なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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サスペンダーは外せ、話はそれからだ

「と、いうわけで~。オラの映画の再現が楽しめるコーナー、『体感!嵐を呼ぶ映画村!』だゾ!」*1

「お、おう?」

 

 

 元気に声をあげるしんちゃんに、それシネマランド……と言いそうになる私。……ゲーム版だし、知らん人も居そうだし。*2

 

 ともあれ、魔法の力の有効活用という点において、再現系は確かに強いと言えるだろう。

 現状のVR技術はまだ発展半ば、体感という面に置いては埋められない溝が、未だ大きく横たわっているわけであるし。*3

 

 ……『tri-qualia』?あれがフルダイブになるのはなりきり組だけな以上、こういうリアル脱出ゲーム?的なものにはまだまだ叶わないと思います。

 SAOくらいにまで技術が発展すれば、スペースの必要ない娯楽として急速に広まりそうだけども。……体感を含めて完全に……となると、今の技術じゃ高いわ場所取るわな専用機器必須、だしねぇ。*4

 

 ハード系全般に言えることだけど、ハードとは土台・基礎であるので、そこが広く普及しないことには、後に続くソフトを作る意味がなくなるのである。

 逆ザヤ*5なんて形で身銭を切ってまで普及を進める会社があったのは、結局ハードだけ売れても仕方ないから、という面もあるわけで。……転売屋が嫌われるのもさもありなん、みたいな話になりそうなので深掘りは止めておく。*6

 

 ……そういえば、スマートフォンを『ハード』と見なすのなら、世間にこれほどまでに広まっているハード……すなわちプラットホームというのも中々ない、みたいな話もあったっけ。

 今でこそ最早レッドオーシャンと化しているけれど、スマホ市場が夢のフロンティアだと思われていたのもさもありなん、というわけだ。

 ……まぁ、スマホはどこまで行ってもスマホ、処理能力の限界……というよりは排熱処理技術の進化待ち、みたいなところもあって、作れるソフトにはわりと限界があったわけなんだけれども。*7

 ……いや、これも真面目に語ると長くなるやつだな?ええい、スルースルー。

 

 とにかく。

 やっぱり体を動かすのが一番分かりやすく、それでいてコストが掛からない……というのは自明の理なのである。

 その上で、本来現実ではできないことを魔法で補助してしまう……というのは、最高に頭のいいやり方なのは一目瞭然ってわけなのだ。

 

 え、結論が雑?いいんだよ魔法なんて不思議パワー扱いで。

 変に理論とか決めちゃうと科学の延長線上みたいになって、できることに限りが生まれるからこれでいいんだよ。

 どこぞのツンギレな着物ジャンパーの人も言ってたでしょう、()()()()()()()()()()()()()()()んだって。……それは未来?いいんだよ似たようなもんなんだよ!*8

 

 

「お?なに百面相してるの、キーアおねいさん?」

「んー?いやね、ちょっと壁の向こうと交信をね?」

「ほうほう、デップーとかシュマちゃんみたいなものですな?」

「……今の一言で聞きたいことが二つほど増えたんだけど?」

「お?」*9

 

 

 虚空に向かって何事かをぶつぶつ呟いている危ない人……とか言われてしまいそうな状態だったからか、案の定しんちゃんにそういう声掛けをされてしまったので、軽くごまかしを投げたのだが。

 ……いや待ちたまえよしんちゃん。デップーとシュマちゃんとな?居るの?ここにも?あの二人が?

 

 わぁ厄介事の香りー、なんて言葉が思わず漏れてしまう。

 ……海外作品が初出のキャラでしょ、その二人。……こっちで発生したんならいいけど、海の向こうから船とかで渡ってきたとかだったら、アメリカin私、なんて胡乱気な話が始まりかねないんだけど?

 

 うわぁ、想像したくなーい。そもそもアメリカの描写がげふんげふん。

 ……あっちもあっちで、舞台にするととんでもねーことになりかねないので、できれば杞憂であって欲しいキーアさんなのでしたとさ。

 

 

 

 

 

 

『じゃ、始めましょうか。世界の運命を掛けたババ抜きを』

「あ、ここからなんだ」

BBA(ババ)抜きですってぇっ!?」

「ゆかりん、同じネタ二回目はどうかと思うよ?」

「……ゆっかりーん」

 

 

 こっちの世界の本人ではなく、魔法によって再現されたマカオとジョマが座る円形のテーブルに、三人のプレイヤーが着席を促される。

 ……人数が三人以下だとそのまま全員座るみたいだけど、数が多い場合は原作に沿うような感じの人が選ばれる、らしい。

 

 そんなわけで、ピンポイントそのまんまなしんちゃんが子供枠で、さっきからBBAネタを当て擦りまくっているゆかりんがみさえ枠に、それから今回の同行者で唯一男性なジェレミアさんが、ひろし枠で席に着くこととなった。……こういう場面で私が外野になるの、わりと珍しいね?

 

 まぁ、選ばれなかったのは仕方ない(有難い)ので、マシュとアンナさん、それからすっかり仲良くなったアルトリアとオグリの二人を伴って、プレイヤーとわけられた場所でモニターから彼らの応援をこなすとしよう。

 ……いつの間にか移動してるって?

 いやまぁ、まさかプレイヤーの後ろに立って観戦するわけにもいかないじゃん?

 一応魔法で当人達が持っているトランプの図柄は、持っている本人にしか見えなくなってはいるわけだけれども。

 ……うん、『鑑定』使えば見れるし、そりゃあ隔離もされるよね、というか。

 

 そもそもこの再現に関しては、本題はババ抜き終了後の追いかけっこの方にある。そっちは思い切り走り回る形になるので、今のうちにストレッチでもしておこう。

 ……え?ババ抜き側は一応内容再現も入るから、滅茶苦茶必死に夜が明けるまでどちらを引くのか迷うジェレミアさんが見れるかも、ですって?

 ……んー、初期の頃の彼ならいざ知らず、忠義に目覚めた後期ジェレミアさんが、そんな感じになるかなー?

 

 

「……せんぱい」

「ん、どしたのマシュ?」

「…………ジェレミアさんが、渾身にして迫真の優柔不断を見せ付けています…………」

「マジでっ!?……うわマジだ!!めっちゃガッツポーズしてる!!?」

 

 

 マシュからの言葉に、下を向いていた視線を上に向ければ、視界に入ったモニター内でジェレミアさんが渾身のガッツポーズをしているのが見えた。……ノリが良すぎやしないかいっ!?

 無論、そのあとの「わーい、ジョーカーが残ったー、オラの勝ちぃ~」というしんちゃんの台詞を受けてのずっこけも欠かさない。……みさえ役のゆかりんには気恥ずかしさが見えるあたり、ジェレミアさんの迫真っぷりが笑いを誘って仕方ない。

 流石はオレンジ卿、全力ですな(白目)

 

 ……ともあれ、これで前哨戦であるババ抜きは終了、ここからはみんなで走るだけ、である。

 走るの大好きオグリさんがスッゴい張り切ってるけども……。

 

 

「……『王の馬』じゃなくなってるんだから、空を走れなくなってるの忘れないようにね」

「ん?……ああ、そういえば。だがそこは考えがある」

「考え?」

「沈む前に一歩足を踏み出す、もしくは上昇速度が零になったタイミングで踏み込む。……いずれにしろ、今の私ならやれるはずだ」*10

「ジャパニーズ・ニンジャみたいなこと言い出すの止めない?」

 

 

 スキルによる空中走行はもう行えない以上、舞台である城を遥か高層まで駆ける形になるこの話では、足を滑らせるとそのまま落下する羽目になるわけで。

 一応、単純に落ちても怪我とかしないようにはなっているだろうけども、それでも危ないものは危ないので気をつけて欲しい……みたいな気持ちを率直に伝えたのだが、返ってきたのは斜め上の返答だった。

 

 机上の空論を再現しようとするのやめーや。

 ……ランスロットみたいなことができるのなら、わりとやれそうな気がしてくるのが困り者である。

 まぁ、見た目は恐らく空中を十傑走りかNARUTO走りするオグリ、という珍妙以外の何者でもないものになりそうなので、止めておくように言い含めておいたが。

 ……そもそもの話、映画のラストにあたるこの追いかけっこ、向こうが魔法を使えないのだから、こっちだって異能使うのは宜しくないだろう、作劇的に。

 

 

「まぁ、そのあたりは置いといて。───イクゾー!」

「はいせんぱい、ではまずは……」

「え、ナニナニなんなのデス?え、私の首根っこを捕まえて?構えて?」

「『魔界発現世行きバスガイド』、射出☆」*11

「はいっ!アンナさん、先行お願い、しますっ!!」

「なんなんデスかこの扱いぃぃぃぃっ!!?」

 

 

 ともあれ、こっちは競争の中心となる五人からは離れた位置にいる。……つまり、悠長なことをしていると、彼らの競争に混じれないまま、モブとして話を終えてしまうことになるわけで。

 そりゃあ面白くない。どうせ参加するのだから、派手に目立たなければ損、というやつである。なーのーでー。

 事前にマシュに念話して伝えた通り、彼女のスーツの襟首を掴んで投げ飛ばすことで、マシュを発射台にした簡易カタパルト・タートル作戦決行!

 

 妨害手段豊富なアンナさんを先行させておけば、こちらが追い付くのもやりやすくなる、というわけである。……ちょっと恨みとか混じってないかって?……いやー、どうだろね?

 

 そのあたりの話は、一先ず置いといて。

 投げ飛ばされたアンナさんは、空中で器用に身を捻って体の向きを変えると、『今日は厄日デス!!』などと叫びながら手札からカードをデュエルディスクにセット。

 ……ターン処理がどうなっているのかわからないが、どうやらこちらを気にせず走っていたマカオとジョマのターン経過は、さっくりしっかり行われたようで。

 伏せてから一ターン経ったセットカードが発動され、彼女の手の内に『鎖付きブーメラン』が現れる。

 未だ空中にいた彼女は、それを振り回して勢いを付け、そのまま近くの壁に投擲!

 見事に刺さったそれを支えにして、上へ上へと登っていく。……登山家というかターザンというか、なんにせよデュエリスト特有のデュエルマッスルっぷりである。

 

 なお、そんなこと言ってる私は、現在マシュにお姫様抱っこされながら驀進中。……うん、異能抜きだと身体スペック見た目通りのクソザコナメクジが私なので……。

 オグリに背負って貰うという手もなくはなかったのだけれど、マシュから強硬に『ダメです』の言葉が飛び出していたため、こういうことになったのであった。

 ……見た目そのままな体重ゆえに、対して苦になっていないようなのだけは救い、だろうか?

 

 ともあれ、こっから先は一歩通行だ、ひとっ走り付き合えよ、悪党!*12

 ……こっからじゃ聞こえないだろうし、そもそもお前も悪党だろうって?あーあー聞こえないー。

 

 

*1
『映画村』は勿論、実在の観光施設『東映太秦映画村(とうえいうずまさえいがむら)』のこと。日本のテーマパークの先駆けとも呼ばれる、時代劇をテーマにした施設

*2
ゲームボーイアドバンス用ソフト『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ シネマランドの大冒険!』及びそのリメイク作品であるニンテンドーDS用ソフト『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶシネマランド カチンコガチンコ大活劇!』のこと。発売時点での劇場版作品をテーマにしたアトラクション(大冒険の方は第12作『嵐を呼ぶ 夕陽のカスカベボーイズ』まで、大活劇の方は『ちょー嵐を呼ぶ 金矛の勇者』まで。どちらも最新作に関してはミニゲームになっている)を、しんちゃんを操作してクリアしていく横スクロールアクションゲーム。子供向けなので、難易度はそこまで高くない。なお、『シネマランド』は『映画(cinema)の国(land)』の名前から分かる通り、『映画村』をオマージュした名前だろうと思われる。余談だが、開発元は『インティ・クリエイツ』。『ロックマンゼロ』シリーズや『蒼き雷霆 ガンヴォルト』シリーズで有名な会社である

*3
体感面もPS5コントローラーの『ハプティックフィードバック』やVRコントローラーなど、進展はしてきている

*4
現状のVRは主に6自由度(six degrees of freedom)、略称6DoFが主流である。これは、上下・左右・前後に動ける(=3自由度)のに加えて、それらの軸に回転を加えられる……すなわちそれぞれの軸の直線上から離れられる状態を指す。言ってしまえば360゜全方向動ける状態。……ただこれには語弊があり、実際はプレイエリアの外に出ることが叶わない(=ゲームと現実の動きがリンクしきらない、もしくは移動に関して制限がある)ため、真に自由とは言い難いところがあったりする。それを解消するために生まれたのが、『歩行型VRデバイス』である。簡単に言ってしまえば、足元を180゜どちらにも歩けるルームランナーにした筐体。腰の部分に支えを付けることによって、現状では一番体感性が高いコントローラーになっている。……のだが、高い(初期型約100万円、家庭向けの廉価版が21万円、どちらも機器代金のみのため、ゲームをするのに別途料金が必要。一応ゲームパス形式ではあるが)

*5
仮に漢字で書くのなら『逆差也』。鞘は当て字。相場に置ける価格差を示す『サヤ』という言葉に『逆』を組み合わせたもので、売値より買値が高い状態のこと。要するに利益が出ない状態

*6
ハードがそのものに価値がある(例・安価なDVDプレーヤーとしても重宝されたPS2など。当時はDVDの普及前であったため、プレーヤーの価格は8万円台だったりしたが、当時のPS2は4万円ほど、DVDが見れる上にゲームができてこの値段なので、大いに売れてDVD普及にも貢献した、とされる)場合でも、単純にハードだけ売っていては利益にならないというのはよくあること。付随する専用品の方が重要、というのは結構な商品に共通する売り方でもある

*7
世界で人気のゲーム『原神』だが、Android版の推奨スペックは『Snapdragon845もしくはKirin810・それより性能が上のCPU』『4GB以上のRAM』『AndroidOS 8.1以上』となっている。2018年発売の『Sony Xperia XZ3』が大体推奨スペックくらいだが、『原神』をやるには若干役不足である(幾つかカクつく)。オープンワールドかつ3Dだと必要な処理能力がはね上がるため、排熱機構を巨大化できない(=排熱に制限がある)スマホでは、どうしても限界があるわけである。そもそもAndroidは機種間の差が大きい、というのもあるが。スマホでゲームしたいなら素直にiPhoneにしておけ、はそこら辺に理由があったりする(画一化しているためスペック差がなく、対応も一種だけでよいので簡単)

*8
『空の境界』の主人公・両儀式の台詞『未来ってのはあやふやだから無敵なんだ。けどさ。それにカタチがあったら、壊れちまうのは当然だろう』から。そんな理論は『生きているのなら、神様だって殺してみせる』と言える貴方くらいにしか通じない理論だと思います。なお、不思議パワーが理論があやふやな方がいい、というのは本当の話。魔法のような万能性を謳うものは、変に体系化すると、できることに制限ができてしまったりするので。まぁ、そこら辺かっちりしながらなんでもできる、みたいなのも中にはいるわけなのだが

*9
『マーベル・ユニバース』より、デッドプールとシュマゴラス。デッドプールは自身が主役であり、シュマゴラスの方は『ドクター・ストレンジ』のヴィランである。……なお、シュマゴラスもといシュマちゃんの方は、()()ドクター・ストレンジの敵対者の一人であることからわかるように、普通にヤバめの存在なのだが。……向こう(アメリカ)では影が薄い。日本では萌えキャラ扱いされるほどに人気だというのに、凄まじい差である。なお、シュマちゃんの見た目は某いあいあしそうな邪神達に近いタコ型。……日本人は未来に生きてるな(白目)

*10
前者は『水上走り』の理論。粘性の高い水ですら時速100km以上いるというのだから、空中を走るにはどれだけの速度が必要なのやら。後者は『るろうに剣心~明治剣客浪漫譚~』より、雪代縁の技の一つ『疾空刀勢(シックウトウセイ)』。自身の能力である狂経脈(きょうけいみゃく)によって研ぎ澄まされた感覚を使い、跳躍と落下の力が吊り合ったタイミングで自身の得物と筋肉によって宙を跳ねる。……なに言ってんだお前感溢れる技

*11
『遊戯王OCG』のカード、『カタパルト・タートル』によるモンスターの射出を模したもの

*12
『とあるシリーズ』より『一方通行(アクセラレータ)』の台詞と、『仮面ライダードライブ』より主人公・泊進ノ介の決め台詞から


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