なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「さて、じゃあまずはどこから見て回るかなんだけど……」
「リボンズさんが目を覚ましたかどうかから確かめて置くべきなのではありませんこと?」
はてさて、屯所的なところから出発した私達。
まずはどこに行こうかということで意見を求めたところ、黒子ちゃんからリボンズに事情を吐かせるのが良いのでは?(※意訳)という提案が飛んできたのだった。
……え?本人がそこまでは言ってないって文句言ってるって?
「まぁでも、リボンズに話を聞きに行く、ってのは無しかなー」
「おや、それはどうしてですの?」
「私達がわざわざ聞かなくてもブラックジャック先生が詰めてくれてるから」
「……ああ、なるほど」
ともあれ、彼女の提案についてはノーと答えておく私である。
なんでかって?彼の送られた場所が元隔離塔……もといブラックジャック先生の診療所だから、というのがとても大きい。
要するに、わざわざ私達が訪ねなくてもきっちり調書は取っといてくれるよ、ってわけだ。
ああ見えてブラックジャック先生、意外と動けるタイプの人だし?*1
まぁそういうわけなので、果報は寝て待て*2ってわけじゃないけど向こうは向こうで任せておこう、って話になるわけだ。
「なるほど……ではどこに向かう予定ですの?」
「昨日は人の多いところだったから、今度は少ないところに行こうかと」
「ふむ?」
そこまで説明して納得したのか、黒子ちゃんは次の対応について尋ねてくる。
それに対して私が返したのは、昨日──休みの日に確認した場所とは別のところに行こう、という提案。
具体的には初日が『tri-qualia』内、その次がメインストリート的な活気に溢れる場所だったことを前提としての、それらとは違う性質を持つ場所。
すなわち、閑散として人の寄り付かないような場所、ということになる。
「わかりやすいとこで言うと熔地庵の辺りとか、それから神社の方とかかな」
「熔地庵は御勘弁願いたいところですけど……その、神社というのは?」
「はい?……ああいや、別に秘境的なところってわけじゃなくて、単に祭期間中は神社の辺りに人が寄り付かないってだけだよ?」
「なるほど……?」
おっと信じてないというか『祭といえば寧ろ寺院の辺りに人が集まるモノなのでは?』とか思ってる顔だなこれ。
……まぁ確かに、一般的な考え方からすると祭と寺院というのは密接に関わっているのが普通だろう。
祭とは奉るもの、すなわち神や仏のような上位者に対しての感謝の念などを奉じるものである、と考えるのは間違いだとは言えない。
「けどそれって、普通の──地元に根差した祭、みたいなものの話じゃない?ネット上にある掲示板を由来とした祭、みたいなものを奉じる相手になる神様なんていないでしょ」
「……言われてみれば、そんな祭を奉じられても困りそうですわね」
ただ、それは歴史のある──昔から地元に根付いていた祭のようなものについての話。
今回みたいに比較的新しい、ネット世界を由来とした祭を奉じられても困るだろう。
……いやまぁ、ビッグビワ辺りに奉じるってのもありかもしれんけども。
ともかく、今回の祭はそういうタイプのモノじゃない、というのは間違いあるまい。
なので、普通の寺院は関わりのないモノになるため、祭期間中は人が近寄らない……もとい近寄る理由がない、なんてことになるのであったとさ。
「だから、今の時期郷内の寺院は基本暇なんだよ。……まぁ、中には出し物を用意して普通に人を呼んでるとこもあるけど、そういうとこは寧ろ普通の寺院じゃないというか、教義がわりと自由みたいな感じというか……どっちかというと珍しい方に当たる、ってのは間違いないよね」
「なるほど……」
そこまで話したところ、黒子ちゃんも納得してくれたようでこちらの指示に従う姿勢を見せてくれたのであった。
と、言うわけで。
早速とある寺院に向かって進んだ私達なんだけど。
「……なんというか、久しぶりに顔を見たって感じだな」
「まぁ、用もないのにここまで来ることもないですからねー」
だからこそ貴方も心穏やかに過ごせてるんでしょうけど、と言葉を返す相手は冴えない雰囲気の宮司さん。
……はい、久方ぶりの登場のロイド・フォージャーさん(仮称)ですね。
彼は本来スパイとして『ロイド・フォージャー』という人物を演じているため、そのまま『逆憑依』として成立し辛い人物である。
大雑把にいうと不安定な感じってことになるわけだけど……その辺を安定させるために冴えない宮司の姿を仮のキャラクターとして与えている、みたいな感じになっている人物である。
なお、その姿は特定の誰かに似ている、みたいなことはない。
何故かと言えば、下手にどこかの誰かに似ていると強めの【継ぎ接ぎ】になりかねない、というところが大きい。
……いや、この場合サクラコちゃんとかみたいに変な感じの──【複合憑依】とも【継ぎ接ぎ】とも言い辛い存在になりかねないというか?
「まぁ、当時はそんなパターンがあると思ってなかったから、結果的に最善の対処だった……みたいなことになるんだろうけど」
「うーん、怪我の光明っていうか……」
うるせーやい、終わり良ければ全て良しなんだよー。
……その辺はともかく。
何故ここを訪問先に選んだのかというと、ロイドさんが暇を持て余してるらしいのでお仕事を依頼しにきた、みたいな感じでして。
「……ああ、さっきの話ですわね?」
「そうそう。ロイドさんは今ここで宮司してるけど、他の人はバイトというか正規の人じゃないから、この時期は普通に他のとこにいるわけで……」
「俺は基本ここにいるだけだからな。それはそれで不安定な状態に陥らずに済むとも言えるが、代わりにすることもないわけだ」
あれだ、安定させるための【継ぎ接ぎ】付与って融通が効き辛いというか?
……具体的に言うと、宮司として仕事をしている間は安定するんだけど、それが滞ると微妙に体調不良になる……みたいな?
まぁ、場所の補正のお陰で症状が酷いレベルで悪化することはないみたいだけど。
代わりに、暇な時期にはずっと地味な苦痛を受け続ける場所に留まらざるを得ない、みたいな拷問かなにか?……みたいなことを言われそうな状態に陥ってしまうわけで。
だったらこの時期は宮司の仕事はお休みして、元々のスパイ的なお仕事に従事する方が楽なんじゃないか?……って話になったわけである。
「まぁ、あくまでずーっと低血圧みたいなノリになるってだけだから、本人がそこまで気にしないならやらなくてもいいよ、みたいな話でもあるんだけどね」
「まぁ、そもそもが不安定だったところに【継ぎ接ぎ】で安定させたって感じだから、そりゃ他の仕事頼むのもなー……みたいなノリになるのも当たり前ってわけだね」
「そうそう」
ちょっと息苦しくて暇だけど安定はしてるのと、ちょっと危険かもしれないけど息苦しさと暇は解消されるの、どっちが本人的に望ましいか?……みたいな?
まぁ、どっちもそこまで深刻でも急を要するものでもないので、本人がどうしたいかが一番のポイントってことになるわけだけど。
で、そこまで説明した結果、ロイドさんから帰ってきたのは是非に仕事を任せてほしい、という言葉。
……どうやら、暇に耐えかねていたらしい。
「宮司の生活にやりがいがないってわけじゃあないが、そろそろスパイとしての動きと勘を取り戻さないと問題だな……とも思っていたから渡りに船ってやつだよ」
「なるほど……まぁ、言われてみればそうか。宮司は安定剤として【継ぎ接ぎ】されたものでしかなくて、本業はスパイのまんまだもんね」
単に、本人の高スペックである程度の無茶はごまかせるってだけの話であって。
とまぁ、そんなわけで。
最初の訪問先、ロイドさんが宮司をやってる寺院(祭期間中につき休業中)での成果はそんな感じ。
今現在なりきり郷内に広まっている流行──おもちゃの銃をファッションとして持ち歩くのが人気、という話の出所を可能な範囲で探って貰うという依頼を彼に受理して貰うことに成功した、って感じになるのであった。
「あ、黒子ちゃん達にも言いましたけど、迂闊に噂の本拠地に乗り込もうとかしないでくださいね?特にロイドさんはそういうのに耐性ないというか、何倍増しのレベルで影響を受けかねないですし」
「そうだな……俺の場合一人スパイファミリーとかにされかねないから気を付けないと」
「……一人スパイファミリー?」
「今の俺はロイド・フォージャーとして中途半端な存在。そんなところに他の【継ぎ接ぎ】が付与されるとなると、ヨルさんやアーニャを俺に一纏めにする……みたいなことになってもおかしくはないだろう?」
「というか、なりきりって遊びの性質からするとそっちの方が多いはずって感じだよね」
「い、言われてみれば確かに……」
無論、色々注意するように促しておくことも忘れない。
……今現在私達が知っている【複合憑依】というのは、基本的にあまり関係のない三キャラクターが一セットになっているパターンが多いが、【複合憑依】──その原型となるのであろう『掛け合い形式』というものの性質上、同じ作品のキャラクターで固めたパターンの方が多く現れるはずなのだ。
にも関わらず、私達が知る【複合憑依】は基本的にそうはなっていない……。
私はこれを
なので、ロイドさんには気を付けて貰わないといけない。
……一応、ヨルさんとかアーニャがブルアカテスクチャの影響で【継ぎ接ぎ】されるとは考え辛いが、
……とまぁ、そんな感じで諸注意を告げたのち、私達は次の訪問先へと向かったのでありましたとさ。