なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……うちの一つ?」
「そう、うちの一つ。つまりこんな感じの武器がまだまだいっぱいある、ってことだよね」
「……なんで!?」
「いや私にそんなこと聞かれても……」
そもそもこんなことになるなんて欠片も考えてなかったし……。
ってなわけで、どうにも今回のハロウィンは特殊な武器を集める必要がある、ってことになるらしい。ハロウィン古戦場かな?
「オイラはビィ!呼ばれた気がしたからやって来たぜぇ!ごくり、ここが噂の古戦場か……」
「呼んでないし武器堀りも肉集めも間に合ってるんで帰ってください」
「だそうよ。帰って一緒に遊びましょうねビィ君」
「ぎぃやあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」<ザリザリザリザリ
「……え、なに今の?」
「ある種の伝統とそれを打ち破るもの、みたいな?」*1
「よくわかんないけど絶対に違うよね!?」
武器堀りと聞いて喜び勇んで現れたビィ君は、同じ様に突然湧いた志乃ちゃんに投げ返し、そのまま帰っていく彼女たちを見送って話題を戻す。
モモイがなにあれ!みたいな反応してるけど単なる同居人や、気にする必要はないと返すのも忘れない。
「ともかく、ハロウィンに託つけて変なことが起きるのはいつものことなんだから……」
「子ネ゛ゴォ゛ォォォォォォォ!!?」
「この声はエリちゃん?一体なに、がっ!?」
変な武器集めが増えたとして、それでトラブルが終わるわけでもないだろう。
ハロウィンを題材に出し物をする以上は、今年のハロウィン関係のトラブルは私たちが率先して解決する……って扱いになるわけだから、その辺を踏まえて情報を集めたり回したりして欲しいなー、みたいなことをゆかりんに伝えようとしたところ。
突然、部屋の扉をバーンと開けて誰かが入ってきたのである。
声からしてそれはエリちゃんであり、またなにか起きたのかなーなんてある意味呑気なことを思っていたのだけれど……。
「なんか突然学生になったのだわー!!?」
「なにーっ!!?」
それが今目の前に起きていたトラブルと重なると言うのであれば話は別。
……いや、ハロウィン関連の問題だからって波及するの早すぎるでしょ?!
そんな困惑を覚えつつ飛び込んできたエリちゃんの姿を確認する私。
なるほど、本人が述べた通りその姿は学生服のようなものに変化していた。
わかりやすく言うと、いつものエリちゃんの服が学生服みたいな見た目になっている感じというか?
……ついでに言うと、その背にはなにやら目立つ長物を背負っていたりもするのだが。
「……えーと、竹刀かなにかかな?」
「そんなわけないでしょう!?……いやまぁ勇者になってる時はセイバー気取ったりもしてたけど、基本的に私に剣術の心得はないわよ!?」
「ですよねー。ってことは……ギターとか?」
黒いケースに入った謎の物体といった風情のそれは、しかして今の状況を思えば予想されるものは一つしかあり得ない。
けどそうだとするとそれはそれで問題か、って感じでもあったのでちょっと外したところで問い掛けてみたわけなんだけど……うん、流石に竹刀はありえないか。
となるともう答えなんて一つなんだけど、微妙に悪あがきをしていく私はギターなのではないか、と答えたのである。
無論そんなわけはなく……。
「え、よくわかったわね。そうよ、私が背負ってるのはギター!」
「なにーっ!!?」
そんなわけがあったよ!?
思わず大声をあげてしまったが、まさに予想外である。
この流れなら普通に銃──ライフルとかその辺だと思うでしょうが?!
思わず困惑する私はきっと悪くない、そしてそんな私に追い討ちを掛けるように彼女はこう告げたのだった。
「あ、うん。そっちもあってる」
「……はい?」
「いやその、ギターなのもあってるしライフルなのもあってるって言ってるの」
「……ぱーどぅん?」
意味不明な言葉に何度も聞き返してしまった私はきっと悪くない、はずだ。
エリザベートの持つ槍が変化したライフル。
ライフルとは言うものの、それは攻撃を目的としたものではない。
汎人類史に存在するとある活動家が作った『エスコペターラ』と呼ばれるものに発想を得ており、
このライフルは槍をマイクに・ライフルをギターに作り変えたものとして顕現した。
なお、攻撃を目的としたものではないと言うものの、それをエリザベートが使った結果起きることに関しては考慮の外である。
「…………」
「…………」
以上が、エリちゃんの持ち込んだキワモノアイテム、『チェイテライフル』の説明文である。
……ツッコミ処が多すぎるが、まずは一つ一つ解き明かしていこう。
「まず、『エスコペターラ』ってのは?」
「汎人類史なんて解説が付いてるから空想上の産物に思えるけど、これ普通に実在する物で間違いないみたいね。ライフルをギターに作り変えて平和の象徴にしたもの、だって」*2
「ほえー」
活動家の作った象徴のようなものとはいえ、ライフルの形をしたギターが実在するってこと自体が驚愕というか。
……まぁ、詳しく調べてみると特定の名前が付いてないだけで、ライフルの形をしたギターというのはそれなりに存在している様子でもあったわけだが。
ともかく、ライフル型のギターが実在するというのは理解できたし、それを参考にしたものであるということも理解できた。
「理解できた上で、その次の疑問が頭をぶん殴ってくるんだけど。なによ『槍をライフルに』って!?」
「私に言われても困るんだが!?そもそもあの槍自体本当はチェイテ城らしいからそれが今さらライフルになったところで驚くことじゃなくない?!」
「そうだとしてもよぉ!!」
確かあの槍、『監獄城チェイテ』という名前の通りチェイテ城そのものでもあるのだとか。
それをマイクに改造した上城そのものも巨大アンプにする辺りエリちゃんのとんでもなさがよく現れているが……どうもこのギターの説明を見る限り、それを応用することで槍をライフルに、さらにはそこからギターに変化させてしまっているらしい。
正直なに言ってるんだお前としか言いようがないが、ことエリちゃん絡み……かつハロウィン案件ともなると『まぁ……そういうこともあるか……』って納得しそうになるのがなんとも。
……いやまぁ、実のところ納得したら納得したで、次の説明文が襲い掛かってくるわけなんだけども。
「……その『エスコペターラ』ってのは厭戦・否戦の象徴みたいなものなのよね?」
「まぁ、説明を聞く限りはそうなるね」
「なのになんであからさまに相手にダメージを当たることを否定してないのよ!?まさかとは思うけど単なるギターってわけじゃなくて、マイク機能も付いてるからエリが歌えば月も落ちる、みたいなことなの!?」
「説明を聞く限りはそうなるね」
「ああああああああああ」
はい、最後の説明である『エリザベートが使った際には保証外』(意訳)の部分。
……うん、基本的に歌声がマシになってるのがうちのエリちゃんなわけだけど、その前提があるにも関わらずこんな説明文が付いてる辺り、これあれだなこのギターを使って行うライブは自動的に攻撃になるよ、みたいなノリだな?()
武器側に補正が掛かっているため、本人がどれほど頑張っていようが関係ない……みたいな感じというか。
いや、なんの嫌がらせだこいつ???
特に、歌に関して頑張ってるここのエリちゃんに対しての『武器として使え』と言わんばかりの説明文。
なんというかもう、製作者の悪意のようなものを感じざるを得ないというか……!
「そう?そんなでもないと思うけど」
「あれー!?」
なんて風にこっちが憤っているにも関わらず、当の本人であるエリちゃんはけろっとした様子。
……いや、周囲に迷惑を掛けるようなことはしたくない、みたいな感じで音痴であることを気にしてた君はどこに?
「いやだって、弾を射つ代わりに声を放つのがこの子の役目なんでしょう?よくよく考えたら私ってばこっちに来てからこの子をアンプとしてもマイクとしてもろくに使ってなかったし、今年のハロウィンは思いっきり暴れたい……っていうチェイテからの主張だと思ってたんだけど」
「え、あ、うん?」
……えーとつまり?
ここでのエリちゃんは周囲への迷惑を気にしていたため、今まで自身の城を十全には使っていなかったわけで。
そして、作られた物に罪はなくチェイテがアンプとして生まれ変わってしまった以上、その役目を果たしたいと城自体が願うのもおかしな話ではなく。
その辺を考慮する限り、チェイテが思いっきり爆音を垂れ流したいと願っていてもそんなに変な話ではない。
ゆえに製作者?がその辺を汲み取って今の形に仕上げた可能性も普通にあるというか、そっちの方が辻褄が合う……みたいな?
そしてそれが正解であるならば、城主である自分がすべきなのは城の要望に答えること。
特にこれは敵対者に爆音を届けることを目的にしていると暗に認めている物品であり、周囲のみんなに迷惑を掛けるという問題点には引っ掛からないと判断すべき……みたいな?
「だって、この分だとほぼ間違いなく
「ああ、うん、うん……?」
「キーアが反応に困ってる……」
まぁ、確かに?
今回のハロウィンが長物集めに終始するものであるならば、必然それを使っての戦闘も予想される?
なら、攻撃性能があること自体を悲しむ必要はなく、寧ろありがたいと笑うべき……?
思わず困惑する私は、その結論があっているのか間違っているのか、判別にしばしの時間を必要としたのであった──。