なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「参考までに聞くんだけど、どう間違ったわけ?」
「いやその、二重人格が無理矢理混ざったような感じになるわけだから、思考とかが破綻したヤバイことになる可能性大だったというか……」
前に【星融体】の話でもしたと思うが、本来異なる扱いのものを無理矢理一つにする、というのは暴走やら破綻やら、色んな問題を含む大変危険な行為である。
それをハロウィンなどという厄介極まりないもので行ったのだから、そりゃもう大層酷いことになってる可能性があったんだけど……うん、酷さの方向が予想外だったというか。
あれだ、二つの要素が意外と噛み合っていたというか、人格の統合がうまく行ったというか。
……いや、これを成功だと言うのはちょっと憚られるんだけど、正直当初予想していたものと比べると遥かに穏当というか。
「……でもうん、正直この方向性は予想外だったかな……」
「皆さーん、わっぴー!!元気してますかー!元気に愛してますかー!!」
おお仏陀よ、寝ているのですか?
……とかなんとか叫びたくなる状況ですが、私は元気です()
……現実逃避を止めて状況を説明すると。
ハロウィンによる【複合憑依】により【継ぎ接ぎ】のような【星融体】のような、いかんとも説明し難い謎の存在が爆誕した、というわけである。
え、意味がわからん?大丈夫、私にもわからん()
「なんも大丈夫じゃないんだが、ってのは置いとくとして……あれ、あのまま放っておいても問題ないの?」
「まぁ、うん。完全に安定しちゃってるし、本人的に満足そうだし、もういっかなーって」
「おい」
結論から言うと、勘違いが本当になった、という感じ。ただし方向はかっとんでるけど。
改めて説明すると、彼女に【兆し】として掛かっていたのは二人。
片方は歌住サクラコで、もう片方は恐らく
「セピアというと……」
「ボンバーガールに登場するキャラクターの一人ね。確かフルネームはセピア・ベルモンドだったかしら?吸血鬼ハンターの末裔だとかなんとか」
「……え、爆発物?」
「まぁ、それだけじゃあないとは思うけど」
うん、爆弾持ってるシスターさん、っていうビジュアルから連想したのは間違いない。
間違いないけど、その程度の関連性で『逆憑依』を阻害するほどの釣り合いが取れるか?……って言われるとノーとしか私は言えないです。
というわけで改めて説明に戻ると、セピア・ベルモンドとはボンバーマンのアーケードゲーム、かつなんかこう色々と人の前でできないような内容をしている『ボンバーガール』という作品に登場するキャラクターである。
……え?アズレンとかNIKKEとかに比べればマシ?マシかなー?*1
まぁともかく、爆弾で戦うゲームのキャラクターである彼女もまた、他の例に漏れず爆弾で戦うタイプの人物なんだけど……それと同時、彼女のファミリーネームに由来した武器なども使うのが特徴だったり。
そのうちの一つが、『ヴァンパイアキラー』という名前の鞭。
ベルモンド家に伝わる由緒正しき対吸血鬼武装である。……まぁ、設定的にどうもレプリカの類いっぽいんだけど。*2
ただ、これはどうもメインウェポンじゃないらしく、代わりにデフォルトで持ってるのが巨大十字架型のチェーンソー『ネクロメーカー』。
これを『ラブ注入♡』とか言いながら相手に叩きつけるのが彼女の基本攻撃である。
……はい、なんかしれっと変な単語が挟まりましたね、そうですこの人愛の伝道師なんですよ()
それもさっきわざわざアズレンだのNIKKEだのを話題に出したのが『なるほど……』となるレベルのやつ()*3
ついでに言うと、相手を暴力で鎮圧する時にすら愛が持ち出されるレベルでもあったり。
ええまぁ、はい。
色んな意味でこう、サクラコちゃんの勘違い要素がそのまま現実化したような性質のキャラクターなわけでして、そりゃまぁ普通はまともに【複合憑依】になるなんてことはなさそうに思えるんだけど……なんか、変な噛み合い方をしたのか良い感じに纏まっちゃってるというか……。
「愛の怪異*4を思い出す、と言えば今の私の恐怖感も理解して貰えることでしょう」
「……なんか今回お色気系作品の話が多くないか……?」
「ハセヲ君がいなくなって男子が誰もいないからこその話題、ってことなのかもしれないね」
いやまぁ、中の人的にはなんとも言えんけど、その辺り。
……まぁともかくである。
当初予定していたというか予想していたのとは全く別の方向にはっちゃけたサクラコちゃん。
いや、単なる【複合憑依】でもないのだしその名前で呼ぶのはあれかな?
ってわけで、シノちゃんの例に倣って本名?を教えて貰ったのだけれど。
「
「まさかの日系人!?」
……うん、なんか別方向に問題が延焼したなこれ?
「折角の休みになにを呼び出してくれやがりますか、って思ってたけど……うん、これは寧ろ呼ばない方が怒るやつね、真面目に」
はい、そんなわけで武器回収とかほっぽり出してとりあえずゆかりんルームに直行した私達。
グロッキー状態から復帰したハセヲ君と、それから現実世界で活動するための素体に意識を移してこっちにやってきた侑子も引き連れて向かった先で、部屋の主であるゆかりんは深々とため息を吐き出していたのだった。
……さっきまでは折角の休日を邪魔された苛立ちをほんのり感じさせていたけど、その辺もすっかり吹っ飛んでしまっている辺り可哀想感がなくもない()
「ええとまずはハセヲ君だけど……体調以外に問題はない、ってことでいいのかしら?」
「まぁ、一先ずは。変なことになる前に接続を切ったから問題はない……はずだぜ。ただまぁ、ハロウィン中はログインするの止めとくか、って気分にもなってるけどな」
「ああうん、それは正解ね。正直このパターンだとどうなるかわかったもんじゃないし。……となると問題になるのは……」
「……ええと、その?」
ジャブ程度にハセヲ君の心配をしたのち、本題へ。
……今回私達がわざわざゆかりんを叩き起こした理由であるセフィアちゃんは、さっきまでのはっちゃけぶりが嘘のように大人しくソファーに座っている。
多分だけど、二重人格が統合された結果ふとしたきっかけで枷が外れる……みたいなノリになっているのだろう。
普通にしている分には特に問題ないということなのだろうから、それに関してはよかったと言ってもいいと思うのだが……。
(裏を返すと疑われるような状況になると自動的にキャラというかテンションが変わる可能性大というか……)
(うーん反応に困るタイプ……)
代わりに、疑われるような言動をするとそのままリミッターが外れ愛の伝道師になるようなので、微妙に付き合い辛い相手になっていることも間違いじゃああるまい。
……まぁ、本人の付き合い辛さ云々よりも遥かに面倒臭い話が待ってる可能性もあるんで、正直頭が痛いんだけど。
「……とりあえず覚えている範囲で答えて欲しいのだけれど。貴方、日本に暮らしているタイプの人ってことでいいのかしら?」
「え?ええと……多分、恐らく?」
「あー」
その問題に関わる設問──彼女の生活基盤が何処にあったのか、というゆかりんの言葉に、セフィアちゃんは自身なさげに頷いている。
……うん、ここでいう問題っていうのは、彼女がさっきまで何処にいたのか、みたいな話から繋がるものでね?
例えば、日系人なので日本国外から『tri-qualia』にアクセスしていた場合、ここにいる彼女は現地から忽然と消えた上でなりきり郷にやって来た、ということになる。
……はい、明らかに拉致問題で国際問題ですねわかります()
また、仮に日本国内に住んでいたとしても、本拠が海外に定められていたりするとどっちにせよ拉致扱いされてもおかしくないわけでしてぇ……どう考えても上の人達に要らぬ負担を強いることになるわけでぇ……。
「まぁ、その辺は寧ろ対応できれば問題ないからいいのよ。ここでヤバイのは、仮に彼女が本国から消えたパターンだった時、向こうの介入のきっかけになっちゃうってことよ」
「基本的に『逆憑依』は日本国内に限られた現象だからねー」
それよりなにより面倒なのは、他所の国になりきり郷の問題に介入するきっかけを与えるかもしれない、ということの方。
単純に他所の国が首を突っ込んでくるだけでも問題だが、そこから他の国にも『逆憑依』が波及するとすさまじくややこしいことになる可能性がとても高いというか。
……うん、他所の国の作品ってあくまで日本人にとっては『知ってるものだけ知っている』わけだけど。
向こうの視点になると、『日本が知らない作品だって無数に転がっている』ということになるわけで。
はい、変な作品の『逆憑依』が湧く可能性が増えるってわけですね、それも単に変なんじゃなくてヤバイのとか酷いのとかまで範囲に入りかねないというか。
「いやまぁ、『逆憑依』ってその辺のフィルター意外としっかりしてるから、案外問題ないかもしれないけれど。……でもハピツリとか混じり出すとたまったもんじゃないわよ、ってなるというか」
「こっちのギャグのノリでグロが飛んできたりするからねー……」
とてもじゃないけどお見せできないものになりかねないというか。
……まぁ問題はそれだけじゃないけど、一番目立つのはグロが普通に飛んでくる可能性だろう。
大丈夫だからといって誰も四散したくはないんですよ、と思いながら慎重にセフィアちゃんの裏を探っていく私達なのでありましたとさ。