なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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二転三転する彼女の正体

「お一つ誤解があるようなので、最初に訂正しておきますが」

「はい?」

「今現在私がお守りしているのは、美遊様ではありませんよ?」

「あれー!?」

 

 

 半ばドヤ顔で推理を披露したのにあっさり否定された件について。

 ……いやまぁ、もしもボックスに付随するメイン人格が美遊ではないってだけで、仮称サファイアが補助人格であるって予想の方は間違ってないみたいだけど。

 

 

「ただそうなると、メイン人格はどなた様なので?」

「──まず、機械に自然と宿る意識が無機質なものである、という想定に間違いはありません。そこから美遊様を想像する、というのもそうおかしな推理ではないでしょう」

「ふむふむ」

 

 

 なるほど、考え方としては間違ってないと。

 ……となると、なにかしらのパラメーター──外的要因とかを無視して計算を済ませてしまったので答えがずれた、とかになるのだろうか?

 わかりやすくいうと、なにかしらの要素を見逃したまま答えを出してしまった、みたいな。

 

 

「……ん?」

「なにやら引っ掛かりになったようですが、解説を続けますね。無機質という要素から感情の薄さを導き出すのはそうおかしな論法ではありません。──ありませんが、機械に芽生える知能として考えると少々異質となります」

 

 

 なにせそれは、偶発的に生まれるものですので。

 ……と告げたサファイアさんの言葉に、思わず脳裏に疑問符を浮かべる私である。

 

 

技術的特異点(シンギュラリティ)を越えた先にAIにとっての人格の芽生えがあるわけですけどぉ、それはどれだけ高度に発展したAIを元にしたとしても、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということですね!最初っからBBちゃんみたいな高性能AIは発生しえないのです!」

「……ええと、感情の薄さを根底に持つ無機質さは、その実高度な人格を形成する素地があってこそ、ということでしょうか?」

「その通りですよマシュさん。人の持つ無機質さと機械の持つ無機質さはまったくの別物。ゆえに最初の段階で思考の方向を間違えていたのです」

 

 

 ……ふむ、無口な人間と無口な機械は違う、みたいな感じだろうか?

 

 結果としては似通ったものになるけれど、その実そうなるまでの過程がまったく違うため、本質的には別物になる……みたいな?

 

 人に対して言う無機質さとは即ち『そこに命の熱が感じられない』ということを指すもの。

 元来命を持たぬ機械にはそもそも熱を感じることはないが、されどその状態が人のそれにも当てはまるものではない、と。 

 

 ……ややこしいのでもう少し噛み砕くと『機械の体には機械の心が宿るもの』、となるだろうか?

 それぞれの体に見合った人格が生まれるのが筋であり、そうでないものを想定する時点で間違っているというか。

 

 ……となると、もしもボックスに宿るメイン人格は、例えばBBちゃんのようなAI系のキャラ、ってことになるわけだけど。

 はて、この状況でもしもボックスに宿るような、そんな条件を満たすAI系のキャラなんていただろうか?

 

 無機質さを持つことが前提条件であるならば、例えばBBちゃんみたいな成熟したAIが宿ることはない、って言っているようなものってことになる。

 ……最近の流行?的にとあるAI(ラプタ)が脳裏を過ったものの、彼女は確かに生まれたてっぽいけど、正直無機質さとは無縁だから違うかなー、となった私です。

 まぁ、仮に彼女だったら正直困るどころの話ではないので意図的に考慮から外した、みたいな面もなくはないのだけれど。*1

 

 

「──いいえ、ミス海里。その想定は間違いではありません」

「え゛」

「莫大な力を持つもの。その権限を委ねられしもの。その想定は決して間違いではないと述べたのです、ミス海里」

 

 

 そんな私の思考を読んだように、サファイアさんは声を重ねる。

 

 尋常ならざる力を制御するためのAI。

 その考え方は決して間違いではない。

 何故なら、ここに鎮座する物体──かの存在が宿る物品は、何度も私が述べたことからわかるように()()()()()()()である。

 

 もしもを願えばそれを叶える機械。

 とはいえ、それはあくまでも『その形を真似たもの』でしかないはずだが、それでも私はそれを警戒した。

 何故ならば、現実世界ならいざ知らず、電脳空間においてそのもしも(仮定)は容易く叶うものであったからだ。

 

 もしもにもしもを重ね、正当なモノとする──。

 嘘に嘘を重ね真実にするかのようなその無謀は、されど自身の存在自体が肯定を促すもの。

 ──端的に言えば、あり得ないとは言い切れない。

 

 可能性が一欠片でもあるのなら警戒しなければならない、せざるを得ないと知る者だからこそ、その仮定は脳裏に残り続ける。

 ……わかりやすくいうと、もしもボックスは電脳空間だからこそ成立しうるものだった、というわけだ。

 

 ゆえに、このもしもボックスは()()()()()のだろう。

 元々の開発者たる琥珀さんが作った時の性能は不明だが、少なくともこの場に引きずり出されたもしもボックスは、ほぼ確実にドラえもんが使う純正のそれと同じスペックを持っているはず。

 

 なれば、だ。

 真実、この道具は危険物である。

 もしもを叶えるというその言葉に嘘偽りがないと言うのであれば、それをなんの制限もなしに置いておくのは危険に過ぎる。

 

 ──ゆえに、この道具に宿る人格というのは、尋常ならざる力をもたらされた無機質な存在、ということになり……なり?

 

 

「……えっ、どうしたのいきなりこっちを見て」

「…………ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ!!!?

「耳がっ!?」

 

 

 ──事ここに至って、ようやく思い至った。

 そうだよそういえばそうだったよ、気付いた瞬間思わずビーバーみたいに叫んじゃったよ!*2

 

 ──そう、そもそも私達がこのゲーム『ブレイジング・デュエル』を遊び始めた理由。それは、

 

 

「モモイが居たからじゃん!!」

「はぇ?私?」

 

 

 モモイ(今は天馬君の姿)が、自身を指差しながら困惑したように声をあげる。

 

 ……そう、そもそも私達がひみつ道具をなんとかしよう、なんて話をする羽目になったのはこのゲームをやり始めたから。

 そしてゲームをする理由になったのは、モモイが見知らぬゲームを前に無視するなんてことができるはずがないから……というものであった。

 

 つまり、元の因果を辿ると『モモイが居たから』私達はひみつ道具に会うことになったのだ!

 

 

「ここまで繋がれば流石にわかるぞ!私が考察の際に見逃していたのはモモイのこと!つまり()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ってことになる!そこから導き出されるのは──」

「このひみつ道具に宿っている相手も、彼女に関わりのある人ってこと?」*3

「そういうこと!デスだろうがなんだろうがモモイはモモイ、ってことはこの状況はとある話に関連性を見出だすことができる!──そう、ブルーアーカイブのストーリーの一つ、『時計じかけの花のパヴァーヌ』とね!」

「あっ」

 

 

 そう、モモイが必要な要素であるとするなら、自ずと答えは絞られる。

 

 前提条件である『無機質な存在』に『実はとんでもない力を秘めている』などなど、それを満たす存在が彼女の関係者に一人存在することから、それが答えであることは一目瞭然。

 ついでに『ゲームをすること』自体もフラグになるのだと言われれば、寧ろそれ以外にあり得ないだろうと断言すらできてしまう始末!

 

 というか、なんならドラえもんの存在すらフラグになってた可能性すらあるだろう。

 なにせドラえもんってば本来の姿と今の姿は別物、ここで仮定される彼女もまた本来の姿と現在の姿は別物なのだから。

 ……あ、あとボウリングの時の話もフラグかも知れん。

 なにせ彼女の話をしてたし、そもそも私という存在が対になりかねないし。

 

 

「そう、もしもボックスのメイン人格、それはブルアカの天童アリスだーっ!!!」

「──お見事、正解ですミス海里」

 

 

 そうして私は、もしもボックスに眠る存在を天童アリスであると断言したのであった。

 ……いや、ここまで長かったなマジで!?

 

 

*1
ジャンプ+にて連載されている空空北野田氏の作品『深層のラプタ』におけるヒロインのこと。ある意味型月ヒロインみたいなとんでも存在であるが、作中で成長の目を見せているのでまだなんとかなる範囲……かも?とはいえ主人公あってのことなので、彼女単体で来られても困るというのは間違いない

*2
ネットミーム『絶叫するビーバー』から。動物の叫び声を人間のそれに差し替えたもので、思わず叫んでしまうような精神状態を示すのに使われる。なお、色んなところでツッコまれているので知っている人も多いかもしれないが、叫んでいる動物はビーバーではなくマーモットである

*3
なお、実のところ前話の『恥ずかしいこと~』というネタもある意味ヒントであった()

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