なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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幕間・佇むボックスの違和感について

 はてさて、色々あった日からはや数日。

 サファイアさんは変わらず『ブレイジング・デュエル』内ですやすや眠っているアリスと一緒に佇んでいるわけなのだけれど。

 

 

「……いや、もうちょっと隠れてくれないかな君達?」

「それに関しては拒否します。そもそも隠れていた私達をここまで引き出したのは貴方でしょう?」

「いやまぁそうだけども……」

 

 

 ……ゲーム内でもしもボックスが普通に屹立してるって、これどう考えても厄物なんだけどどうにかならんのか?……みたいな。

 

 いやまぁ、他の人が利用するためにはアリスが目覚めている必要があり、そして今現在彼女が眠ったままである以上は危険性はないです、というサファイアさんの主張もわからんでもないんだけども。

 でもほら、例え動かずとももしもボックスが存在している、という時点で怖がる人も多いっていうか実際に琥珀さんとゆかりんが死にそうな顔をしているというか。

 

 ……ってなわけで、せめて見えないところに移設して欲しい・もしくは移設させて欲しいと頼んだのだけど、相手から帰ってきたのは『ここ以外に留まるつもりはありません』の一言なのであった。

 いや実際はもっとあれな言い方で『ここ以外に行くのなら私達は二度と貴方達に姿を見せることはないでしょう』だったか。

 ……眠っているアリスが本当に原作通りのアリスであるとも限らない以上、ここで追跡不可になると困るので対処に困っている、というわけである。

 

 

「奇妙なことを仰いますね。仮に私達がこの場から消えたとしても、貴方は私達を捕捉できるはずですが?」

「『虎視眈々』のこと言ってる?*1確かにまぁできなくはないけど……その場合、そっちは完全にこっちの敵みたいなことになるでしょ?まだなにかすると決まったわけじゃないけど……その場合こっちも本気で叩き潰しに行かないといけなくなる。どー考えても割に合ってないからそんなの選べんよ」

「……なるほど。聞いていた通りですね

 

 

 無論、仮に彼女達が何処かに隠れたとして、こうして既に視界に納めている以上は私が追いきれないなんてことはない……というのはサファイアさんの言う通りなんだけど。

 それって要するに相手のやりたいことを邪魔する──端的に言って敵対行動であると判断されてもおかしくない行為になるわけで。

 ……そりゃまぁ、相手がもしもボックスだろうがなんとかするつもりではあるけど、その先に待ち受けるのは雑に考えてもアリスという少女の敵対であろう。

 

 あんまりブルアカに詳しくない私だけど、本来の彼女がどちらかと言えば魔王寄りの存在である、ということくらいはしっている。

 結果巻き起こるのは魔王対魔王という、ディスガイアかファントム・キングダムか*2、みたいな規模の大戦争。

 それによって発生する周辺への被害も、相応に大きくなることだろう。

 そりゃまぁ、可能なら避けたいと思うのはそうおかしなことではあるまい。

 

 ……あとはまぁ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()を崩したくない、というのも理由の一つになるだろうか?

 どういうことかと言うと、現在の彼女達はあくまでゲーム内の存在・いわばデータ生命体の類いである。

 そのせいで『逆憑依』なのか【顕象】なのかの判別が付けられない、みたいな話もあるが……その辺は別の話。

 

 問題なのは、今ここにあるもしもボックスというひみつ道具が、その実まだ()()()()()()()という点の方。

 要するに、アリスが目覚めないのはひみつ道具として完成していないからなのだ。

 

 

「その時点でもゲーム内でなんでもできそうな気配が漂っているってぇのに、もし仮にここから成長するんだとしたら……()()()()()()()()()()()()()可能性もあるわけでしょ?……そりゃもう、変に敵対しようとか考えないわよ、普通」

 

 

 そう、サファイアさんというサブ人格が統制する状態ですら、自身の存在を私というイレギュラーがいなければ完全に隠し通していたのである。

 そこからさらに効果範囲や上限が伸びるのだとすれば、ゆくゆくは外の世界に()()()()()()()()()()()()なんてことも可能になるかもしれない。

 その時は恐らく、ひみつ道具の形も『もしもボックス』というそれに捕らわれない姿へと変じていることだろう。

 

 ……真っ当に考えるとアトラ・ハシースの箱舟みたいなことになるのだろうか?

 実際あれ、方向性的にはもしもボックスに近いとも言えなくもないらしいからなぁ……。*3

 流石にそんなもの持ち出されると被害がどうこうの話ではないので、可能なら避けたい未来ということになるのであった。

 

 ……あとはまぁ、彼女達の成立の背後に彼女(月の君)の影があるのなら、そんな危険物を作り上げてでも──()()()()()()()()()成立させなければならないなにかがあるのでは、と懸念せざるを得ないからという面もなくはあるまい。

 まぁ、この辺に関してはあくまで私がそう疑っているってだけで、ゆかりん他誰にも話してない懸念になるのだけれど。

 

 

「……ともあれ、私達がここから移動しない理由、というものについては理解して頂けると思います」

「あーうん。アリスの成長のためにも()()()()()()()()()()()()()()()()()ってことでしょ?それから、遊んでいる人達を観察する必要もある、と」

「──ご理解が早くて助かります」

 

 

 ともあれ、ここまで情報が揃っていれば彼女達が立ち退かない理由も見えてくる。

 アリスが目覚めないのは経験が足りないため。その経験とは、周囲のあらゆることを学ぶこと。

 彼女は眠りながらにして学習し、その学習によって花開こうとしている。

 

 どのような開花を迎えるのかはまだわからないが……少なくとも、ここで彼女達を追い出した先にある開花はよくないものである、ということだけは間違いあるまい。

 なので、彼女達を無理矢理退かすのは止めた方がいい、って話になると。

 ……うん、理屈の上ではわかるんだけど、やっぱり他所に行って欲しいという私の気持ちは余り変わらない。

 

 

「だって学ぶ云々にしたって、対戦系ゲームに集まる人間から学べることなんて基本的に人間の汚さばっかりじゃん!どう考えてもぐれるよアリスちゃん!……はっ?!まさかそれが目的!?」

「ご想像にお任せしますね」

「本来の相方じゃなくてサファイアさんが彼女のサブなのをこれほど嫌だと思ったことはないよ!?」

 

 

 この人意外といい性格してるからなぁ!?

 なにを考えなにを思ってこうしているのか、というのが意外と読み辛いのだ。

 これが本来のアリスと対になる相手なら、もう少し読みやすいんだけど……これも『逆憑依』関連だからこその面倒臭さとでも言うべきか!

 

 ……要するに、懸念を解消するのは不可能なのでなにかしらの対処を行わないといけない、ということである。

 こうなってしまっては仕方あるまい、そのまま放置するのは無理だから解決策を一つ置いておくしかあるまい!

 

 

「解決策、ですか?」

「そう解決策!元を正せば君らがここに居座ることそのものより、その行為によって発生する色んな付随現象の方が問題なわけだから、それを即座に解決していけば問題は(実質)無しなのよ!」

「よくわかりませんがなにやらとんでもないことを仰ってますね?」

 

 

 そう、結局のところトラブルが延焼する可能性についての懸念が今回の問題の大半なのだ。

 今現在はなにも起こってないからこそ対処もできず、仮に起こってしまえば連鎖的かつ加速的に事態は進行して対処できなくなる、と懸念されているわけだ。

 

 

「なので、ここに常駐の監視班を置きます!頑張ってね私、報告はそれなりに密にお願いします!じゃっ!」

「は?えっはっちょっ、本体(わたし)ーっ!?」

 

 

 ……そうしてここに放置されたのが私、ミニキーアです。

 これ、下克上を考えてもおかしくないですよね?

 

 分割人格に物事を任せて帰っていく本体(わたし)を見ながら、私はため息を吐いたのでした。

 ……とりあえず、サファイアさん達とこれからの話でもしておきましょう、はい。

 

 

*1
『神断流』体術系技能の一。雑にいうとターゲット機能で、一度捕捉するとこちらから能動的に解除しない限りずっと相手をターゲティングし続ける

*2
どちらも日本一ソフトウェアのゲーム作品のタイトル。魔王や魔界をテーマにした作品であり、戦闘規模が半ばギャグの如く大きいのが特徴。ダメージの桁とかで圧倒していくタイプの作品。……最近はガンダムトライヴにお株を奪われている気もする(無量大数の上に桁を積み重ねているのを見ながら)

*3
『ブルーアーカイブ』に登場する遺産・概念。『プロトコルATLAHASIS』を根幹とし、周囲のデータを収集・分解・再構築することであらゆる物を作り上げる物質変換システム。システムの基幹に多次元解釈が組み込まれているらしく、箱舟として現れた『アトラ・ハシース』は多次元バリアによる不干渉領域を作り上げるなどの暴挙を行っていた。なお『箱舟』という名前からなんとなく想像が付くかも知れないが、『アトラ・ハシース』とは叙事詩の主人公の名前であり、かつ『ノアの大洪水』のような洪水神話の原型となったともされる叙事詩そのものの名前でもある

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