なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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祭の準備段階から楽しまないと損だぜ!

「……出し物?」

「おっと、モモイにはそっちの説明も必要か。我らがなりきり郷では毎年十月に設立祭ってやつを行っていてね?」

 

 

 不思議そうな顔で首を傾げるモモイに、なりきり郷における設立祭の説明を始める私。

 設立祭、ないしは十月祭と呼ばれるそれは、名前の通りなりきり郷の設立を祝う祭である。

 

 私達の大半を占める面々(なりきり)──彼らが所属していた掲示板がちょうどこの時期に設立し、それを記念するために行われていた祭りをそのままスライドした形となるので、実はなりきり郷そのもの(ここ)の設立時期とは微妙にずれるらしいのだが……まぁこういうのはわかりやすい・もとい皆の納得を得られるのが一番と言うか。

 ……え?元となった掲示板のことについては忘れてるってのになに言ってるんだって?あいにく掲示板に書いた投稿の内容とか、そういう詳しいことが思い出せないだけだから仕方ないね。

 まぁ、その辺は【顕象】であるモモイに言っても仕方ない話なので、適当に流させて貰うが。

 

 

「関係ないの?」

「え、そこ引っ掛かる?……まーうん、基本的には関係ないかな。【顕象】の成立条件的に件の掲示板とは関わりがないだろうし」

 

 

 中身──核となる人間の縁による記憶なので、それがない【顕象】達には実感とかは湧き辛いんじゃないかなー、というか。

 ……まぁ、並行世界の人間も混ざってるっぽいのに件の掲示板の記憶はある──って辺りに疑問を抱かない理由もないだろう……と言われればそうだね、って返すしかない部分もあるんだけども。

 とはいえその辺は今回の話には関係ないので割愛。

 

 

「ともかく、十月はめでたい月だって意識が初めからあるから、みんなあれこれ準備をし始めるって点でそう差はないよ。──ついでに言うと十月はイベントごとを入れ辛い、みたいなメタ的都合もなくはないだろうし」

「……そうなの?」

「季節的には秋に該当しますので、それらを意識したイベントが挟まることもありますが……そういうものは大抵『十月でないといけない』ということもありませんから……」

 

 

 確かにハロウィンは十月に開催されるイベントだけど、同時に本来は十月末日のみを対象とする祭でもあるので、十月全体を通してのイベントとしてはカウントし辛い……みたいな?

 まぁ、近頃発生してるハロウィンイベントは(特にソシャゲとかだと)十月中ずっと祝っていることもあるんだけども。

 

 他、この時期に入るイベントというと運動会系のものとか遠足などの旅行系のものになるが、そのどれらも『十月でないとダメ』ということはない。

 言い換えると開催時期をある程度前後にずらせるものということになるので、十月にイベントが少ないという認識自体は間違っていない……ということになる。

 ……まぁ、その論法だと同じように十一月もなにもない月ってことになっちゃうわけだが。

 

 

「ここの場合だと体育祭がそっちにずれる形になるからなんとかなる、ってわけ」

「せんせー質問でーす」

「私は先生じゃないけど……はい、モモイさん」

「その場合九月はー?」

「新学期の始まりでしょ、はい終わり」

「……それ、なりきり郷(ここ)とは関係なくない?」

「夏休みの終わり、って風に置き換えると関係性は見えてくるでしょ」

「え、えー……?」

 

 

 あと、九月に関しては残暑を過ごしてれば勝手に過ぎ去ってしまうものなので私は知りません。

 なんなら台風とか直撃してなにもできねぇ、みたいなことも多いので余計に知らんわとしか?

 

 ……とまぁ、関係のない話はそれくらいにして。

 なりきり郷における十月のイベントとして設立祭がある、ということは紛れもない事実である。

 

 

「そういうわけなので、このまま設立祭についての説明に移ろうかと思うんだけど……元々掲示板でやってたことをそのまま移した形になるから、基本的にはなんでもあり──近いもので言うと文化祭みたいなものってことになるね」

「ほほう、文化祭ですとな?」

 

 

 元々、掲示板で行われていた祭と言うのは──文章上で行われるやり取りが基本である関係上、なんとも無茶苦茶なノリのものが多かった。

 さもありなん、どれほど出し物を持ち寄ろうとも所詮は単なる文章、故に規模が小さいと全く目立たず波風立たずに終わってしまうのである。

 

 なので、必然的にやることがド派手になっていき──その流れを組むなりきり郷における設立祭でも、その傾向は引き継がれることとなった。

 その結果、参加者が各々好き勝手に出し物を出してはしゃぐ祭、みたいなことになってしまったのである。

 ……まぁ、一月丸々騒ぐ祭なので、必然的にある程度はっちゃけてないと勢いが続かないって面もあると思うけど。

 

 

「そう?ソシャゲのイベントとか一月近く続くもの多くない?」

「そういうのって終わり頃はみんなもうイベントそのものはやってない……ってパターンがほとんどでしょ。こっちは違うの、一月丸々完全燃焼なんて真っ当な精神でやってられるわけないでしょ」

「それは確かに」

 

 

 言い換えると()()()()()()()()()()()()()()()()()ということになるわけだ。

 喫茶店を経営するなんて話を一つ取っても、それを一ヶ月の間続けられるかはそれこそ人によるでしょ……みたいな?

 まぁ、この辺は元々そういうのやってる人ほど有利、というか?

 

 

「あとはそうだねぇ……出し物で競う面もあるから、話題になるようなものをずっとやり続けられるか?……みたいな素養も必要になるかも?」

「……思ってたよりキツくないそれ?」

「まぁねぇ、ずっと騒ぎ続けるのはそれはそれで疲れる……ってのはわからんでもないかな」

 

 

 とはいえ、その辺は織り込んだうえで騒ぐのがなりきり郷でのお約束なので……。

 まぁ一応『逆憑依』は総じてスタミナが高めなので、今日騒いで明日騒いでも元気……みたいなところを前提とした話ということにもなるわけだが。

 

 ともかく、一月丸々騒ぐ覚悟を持ってやり続けられるか?……みたいなところを問われるので、出し物選びの時点である程度(ふるい)*1に掛けられるとも言えなくはあるまい。

 

 

「そんな設立祭の出し物に、我々はハロウィンを押し出していこうと言うわけなのです」

「……本気で言ってる?」

「言ってるよー、エリちゃんがいるならなんとかなるだろうし」

「子ネコ?ちょっと子ネコ??期待してくれるのはいいけどなんだかちょっと変な方向に行ってる気がするんだけど大丈夫なのよね子ネコ???」

 

 

 そんな修羅(?)の道に、私達はハロウィン一本で挑もうとしているわけなのだ。

 ……ということを改めて示したところ、当のハロウィンの女王・エリちゃんが困惑したような様子を示してきたわけなんだけど……え、そこ困るところかな?

 

 

 

 

 

 

 はてさて、私達『キーアの家居候ズwithエリちゃん』がハロウィンをモチーフに設立祭に乗り込むことが決定したわけなんだけど。

 

 

「詳しく説明してくださいせんぱい!」

「そうだそうだー!横暴だぞ家主だからってー!!」

「……いや、家主が横暴なのはある意味正しい挙動じゃない?」

「うーん元ネタでのあれこれが、クリスちゃんの価値観に影響を与えている節を強く感じる……」

 

 

 ご覧の通り、私以外の居候達から『聞いてない!』とばかりに疑問の声があがることとなったのでありました。

 

 

「いやほら、今年何しようって話になってたじゃん?エリちゃんが来たのを見て丁度いいかなーと思って」

「そんな雑な決め方だったんだ……」

「キーアお姉さんはそういうとこダメなん。もうちょっとみんなで話し合うべきなん」

「とは言うけど、議論が紛糾してなーんも決まらんかったのも事実じゃん?」

「うっ」

 

 

 と、言うのも。

 今年の設立祭の参加に際して、増えた面々のお披露目を踏まえた結果ゆかりんから『貴方達は一緒に住んでる面々で出し物を考えるように』と通達が届いていたのである。

 ……去年のハロウィンは設立祭の後だったため、そのタイミングで追加メンバーになった人達は今年が初設立祭ということになる。

 なので、初参加メンバーの面倒をちゃんと見なさい──みたいな文面(ノリ)が追加されたわけだ。

 

 ……まぁ、冷静に考えなくてもこの一年でうちに増えた居候の数は以前までのおおよそ二倍。

 そりゃまぁ、下手に分散させるより一纏めにしておいた方が紹介が楽……となるのはある種必然的な部分があるというか?

 

 

「実は新人、って意味だと他でもちょくちょく増えてたりするんだけどね」

「坂田さんのところにも最近新人さんが増えたりしたとか聞きましたね。確か待望の男性キャラだとお伺いしましたが……?」

「その辺は実際に会ってみてからのお楽しみってやつだね」

 

 

 なお、実は単純な新人ということであれば、なりきり郷中で結構な人数が加算されている……というのは公然の秘密である。

 あくまで一つの組織?に増えた人数が一番多かったのがうちだったというか?

 ……そういう意味ではこの間の新人会に来ててもおかしくなかったのかもだけど、時期的にスケジュールが会わなかったとかそういう事情があったらしいと聞いていた私である。

 

 ともかく、だ。

 うちはうちで一纏まりになってなにか出し物を出さなければならない──という状態になっていた上で、実際にそれをなににするかという部分が全然決まってなかったというのは事実。

 このままだとそのままずるずる時間だけが過ぎていって、結局当日なにも準備できてねぇ!……みたいな酷いことになる可能性も大ってわけである。

 

 

「なので、こうして半ば強権的にエリちゃんが来たという偶然を採用した、ってわけ」

「……わ、私ってば知らぬうちにまた周囲を振り回してたり……?」

「いやいや、そのお陰でやること決まったし感謝してるよ?」

「感謝されるのは嬉しいんだけど、なんとなく当初の予定ががらがらと崩れていく音が聞こえる気がするわ!?」

 

 

 出し物にするつもりではあったけど、もう少し小規模の予定だったのだわー!?……と叫ぶエリちゃんに生暖かい笑みを返したのち、改めて我が家の居候達の方へと視線を向けた私。

 そっちは相変わらずギャーギャー言っているのかと思ったが、今しがた私が告げた問題点が自分達の解決能力を越えていたことを理解したのか、既に別の話に移行していた。

 すなわち、

 

 

「じゃあボクはみんなのハロウィン衣装を作ろうかと思うけど……結局のところハロウィンを用いてなにをするつもりなんだい?」

「真っ先に思い付くのはコンセプトカフェのようなスタイルですが……」

「丸一月カフェできるような余力なんてないでしょ。お化け屋敷みたいなノリでいいんじゃないの」

「……わー、みんな切り替えが早くて嬉しいなー」

「キーアお姉さんあんまり嬉しくなさそうなのん」

 

 

 ハロウィンに(かこ)つけてなにをするのか、という話であった。

 ……いやまぁいつまでもうだうだ言われるよりは遥かにマシだけど、本当に君ら切り替えが早いね……?

 

 

*1
粉などの細かいものを更に選り分ける為の道具。料理に使う際には舌触りなどに関わるので妥協すると酷い目に遭う

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