なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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観光は続くよどこまでも?

 謎の出し物で意外と繁盛?していたラットハウスを出て、次の目的地へと歩き始めた私達。

 さっきのやり取りでは踏んだり蹴ったりだったささらさんだけど、どうにもそれがいい方向に変化をもたらしたようで。

 

 

「……それでぇ~、『星女神』様は次にどこへ行きたいですかぁ~」

──そうねぇ……おすすめとかあるのかしら?──

「私達はぁ~あんまり出てこないのでその辺詳しくないですけどぉ~……風の噂におすすめな場所を聞きましたぁ~」

──ほう?──

 

 

 ……うん、こんな感じに普通に話し掛けられるようになったのである。

 

 いやまぁ、流石に痛みを伴うと畏れより怒りが上回るよね、みたいな感じというか?

 冷静に考えると案内をほっぽりだして逃げようとしていた、ってことになるので寧ろあれで済んでた分甘い対応ってことになるんだけど……その辺指摘してさっきの空気に戻るのもあれなので黙ってる私である。

 

 ともあれ、コミュニケーションがある程度スムーズに進むようになったのだから、もう問題は残ってないだろう。勝ったなガハハ。

 

 

「……それはともかくとして、次は何処へ行く?今日はあくまでも軽い散策のようなもの、目玉になりそうなところは次回のお楽しみということになるんだろう?」

「おっとそうだったそうだった。ラットハウスは困った時の駆け込み寺みたいなもんだけど、同時に今回は出し物の規模的に脇役扱いの方が強いんだった」

 

 

 そんな私の様子に困ったように眉根を寄せつつ、生真面目なジーク君がこれからの予定について尋ねてくる。

 ……確かに、今日のこれはあくまでも予行演習、本番となるのは月の真ん中辺りに再度やってくる『星女神』様のお忍びタイムの時。

 今日はそれを見越して軽い散策と、それからささらさん達が次回『星女神』様を案内するスポットをそれとなーく探っておくための下見の面が強い、というのは少し前に明記した通り。

 

 ってことは裏を返すと、今日紹介する場所はほどほどの出し物をやっているところに限られる……のに加えて、郷内を可能な限り被りのないようにあちこち見て回る必要にも駈られている、ということになってくる。

 なんでかって?前も言ったけど、ささらさん達の活動範囲が()()()()()()()()()()()()()()()()だから、である。

 

 ……要するに、知らないところが多すぎるのだ、今の彼女達には。

 

 

──そもそも大抵のものは自身の領地内で賄える。食料のような必需品の不足に関しても、隣接しているなりきり郷自体が一種のアーコロジー……完全な自給自足を行えている場所である以上、仕入れに不自由が発生する余地がない、ということですね──

「ですね。なんやかんや食料自給率百パー越えなのがなりきり郷なので。作りすぎて腐らす、みたいなこともないですし」

 

 

 いやー、封時空間最高っていうか?

 結界内の時間を止める効果を持つフィールドを倉庫内に張り巡らせることにより、取れた食料を常に最高の鮮度でいつまでも保管し続けられる……。

 という、現代の生産者が見たら誰もが喉から手が出るほどに欲しがるだろうシステムが標準装備なんだから、そりゃ食料問題なんて早期に解決しますわというか。*1

 現代におけるその問題、解決に至らない理由の一つに『作りすぎた場合の保管』があるんだから当たり前といえば当たり前なんだけど。*2

 

 これが空間操作技術の中では下の方の難易度、ってんだからホントチートだなー、っていうか?

 ……まぁ、時間を止める方は意外と楽だったけど、緩やかにしたり加速したりするのは全然研究が進んでない、ってんだから技術の発展ツリーに幾ばくかの偏りも感じなくはないんだけども。

 

 まぁともかく、食料に困ってないということは、原則どこで買い物をしても欲しいものが手に入る、ということでもある。

 ゆえに、ささらさん達も足りないものを調達する際、わざわざ遠方にまで買い付けに行くのではなく、近くのスーパーにちょいと買い物しに行くだけで事足りてしまっていたのだ。

 ……こういうところも、行動範囲と交遊関係の広がらなかった理由というか?

 

 

「なるほど、近年ではネットでの買い物が格段に便利になったと聞くが、俺達の状況はそれに近いものがあったんだな」

「うんうんそうそう。……うん?」

 

 

 そうかな?……そうかも?

 

 まぁともかく、とことんまでささらさん達が領地に引きこもるのに向いてたのがこの場所、ということは否定できないだろう。

 そもそも時間の流れが違うという場所特性を有効活用するため、外に出てくる際は私か『星女神』様に頼まないといけなかった、って面も理由の一つではあるだろうけど。

 ……その辺に関しては、こうして遠慮が消えつつあるささらさんの様子を思えば、その内解決しそうな問題であると思う気分の方が強めなんだけどねー。

 

 とはいえそれはあくまでもこの話が終わったあと──祭の先の話。

 現状では彼女達が御上りさんみたいなものであるって部分は変わらない。

 なので、それなりの出し物に参加しつつ本命の出し物をチェックしておく、という任務(?)の難易度もまったく変わらないのでありました。

 

 

「……えぇと、あれとかどうでしょう?祭の定番金魚すくいぃ~」

「いや、止めておいた方がいいぞささら」

「なんでですかぁジーク君~?」

「あれ、金魚()()だ」

「えぇ?」

 

 

 ……そんなわけで、無難そうな出し物を探しているはずが、悉く変なものばかり引き続けるささらさんの姿が暫く続いたわけなのです。

 まず始めに引っ掛かったのは『金魚すくい』。

 ……と言っても今しがたジーク君が述べた通り、『金魚掬い』ではなく『金魚救い』の方だったのだけど。

 

 

「金魚掬いと言えば、水に溶けやすい紙の貼られた道具を使って金魚を掬いあげる遊びだけど……金魚救いは命の危機にある金魚を助けてあげる、って遊びだね。まぁ実際の金魚でやると明らかに愛護団体に抗議されるやつだから、あくまでテレビゲームとしての遊びだけど」

「……ピラニアぁ!?猫ぉ!?濃度の違う水ぅ!?なんの耐久試験ですかぁこれぇ!?」

「金魚に襲い掛かる危険だよ?」

「幾らなんでも直接的過ぎませんかぁ!?」

 

 

 おっと、金魚掬いそのものが愛護団体に文句言われそう、みたいなツッコミは受け付けないぜ。

 素直にゲーム内で命の危機に瀕している金魚に意識を向けるんだな……。

 ってなわけで、ワンプレイ五十円のそれは、クリアすると金魚の代わりに祭コインが貰える仕様となっております。

 

 

「……なんですかぁ、これぇ」

「祭コインだよ。祭でやってる出し物の内、ゲームタイプのモノをクリアした際に貰える祭限定の通貨だよ。特定のお店ではこれでしか買えない物が置いてあるから、それの入手のために血眼になって集めている人もいるよ」

「……あぁ、ミニゲーム用のコイン……」

 

 

 因みに買えるものには家具などの高級品もございます。

 家に設置すると特別なモーションが……もとい、ちょっとしたお楽しみ要素があるとのことで割合人気になっているとかなんとか。

 なお、個数制限とかはない(購入希望者の前で即座に作るタイプ)なので、テンバイヤー対策も万全だ(?)

 

 ……家具以外だと武器のレプリカとかも置いてたりするらしい。クラウドさんのバスターソードとか?

 

 

「それは……ちょっと欲しいかもしれないな」

「ジーク君ならこっちもおすすめだよ、ほら日輪刀」*3

──強くなれる理由を知りそうね──

 

 

 その場合竜の呼吸でも生み出すことになるんだろうか?

 ……みたいな冗談はともかく、ミニゲーム系の出し物を攻略すると祭コインが貰え、それによって様々な景品を交換することができる、というのは間違いない。

 

 なので、色んなところでミニゲーム系の出し物が雨後の筍のように乱立しているわけだ。

 ……で、案の定ささらさんはその一つ一つを見て回ってしまっているわけなんだけど。

 

 

「……どれもこれもなにかおかしいのはなんでなんですかぁ!?」

「そりゃほら、奇抜じゃないと目立たない、目立たないとみんな遊びに来てくれないし?」

「それにしたって限度があるじゃぁないですかぁ!?」

 

 

 はい、この通り別方向にキャパオーバーしました。なんでだろうね?()

 いやまぁ、気持ちはわかるけどね。

 さっきの金魚掬いも大概だったけど、三秒ミニゲームとか倒れない的を倒すまで撃つ射的とか、はたまた紐を思い切り引っ張って景品をなぎ倒すゲームとか……色々おかしなものばっかりだったし。

 

 ってなわけで、出し物を見ては一喜一憂するささらさんの後ろをゆっくり追い掛けつつ、ジーク君に目配せして今度回るべきところをピックアップするように指示する私なのでした。

 ……その様子を『星女神』様が見てるのはいいのかって?もう気にするだけ無駄でしょう()

 

 

*1
食料自給率の上がらない理由の一つに、食料の保管の問題がある。豊作の際できた作物が全て売れていくのならいいのだが、大抵の場合全ては売れずに余ってしまう。また、豊作になると作物の価格が下がる為、大量に売っても元を取れずに赤字になる、というパターンも存在する。ゆえに売れ残りは保管しておきたい……となるのだが、基本的に作物というのは一部の保管しやすいモノを除き、原則長期保管に向かないのが現状である。そもそも国土が狭いと保管場所を確保するのも一苦労であり、結果として本来ならもっと大量に作物を作れるだけの余地があっても敢えて作らない、みたいなことになってしまう。農業は天候に左右される面も大きく、保管の問題が解決すれば連鎖的になんとかなる問題も多いと思われる

*2
正確には、生産時に収穫能力を越えた場合の問題。発展途上国などで起こる問題で、豊作になったものの農家の収穫能力を越えている為取りきれなかった分をそのまま腐らせるしかない、というもの。その他保管場所の衛生管理が不十分である為にこちらも腐らせてしまうパターンもある。さらにこうして腐って捨てるしかない作物というのは、それに伴い『その作物を育てる為に消費した資源などのロス』という風にも捉えることができる。先進国における『作りすぎによる食べ残し』に次ぐ食料問題の一面の一つ

*3
『鬼滅の刃』において、主人公である炭治郎達が使う特殊な刀。作中においては唯一鬼を殺せる武器でもある

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