なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
はてさて、唐突に私たちの会話に混ざってきた青い影……もとい、ドラえもん。
その姿にびっくりしている一同とは裏腹に、私は動揺を隠しつつも彼の様子を冷静に観察していたのありました。
なんでかって?……そりゃあからさまに怪しいからだよ!
なんで唐突に湧いてきたんだこいつ、実はひみつ道具が偵察用に作り出したダミーとかだろ?!
っていうか、ドラえもんとしての『逆憑依』の枠は埋まってるはずだから余計のこと怪しいし!……みたいな話ゆえの観察である。
……そう、ドラえもんという存在の枠は、本来埋まってしまっているのだ。
と言っても、なりきり郷にいるのはいわゆるレベル1*1──特定確率でアレなことを言い出すドラえもん、という明らかなパチもんなのだが。
とはいえゆかりんに代表されるように*2、現状がどうあれ彼はドラえもんの枠を取っている相手。
例え顔を合わせたのび太君が『ドラえもんが壊れちゃったー!!?』などと叫ぶことになったとしても、それは変わらないのである。
……治してくれって泣きつかれたけど、生憎それが正常だよって返したら滅茶苦茶絶望してたっけなのび太君。*3
なお、そんな風に他の面々が騒いでいる間も、当のドラえもんは変わらず道具を出していたのだが。*4
その辺の話はともかくとして。
一応曲がりなりにも枠を埋める相手がいる以上、このドラえもんは偽物かなんらかの手段で出てきた似姿か、って話になるはずなんだけど……それを断定できなくする要素が一つだけ存在していた。
それはなにか?……それは相手の
「……えっとぉ、ボクの顔になにか付いているかしら?そんなに見つめられると照れるんだけど……」
「……間違いねぇ」
ドラえもん、というアニメは実のところ結構代替わりをしていたりする。*5
幻の日テレ版に始まり、朝日テレビ系列で今も続くアニメもまた、声優と絵柄の代替わりが行われていることからもその事実はよく知られていることだろう。
その事実を理解していれば、今しがた彼の口から放たれた言葉が、耳を突くことは間違いあるまい。
令和の今は聞くことのほとんどない……されどドラえもんと言えば、と聞かれて大多数が思い浮かべるあの声ではなく。
あれこれと言われながらも長きを努め、令和のドラえもんとして定着したあの声の方である、と。
……ぶっちゃけるとわ○び版のドラえもんの声であった。
そのため、迂闊に偽物と呼ぶことができなくなっているのである。
なんでかって?下ネタいう方のドラえもんはの○代ボイスなんだよぉ!!
なんでアイツその声なんだよ!いやまぁ悟空さと同じボイスでもそれはそれで困るけどさぁ!
……ともかく、声が違うので別キャラ。
別キャラなのだから改めて『逆憑依』が発生しても問題はないでしょ、とか言われたら正直否定しきれないのは事実。
そのため、地味に反応に困る結果となっているのでありましたとさ。
「……ええと、話を戻しても大丈夫かい?」
「あっはい、どうぞどうぞ」
偽物と判断するのは早計、【顕象】辺りと見定めるのもまだ早い。
……っていうか、仮にひみつ道具がこちらへの干渉役として彼を生み出したのだとすれば、変に相手を警戒させる行動も厳禁だろう。
ってなわけで、ここは一先ず何事もなかったように話を元に戻すに限る、ってことで彼に会話の主導権を戻したんだけども。
……そういえばこいつ、【星の欠片】について興味を抱いていたんだっけか。
これは果たしてどちらの意味での興味なのだろうか?
単に未知なるものに対しての純粋な興味なのか、はたまた本体が脅威度を見誤ったことを前提とした、再びの脅威度判定のための測定に当たる行為なのか。
……後者ならあんまり子細を話すのもよろしくはないのだが、仮に前者だと相手に変な警戒を強要する形になり、とても宜しくない。
かといってこの場からごまかすのは無理があるので、ある程度の説明は避けられないのだが……うーん、ひみつ道具……それももしもボックスなんて大概な相手に【星の欠片】のことを説明するのは、正直厄ネタの気配しかしないんだけどどうなんだろう?
……厄ネタの気配ということでその辺の説明をすると。
以前から何度か話しているように、【星の欠片】とは科学技術の延長線上にあるものである。
広大な世界と同じく未明である極小の世界。
その中でも現状のやり方ではどう足掻いても確認できない小ささの、そのまた先の先の……といった繰り返しの先に見えてくるモノこそが【星の欠片】。
ゆえに、いつか未来の果て・人があまねく世界を理解し尽くした時、【星の欠片】もまた人が安易に扱える技術の一つに落ちるのだが……正直、それがどれ程先のことになるのかは不明である。
いやだって、ねぇ?
現代の科学においては『情報がエネルギーを持つかも?』みたいなところまでしか行けてないわけで、けれど
……科学の進歩は基本飛躍的、進み始めればあっという間に駆け抜けて行くものとはいうけど、『無が有になる』ことを科学的に証明するにはどれ程の時間が必要なんだろう、というか。
とはいえそれはあくまでも現実世界の話。
空想科学の世界ならばそこまで遠い話でも……となりそうだが、その実空想科学相手の方がややこしいというか。
何故かというと、【星の欠片】はあくまで
……ドラえもんのひみつ道具の話でも少し触れたが、基本空想科学というのは
夢を叶える道具である『ひみつ道具』は、現実を積み立てる現代の科学とは基本対立するものなのである。
にも関わらず、様々な要素を使ってひみつ道具もどきを成立させている琥珀さんの手腕には舌を巻かざるを得ないが……ポイントはそこではない。
ここでのポイントは、『逆憑依』関連のモノとして成立した科学は『空想科学をこちらに持ち込めるようにしたもの』である、ということ。
それでいて、『本人以外の利用をあまり考慮していない』のである。
……なに言ってるかわからんって?
もう少し具体的に言うと、本人の存在を反応の基幹としているため、本人が消えた際にそれまでに起こした現状がなかったことになる可能性がある、といえばわかるだろうか?
まぁ、これに関しては科学に限らず『逆憑依』の起こすこと全てに言える可能性があるのだが。
現状『逆憑依』から戻った存在が居ないために確認できないけど……恐らく、完全に『逆憑依』という現状がこの世界からなくなった時、この世界はそれがあったことによる変化の基盤を全て失うものだと思われる。
いわゆる修正力のようなものだが……これは世界を正常に保つための機能、恐らく発生しないなんてことにはならないだろう。
……仮にそうなった場合も、現実の物理法則の延長線上にある【星の欠片】による影響は残る可能性が高かったりするのだが、その辺は多分
じゃあなにが問題なのかというと。
(……もしもボックスが【星の欠片】を真似し出したら、って話だよなぁ)
仮に、『逆憑依』が消えたらその影響が正される、というのが正解だった場合。
この場で懸念されるのは、それを理解したもしもボックスが暴走し始めることの方だろう。
元々『逆憑依』は自然なものではないのだ。
最終的にどうなるかは不明とはいえ、ともかく
……難くないが、その辺の話をひみつ道具が──機械が理解できるかは謎である。
なまじ科学の名前を与えられているモノであること、およびそれが『もしもボックス』であることが変に噛み合って、現状を『自身を損なう可能性のある状況』と判断した場合、変な暴走を始める可能性はとても高い。
いや、暴走するだけなら問題はない。
根本的に空想科学と【星の欠片】は相性が悪く、参考にしようにもまったく噛み合わない……なんてことになる可能性の方が大きい。
……それをなんとかできてしまいそうな『もしもボックス』が相手である、というのが最大の問題点なのだ。
簡潔にいうと『まかり間違って【星融体】になりそうで怖い』というか。
その辺を考慮して、ちゃんと説明するかどうか悩んでしまう、というのが今の私の問題なのであった。
……いや、真面目にどうしようね?