なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「え、今の時点でもうお腹いっぱいなんだけど、これ以外にもまだなにかあるの?」
「あるよー、ここまではあくまでもこの拳銃に込められた概念的な話。ここからはこいつの構造そのものの問題点の話だよ!」
「構造の問題点……?」
はい、前回の説明で既にぼろっぼろな感じで恐縮ですが、生憎とこいつに関わる問題点としては下の下だったりするのでこれからが地獄だ、と明言しておく所存の私です。
いやだって、ねぇ?
名前から広がる説明文の時点でお腹いっぱいなのはわかるけど、あからさまにおかしなところが目につくじゃん、これ。
「あかさらまにおかしなところ……ってあ」
「そうですーこの明らかにおかしな変形合体機構のことですー地味に質量保存の法則無視してやがりますこいつー」
どこが、とでも言いたげに銃を眺めていたクリスは、なにかに気付いたのかハッとしたような表情をこちらに向けてくる。
その顔に答えるように、私は机の上の銃を──
次の瞬間、出来上がっていたのは先ほど店頭に並んでいたライフル……なのだけれど。
おわかりいただけただろうか?スローでもう一度。*1
──そう、ここ。
よく見て貰えるとわかるのだが、さっきの店頭ライフルと比べるとカラーリングに幾ばくかの差異が見られるのである。
多少色が変わったからなに?……みたいに思う人もいるかも知れないが、よくよく考えて欲しい。
似たようなパーツが複数存在し、それらを別の場所に組み替えられる……と言うのなら、配色の変化が発生するのも頷けなくはない。
どっこい、このライフルを組み替えるのに使われたパーツというのは、精々二丁拳銃部分が似たような形をしているってくらいのもの。
他のパーツはやれロングバレルだの照準器だのストックだの、普通に拳銃をカスタマイズするのに使われるような基本的なパーツばかり。
それも二個一セットではなくそれぞれ一つずつしかないというのだから、組み替え云々配色変化云々……なんて話はそもそも持ち上がるはずがないのである。
にも関わらず、だ。
目の前にあるライフルは、明らかに先ほどと配色が異なっている。
それが意味することはつまり、組み替えと言いつつ実のところ
「……ハァ?」
「唐突に猫ミームになられても困るんだが?……言葉通りよ、組み替えっていう手段を通すことで持ち主の意識を読み取り現在欲しいと思っている銃器に変化する……それこそがこの銃の一番の問題点。『飛鷹式』が誰にでも使えるようになる、なんて話よりも遥かに現実的にヤバい部分がこれよ」
そう、下手に『飛鷹式』が使えるようになる云々の話をするよりも、遥かにヤバいのがこの部分。
……なんだけど、どうにもピンと来ていないのかモモイが不思議そうな顔でこちらを見ている。
「だって、どう考えても隕石落とせる方がやばくない?いや五体爆散も大概ヤバいけど」
「ふむ、確かに
「はい?」
なので、わかりやすく例題をあげてやることにする。
そう、確かにこのライフルを持っていれば先ほどの説明の通りステラもどきを使うことができるようになる、というのは間違いない。
……ないのだが、まず大前提としてライフルを使ってステラを撃とうとする人が何人いるだろう?……というのが、ここで考えるべきこと。
まずステラとは英雄アーラシュが国を割った壮絶なる一撃を宝具化したもの。
そして彼は伝説的な弓兵であり、ゆえにその妙技は弓矢で以て行われた奇跡である。
……となると、だ。
普通、ステラの真似事をするとなると、まず始めに弓矢を用意することから始まることだろう。
オリンピックで『ステラ』を掛け声にアーチェリーをしていた人がいた*2が、何事もまず形から入るべきと考えるのであれば、ステラを撃つためには弓矢を使うのが普通、ということになるだろう。
「要するに、仮にステラって技を知っていたとしても、ライフルを持ってる状態でそれを出来ないだろうか、なんて考える人はそう居ないってこと。……同時に、例え意味不明な技がいっぱいあって、それがすぐに使えるようになっているのだとしても──」
「……ああなるほど、
「な、なるほど……」
他の『飛鷹式』の技についても同様。
……というか、『神断流』そのものがこの世界においては私の創作物のようなもの。
厳密には(その性質的にも)違うんだけど、とはいえそういう設定の部分は他の人には関係ないので無視しても問題はない。
ということは、だ。
仮にこのライフルを持ったとして、普通の人が考えることっていうのは『ライフルを使っての遠距離狙撃』くらいのもの。
それも『飛鷹式』を知っているのならともかく、知らない人が思い浮かべるのはゴルゴとかのノリになるだろうから、変な挙動をすることはまずありえない。
また、『飛鷹式』にも遠距離狙撃に関わる技は幾つかあるが、そもそもこのライフル『飛鷹式』が使えるようになるだけで、現在どんな技が使えるのか?……みたいなことを懇切丁寧に教えてくれたりはしないのだ。
そのため、通常気にすべき危険性というのは、これが銃器であるということだけになる……んだけど。
「さっき持ち主の思考を読む、みたいなこと言ったじゃない?」
「うん、言ってたねー」
「それによって形を変える、とも言ったよね?」
「それも確かに言ってたわね」
「しれっと質量保存の法則無視してる、とも言ったわよね?」
「……そういえば、そんなことも言ってましたね」<オイラハビィ!
「じゃあそれを踏まえてちょっと見てて頂戴」
ここまで語ったことを再度確認しつつ、私はライフルを手に取って組み替えを始める。
そうして数秒後、出来上がった物体を私は机の上に置いたのだが……案の定、その物体を見た周囲の面々は、あんぐりと口を開け驚愕した表情を晒していたのであった。
それもそのはず、私が机の上に置いた、組み替えたあとの物体とは……。
「……弓じゃん!?」
「え、いや今どういう変形したのこれ?!」
「まるでビィ君みたいでやんした……」<オイラハネンド!
そう、彼女達の言葉通り、机の上に鎮座していたのはアーチェリーに使うような弓。
ちゃんと弦も張られている、しっかりとした造りの弓なのでありました。
──これこそがこの武器の最大の懸念点。
正直なところ『飛鷹式』が使える、なんてのは問題にもならない。
さっきから述べてるように、それに関してはあくまでも権利を与えるだけで懇切丁寧に教えてはくれない以上、半ば無いようなものの扱いになるのに対し。
この、持ち主の意思を読み取り組み替えという行程を経て自身の姿を変える……というのは、
みんなもやったことがあるだろう。
箒を剣に見立てて振るとか、はたまたいい感じの枝を銃器に見立てて撃ち合いごっこをしたりだとか。
そういった『見立て』も、言ってしまえば思考によるもの。
……ということは、だ。組み替えの際に些細な邪念が混じったりしても、この武器はそれを忠実に読み取ってしまう危険を孕んでいる、ということになるのだ。
「ええと……?」
「例えばロングバレルを組み替える時、『もうちょっと長かったらなぁ』と思えば実際に長くなる。『安定性が欲しいな』となれば重さが変わる。……この辺は銃器への不満として頻出するものだけど、こういうのだけ読み取る訳じゃなくて例えば『ライフルよりロケットランチャー使いたいなー』とか適当に考えただけでも……ほら、こうなるってわけ」
「ろ、六連装ロケットランチャー……?!」
「一体なにを想像したのよ?」
「コマンドーですが?」
火力は正義!
……それは冗談としてもだ、ひょんなことから『もっと攻撃力や見た目のパンチがある武器が使いたい』みたいなことを思えば、この武器はその思考も読み取ってしまうわけで。
「極論『ICBM撃ってみたい』なんてたまたま考えてたってだけでも組み上がりがそうなる……ってことがあると考えると、こいつの怖さも見えてくるってもんでしょ?」
「いや怖っ!!?真面目に怖いんだけど!?」
射撃武器方面に片寄った願望器と呼ぶ方が正しいのかもしれない。
そんな風に、私はこの武器の説明を締めくくるのであった。