なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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はてさて貰った武器の確認は?

「なんとか上手いこと狙った順位になれたねー」

「その代わりすっごく痛い思いをする羽目になったけどね……」

「まぁ、クリスの怒りを治めるためにも必要だったから……」

 

 

 ある程度こっちも痛い目を見てれば怒る気も失せるだろう、みたいな?

 ……ってなわけで、痛む片腹を押さえながら表彰状台に立っている私達である。

 

 まぁうん、本来ならあのまんま一方的な暴力でなぶられる恐怖を相手に教え込むだけで勝てたんだけどね?

 それだと早々に退場したクリスの気が治まるまい、ってことで敢えて地上からの攻撃が当たる位置まで降りたんですよね。

 

 そうなりゃ地上の人達も死に物狂いで攻撃してくるってもんで、みんな結構なダメージを受けたわけなんですよ。

 ……単に攻撃を受けたってだけだとまだ足りないだろうから、ある程度ペインアブソーバーの設定は雑にしておいて、ね。

 

 その結果、死ぬほどではないけど鈍い痛みの続く片腹を押さえながら、残りの戦闘を終えることになったわけなのです。

 ……うん、なんの嫌がらせだこれは。

 まぁ、自分達から率先して受けに行った節の方が強いので、誰かに文句とかも言えんのだけど。

 

 ともあれ、当初の予定通り上位を独占できたんだからよしとしよう、と考えたところで。

 

 

「……そういえば、私達のうち優勝したのって誰なの?」

「へ?」

「いや、最初に言ってたじゃない。この大会の形式だと、最後には味方だった面々も敵味方に別れて撃ち合うことになるはず、って」

「……あ」

 

 

 不思議そうに首を捻りながら放たれたエリちゃんの疑問に、一同硬直。

 

 そう、この大会は順位を決めるタイプの試合形式を採用したもの。

 総当たりに近いモノであるが徒党を組むことも可能であり、仮に徒党を組んだ場合は最後にその徒党の中で順位を争うことになるはずのもの。

 ……なんだけど、その辺の戦いは一切起こらないまま、大会は終了の合図を迎えてしまった。

 

 恐らく、徒党を組んだチームもとい私達がほぼほぼ圧倒していたため、ここからさらに勝者を決める試合までしてたら時間やら規模やらがヤバすぎる……みたいな感じで差し止めが入ったんだろうけど。

 ……これ、内部的な扱いとしてはどうなってるんだろうね?

 

 

「どうなってるっていうと?」

「いや、同率一位とかにされてるのが一番困るタイプというか……」

「ありなのかそれ」

「デジタルの世界だから、商品はコピって配ればいい……みたいなノリだと普通にあり得るというか」

「うわぁ」

 

 

 まず、パターンとして一番最悪なのは『チーム一塊で一つの順位に当てはめられている』パターン。

 あくまでゲーム内通貨・ゲーム内の武器を優勝賞品などの副賞に定めており、かつそれらの複製が容易なデジタル空間だからこそ発生しうるパターンというか……。

 

 要するに、一位チームの中で順位を付けて二位以下を埋めるのではなく、一位チームはまとめて一位にしておき他のプレイヤーから二位以下を定める、というやり方なのだけれど。

 これ、普通なら喜ぶ人しかいないようなものだったりする。

 基本的には一位を目指してプレイヤーは戦っているため、その『一位』という称号とその副賞が実質一人だけのものではなくなっている、というのは(少なくとも徒党を組むような相手ならば)喜ばれて然るべき対応というか。

 

 無論、二位以下の賞品に用のある私達としては堪ったものではない。

 いや、堪ったものではないどころか最悪のパターンというか?

 

 

「副賞が問題なわけだから、単純に考えても危ない武器が私達の人数分増えることになりかねないし」

「そもそも二位以下を独占できていないことになるから、それらの武器が他の人の手に渡る可能性もできてしまう……って話になるからな」

 

 

 みんな一位になるのなら、その分一位用の武器も増えることになる。

 ……問題のない武器ならいいんだけど、仮にヤバいものだった場合その辺を全く考慮せずにそれらが複製されることになってしまうわけだ。

 

 それだけではない、もし仮にみんな繰り上げで一位になっていると、本来なら独占できているはずの二位以下に関しても大幅なズレができてしまうことになる。

 そうなった場合、一番ヤバいのはクリスになるだろう。

 痛い思いをしてまで目的の順位になるように調整したのに、この場合上がずれるので彼女の順位もずれる……すなわち、完全な無駄足になる可能性が高いのである。

 

 

「一応それが一番問題のパターンだけど……」

「それ以外にも問題になるパターンはある、と?」

「そりゃ、ねぇ?」

 

 

 ともあれ、このパターンが一番最悪なのは間違いないが、他にも想定できるパターンにはよくないものが紛れている。

 その内の一つが、さっきまでグロッキーになっていた、そこのメイドさんを考慮に含んだパターン。

 

 ……うん、成り行き上彼女も私達と徒党を組んでいた、って扱いになるんだけど。

 その縁でもし彼女がなんらかの順位に入ってしまった場合、私達のやってたことが半分くらい徒労に終わる可能性が出てきてしまうのだ。

 

 というのもである。

 そもそもの話、私達が順位を独占しようとしたのは、この大会の副賞に専用の武器が定められていたため。

 ……GGOコラボ大会なんだから貰える武器はほぼ確実に銃器になるわけだけど、その結果本来別の問題であるハロウィンに繋がりができてしまうのだ。

 

 持てばほぼ確実に悪?影響を受けることが確定しているハロウィン武器なんて、可能な限り一般人に持たせるわけにはいかないだろう。

 ……なんだけど、この状況になるとそれがほぼ不可能になるというか。

 

 なにせ、現に試合が終わってしまっている以上、同時に順位付けというのも既に終わっている扱いになっているのは間違いないのだ。

 ということは、自然とメイドさんに武器が渡る可能性についても、既にその成否が決まってしまっているということになるわけで。

 

 

「……仮に同率一位扱いされてたらそれが一番最悪だけど、もし仮にしっかりと順位独占が成功していた場合でも、その中にメイドちゃんが混じってたら……」

「今までの苦労は水の泡。まさか表彰式で邪魔をする、なんてわけにもいかないものね」

 

 

 前述通り同率一位パターンがもっとも最悪の状況になるわけだが、仮にそうでなくともどこかの順位にメイドさんが含まれていた場合、その時点で彼女が副賞の武器を手にすることを阻止できない……なんてことになってしまう。

 いやまぁ、一応止めようと思えば止められなくはないよ?

 この場でメイドさんを血祭りにあげるとかすれば邪魔自体はできるし。

 

 

「その場合、それをやった私達はアカBANとかになる可能性大だけどね」

「その上で俺達の順位も取り消しになって、結局武器が一般層に広まるのを阻止できなかった……みたいなことになるのも目に見えてるな」

「うわー詰んでるー(白目)」

 

 

 ただその場合、どう足掻いてもこの場でメイドさんを排除するとか、そういう穏やかじゃないやり方になってしまうわけで。

 ……この場をごまかすことはできても、そのあとが詰むのでやるべきじゃないことでしかない、と結論が出るのも当たり前なので、結果やれることはないと答えるしかなくなっているのでありました。

 ほら、詰んでるでしょこの状況。

 

 

「じゃあどっかのタイミングで見捨てりゃよかったのか、って話になるけど……」

「それができるなら苦労はしてないわね。私が言うのもなんだけど、あの子見た目が怪しいだけで特になにか問題を起こしていたわけでもなかったんだし」

「完全に一般人ムーヴだったよね……」

 

 

 唯一、こうなる前になんとかしてれば良かった、という感想に正統性がありそうな気もするけど……うん、言うは易しの典型例だねこれ。

 だってこのメイドさん、見た目こそ色々怪しいけど中身は普通の一般人だったんだもの。

 それも、ついこの間まで一般人だったシノちゃんと比べても遥かに一般人としか言い様のない人物というか?

 

 ……具体的にいうと、明らかにゲーム初心者だったんだよね、この子。

 見た目こそロベルトさんを想起するような凛々しい……ともすれば怖い感じですらあるんだけど、その実中身はココアちゃんといい勝負しそうな感じというか。

 なんか今どこからか『キーアちゃんは私のことなんだと思ってるの!?』みたいな抗議の声が飛んできた気がする?気のせいじゃないかな()

 

 まぁともかく、毒気が抜かれるレベルで普通の人だったのがメイドさんなわけで。

 となると、そんな『普通の人』を私達が──『逆憑依』があっさり見捨てられるかって言うとそりゃノーだとしか言えんのですよ。

 要するに彼女、今の立場だと私達にとっての『名無し』と同じなわけだから。

 ……なりきり的には下手な扱いしたくない相手なわけですよ。

 

 

「そうなるとこういうことになるのが当たり前というか、いっそ()()()()()()()()()()()()()()()って気もしてくるんだよねぇ……」

「あーなるほど、メイドさん一人だけでも怪しい武器に触れさせたい、っていう黒幕?の誘導みたいな?」

「まぁこの場合の黒幕ってハロウィンっていう行事そのものってことになるんだけど」

 

 

 ただこう、ここまで考えてみると最初からハロウィンに踊らされてるんじゃ、って気分にもなってくるというか。

 多数の人間にハロウィン武器を触れさせて変化させるのではなく、一人だけだろうと確実に変化させることを選んだ結果……みたいな?

 まぁ、『tri-qualia』の運営が黒幕ってわけではない以上、扱いとしては単なる偶然の産物って扱いになるんだけども。

 

 

「そんな風にあれこれ言ってたのがもはや数年前のことかのよう。……それくらい『やりやがった』って気分に浸る羽目になったってことなんだけど」

「いや、こんなのわかるかっていうか……」

 

 

 そんなことを宣いながら、なにがあっても対応できるようにと表彰式に望んだら私達。

 それ自体は恙無く終わり、人の気配が薄れたフィールドで貰った副賞を改め始めた私達は、案の定というか予想外というか、ともかくその武器の影響を受けることになった彼女を──元メイドさんを眺めて微妙な顔を晒していたのでありました。

 

 ……詳しいことはまて次回。流石にちょっと説明する気力が無いです……。

 

 

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