なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「お次はどちらに向かうんですの?」
「とりあえず熔地庵かなぁ、荼毘君に話を聞いときたいというか」
さて、次の目的地は熔地庵である。
人があまり寄り付かないというが、さっきの寺院と違ってこっちは単に近寄る理由がない……もとい近寄りたくないのが普通、みたいな感じになっている。
いやまぁ、当たり前なんだけどね?
溶岩が常に滾々と湧き出てる極限環境なわけだし、普通の人は近寄るなんて思考になりようがないというか。
好き好んで丸焦げになりに行く人はそうそういないでしょ、みたいな。
そんなわけなので、必然的にというか常習的にというか、原則人のほぼ居ない場所であるところの熔地庵。
それはつまり、なにかしらの企みをするのであれば隠れやすい場所である、とも言えてしまうわけで。
「耐火・耐熱装備がないなら厳しいけど、あるならこれほどまでに隠れやすい場所もないというか?天然の要塞みたいなもんってことになるわけだからね」
「まぁ、それは確かに。そもそも環境による死亡も原則起こり得ないなりきり郷、極端に熱かったり痛かったりするのを我慢すればその辺りの装備がなくても隠れ潜むことは可能でしょうからね」
「……いや、流石にそこまで覚悟の決まった人は居ないんじゃ……」
いや怖ぇよ。
確かに原理的には『死なない』んだから、死ぬほど熱いのと死ぬほど痛いのを我慢すればマグマの中に隠れ潜む、みたいなこともできるかもだけどさぁ?
それって要するに自分から拷問受けに行くようなモノであって、普通は耐えられるようなものじゃないのよ……と返したところ、黒子ちゃんは不思議そうに首を傾げていたのでした。
……なんだろうねこの、『必要であれば私はやりますわよ?』みたいな顔。止めようね???
その辺の話はともかくとして、だ。
なにかしらの企み事をするのであれば、熔地庵の環境が向いていることは事実。
荼毘君みたいに家……セーフハウス?みたいなモノを用意する、みたいなやり方もないではない。
その流れで、件の噂の発生源が隠れ潜んでいる可能性もないではない、という話になるわけだ。
「だから、ある程度見て回ろうと?」
「そういうことだね。……まぁ、本来用意すべき耐火・耐熱装備はないから、どっちかというと荼毘君に気にして見て貰うようお願いしに行く、みたいな要素の方が強いかもしれないけど」
「……言われてみればそうですわね。基本私達丸腰ですし」
まぁ、ここまで語っておいてなんだけど、主な目的はこの時期暇だろう荼毘君にお願いしに行く、みたいな方が強いんだけどね!
……え?この間ヒードランの『逆憑依』でもある、ってことで表に出てきてただろうって?
あれ毎日やってるわけじゃなくて期間限定だから、今は普通に暇してるはずだよ?
ちょっと前まで忙しかったんだから、残りはゆっくりさせてやれよっていうならわかるけども。
「とはいえそれを荼毘君が望んでるかは不明、とね。そういうわけでお邪魔してまーす」
「邪魔してるなら帰ってー、と返すのがお約束かなー」
「ウッキャッ……」*1
「おおっと」
まぁその辺は一先ず全部どっかに投げ捨てるとして。
意気揚々とやって来た荼毘君の自宅。そこには既に先客がいたわけで。
いやまぁ、特に捻りもなにもなく、普通に友達だと公言していたディディーコング君がそこにいた……ってだけの話なんだけどね?
前回(※
そのことを話せば、ディディー君は呆れたようなポーズをこちらに見せたのであった。
「……あれ、そういえばその時あげた翻訳マスクは?」
「ウッキャッ、ウッキィ」*2
「あー……」
「ええと、なんて言ってるの?」
「今後の科学の発展のために賭けてきたって」
「はい?」
「ウキャ……」*3
あと、何故か前回渡したはずのマスクを持っていなかったため、その辺について聞いてみたけど……。
うん、琥珀さんってば色んなとこにいるな?……下手すると地下からここまで続く直通路とか作ってそうだなあの人。
さっきも言ったけど、熔地庵ってなにかしら企んだり隠したりするのに向いてるから、その関連で
いやまぁ、琥珀さんがなんかやらかそうとしている、とは思ってないよ?
……いや結果的にやらかすこともあるけど、基本的によかれと思ってやったことが裏目る……という、個人的に責め辛い理由での問題発生がほとんどだから、あれこれ言うつもりがないってだけの話だけど。
……ただまぁ、だからって見逃していいのかと言われると違うというか。
本人を責めることこそしないけど、彼女のやってることは常に気にしておかないとダメ、というか。
その辺なにか知らない?……と荼毘君に尋ねてみたところ、彼から返ってきたのは『知らない』という言葉であった。
……滅茶苦茶目が泳いでいたけどな!!
これ琥珀さんに口止めされてるな……と確信した私。
はてさて今回はなにに危機感を覚えたのやら……と考えてみたところ、よくよく考えたら身近な人間に問題起こってるやんけ今回、と思い至ったり。
……はい、身内であるクリスちゃんに思いっきり被害が及んでますね(白目)
となると、クリスから話を聞いてなんとかしなきゃ、みたいに使命感抱いちゃったとかだろうか?
……個人的に言わせて貰うと、琥珀さんも普通に今回のトラブルには引っかかる側なので大人しくしてて欲しいのだが。
(……私が動いてるからダメだろうなぁ)
「どうしたのキーアちゃん、さっきから百面相してるけど」
「…………荼毘君に頼むことがちょっと増えたかなー、と」
「ふぅん?」
熔地庵を行き来する人について
……詳細な内容じゃなきゃ琥珀さんと彼が交わした約束にも引っ掛からんだろうというか。
そんな感じのことを上手くごまかしつつ彼に伝え、無事快諾された私達はそのまま彼の家を出る。
ついでに、このまま次の場所へ向かうことも指示。
「先ほどまではもう少し張り切っていたと言いますか、それこそ根掘り葉掘り調べるつもりでいらっしゃったように見えましたけど……どういう風の吹き回しですの?」
「世の中には調べない方がいいこともある、ってことだよ」
「はい?」
「あー、えーとその……多分キーアお姉さんはこう言いたいんだと思うの。さっきの荼毘さんは、誰か他の人がここで逢い引きとかしてるってことを隠してたんじゃないかなって……」
「……ああなるほど。祭と言えばカップル達がはしゃぐ、というのもお決まりでしたわね」
途中、さっきまでと私の態度が違わないか?
……みたいなツッコミを黒子ちゃんからされることになったが、適当にごまかそうとした私の言葉を(何故か)なのはちゃんがナイスフォロー。
結果、黒子ちゃんは一応の納得を見せて引き下がってくれたのであった。
……これ、なのはちゃん達も琥珀さん側だな、多分。
「…………むぅ」
「さっきから唸ってるけど、キーアちゃん大丈夫?」
「うんまぁ、一応は。……ちょっと頭痛いのは事実だけど」
「わぁ」
……それから先も、それなりに色んなところを見て回った私達。
怪しげな場所、危険そうな場所、人気のない場所……。
そのどれにも、なんとなーく琥珀さんの気配があったとなれば、そりゃ頭も痛くなってくるでしょうというか。
いや、どんだけ隠し通路とか作ってるのよあの人。
まぁ、気持ち自体はわからないでもないのよ。
なりきり郷は基本的に平和に見えて、意外とトラブルが眠ってるから気になり始めるとなにもかも気になってしまう、みたいなのは。
だからって、ありとあらゆる階層にそれとなーく隠し通路っぽいものがあるのはよろしくないというか。
何度か黒子ちゃんに発見されそうになって、その度なのはちゃんや翼さんと一緒にごまかすというか、他のとこを気にするように誘導する羽目になったし。
……え?なんでわざわざ隠すのかって?
別に黒子ちゃんに知られても問題ないんじゃないかって?
それがそうとも言えないのだ。
ご存じの通り、黒子ちゃんは原作において風紀委員の一人として知られているし、今回もその流れで祭の正常な運行のために頑張っている。
……んだけど、これって別に今の期間だけに留まる話ではないのだ。
寧ろ、祭期間だから多少甘くなっているというか。
どういうことかと言うと、普段の彼女って
何度か触れたことがあるが、なりきり郷内というのは意外とトラブルの多い場所である。
その中でも特に面倒なのが、『逆憑依』同士の喧嘩……ではなく、結構な頻度で湧いてくる【鏡像】の駆除。
要するに、もろに荒事専門の人物なのだ、黒子ちゃんって。
……言い換えると現場派の刑事みたいなもの。そんな彼女に隠れてこそこそやってる琥珀さんの話をするとどうなるのか。
結果は単純、ストレートに琥珀さんが捕まります()
……いやまぁ、逮捕は言いすぎでどっちかというと謹慎処分の通達、って感じなんだけど。
この場合、その『謹慎処分』というのが宜しくない。
私のサイドエフェクトが告げているのだ*4、ここで琥珀さんが謹慎処分になると酷いことになる、と。
……恐らくだけど、今回の話で突破口となるのは彼女の行動なのだと思われる。
なので、彼女の行動を制限してしまうような展開は極力避けたい、となるわけだ。
え?その辺説明して協力を仰げばいいのにって?
私今『サイドエフェクト』言うたやん……。
大雑把にいうと、説明すると展開が変わる可能性大、ってわけである。
具体的にどう変わるのかはわからんけど……なんとなーく良くないことになりそうな気がするというか?
そのため、特に子細をなのはちゃん達に聞くこともなく、なんとなく示し合わせたように琥珀さんのフォローをし続ける羽目になってる私なのでした。
……え?いつもは私がフォローされてるんだから頑張れ?そんなにフォローされてるかな私……。