なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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繋がる世界はここにあり

「私が負け負け負け負け……」

「なんか勝手にマインドクラッシュしとる……」*1

 

 

 デュエリストには真剣勝負に負けたら精神崩壊しなければいけない……みたいな縛りでもあるのだろうか?

 なんて邪推をしてしまう今日この頃。皆様如何お過ごしでしょうか?

 私は今、壁と一体化して推しを眺めるがの如き隠密性を発揮し*2、アルトリアとオグリが自身の持ち物を交換しているのを見ております。……なのはちゃんとフェイトちゃんかな?*3

 

 当初の『普通に仲良くして貰う』からはちょっと外れた位置に着陸した感じのある二人の関係だが……まぁ、拗れている訳ではないので問題はなさそうだ。

 

 

「今度は、自分の足でやろう」

「ええ、負けませんよオグリ」

「望むところだ」

 

 

 ……おかげで、人間VSウマ娘、とかいう普通なら結果の見えた対戦カードが組まれてしまうことになったようだが。

 アルトリアが特殊な人物じゃなかったら止めてるところだが、生憎彼女は魔法使いにして竜の娘。……寧ろいい勝負になってしまう辺り、オグリの方が異様に成長していると言えてしまう訳で。

 

 ……今更ながらに思うのだが、この王女様ここにいて良いのだろうか?戦力的にも兵の士気の問題でも、ちゃんと自国で王女様してた方が良いのでは?

 まぁ、あのマーリンが選んだ道である以上、故郷に留まるよりも重要なことがあるのだろうけども。……そもそもに向こうのハルケギニア、魔物的なモノ以外の争い事とは無縁みたいな感じだったし。

 

 え?平和なのに軍隊が残ってた理由?……そりゃまぁ、世界の全てを見通せぬなら──もっと言えば並行世界まで確りと観測できないのであれば、未知は必ず外からやって来るものだ……ってとある変態が身をもって証明してたから、というか?*4

 

 創作物の悲哀的なモノで、『日常をそのまま流す』ことを求められる作品でない限り、『非日常でない状態』って言うのは『つまんない』んだと受け取られるっていうわけでね?

 それこそ『物語の消費』ってどこぞの妖精王が切れだしそうだけど、スピンオフでもなければ日常回なんて飛ばされるのが常、というのも事実なのである。

 

 書いてる側からすれば、ずっとシリアスなのは疲れたり息苦しかったりすることもあるんで、できれば箸休めとかもしたいのだけれど……露骨に視聴率とかプレビューとかが下がると、察せざるを得ないというか、ね?

 

 まぁ、そんな創作家の悲喜交々は置いといて。

 リボンとペンダントの交換が終わった二人が、笑みを交わしあう。……遠目からだとてぇてぇ*5感じだけど、近くで見ると笑みが不敵な感じなので、これはてぇ……てぇ……?みたいに首を傾げざるを得ないと言わざるを得ない。

 

 

「喧嘩っプル的にはてぇてぇなんじゃない?」

「……そこまで殺伐とはしてない気がするんだけど?」

 

 

 喧嘩っプル……もとい喧嘩友達にしては、もうちょっと柔らかい感じというか。かといって単なる友達にしては、気が立ちすぎている気もするし。

 ……まぁ、所詮は外野の勝手な意見である。オグリの『王の馬』が『王の友』に変化している以上、余計な心配は不要と言うものだろう。

 

 

「え゛、スキル変わっちゃったの?余計に酷くなってたり?」

「んー、空適正が消えたのと、任意発動ができなくなった変わりに、ステータスランクが永続的に一つ上昇するようになったのと、なにかしらの判定する時に成功率が二倍になるようになった感じ?」

「……それ、弱くなってない?」

「いやー、どうだろ?スキル説明には書いてなかったけど、発動して倍化の方には制限時間と回数制限あったみたいだし、空適正に関してはそもそもレースで空を走れても、『降りてこい』って言われるだけでしょ?」

「……あ、あー。確かに……?」

 

 

 なんでもありのルール無用、みたいな状況なら『王の馬』の方が確かに強いだろうけれど。

 レースのような『決められた枠内で全力を尽くす』状況では、このスキルは逆にオーバースペック、すなわちやりすぎの部類に入ってしまう。

 

 全てのウマ娘が空を駆けられるのなら、そういう形式も認められるかもしれないけれど。

 一人だけ空を駆ける様を見せられても、最初は良くても後々飽きられてしまうのは目に見えている。

 最強キャラの無双というのは、たまに見るならスカッともするが、延々と無双だけを見せられても刺激にはならず、最終的にはマンネリだ、などと言われてしまうだけだろう。

 ……主題をずらして他の場所を売りにして、無双シーンは『いつもの(お約束)』にする時代劇みたいな形式も存在するには存在するが、あれは歴史の積み重ねの上に成り立つものであり、すぐに周囲が真似できるものではない。

 

 ゆえに、明らかにやりすぎの類いにあたる『王の馬』よりも、現実的な強化幅に収まっている『王の友』の方が、レースを見据えるという意味では最適だと言えるわけだ。

 まぁ無論、戦闘とかみたいな『なんでも使え』といわんばかりの状況であるのならば、『王の馬』の方がいいだろうとは思うけれども。

 

 でも、『王の友』も別に弱い訳ではない。

 発動するという手順を踏まずに常に効力を発揮する『ステータスランクアップ』は、単純に嬉しい効果だし。

 判定全般の成功率を補正してくれるというのも、他のスキルの発動の()()()()なんかにも干渉してくれる、わりと使い勝手の良いものである。

 マイナススキルの発動率にまで干渉するのが、難点と言えば難点だが。発動し辛く効果が良いみたいなスキルを、積極的に採用して行けるのは普通に利点だと言えるだろう。

 

 ……まぁ、それとは別に問題点が一つだけ存在するのだが。

 

 

「問題点?マイナススキルについて以外にもなにかあるの?」

「……さっきから私、『王の馬(ドゥン・スタリオン)』を『王の馬(おうのうま)』って呼んでるでしょ?」

「は?……えっと、そういえばそうね?でもそれがなんの関係が……あ゛」

 

 

 私の懸念を示す声に、ゆかりんが首を傾げる。

 ……まぁ、うん。()()()()()()()()()()()()()()()、敢えて呼び方を変えていた……というのは、さりげなく行っていたので気付かれていなかったらしい。

 ……ゆかりんが気付いていないのだから、できれば()()()()()()()()()のだけれど……。

 

 

「……王の、友?」

「ひぇっ」

「詳しく……説明してください。今、私は冷静さを欠こうとしています*6

「うわぁっ!?じりじり近付いて来ないで!?」

「アチャー」

 

 

 うっわダメだ、ゆかりんに真顔でじりじり近付いている()()()は、どう考えても正気ではない。

 お察しの通り、『王の友』のルビはサー・ランスロット。

 彼女(マシュ)中の人(ギャラハッド)の父上にあたる方の名前を冠しているわけで。……まぁ、うん。

 

 

「オグリさん!そんなもの修得してはダメです!!危ないので摘出しましょう!!!」

「ウワーッ落ち着いてマシュちゃん!!びーくーる!!びーくーるよマシュちゃ、ギャーッ!!?」*7

「ゆ、ゆかりーんっ!!?」

 

 

 暴走機関車となったマシュの前に立ちはだかり、両手を広げて彼女の進行を止めようとしたゆかりんだったが。

 ……王蟲を止めたナウシカのようには上手く行かず、アワレゆかりんふっとばされた!*8……すかさずジェレミアさんがキャッチしていたので、大事にはならず。

 

 ともあれ、ああなってしまうとこちらの声は届くまい。

 ……仕方ない、乱暴に行くかー。

 

 

 

 

 

 

「ええとですね、せんぱい」

「はいなんですか?」

「……その、正気を欠いた私が悪いというのは間違いありません。今回の外出の目的がアルトリアさんとオグリさんの仲を取り持つことにあった以上、その証明とも言えるスキルの名前が、例え私の心を掻き乱すものであったのだとしても、それを理由に暴れていいわけではない……というのは、もっともな話だと思います」

「うんうん。冷静な時のマシュは物わかりが良くてよろしい」

「あ、はい。ありがとうございます。……いえそのそうではなくてですね?」

 

 

 久方ぶりに、膝の上に頭を乗せさせられたマシュが、こちらに声を掛けてくるが……。

 うん、私からは彼女の顔は見えないので、察してあげるような優しい対応はしないのです。

 そのままニヤニヤしてるアンナさんとか、はわわわとか言ってるアルトリアとか、はたまたほほうとか言ってるオグリからの好奇の視線に晒されてなさい。

 

 

「は、はうう……」

「……ねぇ?これを見せられてる私達はどういう反応をすればいいの?」

「笑えばいいんでない?」

「仲が宜しいようで、なによりです」

「ちぇーん!?だいぶずれてないその反応?!」

 

 

 場所を移動して、園内のレストハウスにて休憩する私達。

 お昼ご飯にパスタやらドリアやらを思い思いに食べたあと、食休みとばかりにベンチに座ったのだが、そこで気を抜いていたマシュを取っ捕まえて膝枕をしている、というのが今回の状況である。

 ……お前膝枕ばっかり多用してるな、ですって?

 しゃーない貧困なボキャブラリーの私では、良い対応なんてなーんにも思い付かんし。

 ……わざと?なんのことです?私からはマシュの顔が見えないので、彼女がどんな顔してても関係ないんですよ?……いやまぁ嘘だけども。耳が真っ赤なの見えてるし。

 膝の上のマシュの髪の毛を、まるで猫の毛並みを整えるように優しく撫でている……という状況がこっ恥ずかしいってのは確かだろう。猫扱いだもんね、文字通り。

 

 

「……キーアちゃんの反応がずれてるのはいつものことだからほっとくとして」

「あれ?なんで今ディスられたの私?」

ほっといて。……当初の目的は達成されたようなものだけれど、これからどうするの?」

「ほっほーい、オラにいい考えがあるゾ!」

「あらしんちゃん。……さっきまで静かだったのは、どういう風の吹き回し?」

「オラ、空気の読める幼稚園児だからー。『サンバルカン』?を薄めてたんだゾ」*9

「……それを言うなら『存在感』、なのでは?」

「おお、そーともゆー」

 

 

 うーん、一気に騒がしくなった感じ。しんちゃんに気を遣わせていた状況に、改めて気が付きつつ。

 ……いい考えがある、という言葉にちょっと反応する私。*10

 まぁ、しんちゃんがどこぞの司令みたく爆発する、なんてことはないと思うけど。*11

 こうして気にしてしまうのは、半ば職業病みたいなもんだよなー、なんてため息を吐いて、続くしんちゃんの言葉を待つ私達なのであった。

 

 

*1
初代『遊☆戯☆王』で見られたモノ、罰ゲーム。元々は『DEATH-T編』において闇遊戯が海馬に行ったもの。内容は精神を砕くというもの。結構エグい罰ゲームだが、初期の漫画版はもっとエグい罰ゲームが多かったため、アニメ版ではこちらに差し替わっていることも。また、海馬がマインドクラッシュを受けた場面をモチーフにした『マインドクラッシュ』という同名カードも存在している

*2
『壁になりたい』。推しの絡みは見たいがその間を邪魔したくはない、という感覚の発露による言葉。男女問わず使われているようだが、起源は不明

*3
アニメ『魔法少女リリカルなのは』一期の最終話『なまえをよんで』から。作中で幾度もぶつかりあった二人が、ようやく友達になれたシーン

*4
『神座シリーズ』のキャラクターの一人、『水銀の王』メルクリウスのこと。『変質者』やら『ニート』やらとも呼ばれるやべー奴。第三神座(既知)の外より飛来せし異端(未知)

*5
『尊い』が訛ったもの。語源には諸説あるが、中音ナタ氏のファンアート内で『ドラゴンボール』の孫悟空が尊いという言葉を『てぇてぇ』と訛って発言したことが元ネタ、というのが有力な説だそうな

*6
ゴルフ漫画『風の大地』の主人公、沖田圭介の台詞。彼の婚約者が何者かに拉致されたことを知り、詳しい事情を聞こうとしているシーン……なのだが、この三コマだけ切り出すと『怒りを抑えながら相手を問い詰めている』風に見えてくるため、そういったパロディが多い

*7
ぬまがさワタリ氏の著書『なんかへんな生きもの』などに頻出する台詞『ウワーッ』。基本的には断末魔

*8
ナウシカは勿論『風の谷のナウシカ』。『ふっとばされた!』の方はファミコンゲームの『キャプテン翼』で選手が文字通り吹っ飛ばされた時に出る台詞。なにもふっとばされるのはもりさきくんだけじゃないぞ!

*9
戦隊もののシリーズの一つ、『太陽戦隊サンバルカン』から

*10
アニメ『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』より、司令官であるコンボイの台詞。本当は成功フラグ(作中でこの台詞を発した時の成功率は八割、五回中四回成功している)なのだが、よりにもよって唯一の失敗が一番最初だったこと・よくよく検証もされないまま失敗フラグ扱いが広まった結果、ネタとして使う場合はほぼ完璧に失敗フラグになってしまっている。ただ、そのおかげ?でどこか親しみやすいキャラクター性を獲得したのも事実だというのは、怪我の巧妙と言うべきか。完璧な司令官よりも、ちょっと抜けたところがある方が好かれる……というやつである

*11
同じくアニメ『トランスフォーマー』より、サイバトロンの戦士・ホイルジャックが発した台詞『みんな下がれ!早く!コンボイ司令官が爆発する!』から。一応、話の流れからしてシリアスな場面のはず、なのだが。声優の演技やらなにやらを含めた結果、妙に笑えてしまうシーンになってしまうのだった。上記の失敗フラグとセットにされることが多く、大抵の場合コンボイは迫真の『ほあああああっ!!』という断末魔と共に爆発する


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