なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「にしても……いや、すること多いねこれは」
「そうなのだ。これが一人で扱えるんだからモモはすごいのだ」
それは確かに、とゴジハム君の言葉に頷く私。
現在デンライナー車内は逆でごった返しており、現在は彼と一緒に車内販売に回っている真っ最中である。
さきほどデンライナーを一人で動かすには色々と無茶がいる、と言ったが……それとは別に車内でやるべきこともあった、というわけだ。
参考元はバレンタインに何度か触れたことがある高級寝台特急のそれ。
……とはいえ元がデンライナー……新幹線であるため、お客様個人個人に部屋がある、みたいなノリではないのだが。
基本的にはなりきり郷の上空を走り、一時の空の旅を提供する……みたいな方向性である。
「うわー、これが空から眺めるなりきり郷の景色かー……」
「私達は空とか飛べないし、こういう景色を眺められるのはいいことだよねー」
……とまぁ、客の一部が話していた通り、普段飛行系の技能を持ってない人が『空から見る地上の風景』を楽しむのが基本、みたいな感じというか。
それとは別に、デンライナーそのものに乗れる、という部分に惹かれてやって来ている人も少なくはなさそうだ。
「いやー、まさか生きてる内にこれに乗れるとはなぁ……」
「モチーフパターンはあれど、一応本物に乗る機会なんて普通は来ないもんだけどね」
「この分だとドライブの車とかもそのうち乗れるようになったり……?」
「夢はいつまでも大きく多く、ってやつだな」
「……こういう時デンライナーは強いよね、大量に乗れるし」
「基本は新幹線だから、車両を増やせば賄える人数も増えるのだ。その分運転が大変になるから、余計のことモモ一人にやらせるのは無理になるのだ」
「重大な人身事故に繋がる予感しかしねぇ」
そもそもが大人数や大荷物を運ぶことを想定して作り出されたのが電車である。
その流れを組むデンライナーもまた、たくさんのお客を楽しませるのはお手のもの、ってことだろうか?
……みたいなことをしみじみと感じつつ車内販売を続けている私達。
売っているものに特に捻りはないが、その売れ行きは割合に好調である。
……あっ、一応祭コイン対象です、はい。
「企画・監修よろず屋で製作は料理人系の面々を取っ捕まえて協力させて……って感じの駅弁が特に人気だね。まぁ人気過ぎて、明日手伝いに行く調理場が今から怖いんだけど」
「へけっ、多分今回の祭で一番忙しいのは調理担当として集められた人達なのだ。今回は一つの出し物として調理場所が集約されてるけど、そこの人達は半ばブラック企業勤務みたいなものだと聞いたのだ」
「ひえっ」
いやまぁ、ブラックって言っても別に強制とかは一切してないらしいんだけどね?
ただほら、料理が生き甲斐……みたいな人間が多数集まった結果、外から見ると労基が仕事してないように見える事態に陥っている、というか。
……今回、個別に出し物として料理屋系統のモノをやっているところ以外では、原則その出し物の中で料理が必要となる場合に頼む場所、というのが一つに絞られている。
それが明日私が手伝いに行く場所である『臨時中央調理センター』なのだが、これがまぁ色々ととんでもない場所であるとのこと。
どうとんでもないのかって?
まず第一に、給食センターのように大量生産を目的としたものである、というのがとんでもない。
例えばこのデンライナーの場合、既製品のお菓子以外のその場オリジナルの食品──具体例としてこの駅弁を説明すると。
新幹線型の弁当箱の中には、よろず屋メンバーをイメージした料理が詰め込まれている。
銀ちゃんは甘いものが好きなので、それにちなんでデザート等が彼の考案したモノになっているわけだ。
具体的にはいちご牛乳をプリンにしたものなのだが、考案したのは銀ちゃんだが実際に形にした(≒どういう材料を使うのか)のは確か料理人側だったはず。
一応、あんまり高いもんにしても買い辛くなるだろうから、ってんで食品のクラスに関してはそこまで上げなくてもいい、みたいな銀ちゃんの主張は通っているはずだけど……うん、出来上がりを食べたら本当に?……言いたくなったのもまた事実である。
いやまぁ、仕方ないんだけどね?
さっきも言った通り、今回仕出し*1を担当したのは調理センターの人達。
……わかりやすく言うと、料理に命を賭けているような人達ばかりなのである。
そりゃまぁ、制限があろうと寧ろ燃え上がるばかり、こっちの期待以上のモノを作り上げて来るのがデフォというか。
「ボクも詳しくは知らないけど、風の噂によればエミヤさんとか小松君とかもメンバーに入ってるらしいのだ。流石に毎日料理を作るメンバーが同じ、ってわけじゃないらしいけど……日によって味が変わるなんてヘマは犯してないみたいなのだ」
「要するにその二人と比べても遜色ない人が居るとか、もしくはみんなが同じ味を出せるような工夫をしてるってことだよね?」
まぁ、中には『特定の人間が作っている』こと自体を売りにしている料理もあるので、そういうのは該当者がいる時しか出てこないモノになっているんだろうけど。
……ってか、私が手伝いに行くのもある意味そのせいだし?
「キーアのお手製弁当が食べたい、みたいな提案があったのだ?」
「そうだね、それもマシュとかだけじゃなくて結構なオファーがあったとか。……日に百食限定で争奪戦になりそう、とか言ったらなんとかしなさいってゆかりんに泣きつかれたっけ」
流石にそれだと色々不味い、だったっけ?
……結局調理の時は分身解禁してもいいから、みたいな話に落ち着いたんだったか。
なりきり郷ご自慢の食品保持システムで、予め作り置きしておいた弁当を複数保管しておけばいいんじゃないか、みたいな話もあったんだけど、それだと個数制限する意味がないのでダメ、ってことになったのであった。
……え?個数制限がないのはいいことじゃないのか、って?
逆だよ逆、個数制限無しにするって言っても本当の意味で無数に買える、という風にはできないでしょって話。
なんか予想外に人気があるみたいだけど、それも今しか買えない、という限定感があるからこそ。
言い換えると、作りすぎてダブつく可能性がとても高いのである。
そりゃそうだ、別に私料理が大の得意、ってわけでもないからね。
ある程度はこなせるようになったけど、本来みんながこぞって食べたがるようなものではないのだ。
ゆえに、需要があるのは基本
裏を返せば珍しくないほどにいっぱいあれば手に取られることもない、ってわけである。
一応、作りすぎても無駄にはならないようにはなっている。
時間停止による保存は数ある保管方法の中でも最上位のものであり、事実上永遠にモノを腐らせることなく保存できるということになるので、余るほど作ってもそのうち捌けはするだろう。
「……ただまぁ、捌けるからと言って倉庫を占領し続けるのも、ねぇ?特段美味しいわけでもないんだから、消費先として選ばれる可能性は低い、ってことにもなるわけだし」
「いつ消費してもいいってことは、今消費しなくてもいいってことなのだ。そうなるといつまでも残り続けることになるのだ」
例え保存期間が無限になろうと、需要と供給の問題は完全に解決するわけではない、というか。
そんなわけなので、あくまで私が作る弁当はその日に作れるだけの量──具体的には一日千食程度、ということに決まったのである。
確かエミヤさんの弁当が
なお一番人気は小松君の作る弁当で、確か手伝いが入ることを踏まえた上でも破格の一日一種三千食、とかだったような?
……著名キャラが各々その量を作った上で、残さず消費され切ることが普通に予測できる祭期間中のなりきり郷の消費速度の恐ろしさも同時に思い知る感じだが……まぁ、祭だから多少はね、ってことで。
「ところで」
「ん、なにゴジハム君?」
「今の話、露骨に目を逸らした部分があったのだ。その辺はどう思っているのだ?」
「どうって……考えさせないでください、としか(白目)」
「……うん、ボクが悪かったから元気だして欲しいのだ」
なお、そこまで語ったあとで、ゴジハム君からとある指摘が飛んできたわけだが。
……目を逸らした部分というのは他でもない、私の料理なんて売れ残るでしょ……みたいな主張(※要約)の部分である。
確かに、余計なことを考えずに単に私の料理の腕前のみを考えると、あくまで私の弁当に需要があるのは物珍しさだけ、ということになる。
そして、物珍しさだけで牽引するには売り上げの幅はないだろう、とも。
……そう、この部分意図的に
そのとあること、というのが……。
「マシュ達を筆頭に、あればあるだけ買い占めそうなのがいるってことだよね……(遠い目)」
そう、個数制限がなくなるほどに大量に作れば必ず余る、というのは
言葉の上で個数の制限はないと言っても、その実それが人の手によるものである以上、どうしても物理的な限界というものが発生する。
なので、本来はお一人様一つ、みたいな感じで制限するわけだが……それを仮に一人辺りの個数制限なし、という形にしたらどうなるだろう?
答えは単純、一日限定百個と製造キャパシティの最大数である数千個、捌けるのが早いのは本来前者だが、こうなると後者の方が早くなくなってしまうのである。
そりゃそうだ、いつまでも保管できるのは何も生産者側だけではない。
買った側もいつまでも保管できるのだから、大量に買い占めて後でゆっくり消費する、というやり方でもなんの問題もないのである。
……一応、今回の弁当は祭コインでの売買を基本とするため、実質購入制限があるのだけれど。
「……実は追加購入というか、現金との交換も可能なんだよね、祭コイン」
「じゃないとミニゲームでしか獲得できない要素、ということになってしまうのだ。それは明らかに炎上ものなのだ」
はい、メダルコーナーでメダルを借りる、ようなものですね。
そんなわけなので、実際に購入制限を取っ払った場合、マシュやらBBちゃんやらユゥイやら、色んな人が暴走するのが目に見えてるのでその辺解禁できません、みたいな話も含まれているのでしたとさ。
……色んな意味で怖いんだが!?