なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
はい、そんなわけでラットハウスにやってきた私達。
ここに来たのならやることはもちろん一つ、チノちゃんもといライネスの出すコーヒーを飲むこと、ってことになるんだけど……。
「ふむ、今年のラットハウスは何するのかと思ってたけど……まさかこう来るとはねぇ」
「今年のハロウィンは君達が受け持ってくれるんだろう?となるとうちではそれ以外の話をやる必要が出てくるわけだが……元々飲食店をしている身としては、取れる選択肢は意外と多くはなくてね」
「あーうん、言われてみれば確かに」
あれだ、祭だからって他のこと──例えばいきなりゲームをやり始めるとか、はたまたお化け屋敷なんかにいきなり手を出す飲食店なんてないだろう、というか。
精々祭に合わせた特別な商品が出てくるくらいのもので、基本的にはいつも通りの営業の延長線上にしかならないのが普通、とも。
……ただ、祭に合わせて特別なメニューを、ってなると正直どこもやってることなので客寄せには向かない面があるのも事実。
よっぽど美味しい料理が出てくるというのなら話は別だろうが、正直なところ厨房に立つコックがウッドロウさん……もとい、料理経験者って時点でそこまで普段と変わることもないだろう。
「ぴぃーっか、ぴかっちゅ」*1
「そうですねぇ。ウェイトレスの可愛さで気を引こう……なんて考えも、普段からこの最強無敵お役立ち上級AIであるBBちゃんを筆頭にした美少女軍団で満たされていますから変化は少ないですし」
「BBさんに関しては、普段から
「メイドにバニー、浴衣に着物。最近流行りのチーパオ*2だって着こなしちゃいますよ☆……まぁ、それで特別な日の特別性が消えている、というのでしたら反省すべき点になるのですが」
BBちゃん反省ー☆
……とか言っている彼女もまた、今日の服装はいつもの……いつもの?ラットハウス制服である。
なんでもいいけどそっちの服装だとBBちゃんっていうよりその元になった間桐桜みが強いね?
まぁ、当の桜ちゃんは絶対やらなさそうな表情してたりするから見分けは付くけど。ドヤ顔とか。
「桜さんだってドヤ顔はすると思いますけど……え?そうじゃない?私のはなんというか生意気な感じが滲み出るドヤ顔になってる?いや酷くないですかせんぱい!?」
「いやいや酷くない酷くない。寧ろ本編で最高の報酬を貰った感あるBBちゃんには反作用的に適正適正」
「いやまぁ確かにあれは最高の報酬だと思いましたけどぉ!!」*3
でもそれは今の私には関係なくないですかぁ!?
……と主張してくるBBちゃんをスルーし、改めて店内を見回す私。
相も変わらずからかわれて……もとい絡まれている上条君と絡んでる『星女神』様はスルーするとして、注目すべきはその奥で束の間の休息を噛み締めているささらさんのこと。
少し離れた席に陣取る彼女は、傍らのジーク君に甘えるように肩を預けながら、運ばれてきたコーヒーを楽しんでいるのだが……。
よーく見てみると、その口元がなにやらへにゃっとなっているのが窺えるはず。
しっかり見つめないとわかりにくいけど、微妙にプルプル震えているのも理解できるはず。
なんなら店内の薄暗さでわかりにくいけど、微妙に頬が赤く染まっているのも理解できるはずだ。
要するに、なにやら照れているってことになるわけなんだけども、これは別にジーク君に甘えることに照れを見せている、というわけではない。
……というかこの人わりと卑しいタイプ()の人なので、彼に甘えることそのものに忌避感を抱くようなタイプではないのだ。
じゃあなんでイチャイチャしつつもそのうちうがーっと叫びながら店内から飛び出していきそうな雰囲気を醸し出しているのかというと、だ。
「尊いでござる……」
「カップルのイチャイチャは癒されるわね……」
「ありがたやありがたや……」
「流石に抱けーっと言うのは女々か?」
「名案にごつ」
「…………なにあれ」
「うちの出し物の『かべになれる』権利だよ。店内に客として参加するのではなく、あくまで第三者目線──神の視点で物語を俯瞰する権利を与える、みたいなやつだね」
「ええ…………」
いやまぁ、たまーに冗談か本気か『壁になりたい』っていう人居るけど、居るけどもさぁ……?
照れている(というか半ばテンパっている)ささらさんから目線を外し、そこから一番離れた位置の壁に視線を移動させれば、そこにはなにやら壁に空いた穴が無数に存在するのが見える。
注意深く確認すれば、その穴の向こうに何者かの目が浮いているのが視認できることだろう。
あれは大雑把に言うと、店内に増設された
なに言ってるのかわからんって?わたしにもわからん(白目)
……まぁうん、言いたいことはわかるんだけどね?
物語に参加する、って形で触れるのではなく、あくまで外からキャラクター達のやり取りを見ることに終始したい、っていう人がいるってのはよく聞く話だし。
それはまぁわかるんだけども……いや、なんでそれを出し物にしたし。
「ちょっと奇抜な方が受けるだろう?特にうちは参加するのはちょっと敷居が高い、なんてことも言われていたりするようだからね」
「ふむ、敷居とな?」
「ここは一般の方……もとい名無しに相当する人物がはるか君位しかいないだろう?その結果、店内で飲食をするのに度胸がいる……みたいなことになっているそうだ」
これは夜にバーとして営業している時も変わらないよ、と告げてくるのはウッドロウさん。
……ふむ、つまりはこういうことか。
ここで働いている面々は『逆憑依』ばかり、他の店だと普通の人も店員としてカウントされていたりすることもなくはないんだけど、そういう人達は常にいるわけでもない。
そもそも店自体が基本道楽の類いなので、生活必需品ではないものを生業とする店──料理屋などはいつでも開いている、なんてこともない。
キャラクターとしての属性的にずっと店をやっている、みたいな感じの人たちも中にはいるけど、そういう店は逆にその人だけが店に居る、みたいな感じであることがほとんど。
……要するに、ラットハウスが郷内の店としては珍しく、色んな作品のキャラが働いていてかつほぼ毎日やってる店に当たるので、一見さんとかが店内に入るのにある程度勇気がいる……と。
「まぁ、言われてみれば確かに。いつぞやか古いお店をエミヤんが手伝う、なんてこともあったけど……そういうお店でもないとなにかしらのキャラがやってる、ってのが普通だもんね」
「かつ、船頭多くして船山登る……みたいなことになりかねないことを思えば、基本的に料理人達はそれぞれに店を出すより他ない、みたいなところもあるだろうね」
「ほへー」
単一のキャラ(と、バイトの一般人)がやってる店ならば、そこまで緊張する必要もない。
個スレに乗り込むようなもので、気にすべきことはあくまでも相手と自分のことくらいのものだろう。
ファミレスみたいな大衆向けの店なら、寧ろ個人を気にする必要が薄れるためそっちはそっちで気安くなるだろう。
……つまり、個人経営レベルにも関わらず色んなキャラがいるラットハウスが特殊なんだ、という話である。
で、店そのものが特殊ならば、その店の様子を見るだけでもある程度のコンテンツになりうる、と。
特に今年は、出し物の出来を競うような話も存在しない。
言い換えると好き勝手に出し物をやれる──無論限度はあるけど──ということになるわけで、今回のライネス達みたいなパターンも許される、ということになるようだ。
……まぁ、その結果ささらさんとジーク君のやり取りを『尊い……』とか言いながら眺めているのはどうなんだろう、って気もするんだけど。
というか中にいる人達一般人だけ?なんかしらの『逆憑依』とか混じってない?
「いや、一応今日は一般人だけだよ。そもそも壁になれるとはいうけど、別にヤジを飛ばすのも自由だからね。どっちかというと舞台のガヤに近いんじゃないかな」
「うーん演劇かなにかみたいな扱い……」
まぁ、楽しまれてるんならそれでいいんじゃないかな……(適当)
そんな感じに納得して視線を戻したところ、
「……げ、限界ですぅ!!無理ですぅ!!罰ゲーム以外の何物でもありませんん~~っ!!!」
「あっ、ささら!」
──逃がすか!──
「ぎゃんっ!?……鼻、鼻がっ!?」
「コントかよ」
思わず真顔でツッコんだ私を誰が責められようか。
いやだって、ねぇ?
衆人環視による羞恥心が上限突破して脱兎の如く逃げ出したささらさんに対し、後ろを向いていたはずの『星女神』様が突然バッと振り返ったかと思えば、謎の手印をシュバババッて感じにキめたあと両手で一つ
するとどうだろう、ささらさんの足元の影が形を変え、彼女の足を捕まえ引き留めたではないか。
無論、逃げようとしていたささらさんは勢いを殺しきれずにそのまま急制動・綺麗にびったーんって感じに顔面から倒れ込むことに。
……鼻を強く打ったことで涙目になったささらさんを見て、満足そうに微笑む『星女神』様に隣の上条君がドン引きしているのが印象的なやり取りであった。
「デュフフフwwwコメディも中々よいものですなぁwww」
「こういう日常のやり取りも癒されるわね……」
「ありがたやありがたや……」
「ティッシュかハンカチを差し入れるのは女々か?」
「名案にごつ」
「……ねぇ、あれ本当に一般の人?」
「多分」
なお、壁の中は大層賑やかであった。
……本当にただの一般人なんだろうか、ここにいる奴ら……?