なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

114 / 1001
足で切る風と車体で切る風

 カート。

 パイプのフレームにエンジンやハンドルを()()()()()()()搭載した、小さくて軽量である競技用車両を指す言葉であり、時に競技そのものを指す言葉としても使われていたりするもの。

 決められたコースの中を、一番早く走りきった者の勝ち……という、シンプルかつわかりやすいルールが売りのアトラクションだ。

 

 元々レーシングカーの設計者が考案したものとされるだけあって、簡素ながら意外と速度が出たりする。*1……まぁ、ちゃんとすれば公道を走れたりするのだからさもありなん。*2

 

 

「普通のゴーカートなら、解説はその程度でも構わないのデスが、ここは魔法のテーマパーク『ヘンダーランド』。ここにしかないものも、勿論あるのデスよ?」

「……うん、単純に風を切って走り回るのが良さそう、くらいの考えしかなかった私が言うのもなんだけど、それでも敢えて言うよ?……怒られるでしょこれ!?」

 

 

 ……はてさて。

 速度が出せる、と言っても場所が遊園地の中である以上、提供できるスペースの関係で結果的に上限速度が決まる……みたいなことはあるだろう。──そう、安全基準である。

 

 遊園地においてあるようなゴーカートなら、速度は出せても時速四十キロほど。秒速に直すと十メートルほどとなる。

 公道を走る車両くらいのスピード、と言うと速いような気がしないでもないが、実際狭いコースをこの速度で走られたら堪ったものではないし、そもそも()()()()()わけでもないのだから、周囲への影響を考える必要もある。

 スペック的にはもっと速度が出せたとしても、リミッターなりなんなりで実際に出せるのは二十から三十キロほどになる、ということもままあるはずだ。

 

 ……なにが言いたいのかというと。

 要するに、速度に慣れているアルトリアとオグリの二人には、些か物足りないものであるかもしれない……ということだ。……提案したあとにその事に気付いたのは秘密。

 

 ところで。『cc』という言葉に、聞き覚えはないだろうか?……シーツー(C.C.)?ピザでも食ってろ。……レモン?yeah(イエー)でもないわ、レモン一つに含まれるビタミンCがレモン四個分なら、あの飲料に含まれるレモンは十から四十個分になるとかどうでもええんじゃいっ。*3

 

 ……話が逸れたけど、ここで言う『cc』とは排気量を示す単位、『立方センチメートル(cubic centimetre)』の頭字語のことである。*4

 排気量が五十ccの原動機付きバイク(原付)が出せる最高速度は六十キロらしいとか、はたまた排気量百ccのカートなら時速百キロを出せるとか……。*5

 排気量を見ると、大体どれくらいの速度を出せるのか、というのはなんとなくわかるものなわけだ。*6

 

 ……遊園地のゴーカートは基本電動式だから、排気量は関係ないんじゃないか、ですって?

 

 はっはっはっ、よく思い返したまえ。

 私は一番最初に口に出したのは()()()()()()()だぞ?パイプフレームにエンジンやらハンドルやらを剥き出しでくっ付けている……というカートについて、ね。

 ゴーカートにだってそんな車体のモノもあるだろうけど……、遊具としてのゴーカートは安全性を高めるために、剥き出しのフレームを外装で隠すし、速度も二十前後で留め置くし、そもそもガソリン式のエンジンなんて危ないから電動式にするし。

 ……ってな感じに、パイプフレームの車体の話を一番にしている時点で、話がずれているわけで。

 

 まぁつまりなにが言いたいのかというと。

 ◯リオのゲームに出てくるカートが、今現在私達の前に置いてあるわけであります。*7

 ……任◯堂法務部に◯されるっ!!?

 

 

「おおっと、勘違いしないで頂きたいのデスが、これはあくまでも『ヘンダーカート』という別の存在!配管工のお髭な赤い人とは一切関係ございませんのデス!」

「嘘つけぇっ!!地面にダッシュパネルとかアイテムボックスとか置いてある時点で、確信犯やろがいっ!!」

「◯ィ◯ィーコングレーシングの方かも知れませんデスよ?」*8

「なおのこと悪いわぁっ!!!」

 

 

 目の前に広がるコースは、見た目の上では狭い。

 ……所々トンネルになっているのだが、恐らく中で空間拡張が使われているはずである。

 なので、全長としては一キロとか二キロとかあってもおかしくはない、そんな感じのコースだった。……レインボーロードかなにか?*9

 

 というか、である。

 そんな距離を走らされる以上、目の前のカートは、普通に排気量が多いものである可能性が高いわけで。

 ……これが排気量二百ccとかなら、出せる速度は時速二百キロ近いものになる可能性があるということになり、正直な話死亡フラグすら見えてくる感があるというか。*10

 ……よくそんな速度で甲羅ぶつけたりバナナ放ったりできるな、あの髭ファミリー。

 

 まぁ、それらの安全面に関わる部分は、全部魔法で解決……という、ストロングかつスマート(?)な解決法が取られているわけなのだが。

 ……ついでに言うなら、地面のダッシュパネルとかアイテムボックスとかも、全て魔法による産物である。

 魔法のテーマパークの面目躍如、というわけだな!……制作者はバカなのかな?!

 

 

 

 

 

 

「……時速百五十キロ越えでも、プロテクターとかヘルメットとか必要ない辺りは、さすが魔法って感じだけど……」

「へーい、キーアさん!いつまでも細かいことに拘ってると、ハゲちゃいますデスよ?」

「ハゲるかぁっ!!貴様の髪の毛毟ってやろうかぁっ!?」

「お、落ち着いてくださいせんぱい!」

 

 

 カートに乗り込み、スタートの合図を今か今かと待ち続ける私達。……出せる速度的な意味で、アルトリアとオグリも満足したらしい。まぁ、小さかろうと車は車、だしねぇ。

 

 でも、幾ら魔法による保護(+郷内でのダメージ保護)が働くとはいえ、肘とか膝とか頭とかを守るプロテクターの類いを、一切付けずにカートに乗る……という体験は、正直困惑しかないわけで。

 いやまぁ、軽量化とか風を感じやすくするとかの観点から、付けないでいいのなら付けないでいい……みたいな結論になったのはわからないでもないけども。

 それでもこうなんというか、気分的な問題であった方がいいんじゃないかな?……的な感覚がなくもなくてね?

 ……マ◯オカート的なアトラクションであるため、他者にぶつかるのが()()()()()()()ので、変に痛みが増しそうな固いものはNG……とも言われたわけなのだけれども。

 

 ……なんて風にあれこれと考え込んでいたら、ガイドのはずなのに何故か一緒に開始位置に並ぶアンナさんに煽られた(?)ため、さっきの会話に繋がるわけである。……『天罰』で墓地に送るぞ貴様。*11

 

 

「はいはい、場外乱闘はそれくらいにしときなさいな。……それで?能力使用は直接攻撃じゃなければあり・アイテムもありで妨害もありありってのが、今回のレースのルールなのよね?」

「デスデス。競うのなら、狂気の沙汰ほど面白い……ということデスね」*12

「きょうきがうんぬんというのはよくわからないが、レースと聞いては負けるわけにはいかないな。……惜しむべくは、流石に自身の足では勝負にならない、ということだが……」

 

 

 ゆかりんの仲裁により、小さく舌打ちをして姿勢を正す私。……ガラが悪い?うるせー喧嘩売ってきたのはあっちじゃい。

 などとハンドルに頬杖をつきながら呟きつつ、ゆかりんとアンナさんが会話するのを素直に聞く。

 

 ……ふむ、能力で直接吹っ飛ばすのはダメ、と。

 出てくるアイテムによっては能力のがマシ、みたいなのもありそうだけど、それはいいのだろうか?

 いやほら、さっき◯◯ディーコングレーシングかも、みたいなこと言ってたでしょう?あのゲーム、甲羅の互換アイテムがミサイルだからさ。*13……甲羅をぶつけられるのも大概だけど、ミサイルはもっと大概だよね、というか?*14

 まぁ、別に怪我とかもしないからいいのだろうけど、絵面のインパクトが凄いなぁ、なんて他人事のように思ってしまうわけである。

 

 それと、レースという言葉にやる気満々なオグリ。

 ウマ娘自体がわりと好戦的、みたいなところがあるとかないとか聞くし、競うとなれば手を抜かないのは確かだろう。*15

 ……本音を言うのなら、自らの足でもって最強を証明したいのだろうけど。現状ウマ娘の最高速度は七十キロ前後、公道ならいざ知らず、こういう競技用の車両に追い付くには、まだまだ鍛練が足りないところがあるわけで。

 

 ……『王の馬(ドゥン・スタリオン)』使えば勝てるんじゃないかって?あれに関してはポンポン使うなって言い含めてあるので、ここでは使えないです。*16

 別にアンナさんとかマカオとジョマとかを信用してないわけでもないけど、変に話題にされても困るので、一応の処置……という奴である。

 ……個人的な経験として、どっかで使わざるを得ない場面に立ち会いそうなことが一番の懸念だけれども。

 

 ともあれ。

 オグリの闘争本能に火が着く横で、もう一人熱くなっている人がいる。それが、

 

 

「……頑張りましょうね、オグリちゃん!」

「ん?ああ、頑張ろう。……なぁマシュ、なんでアルトリアは張り切ってるんだ?

アルトリアさんと言えば、負けず嫌いが特徴の一つとしてあげられるようなお方ですので……

「……なるほど」

 

 

 張り切るオグリを見て、自分も同じくらいに張り切っているアルトリア、その人である。

 ……うん、競走だとか勝負だとか、競いあうということに関して意地を張る面があるのが、アルトリア族の特徴である。

 彼女はその根幹がアンリエッタなので、元のアルトリアほど熱しやすい、というわけでもないだろうけども。……まぁ、熱気にあてられる程度には、彼女もまた熱の入りやすい性格をしているというのは、今までの言動からわかっていた。

 ……つまり、現状は想定内というわけである。名付けて、

 

 

「吊り橋効果ならぬ、『競走して仲良くなろう』作戦……!」

「……貴方って、時々びっくりするくらいバカになるわよね」

「なにをー?!昔っから喧嘩っプルと言えば一大勢力の一つだろーっ!!?」

「ああもう、静かにしなさいなっ」

 

 

 こちらに呆れ顔を向けてくるゆかりんに突っ掛かりつつ、私は勝利を確信する。

 二人とも競走に関しては真剣に向き合うタイプである、勝ったなガハハ!

 

 ……何故かマシュにまでかわいそうなモノを見る目で見られた、解せぬ。

 

 

*1
出せるモノによっては、最高速度が時速250kmに到達するものも

*2
道路交通法において『総排気量50cc以下または定格出力0.6kW以下と定められた普通自動車』、いわゆるミニカーに該当するため、ナンバープレートがあれば一般道を走行することが可能。但し排気量50cc以下なので、出せる速度は原付とさほど変わらないし、車高が低いのでトラックなどの死角に入りやすく危険だったりする。なお、区分的には普通自動車/原付に該当する(道路交通法としては普通自動車、道路運送車両法では原付扱い)ため、かつてはヘルメットもシートベルトも着用義務がなかった(現在は義務化している)

*3
それぞれ『コードギアス』のキャラクター・『C.C.(シーツー)』、サントリー製造・販売の『C.C.レモン』、『レモン一個分の果汁に含まれるビタミンCは、レモン全体に含まれるビタミンCの四分の一』のこと。最後のレモンうんぬんについては、『レモン一個分のビタミンC』が果汁に含まれる20mgを基準にしていることから起きるもの。果実丸ごとに含まれるビタミンCの量は80~120mgであるため、『レモン一個分(果実丸ごと一個分)に含まれるビタミンC』は、『レモン四個分(レモン果汁四個分)のビタミンC量』となる

*4
容積の単位。縦・横・高さが1cmの立方体の体積が1cm3であるが、それを器とした時に中を満たす容量・ないし体積がここで言う1ccである。1ml(ミリリットル)とも

*5
性能的な問題になるので、全ての原付・カードが同じように速度を出せるわけではない。が、基本的には排気量が多くなるとエンジンパワーが強くなるため、同時に最高速度も上がっていくのが普通である

*6
基本的に、排気量はエンジンのパワーを示すモノと捉えることができる。乗用車などのそもそもの車体が重いモノに関してはわかり辛いが、ことレーシングカートなどの軽量車に関しては、速度と排気量はかなりダイレクトに関係してくるのがわかるはず。……無論、エンジンやら車体の重さやら、その他の要素も絡むのだが

*7
◯◯ccという単位をマリオカートで知った、という人は結構いるはず

*8
『ディディーコングレーシング』は、ニンテンドー64専用のソフト、日本未発売だがニンテンドーDSのリメイク版もあり。同じレースゲームである『マリオカート』と比べると、最初から車種が三種(車・飛行機・ホバー)あることやアイテムボックスがランダムではないこと(風船(ボックス)の色で決まっている)などから、基本的に上級者向け扱いされている。出てくるキャラクターもレア社のキャラクターばかりで、一般層には受けなさそうな感じがある(タイトルのディディーコング・自身の作品が発売してなかったせいで、こっちが初出になってしまったバンジョー・後に発売された自身が主人公の作品が成年向け指定されてしまったコンカーの三人以外は、ほぼオリジナルキャラなので仕方ないのだが。後のリメイクでは、版権がレア社にある後者二人はリストラされたりもした)

*9
『マリオカート64』のレインボーロードの長さは、公式で2000mと明言されている。因みに、レインボーロードの公式レコードは『4'05"88』、おおよそ4分。三周回った時(※ショートカット無し)のタイムなので、6kmを4分で走っていることとなる。そのため、時速はおよそ90kmほどとなる。マリオカート64は150ccが一番速い区分であるため、車種としてはスポーツカート辺りだと思われる

*10
時速200km越えを出せるのはミッションカートやスーパーカートなどと呼ばれる区分になる。最早ちっちゃいF1カーみたいなものなので、遊園地にはまず置いていないはず

*11
『遊戯王OCG』のカウンター罠カードの一つ。『手札を一枚捨てて、効果モンスターの効果の発動を無効にして破壊する』効果を持つ。説明がややこしいのは、遊戯王に置いては『効果を無効(効果そのものを無効)』と『効果の発動を無効(開始処理を無効)』は別物であるため。ついでに言うなら『発動した効果を無効(結果を無効)』も別物である

*12
福本伸行氏の漫画作品『アカギ』に出てきた台詞。最初に口にしたのは同作の市川というキャラクターだが、基本的には主人公の赤木しげるの台詞として認識されていることがほとんど

*13
『ディディーコングレーシング』で出てくるアイテムは『ミサイル(赤バルーン)』『ダッシュ(青バルーン)』『バリア(黄色バルーン)』『トラップ(緑バルーン)』『マグネット(虹色バルーン)』の五種類。同色のバルーンを取ると効果が強化されるという仕様上、アイテムの取得にも戦略性が存在している

*14
『マリオカート』より、『みどりコウラ』と『あかコウラ』。固いものと爆発するもの、どっちをぶつけられる方がマシだろうか?

*15
競走馬自体が『競う』という行為を行う関係上、気が荒くなりやすい面があるそうな。ウマ娘もレースに関しては、闘争心が燃え上がるのが普通なそうな

*16
『ステータス倍化』がわかり辛いが、要するに基礎ステータスの『スピード』『スタミナ』『パワー』『根性』『賢さ』の数値を単純に倍に、更に適正系に関してはfate側のステータス計算に見立てて(fが0、以後Aに向かって10ずつ加算。Aなら50)その数値を倍化する(fは変わらないが、EはDに、DはBに、CはA+に……というような感じになる)


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。