゲームで好評を得るために必要なものがなにかというと、最初はとにかく話題性……ということになるわけで。
「現状でも話題性は抜群なのでは?丸一日の待ち時間が発生していたレベルですし」
「それに関しては、どっちかというと筐体の少なさの方が問題って感じかなー」
……なお、もしもボックスについて話したわけではなく、なんとなくこうすると正解にたどり着けそうだなー、という直感の上での行動であること・およびその理由としての説明なのであしからず。
まぁともかく、である。
確かに、一グループ単位で見ると、この筐体は中々にキャパが高いと言えるのかもしれない。
だが同時に、あくまで
「あー、個人で楽しみたいやつにはハードルが高い、と?」
「それからまぁ、フルダイブ形式のゲームであることも微妙に二の足を踏ませる理由になってるかもね?一応ゲーム中は筐体内に入れないようになってるけど、裏を返すと中の人達については制限がない、ってことでもあるし」
「それはあれか、他人の前で無防備になるのはちょっと……みたいなことか?」
「そういうことだね」
そう、この『ブレイジング・デュエル』はフルダイブ形式のゲーム。
それも、
本来ならそれは単なる宣伝効果しか発揮しないのだけれど……ここで、日本のアニメ文化が微妙にストップを掛けてくるわけだ。
──そう、ソードアート・オンライン、およびその作品の中で描かれたフルダイブ形式のゲームに発生するデメリットの存在である。
本来、そういう問題点というのは実際に遊ぶうちに明らかになっていくものだが、ある程度先取り形式で問題が周知される形になっている、というか。
その中で今回問題になっているのが、フルダイブ形式のゲームはそれを遊んでいる最中
もう少し分かりやすく言うと、個人のプライバシー保護や肉体の保護について、微妙に不安感を覚えてしまうような状態になっている……ということになるだろうか?
ソードアート・オンライン内であれば
そうでなくとも、フルダイブの最中色々と無防備になることは事実。
不特定多数のプレイヤーと一緒に遊ぶ、となった場合個別筐体でもない限りは窃盗などの犯罪についての対策も必要となってくるだろう。*3
その上で、現在の『ブレイジング・デュエル』の筐体を見ると、だ。
……うん、個別の筐体じゃなく何人かの人間を纏めて乗せる形式なので、個人個人のプライバシー保護については微妙にしか見えない。
そりゃまぁ、プレイする前に客に問題がないかとかの確認でも時間が掛かるわけだ。
その気がなくても特定のタイミングで魔が差す、なんてことはあるわけだし。
「そういう意味では『逆憑依』の人達は検査とか大雑把でいいから楽だよね、性善説を気軽に信じられるというか。……まぁ、リンボとかが客だったら流石にちょっと困るだろうけど」
「本当はそれすら必要がないのが一番なのですけどね……」
まぁあれだ、人の善意に頼った制度は基本的に無茶苦茶にされるものと思っておくべきというか。*4
そんなわけなので、現状の『ブレイジング・デュエル』は勢いがあるように見えて、その実その勢いはあくまでも瞬間的なものでしかない可能性が非常に高い、ということになるわけである。*5
「それを、このゲームに設置されたひみつ道具は望んでいない、と?」
「そうなるねー。まー、あくまでも本人?がそう思ってるわけじゃなく、漠然とこのゲームが流行るように誘導していきたいなー、みたいな空気があるというか?」
嘘である。そういう気配じゃなくて、滅茶苦茶ゲームを流行らせたくて仕方ない感じである。
……ただまぁ、そのために過剰な干渉をすると自身の所在がバレてしまうため、ほんのりちょっぴりの意識誘導で済ませているというか?
まぁそんなわけなので、こっちとしては相手の思惑に乗るのがなんやかんや一番楽だろう、ということになるわけである。
意識があろうがなかろうが、どっちにしろこのゲームを強く宣伝するのが一番……みたいな?
「で、そのためにやるべきことが百人抜きなのです」
「うーん、話が繋がるような繋がらないような……」
そうして私が出した結論に、微妙に納得がいかないのか首を捻る
……いや、別に変なことは言ってないんだけどねぇ?