なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
はてさて、囮役は勿論BBちゃんが行く……。*1
ということを本人に知らせないまま話を進めることにした私。
そうとも知らず張り切る彼女の姿に、後でなんか埋め合わせをしよう……と心の奥底で誓ったわけなのだけど。
それはそれとして、今現在BBちゃん達とその他の面々の間では、簡易的な自己紹介が交わされていたのでありました。
「電子の精霊……みたいなものかぁ」
「そういうことになります!よろしくお願いしますね、青狸さん?」
「ボクは狸じゃないやい!……うん、わざとなんだろうけどいきなりは止めて欲しいな」
「おっとすみません。ギャグマンガ出身ならばこの程度のノリツッコミは悠々こなして当然だと思っていましたので」
……うん、自己紹介は恙無く終わったみたいだな!()
まぁその辺はともかく、話が終わったのならさっさと話を次に進めることにしよう。
「そんなわけで、BBちゃんには是非ひみつ道具の所在を探して貰いたいんだけど……」
「せんぱいの頼みとあらば喜んで!……と、言いたいところなんですけどぉ」
「ん?」
「ざっと探査してみたんですが、どうやらこの世界は私との相性がよろしくない様子。ですので、その辺はハクさんにお任せしようかと思います」
「……ぬ?我か?」
なにやら言い淀んだBBちゃん。
どうにもこのゲームとの相性が悪く、自身ではひみつ道具の所在を探りきれないので他の人に任せる、ということになるらしい。
……らしいのだけれど、こっちを見つめるBBちゃんの視線が口ほどに物を言っているのが理解できる。
これあれだな、『せんぱいの目論見はわかってますよ』って顔だな?
(……せんぱいが頼りにしてくださったのはありがたいんですけど……これあれですね?恐らくですけど迂闊に探査するとヤバイやつ、って私のゴーストが囁いてます。具体的には『人類悪 顕現』とかしそうな予感がひしひしと!あれですね、多分私と相性が良すぎるやつですこれ!流石にビーストになるつもりなんてありませんので、ここは他の人に任せて様子見です!)
(あれだな、BBちゃん囮役にされてることを察知して他の人に投げたな?……ってことは後で怒られるやつかなーこれ)
(……何故でしょう、よくわかりませんけどせんぱいとBBさんが盛大な勘違いをなさっているような気が……)
(ちくわ大明神)
(なんだ今の)(なんだ今の)(なんだ今の)
……なんか、色々変なことになってるような気がするな?
まぁともかく、BBちゃんがなにを考えているかはともかくとして、探査をハクさんが任されたことは事実。
となると、BBちゃんの代わりに彼女が捜索を始める、ってことになるんだろうけど……いや、大丈夫かこれ?
本人にそのつもりはないけど、ハクさん自体は九尾の狐を基本とする邪悪の化身。
それが周囲にもたらす影響、というのは中々に未知数である。
特に、相手があくまで機械である以上、そこに掛かる危険性をあくまで表面上だけの情報で判定する、なんてことになる可能性は少なくなく……。
……あれ?ってことはもしかして派手にヤバイ?
遅蒔きながらそのことに気付いた私だが、完全に後の祭り。
役割をパスされたハクさんは特に疑問を差し込むこともなく、周囲の探査をするために自身の能力を発動し。
「ぬわー!?」
「ハクさーん!?」
何故か盛大に爆発する羽目になったのであった。
……いやなんで爆発した!?
「……がくっ」
「ハクさんが死んだ!」
「この人でなしぃ!!」
「……え、ええと……fatality……」
「モモイさん?!無理に乗っからなくても大丈夫ですよ!?」
あの爆発、ゲーム的にしっかりダメージのある類いだったようで。
その爆心地に位置してしまったハクさんはもろにダメージを受け、見事に体力を全損。
結果、負け判定を受けてゲームから強制ログアウトさせられていったのであった。
……多分、ひみつ道具側が危ないものと判断して追い出した、ってことなんだろうけど、その辺の情報が微妙に噛み合ってない(様に私に情報を制限されていた)周囲は大混乱。
なんだこの爆発!?……とばかりに大慌てし始めたのであった。
「誰かからの攻撃か?!」
「ままままままマシュ・キリエライト!全力でガード……そうでした今の私レムさんなんでした!!盾がありません!?」
「はははーそれを言うと私なんてほぼほぼ無力な少女の姿だぞ。BBのやつには一瞬で見破られた辺りなんとも言えんがな!!」
「その口調の時点で大抵の人が気付くと思いますが……とはいえなるほど、そちらの方々は元の姿ではないのでこういう時余計に対処に困り始めるのですね」
「対応に困りすぎて四匹に分裂してるドクターとかいるからね」
「ドクターっ!!?」
ええはい、頭と両腕と腹と下半身……みたいな感じで分裂して動いてるドクターとか、正直ホラー以外の何物でもないでしょこれ。
他、絶対慌てそうにない
はたまた驚きすぎてどうしていいのかわからなくなったのかひたすら笑ってる
思わず困惑する私の耳に、突如響くのは手を叩く音。
視線を音の発生源に向ければ、唯一冷静であったらしい
「皆さん落ち着きましょう。これが攻撃であるならば寧ろ喜ぶべきでしょう?我々は新たな敵を──そこから新たな戦いを待ち望んでいたはず。その中で目的となるひみつ道具に近付くきっかけが得られるだろう、ということで張り切っていたのですから」
「……い、言われてみればそうだね……別に驚くことないっていうか、寧ろこうして奇襲されてもまだ勝ちの目はこっちにあるレベルだから堂々と待ち受けるべきというか……」
「まぁ、これは恐らく敵からの攻撃ではありませんが」
「止めなよ!なりきり郷では周囲を振り回す言動は恥ずかしいことなんだよ!!」
(その言動が良くない気もするがな……)*2
ジェイドさんの鶴の一言で、一先ず落ち着きを取り戻した一同。
その上で、改めてあの爆発が『敵からの攻撃ではない』という発言についての説明が求められたわけなんだけど……。
「単純です。恐らくひみつ道具の抵抗、というやつでしょう」
「……ええと、見付けられそうになったから抵抗した、みたいなこと?」
「でもそれっておかしくないかしら?だって相手は単なる道具で明確な意思と呼べるほどのものは持ってないんでしょう?」
「意思がなくとも反射で行った、という風に考えてもそうおかしくはないでしょう。──まぁ、意思があると考える方がわかりやすいでしょうが」
「それって──」
「こちらの想定が間違っていた、ということでしょうね。相手は恐らく意思を持ってこちらから逃れている……と考える方が正しいでしょう」
ぎゃー!!?
……思わず内心で叫んでしまったがこれは不味い。
相手のひみつ道具がなんなのかを誤解した状態で、相手のひみつ道具に意思が芽生えていると確信されるのは正直困る。
脅威度の見積もりが甘くなり、結果として取り返しの付かない事態を引き起こしかねないためその辺には気付かないで欲しかったんだけど……あれか?ドラちゃん・ドラミちゃんとBBちゃん、機械でありながら明確に心を持つ存在を立て続けに見たことで、その辺の疑念が再発したとかそういうあれか?
つまりBBちゃんを呼んだのが完全に裏目ったってことになるんだけど、もしかして私戦犯か?
それはとても不味いので、ここから恥も外聞も危険性もかなぐり捨てて事態を解決に動くべきか、と思わず先走りかけた私だったのだけれど。
「恐らくはですが、ドラえもんやドラミ・BBという『機械でありながら心を持つ存在』をサンプルとし、急速に成長したのでしょう。ゆえにそこから
「なるほどねぇ……えっと、どうしたの
「え?あ、ああはいはい。私もそうだと思うというか、同じようなこと考えてたのよ!」
……あれ、思った方向と違う感じの結論が出てる?
あくまで偶然心が目覚め、今しがた逃げるようになったと解釈されているみたいだから、これだと相手側も下手に干渉して来たりはしないだろう。
なんでかって?心が今生まれたばかりということはそれは成熟してない・未熟なものだと思われているということ。
要するに『危ないと感じたから反射的に反撃して逃げた』という解釈になるので、相手がずっとこちらを窺って逃げの手を打っているとはならないからである。
ここで迂闊に向こうが手を出してくれば警戒度は上がる。
本来のひみつ道具側の目的が『このゲームの繁盛』的なものだとすれば、ここで変にこちら側に警戒を強いるのはよろしくないのである。
無論、自分が捕まったら元も子もないので、そこに至るまでの情報を得られてしまったら遠慮もなにもなくなるだろうけど……今はそうではない。
つまり、奇跡的に双方が過剰な判断をする必要がない状況、ということになるのだ。
……一時はどうなるかと思ったけど、まだイーブンというか立て直せるというか。
思わず内心で胸を撫で下ろしながら、ジェイドさんの話に口裏を合わせる私なのでありましたとさ。