なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「色々確認した結果、とりあえず問題はなさそうって診断結果になりました」
「本当かよ……」
「本当本当。少なくともハセヲ君に関してはなんとかしたから信じて信じて」
そこで胡散臭いものを見る目を返してくるのは違うんじゃありませんかね?()
……ってなわけで、突発的な健康診断は特に問題もなく終了。
今のところ深刻な不具合を引き起こしそうな様子もないってことで、ブラックジャック先生のお墨付きを頂くことになった我らエセJK一同である。
「エセって……」
「いやだって、見た目こそ若くても私ら中身私らですよ?」
「おかしいな、否定したいけど否定できないぞ?」
うん、いくら透き通った世界観に迎合しようとしたとしても、所詮私達は私達。
TS転生モノでよく見るようなキャッキャウフフとは無縁でしかないのである()
そんな悲しい現実に関してはその辺にするとして、だ。
ある程度現状の確認ができたのだから、次に起こす行動について考えなければいけないんだけど……。
「時刻が微妙なんだよねー」
「……ホントだ、もう三時になるね」
こう、新しいことを始めるにはちと遅い時間になってしまっているというか。
……うん、『tri-qualia』内であれこれしてたのが午前中、そこから現実に戻ってきてブラックジャック先生とかに連絡して、今の今まであれこれ検査を兼ねた動きを取っていたということになるわけだ。
一応、まだ午後が残っているとポジティブに捉えることもできるけど……。
うん、お昼もろくに取ってないこの現状だと、正直ここから別のイベントに首を突っ込む余裕はなさそうだなーというか。
「なので、どうせ明日もまだ休みだし今日の残りは雑に過ごそう、ということになったのです」
「なるほど、だからこうしてラットハウスまで足を運ばれたというわけなのですね」
……ってなわけで。
場所を移しましてやってきたのはラットハウス。
祭期間中なので特殊シフト状態なのはいつぞやかに話した通りだが、それゆえに店そのものの休みはない……みたいなことについては触れたかなー?
……とか考えつつ、前回『星女神』様を案内した時とさほど変わらない店内の様子を見回す私である。
うん、変わらないってことは相も変わらず壁の中に人がいる、ってわけでね?
その結果なんかあからさまにおかしなことになっている一団──もとい私達に視線が向いている感じがひしひしとするんだけど、同時にそのことを彼らに指摘するのは求められていないため仕方なくスルーしてそのまま食事にありつくのでありました。
……うん、『見た目がJKでござると食べ方もまたそれに即したモノになるのでござるなぁ……』とか言ってるのは聞こえませんよ、はい()
「滅茶苦茶気にしてるじゃないか、ってのはまぁ置いとくとして……でもうん、確かにこの一団がなにかを食べに行くってなると、うち以外に行く場所……もとい行ける場所はないような気がするね」
「JK侑子とか混じってるからどうしようもないよね()」
「あら、コスプレって自覚してやってるから問題ないと思わない?」
なお、なんでわざわざラットハウスなのか?
別にいつもの居酒屋とかでもいいんじゃないのか、というのは私達の見た目的に宜しくない、という風に答えを返させて頂きたいと思います。
なにせ今の私達、半数というか全数というか見た目がみんなJKなんですもの。
中身が私達だからJKらしいことはしにくいといいつつ、だからってこの一団が居酒屋とかに居たら目立つどころの話ではない。
そもそも昼食と間食を兼ねた食事をしに来ているんだから、居酒屋はチョイス的に向いてない……というのは置いといて、だ。
そうしてラットハウスに集まった私達の中でも、特に異彩を放つのが二人。
それは滅茶苦茶不服そうな顔でメロンソーダをストローで啜っているハセヲ君……もといハセヲちゃんと、それから何を思ってか学生服に身を包んでいる侑子のことなのだけれど。
……うん、
こんなとはなんだこんなとは、と憤慨するライネスは置いといて、なんでこうなったのかということを説明すると。
「……なんとかしたって言ってたじゃねぇかテメェ」
「いや、実際なんとかはしたんだよ?ハロウィン属性を強めることで取り外しをしやすいように調整するとか、色々やってるのは事実だし」
「ただまぁ、私もそうだけど今回の一件は時期的に完全除去が難しいらしいから……」
「寧ろ『これはハロウィンの仮装なんです』って強調しないといけないというか。で、ゲーム内でそれをやるとそれこそ面倒なことになる……っていうなら、それをやるのは現実側でないと、ってことになるってわけよ」
「厄日かなんかかよ今日は……」
まずハセヲちゃんについて。
彼もとい彼女の場合、先ほどまでは
というのも、それを引き起こす原因であるハロウィン武器がゲーム世界の中にあるがために、その影響を受けるのもゲームの中だけだったのである。
それだけだと大した問題に聞こえないかもしれないが、これがこと『逆憑依』の話となると別。
ご存じの通りというかさっきハセヲちゃんが実体験した通りというか……『逆憑依』というのはゲームをする際、程度の大小はあれ
フルダイブじゃないのにフルダイブになる、みたいな感じに言い表されるそれは、しかしてあまり体に良いものだとは言い辛い。
なにせ、現実の感覚に重なるようにしてゲーム内の感覚が伝わってくるわけだ、まともな人間ならば意味のわからない状況に発狂してもおかしくないレベルである。
……まぁ、大抵の『逆憑依』は即座に慣れるんだけど、ここで問題なのは寧ろ
今回ハセヲ君はゲーム内でだけ女体化するような状態に陥っていたが、これは現実で『逆憑依』が(【継ぎ接ぎ】などの影響で)女体化するのとは違い、人体に様々な影響を及ぼしかねないのである。
「本来現実における私達『逆憑依』の実感・体感している感覚というのは一つ。中に核となる人物を別途有してはいるものの、そちらの感覚は優先も顕在化もしない状態だ。……だがしかし、ゲーム世界……もといネット世界における私達というのは、実のところ
「わかりやすく言うと、現実とゲーム内で別の性別になってしむった場合、そのままほっとくと精神面に深刻な異常を引き起こす可能性大、みたいな?」
「うわぁ」
あれだ、精神と肉体の乖離を後天的・かつ人工的に再現する形になってしまうというか。
……『逆憑依』の時点でそうなのでは、と思ってしまいそうだがそうではない。『逆憑依』の時点で既に一つ同じような負荷を受けているのに、そこからさらに負荷を掛けるに等しいというのが正解なのである。
「『逆憑依』の殻にさらに『逆憑依』の殻を被せるようなもの、というわけだな。……本来それは成立しないというか、似たようなものである【継ぎ接ぎ】に移行するのが筋なのだが、どうにも『性別の違い』というのはこちらが思っている以上に負担を強いるもののようでな……」
「『逆憑依』として必ず受ける一つ目だけならともかく、そこから二つ目を受け入れるとなるとろくなことにならないって予想というか、半ば予測というか」
……え?話がややこしいから予想結果だけ教えろ?
最終的に今のハセヲちゃんの見た目──アウラ様そっくりの性格になった彼女が生まれるんですけどなにか?
なおその場合、ハセヲ君としてのアイデンティティはどっか行きますというか、彼女の中に内包されるためわけわかんないことになるというか。
その予測が出たというか視えた時点で私はそれ以上視るのを止めたけど……多分ろくなことにはなってないと思う。
最悪そっからバグってネットワーククライシスとか起こしかねないというか?
……なのでまぁ、現実とゲーム内で性別が違う、というのは可能な限り止めさせた方がいい、ということになるのでありました。
いやまぁ、その辺の問題点が露見することなんて本来なかったんですけどね?『逆憑依』の性質上、ゲーム内の姿は現実と同一になるのが普通なわけですし。
そういう意味では貴重なサンプルってことになるのかなーと思いつつ、目を逸らし続けていたもう一人について触れる私である。
……うん、JK集団に混じるのなら服装を考えないとね、とか言い出した侑子なんだけど。
なんというかこう、如何わしいというかおかしいというか、色んな意見が噴出しそうな感じになっているというか。
「そういうのも味だと思わない?そもそもブルアカにも似たような子はいるでしょ?」
「微妙に喧嘩を売るような発言止めない?」
いや一部の生徒はとてもじゃないけど生徒に見えねぇ、ってのは確かな話だけども。*1
……とかなんとか言いつつ、頼んでおいた食事に手をつける私達なのでありました。