なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「そんな感じであちこち見て回ったってわけよ」
「ふーん、そりゃ大変だったわねー。あ、おやっさん焼き鳥追加でー」
そんなことがあった日の夜。
酒飲みーずの集まりと共に初日の反省会に近くの居酒屋に向かった私達は、それぞれその日にあったことを肴として話題提供していたのだった。
基本的には『星女神』様が一緒だった私の話が中心だけど、それ以外にも色んな話が出るわ出るわ。
「というか、いつの間にかこっちに来てたミサトが学校の先生になってる、って時点で驚きだわ。まぁ学校がある、ってのも割合ビックリだったんだけど」
「つってもねー、こっちでやることがなかったんだから仕方なくない?」
「まぁ、うちには使徒なんて出現していないものね。まぁ、仮に実在していたとしてもこっちにはアダムもリリスもないし、特にすることもなく佇む羽目になるでしょうけど」
「マスコットのように鎮座するサキエル、みたいな感じ?」*1
「あーありそう」
特に、いつの間にやらなりきり郷に来ていたミサトに関しては、なにかと話題になりやすいというか。
──葛城ミサト。
エヴァンゲリオンシリーズに登場するメインキャラクターにして、作中において秘密組織『ネルフ』の戦術作戦部に所属する戦闘指揮官。
作中では既存の戦術に囚われない柔軟な──言い換えると破天荒な作戦なども提案し、初号機パイロットの『碇シンジ』達を指揮していく人物である。*2
「まぁ、優秀なんだろうけどそれがあんまり視聴者に伝わらないタイプでもあったわよね」
「行き当たりばったりに見える、みたいな?」
「その辺は対巨大生物の戦術マニュアル理解してからツッコんでちょーだい」
「誰が理解してるのよんなもの」
「ゴジラが居る世界の人とか?」
「うーん」
ただまぁ、作中描写的な問題で、どうにもその優秀さがわかりにくい面があるのも事実。
中の人が同じ『機動戦士ガンダムSEED』シリーズのマリュー・ラミアスと同じく、単純な戦闘力ならかなり高い*3……みたいな部分もあるのだが、その辺機動兵器による戦闘が主体の作品では活かしにくいというか。
「あとはあれよね、当時の派生作品の空気感。大抵の場合本編はともかくスピンオフだと『そこまでではないよ?』みたいな部分がクローズアップされてることが多かったというか」
「今だとコンプラだのなんだので文句言われるとこねー。芸人の自虐芸みたいなもんなんだからそんなに気にすることはないんだけど、その辺はまぁ今の時代に合わないってやつよねー」
それと、スピンオフ作品の方向性。*4
今より少し古い作品だと、笑いを取るためにキャラクター達の悪い部分が本編より強調されて描かれる、みたいなことも多々あった。
バカだなぁ、と生暖かく見つめながら笑うためのもの、程度のノリのモノなのだが……まぁ、今の時代にはあってないよなぁ、というか。
ともあれ、その辺もあって人によっては好きじゃない(オブラートに包んだ表現)、なんて人も多いのが葛城ミサトというキャラクターである。
端的に言ってエヴァにおける『ダメな大人』の一人、というか?
「いいのよ人間なんてちょっとダメなくらいが愛嬌あるんだから。……あっ、すいませーん熱燗追加でー」
「いや飲みすぎでは?」
「いいじゃない、この体酒飲みに取っては理想的過ぎるんだもの」*5
「それは言えてるわね。幾ら飲んでも二日酔いはしないし、酩酊するにしても前後不覚レベルまでは進行しない。『逆憑依』様々と言っておくべきかしら?」
「……いや、侑子はそもそも『逆憑依』云々の話以前の問題でしょうが。そのボディあくまでロボットなんだから、味はともかく酩酊なんて絶対しないでしょうに」
「ただのロボットじゃないわよ、特注品だから飲食自由。未来の科学万歳ってやつよねー」
で、その隣でミサトに負けず劣らず酒を飲み続けているのは、今回ロボットの体で参加した侑子。
……今の彼女はゲーム内の本人が外界干渉用端末に意識を移して参加している、という形なのだけれど。
しかして周囲から見た際に、そんな気配はまったく感じられないような様相となっていたのであった。
それもそのはず、今の侑子の姿はほぼほぼ本人のもの。
以前はホログラフに質感を付け足してあれこれしてたんだけど、今回はそういうのじゃなくて実際に現実で活動している形になっているのである。
なにがどうしてそうなったのか、っていうのはまた長くなるのでここでは話さないけど……ドラちゃんやBBちゃんの活躍によるものである、ということだけは明記しておく。
「以前みたいに電脳空間に転送して再構築……ってのも方法としてはありだけど、やっぱり直接食べたり飲んだりできるのは違うわねぇ」
「……そういえばゆーこってばなんか変なことになってるんだっけ?」
「電脳世界で囚われのお姫様になってます」
「似合わな……ああいや、そういえば元々の作品でもそんな扱いなんだっけ?」
「ミセから外に出られない、っていうのを囚われ扱いするのならそうね」
怪訝そうな顔で侑子を見つめていたミサトだったが、やがて面倒臭くなったのか視線を外して焼き鳥に手を伸ばし始めたのだった。
うーん豪快すぎる、おっさんの晩酌かな?
「寧ろそっちが大人しすぎるのよ、ってかなによゆかりってば可愛い子ぶっちゃって。いつもの酒飲みゆかりんはどうしたのよ酒飲みゆかりんはー!」
「私心を入れ換えましたの。酒は飲んでも呑まれるなとも言うでしょう?」
「こんなこと言ってるけど単にジェレミアさんから『飲むなとは言いませんがほどほどにしてくださいませ』ってやんわり窘められたってだけなんだぜ」<ニヤニヤ
「へぇー?」<ニヤニヤ
「あっちょっ、バラさないで頂戴なキーアちゃん!?」
そんなおっさん()が次に絡んだのはゆかりんである。
何故なら今日のゆかりん、いつもの浴びるほど飲むムーヴではなく
徳利もとい熱燗自体はミサトも頼んでいたが、その速度の違いは一目瞭然。
横に並ぶ空になった徳利の本数を数えれば、どんだけミサトがハイペースで飲んでいるのか・ならびにゆかりんがどれだけスローペースなのかが理解できるというもの。
……普段なら同じくらい飲み続けているはずの人間がどういう心境の変化だ、と気になるのも仕方ない話だろう。
ただまぁ、別に真相はそんなにおかしな話でもなく。
単に親愛なる従者から『お酒は控えましょう』という諫言を受け取って渋々お酒を控えている、というだけのことだったりする。
この『親愛』って部分からミサト達にからかわれる羽目になるわけだが……ゆかりんの尊厳のためにその辺りはカットしておくとしよう。
「そういうキーアちゃんはいいの?遅くまで飲んでるとマシュちゃんとか怖いんじゃないのー?」
「今月は大丈夫でーす」
「今月
「ゆかりんのお陰で多少減ったけどね。それでも色々見て回らんとあかんしそもそもうちの出し物もあるしで大忙しってわけよ。なんで今月中は夜家に居なくても問題ないのです。今日はこんな感じでやってるけど、明日とかは他の人の出し物とか手伝いに行く感じになるしね」
「なるほどねー」
で、ここまで話が進めば必然私にもお鉢が回ってくる……んだけど。
正直今回はその辺弄られてもノーダメージ……もとい他のダメージ多すぎるので
いやだって、ねぇ?
交遊関係の広さが忙しさに比例するというのなら、このなりきり郷で今現在一番忙しいの私ですよ?
そりゃまぁ、自由時間……に
……うん、そうなんですよね。
こうして四人で駄弁って酒飲んでるだけに見えるかも知れませんけど、これ実は私達の出し物なんですわ。
ほら、バラエティーとかでよくあるじゃん、有名人が一般人と混ざって酒飲んだりする話。
今回の私達はまさにそれで、祭中は酒飲みながら色んな所にお邪魔して賑やかしては帰っていく……みたいなことをやり続けることになっているのだ。
無論、私とゆかりんは他のことで忙しかったりするため、毎日は参加できないが……侑子とミサトはそこまで用事があるわけでもないので、毎日色んなところに突っ込んではご相伴に預かる形になるのだそうな。
今日は初日なのでメンバー全員集合、ってわけである。
……あ、祭が終わったら映像としてまとめて頒布する予定もあるとか。タイトルは『毎日行ってみよー』だっけ?水どうのパロディな感じで。
「まぁ、二日酔いと無縁の体だからこそできることだけどねぇ」
「そうねぇ、どう考えても死ぬもんねー、普通なら」
あっはっはっ、と笑いながら都合三升目の酒を飲み干す私達なのでありました──。