なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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乱戦×断然×断線して愕然

 はてさて、そうこう言っているうちに試合開始のお時間である。

 とは言っても、いきなりこの場で射ち合いが始まるわけではない。

 そんなことになったら、仲間を組むとかの前に普通にやられてしまう。

 

 それを避けるため、私達はまずゲートへ向かって走ることになる。

 マップ内ワープ用のゲートを通り、決戦のバトルフィールドへと移動するわけだ。

 

 その際、転移先はフィールド内のランダム位置となる。

 ……場合によっては空に投げ出されることもあるって話だから、ある種の対戦型シューティングゲームとかも参考にされてるんだろうなー、という感じがひしひしとするというか。*1

 

 ともあれ、場所を移し周囲に他のプレイヤーもいない状態から射ち合いが始まるわけだが、これだと徒党を組むにしても合流するの難しくない?……ってなると思う。

 転移位置がランダムなので、前以て協力することを決めていてもそこから合流するまでにチームが瓦解していた、なんてパターンも容易に想像できてしまうし。

 

 それを解決するための私なわけだが……とりあえず、その辺をどうこういう前にさっさとバトルフィールドへと飛び込むことにしよう。

 

 

「ってわけで、アーイキャーンフラーイ!!」

「出現位置が空になるかも、ってだけで絶対に空に投げ出されるわけでもないのにこの台詞である」

「わわわわわわたし着地手段とかかかかかないから空中に放り出されるのは流石にごめんなのだけれどどどどど!?」

「大丈夫、それはみんな同じだよ」

「何も大丈夫じゃないのだわー!?」

 

 

 ……はい、みんな無事に空中に放り出されましたね()

 いやまぁ、なんとなくそんな気がしたんだよね。

 このまま放っておけば勝手に墜落死してくれる、とか運営側も思ってそうだなーっていうか。

 ……あ、この言い方だと運営が私達に殊更死んで欲しいって言ってるように聞こえるな?ごめんごめん、流石にそれは言いすぎだった。

 正確には『みんな死ぬがよい』が基本方針である()

 

 というのも、だ。

 このゲーム、『tri-qualia』はゲームシステム側が難易度調整なども受け持っているタイプの作品になるわけだが、それを判断しているゲームシステムの根幹というのは高性能AIになるわけだ。

 この高性能AI、高性能であるがゆえに遊びがない。

 分析した情報を元に適量になるように難易度をきっちり調整してくるのである。

 

 例えば、今回私達は徒党を組んでこの大会に参加することになったわけだが……こうなると、AI側は私達を纏めた状態で戦力的な数値を計算する方向で調整を進め始める。

 するとどうなるかと言うと、シノちゃんの評価がチーム全体の評価に繋がってしまうのだ。

 

 

「え?私?」

「そう、シノちゃん。正確にはそこに混ざっているシノンの狙撃能力ってことになるかな。ほら、シノンってスナイパーとしての腕前、大概おかしい方でしょ?」

「あーうん、まず目標を外す方が珍しいレベルの狙撃主だな」

 

 

 具体的には、この落下中の状態かつ地上のほとんどが豆粒に見えるような状態から、下手するとかなりの相手を狙い撃って脱落させられるレベルというか。

 本人も「……なる、ほど?言われてみれば、ここから撃って倒すっていうのは無理筋じゃない、わね?」と困惑しながらも納得しているし。

 

 ……要するに、射ち合いにおいてシノちゃんという存在はかなりの要注意人物に該当するわけである。

 芋砂だけに留まらず、凸砂としても普通に強いわけだし。*2

 

 その結果、こうして空に投げ出すのが難易度調整としてベストだ、とAIに判断された、と。

 ……実際、イシュタルモードのキリトちゃんならともかく、他の面々で自由に空を飛べるプレイヤーはそう多くはない。

 特にこの大会においてはパラシュートの貸出みたいなのもないので、空に放り出せば自動的に末路が決まるのである。

 

 無論、シノちゃんはシノンなのでここから地上の面々を狙い撃つことができるが……所詮は一人。

 効率よく相手を撃ち抜いて行ったとしても、数千人の内数パーセント分のキル数くらいにしかならないだろう。

 弾頭を交換して広域破壊に切り換えればもう少し削れるかもだが、それでも二桁パーセントには届かないだろう。

 

 上位争いには食い込めず、けれど周囲に与えるプレッシャーとしてはこれ以上ない成果を叩き出す存在……。

 AIにとっての今のシノちゃんは、そんな感じの存在として定義されているだろう、ってわけだ。

 

 

「……なるほど、早々に脱落することが決まっているから、墜落死の瞬間までの大暴れも特に問題にならない、ってことね?」

「私達以外ほぼほぼ空に投げ出されているのがいない辺り、AIとしての判断はそんな感じだろうね」

 

 

 勘違いしないで欲しいのは、別にAI側は私達に恨みなどないということ。

 あくまで戦力評価した結果、こうでもしないと公平性に欠けると判断しただけなのである。

 

 ……とはいえ、それに素直に従ってやるのも癪だと思うのも確かな話。

 

 

「そうは言うけどどうするんだよ?このままじゃあと数十秒もしないうちに地面に激突するぜ?」

「……あっ、変身!キーア貴方変身できたわよね、それでみんなを乗せて空を飛べる生き物に変身すれば……!」

「言っとくけどここゲームの中ですからね?そういうのは許可されてないし、そもそも不可能だよ」

 

 

 なのでなんとかしてやろう、って話になるんだけど。

 おあいにくさま、確かにリアルでの私は変身とかできるけど、流石にそのレベルの変化はゲーム内では無理です。

 というか『tri-qualia』内で私がやってる無法行為は基本的にグリッチの類い。

 いわば仕様の悪用なので端から想定されてない挙動は無理があるのである。

 

 特に変身に関しては、それを使えるのがモンスターだけなので仮に引っ張ってくるにしても私がプレイヤーじゃなくモンスター判定になる可能性もあるというか。

 ……いやまぁ、仮にそうなったとしてもどうにかしようと思えばできるとは思うけど、それもまたこのゲーム内の仕様を悪用したグリッチってことになるわけで。

 そうなると、最悪の場合()()()()()()()()可能性もあるというか。

 

 

「……どういうこと?」

「私の【星の欠片】としての性質が悪さをするってこと。……要するに、『tri-qualia』っていうゲームそのものに対しての干渉に近くなるってわけ」

「はい?」

 

 

 グリッチというのは、仕様の穴をついてバグなどを利用すること。

 その性質上、やってることは明らかに悪いことなんだけど、それを咎める理由というか正統性に欠けてしまうのである。

 何故かって?そりゃ勿論、ルールの穴をついているわけだから、現行のルールではそれに該当した判断ができないからですがなにか?

 

 ……露悪的な言い方をしたが、実質それが正解。

 ルールで縛れない部分を悪用しているため、ルールでは罰せないのだ。

 まぁ、あくまでゲーム的な話であって、現実で法の隙間なんてついた日にはあらゆる角度から責め立てられること間違いなしだけど。

 

 それはともかく。

 グリッチがルールの穴をつくものである以上、それをルールの側が正当な理由で咎めるというのは難しい。

 新しくルールを作るとか、それを使わないようにお願いするとか、そういう別方向のやり方で咎めるしかないわけだ。

 

 ……そう、()()()()()()()()()とか、だ。

 

 

「……あっ!?」

「気付いたみたいだね。その通り、仮にここで私が変身なんてすると、変身するなとは言えないから新しいルールを作る必要が出ててくる。そこではデメリットも必要となるでしょう。……おや、私はなんとかなるとは言え、もしかしたら変身したあと通常のプレイヤーに戻れないかも、なんて懸念がありますねぇ?」

「……変身システムが導入される変わりにプレイヤーのロストも想定されるようになる、と?」

「そういうことー」

 

 

 身も心もモンスターと成り果て、人間達から訣別する……。

 みたいなルートが新しく出来上がるかも、みたいな?

 

 まぁ、実際にそうなるかは微妙だが、可能性として頭の片隅においておくべき事象であることも確かである。

 その辺を考慮すると、私がみんなを無事に着地させる……みたいなのは宜しくない、ってことになるというか?

 

 

「じゃあどうするんだよ?まだ地面までは遠いけど、この分だとそう遠くないうちに潰れるぞ俺達」

「慌てない慌てない。そもそも私達、なんのためにこの大会に参加したんだっけ?」

「そんなの、商品の武器が他の人の手に渡らない……よう、に?」

 

 

 じゃあどうするの、って話だけど。

 考え方を変えればいい、地面に到着してから勝利を目指すのではなく、()()()()()()()()()()()()のだと。

 

 そう言いながら私は自身の得物を──()()()()()()()()()()二丁拳銃を取り出す。

 そしてそのまま組み換えて、狙撃銃の形に変化させるのであった。

 

 

「一人だけなら無理でしょう。なら二人なら?」

「……なるほど、ここからは競争ってわけね」

「そういうことー!」

 

 

 ニヤリ、と笑うシノちゃんにこちらも笑い返しながら、眼下に広がるフィールド上にぽつぽつ見える米粒のようなプレイヤー達にターゲットを絞る私なのでありました。

 

 ……そういえば、地味に巻き込まれたメイドさんがさっきからめっちゃ悲鳴をあげてるけど大丈夫かな、これ?

 

 

*1
ap○xとかF○RTNITEとかオーバー○ォッチとか

*2
それぞれ『芋虫スナイパー』『突撃スナイパー』の略称(後者に関しては諸説あり)。芋虫のように地面に匍匐状態のまま固まっているプレイヤーを指す言葉。この言葉が生まれた『BF1942』ではチーム戦においてチーム全体の移動を必要とするのだが、この状態のプレイヤーは一切移動しない。あくまで個人のスコアを高めることを目的とし、チームに貢献しようという意思がまったく感じられない為に味方から迷惑がられた結果『芋虫』と侮辱されることとなった。そこから転じて同じ様に匍匐状態でじっと相手を待つスナイパーのことを『芋砂』と呼ぶようになった。元の意味的には同じ様に匍匐状態で敵を待っているのなら(得物が狙撃銃以外でも)芋虫、すなわち芋であることに変わりはない。スナイパーは基本的に匍匐状態になることもあって必然『芋虫』呼ばわりされる土壌があった、ということである。そこから転じて、一ヶ所に留まらないどころか狙撃銃持ちなのに一ヶ所に留まらず縦横無尽に動き回って相手に突撃・そのまま討ち取るスナイパーを『凸砂』と呼ぶようにもなった。こっちはこっちで『竹槍』呼ばわりされることもある

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