なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
えーと、確か前回はなんで室内の温度が変なのか、って話をしてたんだっけ?
その理由としてグルメ界的なものが発生し、そこの食材が持ち込まれているので環境を整えることが困難になっている、みたいなことを言ってたような?
まぁ、あくまでもグルメ界
どう違うのかって?んじゃあまず一番わかりやすい点を一つ。
フロア内をORTが徘徊しています。
……もう一度言いますけどフロア内をORTが徘徊しています。
「……どうしてそんなことになるのかね?」
「なりきり郷に来てトリコ君が初めてまともに美食屋として戦った相手だから、かなぁ……」
今の言い種でなんとなく察したかもしれないが、一応ORTと言っても原種ではなく亜種──それも以前倒したハロウィン仕様のモノの方ではあるんだけどね?
ついでに言うと【兆し】から発生した野生動物的なモノなので、狂暴性だとか戦闘力だとかもあの時の個体と比べると遥かに弱かったりする。
最早水晶カニとかそんな名前で呼んだ方が良いレベルの差があるというか?
大きさも普通のタラバガニくらいのモノが大半だし。
「……それはもうミニチュアなどというレベルの話ではないのでは?」
「まぁ、そもそもあのハロウィンORT自体、ハロウィン特有のエネルギーの高まりゆえに生まれたものだから。そりゃ、あくまで『侵食設定』のついでに生まれたような状態ならそんなもんよ」
まぁ小松君の見立てによれば、成長しきれば今のカニみたいな状態から、以前のハロウィンORT級の大きさにまで成長することもあるらしいけど。
……必要な時間とエネルギーの問題から、まずあり得ない話でもあるみたいだけどね?
「と言うと?」
「まずエネルギーについてだけど、純粋に以前のハロウィンORTが持ってたくらいの規模が必要で、それを今の彼等が蓄えるために必要な時間は
「大体百年か。……そこまで育つ前に間引きされていそうだな」
「最終型がわかってるから余計に、ね」
うん、放置しすぎるとヤベーことになるとわかっていて、それをそのままにしておくタイプの人でもないだろうトリコ君……というか?
いやまぁ、強い相手と戦うのもそれなりに好きっぽい感じだし、ある程度成長するまで待ってるなんてこともあるかもしれないけども。
「そもそも成長するって時点で本来のORTとは別物なわけじゃん?だったらまぁ、ある程度は成り行きに任せてみようかなーと」
「……まぁ、そうだな。本来のORTは極限の単独種……既に完成された存在だ。ゆえにそれが成長する、という時点で別物であると判断するのもそうおかしな話ではあるまい」
なので、あくまでORTモドキって形になるんじゃないかなー、と。
……そもそもカニサイズのORT達は集団でカサカサしてるから、
だから、あくまでもトリコ君のイメージを【兆し】が取り込んで生まれた新種──みたいなものなのだろうと解釈している私である。
「で、わかりやすいのが『群れてるORT』なわけだけど、それ以外にも色々いるんだよねあそこ」
「ほう、例えば?」
「ガーリックボーンドラゴン」
「……なんだって?」
「ガーリックボーンドラゴンだよ、いわゆるスケルトン系の竜の一種というか」
ニンニク味のする骨の竜……という、よくよく考えるとなんだか首を捻りたくなるタイプの生き物*1だが、これが料理にとても有効なのだとか。
「豚骨ならぬ竜骨だけど、自然とニンニクの風味が付くからラーメンとかに使うといい感じになるらしいよ?」
「ふむ……それは少し気になるな」
「ついでに言うと基本的に大人しい質の生き物だから、ちょっと羽の先の骨だけ貰う……くらいのことなら戦闘にもならないんだってさ」
「ほう?」
ただし、まがりなりにもドラゴンなので真面目に戦うとなるとかなりの捕獲レベルになる……とも言ってたけど。
ちょっと小骨を貰うくらいなら一桁台にも満たないのに、本気で戦って勝とうってなると五桁級の難度に跳ね上がるとかなんとか。*2
……うん、腐っても竜種ってことかな?まぁこのドラゴンは骨だけだから最早腐るとかの状態も通りすぎちゃってるんだけども。
「……それもまた彼のイメージの結果、ということかね?」
「彼単独ってよりはトリコ君の『侵食設定』に他の人の想念が補強された結果──って感じかな。トリコの世界にもドラゴンって名前の付く生き物は存在しているけど、他所の世界のドラゴンとはちょっと雰囲気が違うし?」
あれだ、トリコ世界のドラゴンは現実世界の生き物から派生した存在である──言い方を変えると地に足の着いた生物であるという雰囲気が強いというか。
他所の作品におけるドラゴンは原則幻想の中に生きる物だが、彼等の世界では普通に生きて動いている生命の一種でしかない──とも。
八王の中には竜王の名前を冠する生き物が存在するが、だからといって別に八王内で最強と言うわけでもない……という点からもその辺の『特別扱いされていない』感じは見えてくると思う。
それに対してこのガーリックボーンドラゴン、名前の簡素さとは正反対に本気になった際の捕獲レベルが高すぎる。
これはトリコ君の『侵食設定』だけでは成立しなかったモノが、他の人々のイメージによって補強された結果生まれたものである……と考える方が自然だろう。
要するに他所の世界における常識──
……ついでに、積極的には敵対してこないのも『真の強者は弱いものイジメをしない』みたいなイメージを取り込んだ結果なのかも?
なんならスケルトンドラゴンを代表とするアンデッド系のドラゴンが、大抵の作品においてかなり強力な存在として描かれている……みたいなのも理由の一つだったり?
「まぁともかく。最終的な出力がトリコナイズされてるだけで、基本的な骨子は普通のドラゴンだ、ってこと。……
「……それは納得せざるを得ないな。あの作品における竜種というのは、私達のイメージの
「納得頂けたようでなにより」
とまぁ、ガリボ君の話はそれくらいにしておくとして。
いい加減話を戻して、調理場の気温が無茶苦茶になっている理由について触れていくとしよう。
「まずはアイシングバードだな。そこに在るだけで周囲の気温を零下にまで下げる、とされる鳥類だが……」
「それは捌いたあとの肉塊でも変わらない……というか寧ろ酷くなってるレベルらしいね。一説によれば生きている間は本人が温度調整してるけど、死んで肉塊になってからはそういう調整も効かなくなるから際限なく温度を下げていってるらしい……とか?」
「……彼の世界の生き物の性質を持たされると、どんな生き物でもあっという間に危険な存在になるな……」
まず温度を下げているのが『アイシングバードのモモ肉』。
常に冷気を纏っているという、なんだかポケモンのフリーザーを想起しそうになるこのモンスターは、例え死んで亡骸になろうともその能力が消えることはない……という中々に不思議な生き物である。
トリコ君の影響で発生した『なりきり郷グルメ界』固有の生物であり、その生態もまだまだ不明な点が多いが……。
体のあらゆる部位が冷気を纏い続けていることもあり、爪などの生死に関係のない部位を分けて貰って天然の冷凍庫として扱えないか、みたいな研究が始まっている……なんて話も耳にしていたり?
仮にこの研究に成功すればエネルギーを必要としない冷却機関の完成となり、マジで色んな問題が解決する可能性がとても高いため今もっとも熱い分野らしい──とこの間琥珀さんから聞いたなー。
……まぁ、現実はそんな簡単に行くほど甘くないらしいけど。
とはいえその辺は長くなるうえ今回の話には関係ないので割愛して、次いで語るのは周囲を暑くしている原因の方。
「こちらはヒートミント、だったか?」
「燃え盛るミントとかいう、仮に外で繁殖したら明らかにヤバい代物だね」
こっちは植物で、名前の通り『燃えているミント』というもの。
……名前通りというのがとにかく厄介で、なんとこいつ普通のミントと同じ繁殖力を持つのである。
つまり、ほっとくとあっという間に周囲を炎の海……否や炎の草原にしてしまう、ということ。
まぁ、グルメ界の中ではいつでも食べられる食料扱いされているため、そこまで問題にはなってないみたいだけど。
件のORTカニ達がもくもく食ってる姿とかがグルメ界の各地でよく見られるらしいし?
「ただまぁ、グルメ界の中なら大丈夫ってだけで、こんなもんが外で繁殖したら普通に世界滅亡案件だけどね」
「ゆえに捕獲レベルは高くないが、代わりに特定危険生物扱いされているのだったか」
「許可なくグルメ界以外の階層に持ち出すのも厳禁だね」
一応、なりきり郷内ならそもそもの生態が危険物扱いされるせいか、地面に種が落ちても繁殖しないのでそこまで問題視する必要もないらしいけど……。
とまぁそんな危険植物であるものの、食料として見ると中々に優秀なモノに区分されるらしい。
「単純に
「そのジューシーさがそもそもの繁殖力の理由、とも言えるのは皮肉にも思えるがね」
あれだ、地中のエネルギーを効率よく集めているため、常に燃えていられるとかなんとか。
……その辺も外に持ち出せない理由であることは置いといて、その性質ゆえに植物であるにも関わらずお肉のようなジューシーさを持つのだと言う。
仮にもミントって名前なのに爽やかじゃないのはどうなの……って気もするがその分ビーガン向けにもおすすめできるレベルで栄養も豊富なので、こちらもまた研究が盛んであるとかなんとか。
ただ、こっちも採取してからしばらく燃えていること、及びその火が尽きると味が大幅に落ちることなどから、アイシングバードと共に特殊調理食材扱いとなっているのだそう。
「で、これを効率よく料理するのにおすすめなのが、二つの食材を一緒の料理にするってことになるんだよね」
「まるでパズルかなにかのようだな……」
誰でも思い付きそうなものではあるが、と話を締めるエミヤんに然り然りと頷き返す私なのでありました。