なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「ドウシテ……ドウシテ……」
「あーうん、元気だしてキーアちゃん。それにほら、今のところ私達特に変な影響はないみたいだし?」
「それでもこれはないやろ……」
こう、色んな意味で泣きたくなること請け合いというか……。
私は平気だよ、と笑うアスナさんの手元、そこに鎮座するライフルに視線を向ける私。
彼女が本編時空でGGOに関わることはなかったが、派生作品においては他の仲間と一緒にログインしているパターンが存在する。
それを踏まえ、今回彼女が用意していたのは普通のアサルトライフルだったんだけど……うん、なんか銃剣くっついた仕様になってるんですよねこれが。
その事に思わず表情が死につつも、なんとか奮起して説明文に目を通す私。
結果、読み取れたのは次のような文章なのであった。
YASUTSUNA
アサルトライフルの一種。デフォルトで銃剣が装備されているのが一番の特徴。
通常時は光刃部分は展開されておらず、通常のアサルトライフルのように弾をばら蒔くことができる。
エネルギーを柄の部分に充填することで光刃が発生、それにより近接戦闘を行うことが可能。
また、取り外して光刃単体で扱うことも可能。その場合充填されたエネルギーの総量分光刃を展開することができる。
設計上では更なる変形機構も搭載されているとかなんとか……。
「更なる変形機構ってなんだよ!!」
「き、キーアちゃん!?」
止めろよトンチキを随所に仕込むんじゃねぇよ私を殺す気かぁ?!
……思わず取り乱すのも仕方のない話、だってこれ明らかにアスナさん要素ってより頼光さん要素、それもどっちかっていうと丑御前によってる方の要素が露出しまくってるやつじゃん!
多分変形してレーザーバズーカ的なやつになってフルバーストするよこれ!多分技名は『ゴオーハンテン・アクギャクムドー』とかだよこれ!*1
アリスちゃんの光の剣じゃないんだからさぁ、というツッコミを呑み込んだ私を褒めて欲しいくらいである。
ともかく、アスナさんの持つライフルが大概危険物であることを踏まえた上で、今度は首を捻っているキリトちゃんの持つ双銃にフォーカスする私。
そこから読み取れた説明文はこちらである。
EL=DA type.H
イーエルディーエー、タイプエイチ。
正式名称『エリュシデータ=ダークリパルサー』。
彼の剣士を象徴する二振りの剣のデータから作り出された双銃。
黒と青の軌跡は常に彼を導き、高めていく。
……なお、『type.H』はハロウィン仕様の意味。
本人が知ったら色んな意味でがっくりすること請け合いである
「途中までまともな感じだったじゃないですかやだー!!」
「と、唐突になんだよ……」
こっちはこっちで頭抱える代物じゃないですかやだー!!
……いやまぁね、ここのキリト君はちゃんだからそこまでダメージ行かないかもだけどね?
でもこう、青春でありトラウマでもある感じのSAO時代のことを茶化すかのような武器は、普通にあれこれ言われてもおかしかないというか……。
幸いにして、ハセヲの持ってる双銃に似た形になっているので、精々色からあの双剣を思い出すこともあるかなぁ、ってくらいの話にはなってるけどさぁ……。
とまぁ、初っぱなからこっちのSAN値を直葬してくる辺り今回のハロウィン質悪いな?……と思わないでもない私なのでありました。
「よくわからないけど……大丈夫なのか、色々と」
「ああうん、そっちが体調に問題ないならもういいよ……ヘイロー浮かんでる辺りそこから別のハロウィン武器に触れても問題ないと思うし」
「え?……あ、ホントだいつの間に」
なお、二人に浮かんだヘイローはキリトちゃんがクロスした双剣のようなもの、それからアスナさんの方は血盟騎士団モチーフのものだったことをここに記しておきます。
「はい、ともあれ大会にエントリーしに来たんだけど……いや盛況だな大分」
「大体千人くらいかな?……うん、こういう大会に参加する人数としては結構多いかも?」
オンラインゲームだと一度に参加できる人数に限度があったりして、三桁越えることは意外と稀だからなぁ……とか思わず溢してしまう私である。
ともあれ、周囲には今回の大会に参加する面々が勢揃い。
この中でランキング入賞やら副賞アリの順位の(可能な限りの)独占とかを考えなければならないので、どんな人が参加しているのかを怪しまれない程度に確認しておく私達。
その結果、一般参加者も多数存在するけど、同時に『逆憑依』っぽい面子が紛れていることも確認できたのであった。
「特にあの、ふと見た時に場違い感しかないメイドさん。……あれ、見間違いじゃないならロベルタさんだよね?」
「ええと、確かブラックラグーンのキャラだっけ?」
「メイドって言葉に『冥土』の意味を幻視させる理由の一人というかなんというか……」
「あれが仮に『逆憑依』とかその辺だったら、正直大分厳しいんじゃない?」
「うーん、仮にそうだとすると困るんだけど、実際にそうなのかどうか見ただけだと判別できないのがねぇ……」
その中の一人、場違いな姿をしているメイドさんが目下私達の警戒対象になっているのであった。
というのも、だ。
ともすれば地味にすら見える彼女の容姿、どうにも見覚えがある気がしているのである。
具体的にはキリトちゃんの述べた通り、ロベルタさんのそれにとっても似ているというか。
……微妙に断言できないのは、どっかでロベルタさんを見たことがあることと、『逆憑依』だと断定できるような行動を彼女がしていないため。
前者は彼女がロベルタの『逆憑依』である可能性を高めているが、後者は反対にその確率を下げているが同時に高めてもいるからだ。
何故かというと、表面上ドジなメイドであった彼女は、その実鉄の女であったがため。
……要するに、本来『逆憑依』か否かを判別するための特徴である『他とは違う人間味のある動き』をしていない、というのが否定材料になりきらないのである。
「普通なら機械めいた動きをしてれば『逆憑依』じゃない、って言えるけど……」
「なるほど、自己を律し動きを最小限に留めている人は、端から見ると機械めいて見えてしまうってことね」
「そういうことー」
うん、無駄な行動をしない姿は、ともすれば機械のように見えてしまうこともある。
それが『逆憑依』か否かを見定める際に寧ろ邪魔をしてしまう、というわけだ。
特に今の彼女は深く集中している様子。
……これでは、余計のこと人間らしい機微というものを把握することはできないだろう。
話しかけるとかしてみるのが一番なのだろうが、現状顔見知りでもなんでもないのが問題。
下手に話をして警戒させてしまった場合、ここから先の試合に悪影響をもたらす可能性もあるのだ。
「私達は別目的で来てるけど、多分他の人は普通に優勝を目的に参加してるだろうからね。そうなると変な競争相手は……」
「早々に脱落させるに限る、ってこと?」
「そういうことー。……まぁ、仮に『逆憑依』だったらこっちの仕事に協力して貰えないかなー、くらいの話だから別に無理して話に行く必要もないんだけどね」
「協力できるならそれが一番だけど、それが無理なら普通に戦えばいいってわけか……」
「こっちは端からチームで動きだものね、一人二人仲間が増えなかったからといってそこまで問題にはならないわ」<ソウダゼェ!
ビィ君もそうだそうだと言っています()
……まぁ、唯一の懸念点として、もし仮に彼女が『逆憑依』であった場合、どう足掻いても彼女が優勝のための壁になる……ってことがあるけど。
特殊な戦闘を行わない作品において、彼女の持つ制圧力というのはかなり高い。
作中主人公が彼女を『ターミネーター』に例えたことからわかるように、普通に単体戦闘力が高すぎるのである。
一応、作品内での扱いを知っている人は彼女に多少の警戒を見せているけど……。
まさか『逆憑依』だった場合その程度の警戒じゃまったく足りない、なんてことまで考えは及んではないだろう。
結果、試合開始と同時に周囲が焦土と化す可能性もあると覚悟しておかねばなるまい。
その辺の認識を周囲と共有したところで、運営側からアナウンスが聞こえてきたのであった。
『それではこれよりGGOコラボ大会の開催を案内致します。試合形式はバトル・ロワイアル。最後に残った一人が勝ちですが、二位・三位や特定順位の方にも賞品を用意しておりますので最後まで諦めずに戦って頂ければ幸いです』
その後、詳しいルール説明が再度アナウンスされていく。
中でも重要なのは、最終的な勝者を決めるのに決裂する必要はあれど、途中でチームを組むことが禁じられていないという部分。
ここが禁止されていると順位の独占……特に上位以外の狙い撃ちが難しくなるので、こちらとしては非常にありがたい限りである。
「ただまぁ、フレンドリーファイアにペナルティがあるのがね……」
「それも単純に敗退するとかじゃなくて、失格扱いになるのがな……」
ただ、意図して順位を決めようとするのに対しては運営も対策を考えているようで。
仲間を組んだ場合、チームを解散してから一定時間が経過するまで味方だった相手への攻撃が厳禁されているのである。
仮にそれを破った場合、そのプレイヤーは即座に失格となり、順位への反映もされなくなる……と。
この一定時間というのが厄介で、このレベルの無差別戦だと細かい調整をかなり難しくしてしまうのである。
一応、残り人数が減った場合はその辺の制限も解除されるみたいだけど……。
「上位以外の特定順位を意図して獲得する、ってのは難しいかもねぇ」
「その辺なんとかしないと困るんだけどね……」
まぁ、なるようにしかならんけど。
と呟いて、本格的な試合開始の合図を待つ私達なのでありました。